国内NEWS
21 Feb 2025
447
原子力委員会 次期エネ基に向け見解
海外NEWS
21 Feb 2025
482
韓国造船企業 SMR駆動によるコンテナ船の設計を発表
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21 Feb 2025
278
ウクライナ フメルニツキー発電所の未完プラントに進展
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21 Feb 2025
350
世界経済 電力を基軸にシフトへ IEA報告書
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21 Feb 2025
305
霧島高校 クリアランス金属活用を通じた探究学習の深化
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20 Feb 2025
580
米テネシー州 原子力プロジェクトへの支援を拡大
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20 Feb 2025
514
英国 深地層処分候補地の絞り込みへ
国内NEWS
20 Feb 2025
460
規制委 福島第一の廃炉で審査・検査の改善策を示す
韓国のHD現代グループの韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社は2月12日、米国ヒューストンで開催された“New Nuclear for Maritime Houston Summit”にて、小型モジュール炉(SMR)駆動によるコンテナ船の設計モデルを初公開した。KSOE社はこれまでに、SMRを適用した15,000 TEU((TEU(twenty-foot equivalent unit、20フィートコンテナ換算)。コンテナ船の積載能力やコンテナターミナルの貨物取扱数などを示すために使われる、貨物の容量のおおよそを表す単位。))級コンテナ船モデルについて、米国船級協会(ABS)の基本設計承認(AIP)を取得。今回公開した設計モデルは、実際の設備や安全設計の考え方を取入れ、経済性と安全性を向上させたものだ。原子力船は従来の船舶と異なり、エンジン排気装置や燃料タンクを必要としない。KSOE社は、これまで大型のエンジンルーム設備が占めていたスペースを最適化し、追加のコンテナを収容できるようにして経済性を向上させた。また、安全性を確保するために、ステンレス鋼と軽水による二重タンク方式の海上放射線遮蔽システムを採用し、堅牢な安全基準を確保している。さらにKSOE社は、世界的なエネルギー技術企業である米ベーカー・ヒューズ社と協力して、超臨界二酸化炭素ベースの推進システムを採用し、既存の蒸気ベースの推進システムと比較して熱効率を約5%向上させた。この技術の導入により、原子力船の経済性と環境上の利点がさらに向上する。KSOE社は、韓国北西部の京畿道龍仁市にある未来技術試験センターに海上原子力実証施設を設立し、安全性設計の検証と試験を行う予定だ。ABSのP. ライアン最高技術責任者は、「原子力船は、カーボンニュートラルが台頭しつつある現在の造船市場においてゲームチェンジャーになり得る。ABSとKSOE社は、世界の造船市場における海上原子力技術の商業化の加速に貢献する」と語った。海事業界では、炭素排出量を削減し、持続可能性の目標を達成するため、海事用途の原子力技術への関心と投資が高まっている。KSOEグリーンエネルギー研究所のS. パク所長は、「原子力船の商業化に必要な国際的な規制を確立するため、主要な船級協会だけでなく、国際的な規制機関との協力を強化している」「陸上のSMR製造プロジェクトをはじめとし、2030年までに海洋原子力ビジネスモデルの開発を目指す」との展望を示した。KSOE社は2024年2月から米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社と次世代SMRの共同研究を行い、関連技術の開発を加速している。同年12月には、米国ワイオミング州に建設中のテラパワー社の先進炉「Natrium」の主要機器の製造を受注した。
21 Feb 2025
482
ウクライナ最高会議は2月11日、フメルニツキー原子力発電所の未完の3、4号機の完成に向けて、ブルガリアで建設が中止されたベレネ原子力発電所の設備購入に関する法案を承認した。賛成269票、反対40票であった。ウクライナの原子力発電事業者エネルゴアトム社は同日、ウクライナ議会の議員による承認を歓迎し、「この決定は、ウクライナのエネルギーの自立とエネルギー安全保障を強化し、原子力産業のさらなる発展に貢献するものである」と表明。エネルギー省は、「同3、4号機の完成は、原子力発電所をゼロから建設するよりも数倍安価で迅速である」と指摘し、この議会の承認を受け、詳細なプロジェクト見積の更新作業を加速するようエネルゴアトム社に要請した。フメルニツキー発電所の3、4号機は1990年に建設工事を中断してから未完成のままである。いずれも出力100万kW級のロシア製PWRであるVVER-1000を採用しており、3号機の建設進捗率は75%、4号機は20%である。エネルゴアトム社は3号機の完成を2028年に予定する。ブルガリアでは、ベレネ原子力発電所(VVER-1000×2基)の建設計画があったが、2023年10月に中止となっており、ロシアから購入した炉設備等が建設サイトに保管されている。エネルゴアトム社は、この未使用の機器を購入して、フメルニツキー発電所の3、4号機に利用する計画だ。エネルゴアトム社は、両機が完成すると発電量が年間150億kWh以上増加し、電力輸入への依存が減少、建設と運転の段階で、数千人の雇用を創出する他、中小企業の成長、コミュニティ収入の増加、投資誘致など、経済成長に貢献すると評価している。また、2030年以降に運転期限を迎える原子炉とリプレースすることにより、安定した信頼性の高いエネルギー供給を確保できるという。IAEAのR. グロッシー事務局長は2月初旬にウクライナを訪問。フメルニツキー発電所の3、4号機の建設プロジェクトへの原子力安全に関する助言と技術支援を約束した。ウクライナは原子力部門におけるロシア系サプライヤーとの協力を完全に断っていることから、米ウェスチングハウス(WE)社からの燃料、またはWE社の技術を採用してウクライナで生産した燃料のみで運転される。WE社は現在、同3、4号機をAP1000を採用する5、6号機の最先端の技術レベルに引き上げるため、安全性分析を実施中である。ウクライナには15基の原子力発電所があり、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャ発電所の6基(合計出力600万kWe)を含め、原子力は総発電電力量のおよそ半分を供給している。フメルニツキー1号機(VVER-1000)は1987年に送電網に接続されたが、他の3基の建設は1990年に中断。2号機(VVER-1000)の建設のみ再開され、2004年に送電網に接続された。WE社製AP1000を採用する5、6号機を含む、全6基が稼働を開始すると、その供給する電力は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える。
21 Feb 2025
278
国際エネルギー機関(IEA)は2月14日、「Electricity 2025」の最新版を公表。原子力や再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー源により、今後3年間に世界で増加する電力需要分をすべてカバーできるとの見通しを示した。同報告書によると、世界の電力消費量は近年で最も速いペースで増加し、2027年まで毎年4%近く増加することが見込まれている。この需要の伸びは、今後3年間で毎年、日本の年間電力消費量を上回る量が追加されることに相当し、主に工業生産や空調、運輸部門が牽引する電化の加速、およびデータセンターの急速な拡大によるものと分析している。また、追加需要の85%は新興国と開発途上国が占め、とりわけ中国では、2020年以降、電力需要が経済成長を上回る速いペースで増加、電力消費は2027年まで平均約6%の成長が見込まれている。一方、先進諸国も2009年以降、電力需要は鈍化していたものの、再び経済成長とともに、電力需要も大幅に増加し始めると予想されている。米国では、今後3年間でカリフォルニア州の現在の電力消費量に匹敵する電力が追加される。欧州連合(EU)では、近年の景気減速から回復しつつあるとしながらも、電力需要の伸びはより緩やかに推移し、2027年までに2021年の水準に戻る程度と予測されている。いずれにせよ、世界全体では、再エネと原子力の発電電力量が電力需要の増加分をすべて賄うのに十分な速さで拡大していくと予想され、増分がカバーされる見込みだ。これら予測の結果、世界の発電によるCO2排出量は、2024年に約1%増加した後、今後数年間はほぼ横ばいに推移する見込み。また、原子力発電について、報告書は「力強い復活を遂げつつある」とし、2025年以降の発電電力量は毎年過去最高を更新すると予測。向こう3年間で、年平均2.3%の成長を見込んでいる。この成長の要因として、保守作業が終了したフランスの原子力発電所の戦列復帰や日本の再稼働のほか、中国、インド、韓国等における新規原子炉の運転開始を挙げた。さらに、報告書は、原子力発電の成長傾向について、政策関係者がその重要性を再認識したことが大きな要因と指摘。それにより、より多くの国々が低排出エネルギーシステムの安定した基盤として、原子力を位置付ける動きが強まっていると分析した。
21 Feb 2025
350
米テネシー州のB. リー知事は2月10日、州議会において2019年の知事就任から7回目となる一般教書演説を行い、2026会計年度(2025年7月~2026年6月)の予算案について明らかにした。原子力関係予算では7,000万ドル(約105億円)を計上している。リー州知事は、「テネシー州が原子力イノベーションをリードし、アメリカの未来を保障する」と語った。知事自身の提案により2023年、州政府が5,000万ドル(約75億円)を投じて、原子力関連企業の同州への拠点移転支援や同州の大学・研究機関における原子力教育の発展を目的とする原子力基金が創設されている。知事はこの基金の創設を契機に、テネシー州が米国の最先端のエネルギー企業から注目を集めていると指摘。米新興企業のケイロス・パワー社やX-エナジー社のほか、仏オラノ社の米国法人オラノUS社がテネシー州に拠点を置いている現状に言及し、先進的な原子力企業の一層の誘致を目指し、同基金への1,000万ドル(約15億円)の追加投資を予算案に含めていると説明した。ケイロス・パワー社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」にてフッ化物塩冷却高温炉の「ヘルメス」実証プラントの建設工事を開始している。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフト市の製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。また、オラノUS社が遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地に同州オークリッジ市を選定している。また知事は、同州のテネシー峡谷開発公社(TVA)がSMR建設用地として事前サイト許可を有する、クリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)開発支援に向けた基金を創設。5,000万ドル(約75億円)を拠出し、テネシー州を次世代原子力のリーダーとして位置づけると表明した。TVAは今年1月、SMRの建設を検討している主要な公益事業会社や開発者、サプライヤー、建設パートナーと共同で、クリンチリバー・サイトにおける、GE日立製のSMR「BWRX-300」の建設を加速するために、DOEの第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,202億円)の助成金を申請している。このほか、原子力関係の予算案には以下を含む。原子力諮問委員会の勧告に従い、原子力関係従業者の教育支援のため、職業教育投資(Governor’s Investment in Vocational Education: GIVE)に1,000万ドル(約15億円)の追加投資。商業用核融合発電のための米国初の規制枠組みの策定に260万ドル(約3.9億円)。さらに知事は、米国全土および世界中から、米南東部への移転を検討している多くの企業関係者と会うが、その決断は、エネルギー、労働者の有無に左右される、と言及。原子力が労働者階級の家庭にとって重要なのは、エネルギーがなければ、経済発展も雇用創出も無くなるからだ、と強調した。知事は、新興企業、新技術、研究開発を戦略的に支援し、経済の多様化、雇用の促進を図るほか、職業訓練、技術教育を拡大し、テネシー州の若者たちに雇用を確保し、テネシー州が米国最大のイノベーターたちの新たなフロンティアになることを目指す、との決意を表明した。
20 Feb 2025
580
英国の原子力廃止措置機関(NDA)傘下で、放射性廃棄物の地層処分の実施主体である原子力廃棄物サービス(NWS)社は1月30日、英国の高レベル放射性廃棄物を処分する深地層処分施設(GDF)の設置に適した場所と、設置意思のあるコミュニティを探すために、3か所の重点エリア(Areas of Focus)を特定したことを明らかにした。重点エリアは、サイト選定プロセスのうち、調査エリア(Seach Area)に設定されている、イングランド北西端にある旧カンブリア州カンバーランド市の、①ミッドコープランドと、②サウスコープランド、イングランド東部にあるリンカンシャー州イーストリンジー市の、③テッドルソープの3か所のエリア内に特定された。なお、NWSが2023年6月から実施していたサイト評価の結果を受け、旧カンブリア州の旧アラデール市の調査エリアでは、同年9月に選定プロセスは終了している。英国では2008年から2009年にかけて、カンブリア州の2つの自治体がGDF受け入れに関心を表明したものの、州政府の反対を受けて建設サイトの選定プロセスは2013年に白紙に戻った。英政府は2018年12月に策定した新たな政策に基づき、新しいGDFサイト選定プロセスを開始した。そのプロセスは、地元コミュニティとの合意ベースであることに特徴がある。まずGDFの受け入れに関心をもつ個人や団体、企業がNWSとともに作業グループ(WG)を立ち上げ、NWSとの初期協議を開始、GDF建設の潜在的適性があると思われる、調査エリアを特定する。この検討段階では地元自治体がWGに参加する必要性はないが、調査エリアでサイト評価を進めるには、同エリアに関係する地方自治体が少なくとも1つ参加する「コミュニティ・パートナーシップ」の設立が必須。調査エリアのある、上記3か所の調査エリアでは、すでに同パートナーシップが設立され、同組織がNWSとの対話や地元住民の理解促進活動を行っている。なお、英政府は同パートナーシップを構成するコミュニティに対して、経済振興や福祉の向上を目的としたプロジェクトに限り年間最大100万ポンド(約1.9億円)を提供するほか、サイト選定プロセスが深地層のボーリング調査段階まで進んだ場合には、年間最大250万ポンド(約4.8億円)を交付する奨励策を打ち出している。NWSによると、今回、重点エリアを特定し、調査エリアを絞り込んだことで、NWSの専門家が詳細な現地調査や机上調査、土地所有者との協議を含むサイト評価のほか、その後に続く、GDFを安全かつ確実に設置できる適切な場所を検討するサイト特性調査に重点的に取組めるようになるという。重点エリアは、地質データ、環境保護地域や市街地の検討など、さまざまな情報を用いて特定されている。NWSは、GDFに適した場所を探すために必要な3つの重要な要素として、適切な深地層の地質環境、適切な地表面の位置、地表施設と地下施設を結ぶ地下坑道の設置可能性を挙げる。現在特定されている、上記①~③の3か所の重点エリアでは、地下施設の設置エリアは共通して、領海内(沿岸から約22km)の海底下で検討されており、①と②の沖合における地下施設の設置エリアは同一である。また、①では地表面の重点エリアが2か所あるが、サイト特性調査の開始(2030年頃を予想)前には1か所とする計画である。なおNWSは、重点エリアの特定がこれらのエリアにGDFが設置されることを意味するものではない、と強調する。建設は、適切な場所が特定され、ホストコミュニティの施設設置の意思を確認し、必要なすべての同意と許可が得られた場合にのみ開始される。重点エリアのサイト評価後、NWSは国家の重要インフラ開発に必要な開発合意書(DCO)ならびに環境許可の申請を行う。これら許可の取得後、ボーリング調査を含む、潜在的なGDFの設計とセーフティケースの作成のために必要となる、サイト特性調査をおよそ10年をかけて実施する。2030年代後半には、地元コミュニティのGDF受入れの最終意思を確認した上で、設置サイトを最終選定し、政府に通知。2040年代初めには原子力サイト許可を含む、あらゆる同意と認可を取得、着工を計画する。2050年代には中レベル放射性廃棄物、2075年からは高レベル放射性廃棄物と使用済み燃料の搬入をしたい考えだ。GDFの建設、操業、閉鎖まで150年間を要すると見込んでいる。
20 Feb 2025
514
英国を拠点とするAI(人工知能)クラウドプラットフォームのフルードスタック(Fluidstack)社は2月10日、原子力を活用した世界最大級のAIスーパーコンピューターを構築するため、フランス政府と提携に関する覚書を締結した。2028年までに100万kW超の電力を供給するAIコンピューターの構築を目指している。この提携は、パリで開催されたAIアクションサミットの場で発表され、フランスのE. マクロン大統領のリーダーシップの下、E. ロンバール経済・財務・産業・デジタル主権相、M. フェラッチ産業・エネルギー相、フルードスタック社のS. マクラリー共同創業者兼社長が調印した。フランスは、このスーパーコンピューターに豊富な無炭素電源である原子力エネルギーを活用し、次世代AIモデルに比類のない計算能力を提供することを目指している。これにより、AIインフラ、エネルギーセキュリティ、デジタル主権の面で、フランスのリーダーシップを強化したい考えだ。フランスの原子力資産、送電網を管理する国営企業RTEの高速グリッドインフラ、AI人材、最先端のコンピューティング技術がバックアップする。マクロン大統領は、フルードスタック社との提携にあたり、「フランスは2017年以来、人工知能の分野で、人材を訓練し、研究を発展させ、ヘルスケア、宇宙、防衛、大規模言語モデルにおいてキープレーヤーを育成・強化しており、欧州をリードしている。原子力エネルギーは制御可能で安全かつ安定、脱炭素化されたエネルギー源であり、AIコンピューター能力の拡大に最適。フルードスタック社との100億ユーロ(約1.6兆円)の契約は、私の野心を具現化したもの。世界は加速し、イノベーションのための戦いが起きている。我々は減速してはならない」と語った。このプロジェクトは既に、金融業界から強い関心を集めており、プロジェクトのフェーズ1ではフルードスタック社が100億ユーロの初期投資を実施、2026年にAIスーパーコンピューターの稼働開始を予定している。フェーズ1では、最終的に50万個近くの次世代AIチップが搭載され、AIインフラ、AI研究、高性能コンピューティング分野において数千もの雇用創出が見込まれている。なお、AIアクションサミットの開催を機に、フランス電力(EDF)は2月10日、フランスで新たにデータセンターを開発するデジタル企業向けに、EDFのサイトアクセスへの関心表明の呼びかけを近日中に開始すると発表した。この取組みは、潜在的な投資障壁を取り除き、電化プロジェクトの開発を促進することが目的。EDFは関心のあるデジタル企業に、電力網に接続済みの使用可能な土地スペースを提供する計画で、これにより開発期間を数年間短縮できるという。EDFは既に、自社サイトで4つの工業用地を特定しており、利用可能な総設備容量として200万kWeを想定。2026年までにさらに2サイトで用地を確保予定である。
19 Feb 2025
1288
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2月10日、中小原子力事業者を対象に設備や運転資金を低利で融資する「原子力発電エコシステム(サプライチェーン)融資支援事業」の対象事業者を募集すると発表した。融資総額は1,500億ウォン(約157億円)。本事業に採択された企業は、8つの商業銀行を通じて、設備資金100億ウォン(約10.5億円)、運転資金10億ウォン(約1億円)を含む最大110億ウォン(約11.5億円)の融資を年1~2%の低金利で受けることができる。融資期間は最大10年(設備資金10年、運転資金2年)。昨今、生成AI(人工知能)による電力需要が高まる中、カーボンフリー電源である原子力発電の役割が注目されている。MOTIEは、大規模な政策資金の提供により、国内企業の競争力強化や原子力産業の持続的な成長を支えたい考えだ。今年は、新ハヌル3、4号機(PWR=APR1400、140.0万kW×2基)の建設加速や、エジプトやルーマニアなど海外からの受注拡大による企業の投資需要の増加などを考慮し、2025年度政府予算における中小融資支援事業の予算は前年比500億ウォン増の1,500億ウォンに増額された。MOTIEによると、同支援事業は2024年に開始されて以来、計69社・約1,000億ウォンの融資実績がある。韓国の原子力産業実態調査によると、原子力発電産業の売上高(単位:兆ウォン)は、21.6(2021年)、25.4(2022年)、32.1(2023年)と増加基調で推移している。
18 Feb 2025
556
スペイン国会(下院)の本会議で2月12日、中道右派の国民党(PP)が提出した、スペインの原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める非立法提案が、賛成171票、反対164票、棄権14票の僅差により、原案のまま可決された。スペインでは2018年6月の中道左派の社会労働党(PSOE)への政権交代を機に、原子力発電所を段階的に閉鎖・廃止する方針へと転換。現状の政策では、2027~2035年までに運転期限を迎える原子力発電所は順次閉鎖される予定となっており、スペインの原子力発電設備容量は2030年末までに約210万kWに縮小し(現在運転中の7基中5基が閉鎖)、2035年にはゼロとなる予定である。今回議会が承認した提案文書は、原子力発電の段階的廃止という国の決定を覆す一連の措置を実施するよう促すものであり、政府に以下の8項目を要望している。スペイン国内の既存の原子力発電所の運転期間を、技術的および経済的な観点から、欧州の規制、スペインの原子力安全委員会(CSN)の指針、および原子力発電事業者と協議して延長する。エネルギー移行における原子力の重要な役割を認識し、安全で安定した電力供給を保証し、電力市場価格の低下と温室効果ガス排出量の削減に貢献する原子力発電所の経済的持続可能性を確保する。スペインで運転中の7基の原子炉の閉鎖計画により影響を受ける自治体、地方自治体、地元当局、および産業界と対話する。国家市場競争委員会(CNMC)および電力系統運用者(REE)に対し、改訂された国家エネルギー・気候計画(NECP)に盛り込まれた新たな予測を考慮に入れつつ、予定されている原子炉の閉鎖が経済に与える影響、およびエネルギー安全保障への影響を評価する報告書の作成を要請する。スペインの原子力産業が、EUのネットゼロ産業法がもたらす課題に貢献し、機会を捉えることができるよう対策を講じる。気候変動とエネルギー移行に関する法律7/2021(2021年5月発効)の第10条を廃止する立法イニシアチブを導入する(この条項は、スペイン国内でのウランなどの放射性鉱物の探査、採掘、加工、および、これらの物質を取扱う核燃料サイクル施設に対する新規認可申請を禁止している)。原子力発電事業者との協議を通じ、第7次放射性廃棄物総合計画、統合国家エネルギー・気候計画(NECP)2023-2030、承認済みの原子力発電所の閉鎖手順を見直す。これらの検討事項を国家エネルギー安全保障専門委員会に提示し、同委員会がスペインのエネルギー安全保障戦略を上記の要点に沿って修正するよう要請する。スペインでは、PWR×6基、BWR×1基の計7基、合計出力739.7万kWeが運転中。1980年代前半~後半にかけて運転を開始し、現在、総発電電力量の約2割を原子力が占める。残りの約3割を火力発電(石炭、石油、大半がガス)、約5割を再生可能エネルギーで賄う。なお、最新のNECPでは、2030年には総発電電力量の81%を再生可能エネルギーで賄うことを想定している。スペインは日本と同様、国内のエネルギー資源が乏しく、1950年代から原子力開発を開始。当初は米国やフランスから技術を導入し、1970年代のオイルショックを契機に開発を加速、これまでに10基を開発してきた原子力先進国の一つである。
17 Feb 2025
1290
米アリゾナ州のアリゾナ・パブリック・サービス(APS)社は2月5日、同州にある他電力会社2社と、州内において原子力発電の追加導入を検討すると発表した。APS社はアリゾナ州最大の電力会社。石炭火力発電所の他、州都フェニックス市の西に位置するパロベルデ原子力発電所(PWR×3基、各141.4万kWe)を1986年から運転している。同州のソルト・リバー・プロジェクト(SRP)社、ツーソン電力(TEP)社とともに、同州の増大するエネルギー需要に対応するため、先進的な原子炉の導入可能性評価に共通の関心を持っている。APS社はSRP社およびTEP社と協力して、原子力発電所の新規建設を検討し、閉鎖予定の石炭火力発電所を含む、幅広い候補地を評価する取組みを主導する。3社は、原子力は信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギーであり、経済成長に貢献する、多様なエネルギーミックスの重要な構成要素であるとの認識で一致している。APS社のT. ゲイスラー社長は、「アリゾナ州のエネルギー需要が急激に増大する中、原子力発電所の新規建設には10年以上かかる。エネルギー源の選択肢の検討を今すぐ始めなければならない。他のエネルギー源とともに新たな原子力発電の実現可能性を評価していく」と語った。3社は追加の原子力発電所として、小型モジュール炉(SMR)と、可能であれば大型炉の設置を検討している。アリゾナ州で建設候補地の予備調査を開始するにあたり、すでに米エネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー実証局(OCED)および原子力エネルギー局(NE)による第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラム下の助成金を申請している。助成が承認されれば、3年間のサイト選定プロセスと、米原子力規制委員会(NRC)への事前サイト許可(ESP)申請に向けた準備が加速されることになる。3社は共同作業により、早ければ2020年代遅くにサイトを選定、2040年代初めには追加の原子力発電所の運転開始を計画している。
17 Feb 2025
806
スロベニアの国営スロベニア電力(GENエネルギア)は1月30日の記者会見で、クルスコ増設計画(JEK2プロジェクト)と小型モジュール炉(SMR)の開発に関する活動の現状と今後の取組みを発表。JEK2プロジェクトの技術的な実行可能性調査(TFS)の実施契約を米ウェスチングハウス(WE)社ならびにフランス電力(EDF)と締結したことを明らかにした。また、SMR発電所の設置については、1年以内に予備的なF/Sを実施するという。TFSはJEK2の建設と運転の技術的実行可能性評価を目的としており、具体的には技術的要件、欧州とスロベニアの法規制要件のほか、安全性やエネルギー、実施の側面から評価する。TFS実施の入札に参加したのは、米WE社と仏EDF。2社による見積総額は約830万ユーロ(13.3億円)で、TFSは今年の第3四半期に完了を予定している。WE社は、韓国の現代E&C(現代建設)社と協力してTFSを実施する。当初入札を予定していた韓国水力・原子力(KHNP)は、GENエネルギアに対し、このTFSへの入札に参加せず、JEK2プロジェクトの建設入札にも参加しないと通知。KHNPの決定は、現在の事業環境の評価と戦略的事業優先順位の変更に基づくものであるという。JEK2プロジェクトは、現在のクルスコ原子力発電所に隣接する場所で計画されている。2023年10月、最大240万kWeまたは2基の増設計画を掲げ、GENエネルギアは主契約者の候補として米WE社、仏EDF、韓KHNPの3社を挙げていた。クルスコ原子力発電所では現在、WE社製PWR、72.7万kWeが1基、1983年から運転している。WE社は運転と燃料供給のサポートを通じて、GENエネルギアと数十年にわたるパートナーシップを有する。GENエネルギアは2024年5月、出力100万kWe~240万kWe規模の増設プラントをスロベニアの電力システムへ接続した場合の安全性・安定性解析と経済性評価の結果を公表。電力網への影響の観点から、JEK2プロジェクトの最適な設備容量は最大130万kWeであり、同プロジェクトの建設コストは、100万kWeのプラント増設で93億ユーロ(1.5兆円)、165万kWe増設で154億ユーロ(2.5兆円)と見積もっている。GENエネルギアは、「質の高い透明性」を確保しながら、2028年までにJEK2プロジェクトの是非を問う国民投票を実施し、最終投資決定(FID)することを目指している。スロベニアでは当初、2024年11月に国民投票の実施を予定していたが、その合法性やプロジェクトの透明性を疑問視する環境団体や世論の批判を受け、国民投票の実施を中止している。同社は、EU各加盟国が策定する国家エネルギー・気候計画(NECP)に基づき、2040年までに大型炉、2050年までにSMR(設備容量約25万kWe)の導入を想定。2025年中に、SMRプロジェクトの予備的なF/Sを実施し、候補となる炉型と設置場所を特定、技術プロバイダーとの協議を実施したい考えだ。スロベニアでは現在、クルスコ原子力発電所が同国の総発電電力量の約40%を供給している。同発電所はGENエネルギアと隣国クロアチアの国営電力会社のHrvatska elektroprivreda(HEP)が共同所有。スロベニアの電力需要は、2050年までに倍増することが予想されているが、2033年以降は総発電電力量の約3分の1を供給する火力発電所を閉鎖する計画だ。2043年にはクルスコ発電所の運転期間(60年)も満了する。
14 Feb 2025
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インドのN. シタラマン財務大臣は2月1日、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表した。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1億kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えだ。政府報道情報局(PIB)は2月3日、N. モディ首相名で同連邦予算における原子力発電に関する声明を発表した。声明では、原子力開発がエネルギーの安定供給確保や、化石燃料依存の低減に寄与すると述べ、自身が掲げる「先進インド構想(ヴィクシット・バーラト((バーラトは、ヒンディー語で「インド」の意味。)))」の目標に合致すると強調。長期的なエネルギー移行戦略の一環として、原子力を大幅に推進し、エネルギーミックスの主要な柱とする方針を示した。同声明のなかで、政府は今後、ヴィクシット・バーラトに向けた原子力エネルギーミッションを推進し、民間部門と連携して、以下の目標の達成をめざすとしている。- バーラト小型原子炉(BSR)の設置- バーラト小型モジュール炉(BSMR)の研究開発- 原子力エネルギーに関する新技術の研究開発このうち、BSRは22.0万kWの加圧重水炉(PHWR)で、従来のPHWRを民間向けに改良したものとされる。鉄鋼、アルミニウムなどのエネルギー集約型産業の拠点近傍に設置し、脱炭素化を支援する狙いがある。計画では、民間事業者が土地や資本等を提供し、インド原子力発電公社(NPCIL)が現行の法的枠組みのもとで設計や運転、保守等を担う。民間によるBSRの建設に向け、NPCILは2024年12月31日付けで提案依頼書(RFP)の募集を既に開始している。さらに新たな動きとして、インドのコングロマリットの「ナヴィーン・ジンダル・グループ(Naveen Jindal Group)」がこのほど、原子力企業のジンダル・ニュークリア・パワー(Jindal Nuclear Power)社を設立し、原子力分野への参入を発表したことが、複数のメディアで報じられている。それによると、ジンダル・ニュークリア社は、今後20年間で1.8兆ルピー(約3.2兆円)を投じて、BSRを含む先進技術を活用し、1,800万kWの原子力発電所を建設・所有・運転する計画だ。同社は、インドで初めて原子力発電分野に投資する民間企業となる。1962年原子力法は、民間部門による原子力発電参入を禁止しており、原子力省(DAE)傘下のNPCILとバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI、高速炉の建設と運転の事業者)の2つの国営企業に限定されていた。しかし、2015年の法改正により、インド国営火力発電会社(NTPC)のような政府系公社がNPCILと提携が可能となっていた。今回のジンダル・ニュークリア社の設立は、インドにおける原子力発電の新たな時代の幕開けを示している。
14 Feb 2025
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ベルギーでは2月3日、北部オランダ語圏の独立を主張する中道右派「新フランダース同盟(N-VA)」主導の5党連立政権による新内閣が、昨年6月の下院総選挙から7か月以上を経て発足。新首相に選出された、B. ドゥ・ウェイバ氏(N-VA所属)は2月4日、連立政権の組閣後に初となる議会(下院)での政府声明を発表。エネルギー供給強化の重要性から、再生可能エネルギーと原子力からなる新しいエネルギーミックスを追求し、原子力の段階的廃止政策の撤廃を表明した。合意された連立協定の中で、将来のエネルギーミックスにおいて重要な役割を果たすのは、カーボンニュートラルなエネルギー源としての原子力であると明記されている。具体的には、持続可能性、安全性、コスト最適化を条件に、電力ミックスにおける原子力の設備容量として400万kWを目指すとし、ベルギーで原子力産業を再興し、新規建設プログラムに着手するとしている。短期的には既存の原子力発電所を最大限活用し、長期的には新しい原子力発電の建設に投資するという。政府は、2003年1月31日付の法律が定めた2025年までの脱原子力と新増設禁止に関するすべての条項を廃止し、短期的な施策として、ドール4号機(PWR、109万kW)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kW)について、少なくともさらに10年の運転期間延長を掲げ、原子力事業者らとの協議を開始する考えだ。政府は、安全基準を満たした既存炉の運転延長に必要なあらゆる措置を講じ、10年ごとに定期検査を実施。この検査で問題がなければ、さらに10年の延長を実施する。加えて、原子力の安全要件に妥協することなく、新しい原子炉の建設を促進していくとしている。また、欧州原子力アライアンスの中でより積極的な役割を担うため、オブザーバーから正式メンバーになると表明。SMR導入については、欧州共通の型式認証の導入と許認可手続きの短縮を提唱し、原子力産業界と協力して、ベルギー初のSMRの開発、建設、試運転を支援するための具体的な計画を策定するとしている。ベルギーでは現在、ドール発電所で3基、チアンジュ発電所で2基、2サイトで原子炉が稼働中。いずれもPWRを採用し、計5基の合計電気出力は411.8万kWである。設備利用率は90%前後と良好であり、原子力発電量のシェアは約40%(2023年実績)。なお、脱原子力に関する法律に基づき、ドール3号機は2022年に、チアンジュ2号機は2023年に閉鎖されている。今回、運転期間延長の対象となる、ドール4号機とチアンジュ3号機については、両機とも1985年に運転を開始。40年目となる2025年に閉鎖が予定されていたが、エネルギーの安定供給に懸念が生じたため、政府は2022年3月にこれら2基の運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定。事業者であるエンジー社とは2023年7月、運転期間の延長の最終合意に向けて交渉していくことで枠組み合意し、12月には、2035年11月まで運転期間を10年延長する計画の諸条件について最終合意に達した。これにより、両機は2025年に一旦運転を停止した後、最大20億ユーロを投じてバックフィット作業等を実施し、2025年11月の運転再開を目指すことにしていた。
13 Feb 2025
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「第7次エネルギー基本計画」が2月18日、閣議決定された。これに先立ち、原子力委員会は2月12日、同計画案への見解を発表している。同委による見解は、2023年2月に取りまとめた「原子力利用に関する基本的考え方」をベースとしている。総論として、「福島の復興・再生と原子力政策」、「脱炭素電源としての原子力発電の位置付け」を標榜。原子力関係者に対し、「原子力災害の反省と教訓を決して形骸化せずに、放射線リスクへの懸念を含む不信・不安に対して真摯に向き合い、その払拭に向けた取組を一層進め、社会の信頼回復が引き続き重要」と、訴えかけている。さらに、原子力エネルギー利用について、「再エネか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、ともに最大限活用していくことが極めて重要である」と明記されたことを評価。その上で、「2040年に向けた政策対応」として、 (1)原子力政策の出発点-福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた不断の安全性追求 (2)立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション (3)核燃料サイクルの推進 (4)円滑かつ着実な廃炉の推進 (5)高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化 (6)既設炉の最大限活用 (7)次世代革新炉の開発・設置 (8)持続的な活用への環境整備、サプライチェーン・人材の維持・強化 (9)国際的な共通課題の解決への貢献――の各論について、記述内容を評価し見解を述べている。既設炉の再稼働も進み、50年超運転プラントも出てきた。これに関し、「トラブル低減に向けた技術的な取組を強化し、既設炉における設備利用率を向上させるべき」と期待。次世代革新炉の開発に向けて、原子力委員会では最近の公開会合で大手メーカー3社より、ヒアリングを行っているが、実用化に向けた長期間のリードタイムを考慮し「国は具体的なプロセスを明確にすべき」と要望。さらに、サプライチェーン・人材の維持・強化に関し、「原子力サプライチェーンプラットフォーム」を通じた事業継承支援、部品・素材の供給途絶対策などの重要性を強調。OECD/NEAなどの国際機関が取り組む原子力分野における女性活躍支援にも触れ、「日本の原子力産業においても、多様な人材が活躍できるよう、ジェンダーバランスの改善に向けた取組を含め、各世代、性別、分野の能力が発揮できる環境を整備すること」との期待を述べている。
21 Feb 2025
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鹿児島県立霧島高等学校は、霧島温泉駅から徒歩8分の、霧島連山のふもとにある機械科と総合学科を併設した、小規模ながら特色ある学校だ。1学年は約40名、現在の全校生徒は104名。機械科の生徒は学年によって9〜18名と変動するが、毎年約10名が入学し、ものづくりの技術を学んでいる。同校校長の横山謙二先生は、「規模は小さいかもしれないが、自慢の先生や生徒が揃っている」と誇らしげに語る。霧島高校の機械科では、福井南高等学校からの声がけをきっかけに、クリアランス金属の活用をテーマにした教育活動をスタートさせた。新たに独自の取り組みを始めた霧島高校の姿を追った。地元で考える資源活用:「クリアランス金属」をどう活かすか霧島高校では、クリアランス金属の可能性を探る実践的な学習を進めている。 その一環として、地元の製造業との連携も視野に入れながら、金属の加工や再利用について学ぶ機会を設けた。「金属を溶かして加工するには、どんな技術が必要か?」「鹿児島にはどのような鋳造・金属加工の企業があるか?」 生徒たちは、こうした疑問を持ち、地域産業と結びつけながら学びを深めている。しかし、クリアランス金属の利用には社会的な理解が不可欠である。再利用には安全基準が設けられているものの、「放射性物質由来」というイメージが社会に与える影響は小さくない。「データでは安全と示されているが、人々の感情はどうか?」「私たちが地域にこの金属を使った製品を設置しようとしたら、受け入れられるのか?」こうした問いを持ち、霧島高校の生徒たちは、「科学的根拠」と「社会的合意」の両面から課題に取り組んでいる。今回の取り組みの代表格は、霧島高校3年生の東條誠くん。「最初は単に『原発由来の金属』というイメージだけだったんです。でも、実際に触れてみると、単なる“危ないもの"ではなく、どう活用するかが大事なんだと気づきました。 放射線とは何か? クリアランスレベルとは? そうしたことを知るうちに、単なる賛成・反対では語れない問題だと分かりました。」 (東條くん)東條くんは、今春から海上自衛隊に入隊する予定だ。「海自に入っても、今回の経験をみんなに伝えたいし、もっと原子力発電所を見学してみたいと思っています。」(同)技術の習得だけでなく、考え方にも変化が生まれた。「このプロジェクトを通じて、“原発は危ない"という単純な考え方から、“じゃあその後の処理はどうするのか"という視点に変わりました。つまり、原発の是非だけでなく、“出たものをどうするか"という考え方が大事だと実感しました。」 (同)社会的合意形成への挑戦:「地層処分」問題をどう考えるか霧島高校では、今回のクリアランス金属の活用以前から、放射性廃棄物の地層処分問題などエネルギー教育にも力を入れている。この授業の中心にいるのが、冨ヶ原健介先生だ。冨ヶ原先生の指導のもと、生徒たちは科学的視点だけでなく、倫理や政策決定の側面にも目を向け、総合的な判断力を養っている。「社会の中で合意形成がどのように行われるのかを、生徒たちに体験してもらいたい」と、冨ヶ原先生は、「誰がなぜゲーム」と呼ばれるシミュレーションを授業に取り入れた。このゲームでは、「国民」「地域住民」「政策決定者」などの役割を生徒が演じ、それぞれの立場から地層処分問題に向き合う。「どうして廃棄物の処分のことをきちんと考えずに、原発を使い始めたのか?」ある生徒の言葉に、冨ヶ原先生は「なるほど、鋭い指摘だ」と頷いた。そして語りかける。「でも実際に周りを見てごらん。何か新しいことを始めると、必ずその後から問題が出てくるものなんだ。私たちはコロナ騒動でそれを経験したばかりだよ」技術の発展は、常に未知の課題を伴う。冨ヶ原先生は授業の中で、「意思決定のプロセスを理解することが重要」だと強調している。単なる賛否ではなく、どのように社会的な合意を形成し、持続可能な解決策を見出していくかを生徒たちは学んでいる。生徒が伝える技術:「浮かぶボール」の工作指導霧島高校の生徒たちは、学んだ技術を次世代へとつなぐ活動にも取り組んでいる。小学生に科学の面白さをどう伝えるか? その試みの一つが、小中学生を対象にした「浮かぶボール」工作指導だ。これは、アルミ空き缶とペットボトル、ストローを使い、息を吹きかけることで正二十面体のアルミのボールが浮き上がるというシンプルな実験だが、空気の流れや物理の原理を体感できる教材となる。指導を通して生徒たちは、自分が理解していることを“相手に伝える”難しさを実感するのだという。冨ヶ原先生は、「技術を学ぶことはもちろん重要だが、それ以上に、それを社会とどうつなげるかが大事だ」と語る。この経験を通じて、生徒たちは「科学の面白さを伝えるスキル」「相手の理解度を考えながら説明する力」といったコミュニケーション力を育んでいく。先ほどの東條くんも「浮かぶボール」の工作指導を経験し、「教えることの難しさ」を実感したという。「最初は、ただ説明すればいいと思っていました。でも、小学生の理解度は一人ひとり違う。ある子には伝わるけど、別の子には全然伝わらない。 どう説明すれば分かりやすいか、相手に合わせた伝え方を考えることが大事だと学びました」(東條くん)そして指導を通じて、自分自身の成長も感じたという。「小学生って本当に純粋で、『これは何?』『なんでこうなるの?』と、食い気味に質問してくるんです。 それに答えていくうちに、自分もより深く理解できるようになった気がします」(東條くん)霧島高校の挑戦が示す 教育の可能性今回の取り組みを通じて、霧島高校の生徒たちは、「科学技術を学ぶだけでなく、それを社会にどう活かすか」「賛否が分かれる問題について、どのように合意形成を進めるか」━━を実践的に学んでいる。単なる知識の習得ではなく、「地域の課題に対して、自分たちがどう関われるか?」を考える姿勢が養われているのが、霧島高校の教育の大きな特徴だ。今後、この学びの成果がどのように社会へ広がっていくのか、注目していきたい。
21 Feb 2025
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原子力規制委員会は2月19日の定例会合で、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に係る審査及び検査の改善策について了承した。〈資料は こちら〉これまでの審査の実績や実施計画の現状を踏まえて、他施設での実績を踏まえ審査に係るガイドを策定するなど、効率的・効果的な安全規制を実施するのがねらい。 これに先立ち、福島第一原子力発電所の廃炉に係るリスク低減などについて審議する同委の「特定原子力施設監視・評価検討会」で、2月17日、原子力規制庁は、東京電力へのヒアリングも実施し、改善要望事項を聞いた上、リスク情報を活用した合理的な手法の導入などを含む改善策を整理し説明。 それによると、審査に係るガイドには、これまでの技術会合等で議論されてきた認可基準適合性を確認する方法の具体例や、審査の実績を踏まえた実施計画の記載事項、「運転上の制限(LCO)」の名称及び設定すべき項目の選定の考え方を盛り込むとされた。 検査関係の改善については、溶接検査を使用前検査の一部として実施、また過去に実績のある設備でリスクが低いものは使用前検査を不要とするなど合理化を図ることが改善方針のポイント。 その中で、19日の定例会合では、他施設での原子力規制検査の定着を踏まえた「短期的な改善策」について規制庁より諮られ、了承された。安全にフォーカスし改善活動を事業者と規制側の双方で行う原子力規制検査の実績等を踏まえ、有効な評価手法の導入をさらに進め、監視領域を設けて効果的かつ効率的な監視を行うことや、検査指摘事項の評価に重要度評価を導入するなど、合理的な検査の手法に改善していくもの。一方で、福島第一原子力発電所の廃炉を担務する伴信彦委員は、これまでも震度計の取扱いで「不備を知っていて対応しなかった」ことなどに対し厳しい指摘をしてきた。今回了承された検査指摘事項の重要度評価では、当面のすべての指摘事項に対する「重要度評価・規制措置会合(SERP 会合)」や、意図的な不正行為等に対する深刻度評価も導入することとなっている。規制庁は今後、審査ガイド及び検査の枠組みに係る規則等の改正に関する検討を進め、2025年度内に順次、改正案等を規制委に付議する方針だ。 2月17日に行われた検討会に有識者委員として出席した大熊町商工会会長の蜂須賀禮子氏は、これまでも議論されてきた福島第一原子力発電所におけるリスク低減マップなどを踏まえ、今後の原子力規制検査に関し、通常の原子力施設とは異なる特性に言及した上で、「不思議に思ったことがあればまずは立ち戻るべき」と述べ、工程ありきではなく総合的に安全が確保されることを、地域の立場から要望している。
20 Feb 2025
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東京で2月13~16日、高校生を対象とした科学リテラシー向上へ向けたユニークな活動が紹介された。京都大学複合原子力科学研究所の中村秀仁助教が主導する「Nプロジェクト」が、TIB(Tokyo Innovation Base、東京・千代田区)で開かれたイベントに出展したもの。「Nプロジェクト」は、中村助教の発案で2023年春から始動した取り組みで、大阪高等学校の約2,000人の生徒を対象に、文系・理系を問わず科学リテラシーの向上を目指している。スマホアプリを活用した参加型授業など、生徒たちが主体的に取り組めるよう、さまざまな工夫が凝らされている。同プロジェクト最大の特徴は、生徒一人ひとりが学んだことをスケッチブックにまとめ、市民に向けて発表する機会を多く設けているという点にある。アウトプットを繰り返すことで、知識の定着を図るためのものであるが、発表の場では、熱心に説明する子供たちの姿に関心を持ち、足を止める女性が多く見られたという。この取り組みは、次世代層だけでなく、女性層における先端科学の理解促進にもつながっていると、中村助教は指摘する。このイベントは、8月14~19日に大阪・関西万博会場で開催される「わたしとみらい、つながるサイエンス展((産官学連携研究プロジェクトの成果や活動を国内外に広く発信するイベント。8月14~19日の6日間、大阪・関西万博の会場で開催予定。))」(主催:文部科学省)の展示を、一足先に体験できる場として企画されたもの。生徒たちは、「身の回りの放射線」や、「医療分野で活用されている放射線」など、さまざまなテーマについてまとめたスケッチブックを手に持ち、来場者に向けて発表した。14日には、阿部俊子文部科学大臣もブースを訪問。中村助教より参加型授業を模した2択クイズ形式でプロジェクトの紹介を受け、興味深そうに耳を傾けていた。大阪高校2年生の坂部偉吹さんは、Nプロジェクトを通して、「電球はどのような仕組みで光るのか」など、日常の中で疑問を見つけ、それを調べる習慣がついたと話す。また、そうして学んだことを人に伝えることの楽しさを実感し、積極的に発表の場に参加するようにしているという。同校1年生の山守若葉さんは、今回のイベントでの発表を通じて、来場者からたくさん褒めてもらうことができ、「嬉しい、楽しい、といったプラスな気持ちでいっぱい」と笑顔で感想を話した。中村助教は、同サイエンス展への参加を通じ、「生徒たちには、多くの方と対話し、社会とのつながりを感じると共に、自分たちの取り組みが社会に通用する素晴らしいものであることを実感してほしい」と期待を寄せた。
20 Feb 2025
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電気事業連合会の林欣吾会長は2月18日、同日閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」、「GX2040ビジョン」、「地球温暖化対策計画」について、「わが国のエネルギー政策の強い決意が示されており、大変意義のあるもの」とするコメントを発表した。エネルギー基本計画の改定は、2021年10月以来となるが、「エネルギー安全保障と安定供給を第一に据えた上で、脱炭素に向けた野心的なビジョンの完遂と様々な不確実性がある中で経済成長を目指すため、使える技術はすべて活用するという現実的な方針が提示された」ものと、高く評価している。原子力については、2040年以降の設備容量減少を見据え、「いずれは新増設が必要」と標榜。サプライチェーンや技術・人材を維持確保するため、開発目標の設定や、廃炉を決定した発電所を有する事業者のサイト内での建て替えに限定しない開発・設置の必要性を訴えている。
19 Feb 2025
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「第7次エネルギー基本計画」が2月18日、閣議決定された。エネルギー基本計画の改定は、2021年10月以来のこと。現行計画の策定以降、徹底した省エネ、安全性の確保を大前提とした原子力発電所の再稼働に向けての取組が進展。海外では、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、エネルギー安全保障に係る地政学的リスクも高まってきた。こうしたエネルギーをめぐる国内外の情勢変化を踏まえ、総合資源エネルギー調査会では、2024年5月よりエネルギー基本計画の改定に向け検討に着手。経済団体や消費者団体などからのヒアリング、電源別のコスト評価などを踏まえ、同年12月に原案を提示。その後、1か月間のパブリックコメントに付せられた。新たなエネルギー基本計画では、「福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じ取り組む」ことをあらためて原点に据えた上で、「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)を基本的視点として掲げている。原子力に関しては、「優れた安定供給性、技術自給率を有し、他電源とそん色ないコスト水準で変動も少なく、一定の出力で安定的に発電可能」とのメリットを強調。立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションの深化・充実、バックエンドプロセスの加速化、再稼働の加速に官民挙げて取り組むとしている。東日本大震災以降策定の基本計画で記載されてきた「原発依存度の可能な限りの低減」との文言は削除。新増設・リプレースについては、「廃炉を決定した原子力を有する事業者の原子力発電所サイト内での、次世代革新炉への建て替えを対象」に具体化していくとされた。また、今回のエネルギー基本計画の裏付けとして、2040年のエネルギー需給見通しが「関連資料」として示されており、発電電力量は1.1~1.2兆kWh程度、電源構成は、再生可能エネルギーが4~5割程度、原子力が2割程度、火力が3~4割程度などとなっている。武藤容治経済産業相は2月18日の閣議後記者会見で、パブリックコメントで原子力の推進に慎重な意見も多かったのではとの問いに対し、原案に「安全性やバックエンドの進捗に関する懸念の声があることを真摯に受け止める必要がある」との追記を行ったなどと説明。加えて、合計で4万件を超える意見が寄せられたことについて、「国民の強い関心の現れ」と受け止め、引き続き国民生活や経済活動の基盤となるエネルギー政策を着実に進めていく考えを強調した。同日、新たなエネルギー基本計画とともに、地球温暖化対策計画も含めた2040年頃の日本の産業構造を標榜する国家戦略パッケージ「GX2040ビジョン」も閣議決定されている。
18 Feb 2025
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関西電力は2月13日、「使用済燃料対策ロードマップ」の見直しを発表した。核燃料サイクルの推進に向け、使用済み燃料の搬出を「確実に進めていく」としている。同社では、今秋にも50年超運転に入る高浜発電所2号機が2023年10月に営業運転を再開しており、計7基の原子力発電プラントが新規制基準をクリアし稼働中だ。そのうち、高浜発電所3・4号機では、使用済み燃料を再処理して得られるMOX燃料を使った発電(プルサーマル)が行われている。同月、関西電力は、使用済みMOX燃料の再処理実証研究のため、2027~29年度に高浜発電所の使用済み燃料約200トンをフランス・オラノ社に搬出することを含む「使用済燃料対策ロードマップ」を策定した。今回のロードマップ見直しは、関西電力として、六ヶ所再処理工場の早期竣工(2026年度中を目標)に向けて、審査・検査に対応する人材をさらに確保する必要性を第一に掲げた上で、2027年度からの再処理開始、2028年度からの使用済み燃料受入れ開始を目途に、2030年度までに使用済み燃料198トン(100万kW級PWR10年間運転分にほぼ相当)を搬出するとしている。また、使用済みMOX燃料の再処理実証研究に向け、2023年策定のロードマップで「フランスへの積み増しを検討」とされていたが、データの充実化が必要となったことから、さらに200トンの搬出容量枠を確保し、そのうち2030年度より100トンを搬出することとされた。関西電力は2021年2月に、福井県に対し、使用済み燃料の県外への中間貯蔵について、「2023年末までに計画地点を確保できるまでの間、美浜3号機、高浜1・2号機の運転は実施しない」と報告したが、2023年10月策定のロードマップで、使用済みMOX燃料のフランスへの搬出、乾式貯蔵施設の設置など、核燃料サイクルの取組を着実に図っていくこととし、県から容認を受けていた。乾式貯蔵施設に関しては、「発電所からの将来の搬出に備えて発電所構内に設置するもの」として、2024年2月に、美浜、高浜、大飯の各サイトにおける設置計画について、立地自治体に対し「事前了解願い」を提出している。 見直し後のロードマップに従い、使用済み燃料の貯蔵量は、2032年度末にピークに達するものの、六ヶ所再処理工場とフランスへの搬出により、管理容量以下で推移するとみられている。
14 Feb 2025
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IHIは2月5日、ルーマニア南部ドイチェシュテイの石炭火力発電所跡地に計画されている米国ニュースケール社製SMR(小型モジュール炉)建設プロジェクトにおいて、原子炉建屋の壁となる鋼製モジュールのモックアップ製作を、同プロジェクトを共同推進するサムソンC&T社より受注したと発表した。〈IHI発表資料は こちら〉同プロジェクトは、石炭火力発電所の跡地にSMR6基からなる「VOYGR-6」を建設するもの。海外向けPWRの鋼製モジュールを供給した実績のあるIHIは、今回のモックアップ製作により、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイで13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)の建設を計画。現在、サイト準備が進められている。鋼製モジュール製作の工程を検証することで、建設工事の工期短縮にも期待を寄せている。モックアップ製作は、同社横浜工場で行い、2025年4月までに完了する予定。IHIでは、2021年度に米国ニュースケール社に出資を決定。SMR実現に向けた技術開発に取り組んでいる。長年培ってきた原子炉の主要容器の製作経験と技術力を活かし、今後もSMRを始めとする原子力発電事業を通じ、カーボンニュートラルの実現に貢献していくとしている。同プロジェクトは、ルーマニアの国営原子力発電会社であるニュークリアエレクトリカ(SNN)と民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社の合弁企業であるロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社を中心に進められている。「VOYGR」は、蒸気発生器と圧力容器の一体化により、小型かつシンプルな設計で安全性を向上させている。ルーマニアでは、事業計画段階から、建設を見据えた基本設計の契約締結など、進捗があったほか、新興国としてガーナでも建設計画の動きがある。
13 Feb 2025
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新潟県の花角英世知事は2月12日の定例記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に言及した。県の次年度予算案他について説明した上で、記者団からの質問に応えたもの。資源エネルギー庁では、昨年12月10日の十日町市を皮切りに、柏崎刈羽7号機の審査進捗をとらえ、「THINK!ニッポンのエネルギー」と題し、日本の未来のエネルギーについて考える地元説明会を行った。同機の新規制基準に係る審査は2017年12月に原子炉設置変更許可に至っている。その後に発覚した核物質防護事案に伴う追加検査および東京電力に対する適格性判断の再確認も2023年12月に完了した。2024年に入ってからは、IAEA専門家チームによる視察、東京電力や新潟県による説明会が開催されており、再稼働に向けて、現在、県の判断が焦点となっている。会見の中で、花角知事は、県内28市町村で開催されたエネ庁による説明会が、2月7日の湯沢町で終了し、今後の対応について問われたのに対し、「報告を逐次受けているわけではないが、国が前面に立って地元の理解を得ようとすることの現れ」と、一定の理解を示した。一方で、「時間と場所を限定した説明会はやはり難しい」とも述べ、住民理解を集約していくことの困難さを示唆。再稼働の判断材料ともされる県の技術委員会からは、間もなく最終報告書が提出される見込みだが、「受け取ってからしっかり話を聞く」と、予断を持たない姿勢を示した。知事は、住民避難の課題に関し、先に原子力規制委員会の検討チームで取りまとめられた報告書案にも触れ、「順次、国との協議の中で示されていく」と述べた上で、再稼働の判断について具体的な時期は示さなかった。住民避難に関しては、資源エネルギー庁、内閣府(原子力防災)、国土交通省、新潟県による「原子力災害時の住民避難を円滑にするための避難路の整備促進に向けた協議の枠組み」会合が昨秋より行われている。
12 Feb 2025
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日本原子力研究開発機構は2月4日、花崗岩、堆積岩の岩盤をそれぞれ対象とした地下研究施設となる瑞浪超深地層研究所、幌延深地層研究センターを活用し、地下の未知微生物の働きを解明したと発表した。〈原子力機構発表資料は こちら〉原子力機構はこれまで、鉱山跡地なども利用し水文学的見地などから地質調査に取り組んでおり、他組織との共同も得たその成果は高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発にも貢献。その中で、地下深部には豊富な生命体が存在することが近年の研究によりわかってきたものの、そこに生きているごく微小サイズの「微生物」の働きは解明されていなかった。本研究では、地下に生息する微生物群集を「微生物コミュニティ」と称し、数年間にわたりその代謝反応を網羅的に解析。深度140~400mの地下環境から地下水を定期的に採取し、地下水中の微生物が持つ遺伝子情報を「メタゲノム解析」と呼ばれる手法を用いて継続調査した。その結果、花崗岩環境からは、細菌群および古細菌群が高い割合で存在し、深度が深くなるにつれ、その割合が減少する傾向が示された一方、堆積岩環境では、細菌群の検出割合は非常に低いものの、古細菌群の中で例外的にアミノ酸や脂質などを合成するものが約90%存在することが示され、花崗岩と堆積岩とで「微生物コミュニティ」の組成が異なることがわかった。また、幌延の堆積岩地下では、鉄、有機物やCO2が豊富なことに起因する微生物にとって有用な代謝反応に伴い、「水素やCO2などの地下環境に共通した物質が主なエネルギー源として利用されている」と述べている。高レベル放射性廃棄物の地層処分は地下300m以深に施設を建設することとなっている。原子力機構では、「微生物コミュニティの特性から、地下水の流れが非常に遅い環境においては、地下環境が長期にわたって安定している」と結論付けている。今後、地層中での放射性核種の移行解明に向け、微生物の遺伝子情報も踏まえ、地層処分システムの安全性に対する信頼度向上を図るとともに、地下水汚染などの環境問題の解決や、地下微生物研究が、抗生物質や酵素などの新しい医薬品・食品の開発に役立つ可能性も見据え、幅広い分野における発展や社会的に重要な問題の解決に貢献していくことを期待している。
05 Feb 2025
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資源エネルギー庁は2月3日、小学校高学年を対象とした「かべ新聞コンテスト」の2024年度優秀作品を発表した。エネルギー教育推進事業の一環として継続的に行われているもので、「わたしたちのくらしとエネルギー」をテーマとする自由研究を「かべ新聞」の形にまとめた作品を募り審査。最優秀賞は、佐藤未琴さん(札幌市立新川小学校6年)の「Shift in thinking 先駆者から伴走者へ」、海津奏太さん(新潟市立濁川小学校5年)の「生き物と僕たちの未来新聞」が受賞した。佐藤さんは、かつて地元の北海道に多く存在した炭鉱に着目。自身の祖父も三笠市の炭鉱で働いていたという。石炭は、戦後日本の高度経済成長を支えてきたエネルギーの「先駆者」といえるが、作品ではまず、「石油の需要に押され炭鉱は閉山し、今は大きな立坑跡を残しているだけ」と、問題提起。将来のエネルギーを見据え、「化石燃料から排出される温室効果ガスの影響もわかり始めて、化石燃料以外のエネルギー資源を取り入れて電気を作るようになりつつあります」と、エネルギー利用と環境保全の関連にも触れた上で、エネルギー源別の「S+3E」に係る現状を調べ上げ作表した。石炭については、家族の保管していた石炭試料からの話をもとに関心を深め、「ほかの化石燃料にくらべて安い」と、経済効率性のメリットをあげる一方で、「CO2排出量が多い」といった環境適合性の課題も指摘。原子力については、「長時間安定的に発電できる」、「発電時にCO2を排出しない」と述べている。今の小学生はもう福島第一原子力発電所事故の発生時を知らない世代だ。佐藤さんは、「国内で調達できるエネルギー資源を考える」と、エネルギー自給の重要性を強調。その中で、原子力発電については、「課題も多く不安に思う人もいると思います。私は、こわがるだけでなく正確な知識を学んでいきたいと思います」と、さらに学んでいく意欲を示している。かべ新聞では、結論として、「2030年のエネルギー資源は、もうしばらく化石燃料の力を使って発電するようです」と、多様なエネルギー需給の選択肢を考え続けていく必要性を示唆。佐藤さんは、「化石の博物館」と呼ばれる三笠市立博物館を見学し、炭鉱跡地でCCUS(CO2回収・有効利用・貯留)の実証が行われていることを知る。「炭鉱跡をもう一度」との見出しを掲げ、「昔、エネルギーを手に入れるために使われた場所が、今度は別の方法で利用できるのはすごいこと」と述べ、今でも石炭はエネルギーの「伴走者」であることを強く訴えている。本作品に対し、審査委員長の講評では、「化石燃料の利用の変遷を踏まえながら、現在のエネルギー利用を捉え、その上で未来を考えるというしっかりした構成だ」と評価している。学校賞を受賞した札幌市立桑園小学校からは6作品が入賞。食とエネルギーの関係や、雪を利用したエネルギーに係る研究もあった。原子力発電所の立地市町村では、美浜町エネルギー環境教育体験館「きいぱす」の支援による美浜町立美浜中央小学校・同美浜東小学校の生徒の共同作品が特別賞を受賞した。
04 Feb 2025
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福島第一原子力発電所2号機における燃料デブリの非破壊分析結果が1月30日に発表された。〈原子力機構他発表資料は こちら〉燃料デブリは2024年11月、試験的取り出し作業により採取されたもので、日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所が受入れ。日本核燃料開発などの分析機関とともに、今後の本格的な燃料デブリ取り出しの具体的検討に向け、詳細分析が開始されていた。〈既報〉受け入れた燃料デブリサンプルは、不均一で全体的に赤褐色を呈しており、表面の一部に黒色、光沢の領域が認められ、大きさは約9mm×約7mm。これまでの分析で、全体的に形状および計測値が均一ではなく、空隙が広く分散し、ウランなどの燃料成分が含まれることがわかっている。今回、原子力機構が新たに発表したのは、SEM-WDXと呼ばれる手法を用いた元素分布の面的分析結果。燃料デブリサンプル表面上の5視野を選定し、元素分布の測定を行ったところ、どの視野においてもウランおよび鉄が観察され、ウランがサンプル表面に広く分布しているものと考察している。この他、燃料被覆管・構造材などの成分とみられるジルコニウム、クロム、ニッケルや、海水由来とみられるケイ素、カルシウム、マグネシウムも観察された。今後、半年から1年程度をかけ、破壊分析も実施し、燃料デブリ内部の組成、結晶構造などの性状を詳細に評価した上で、分析結果の取りまとめを行う計画だ。原子力機構では1月22日までに、燃料デブリサンプルを破砕し、微小結晶構造の分析のため、大型放射光施設「SPring-8」に輸送。同機構原子力科学研究所(東海村)も化学分析を行う。燃料デブリ分析に向けた取組は、特設サイトで公開している。東京電力は今春にも追加の燃料デブリ採取に着手する予定。
31 Jan 2025
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