国内NEWS
25 Dec 2024
266
核燃料サイクル協議会が開催
海外NEWS
25 Dec 2024
151
ルーマニア チェルナボーダの運転期間延長に加/伊/韓企業が協力
海外NEWS
25 Dec 2024
176
米オクロ社 DC企業と長期電力供給で合意
海外NEWS
24 Dec 2024
921
米テラパワー 主要機器の供給者を決定
国内NEWS
23 Dec 2024
845
島根2号機が発電再開 BWRとして2基目
海外NEWS
23 Dec 2024
628
フランス フラマンビル3号機が送電開始
海外NEWS
23 Dec 2024
373
米貿易開発庁 ブルガリアの原子力プロジェクトへ助成
国内NEWS
20 Dec 2024
513
NUMO 環境イベント「エコプロ」に出展
ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は12月19日、同社が運転するチェルナボーダ原子力発電所の1号機(CANDU、70.6万kWe)の30年間の運転期間延長に向けた改修工事に係る、エンジニアリング、建設、調達(EPC)契約を、カナダ、イタリア、韓国企業のコンソーシアムと締結した。契約額は19億ユーロ(約3,109億円)。SNNと、カナダのアトキンス・リアリス社、イタリアのアンサルド・ヌクレアーレ社、カナダ商業公団(CCC)、韓国水力・原子力(KHNP)の4社からなるコンソーシアムとの契約。EPC契約の主な内容は、具体的な設計・施工内容の策定、設備・資材の調達、改修工事の実施、および改修工事に必要なインフラの構築である。CANDU炉の技術管理者であるアトキンス・リアリス社が原子炉システムを担当し、アンサルド・ヌクレアーレ社がタービン発電機システムの設計と機器調達、KHNPは主要設備の交換や放射性廃棄物貯蔵施設などの主要インフラ施設の建設を担当する。1号機の運転期間は30年間延長した2061年までを想定。1号機の運転停止は2027年に予定されており、改修プロジェクトの完了は2030年の見込み。ルーマニアで唯一稼働するチェルナボーダ原子力発電所では、1996年と2007年にそれぞれ1、2号機(カナダ製CANDU-6炉、各70万kWe級)が運転を開始した。ルーマニアの総発電電力量に占める原子力シェアは約20%(2023年実績)。同発電所の3、4号機(CAUDU-6、各70万kWe級)は1984年~1985年にかけて着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊によって建設工事は中断し、現在は保全状態におかれている。SNNは同3、4号機建設の再開に向けて、今年11月に米・加・伊の企業から構成される合弁事業会社とエンジニアリング・調達・建設・管理(EPCM)に係る契約を締結している。ルーマニアはCANDU炉のほか、同国南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、米ニュースケール・パワー社製SMRである出力7.7万kWeの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kWe)の建設を計画している。プロジェクトは、SNNと民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社のとの合弁企業であるロパワー・ニュークリア社を中心に進められており、米フルアー社、韓サムスンC&T社、米サージェント&ランディ社も参画している。
25 Dec 2024
151
米国で先進炉開発を進めているオクロ社は12月18日、データセンター・キャンパスの設計、建設、運営会社であるスイッチ(Switch)社へ2044年まで電力を供給するため、計1,200万kWの先進炉を導入することで合意した。本合意は、AI(人工知能)により増大する電力需要をクリーンで持続可能な電力で満たす協力体制の枠組みを確立するもの。プロジェクトの進捗に応じて、個別に拘束力のある電力購入契約(PPA)を締結し、米国全土のスイッチ社のデータセンターにオクロ社の開発するマイクロ炉「オーロラ」発電所を建設・運転し、電力を供給する。オクロ社のJ. デウィット共同創設者兼CEOは、「今後20年間に、先進炉の導入規模の拡大に向けた財務およびインフラモデルを開発し、開発から展開、規模拡張まで、スイッチ社とともに取り組んでいく。スイッチ社との提携により、初期のオーロラ発電所の開発が加速されるだけでなく、今後数十年にわたる顧客需要が加速的に拡大していく」と指摘した。オクロ社は、生成AIを用いたテキスト生成サービスである「Chat GPT」を開発した、米オープンAI社のS. アルトマンCEOが会長を務め、取締役には米国のトランプ次期大統領にエネルギー省(DOE)長官に指名されたC. ライト氏が名を連ねる。オクロ社はオーロラ発電所による発電電力の供給取引について、既にエクイニクス社の他、米国内の複数のデータセンター関連企業と基本合意書(LOI)を締結している。オーロラはHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万~5万kWeの範囲で調整が可能。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。米エネルギー省(DOE)は2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、アイダホ国立研究所(INL)敷地内でオーロラ発電所の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)にオーロラ初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は2025年にもCOLの再申請をする準備を進めている。
25 Dec 2024
176
米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は12月18日、同社が開発する先進炉「Natrium」の主要機器の製造契約を締結したと発表した。製造されるコンポーネントと契約先は以下のとおり。原子炉ヘッド:スペイン・Equipos Nucleares(ENSA)炉心バレル、原子炉容器ガードベッセル、炉内構造物:韓国・斗山エナビリティ(旧斗山重工業)原子炉容器:韓国・HD現代重工業回転プラグ:カナダ・Marmenテラパワー社のC. レベスクCEOは、「Natriumはゲームチェンジャーな先進炉。初号機の建設に向けた適切なベンダーチームの結成により、この先進炉を商業化し、世界的なエネルギー需要の高まりに応えていきたい」と抱負を語った。Natriumは34.5万kWeのナトリウム冷却小型高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、負荷追従運転が可能。ピーク時には電気出力を50万kWまで上昇させ5.5時間以上稼働する。初号機は、電気事業者パシフィコープ社がワイオミング州南西部のケンメラーに所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込んでいる。同社は今年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。原子力部の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。
24 Dec 2024
921
フランス電力(EDF)のフラマンビル3号機(欧州加圧水型炉=EPR、165万kWe)が12月21日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は、今年9月3日に初臨界を達成。その後、一連の試験と検査を実施しながら、原子炉の出力を徐々に上げ、25%出力に達した時点で、送電網に接続された。EDFのL. レモント会長兼CEOは、「フラマンビル3号機の送電開始は、原子力業界全体にとって歴史的な瞬間である。このプロジェクトで直面した課題に粘り強く取り組み、安全性に妥協することなく取組んできたすべてのチームに敬意を表したい」と述べた。同機は2007年12月に着工。フランス国内で初のEPR建設だったこともあり、土木エンジニアリング作業の見直しのほか、福島第一原子力発電所事故にともなう包括的安全評価の実施、原子炉容器の鋼材組成の異常(炭素偏析)、2次系配管溶接部の品質上の欠陥等により、完成が当初予定の2012年から大幅に遅れた。建設コストも当初予定の4倍になるなど大幅超過した。同機は今後数か月間にわたり、100%の出力に達するまで、仏原子力安全規制当局(ASN)の監督の下、試験および送電網への接続・切断を繰り返す。EPRはフランス国外ではすでに営業運転を開始している。中国の台山発電所では1、2号機がそれぞれ2018年12月、2019年9月に運転を開始。続いて欧州では、フィンランドのオルキルオト発電所3号機が2023年5月に運転を開始した。英国ではヒンクリー・ポイントC発電所の1、2号機が建設中だ。2022年2月には、フランスのE. マクロン大統領が、同国のCO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという目標の達成に向け、フランス国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設、さらに8基の建設に向けて調査を開始すると発表している。
23 Dec 2024
628
米国貿易開発庁(USTDA)は12月13日、ブルガリアの2件の原子力プロジェクトに対する助成支援について、ブルガリアの関係機関との合意書に調印した。1件目は、ブルガリアの原子力発電所から発生する使用済み燃料の地下処分に向けた、米ディープ・アイソレーション社との実行可能性調査(FS)の実施。2件目は、小型モジュール炉(SMR)の導入に係る、ブルガリア国営のブルガリア・エナジー会社(BEH)への技術支援を対象にしている。USTDAは、インフラプロジェクトに対する技術支援やFS、実証実験の支援等を活用し、新興国等の経済開発と米国製品・サービスの輸出の促進を通じて米国外交政策の推進を支援する米国の政府機関。ディープ・アイソレーション社は、USTDAの助成支援を得て、既存および将来の原子力発電所からの発生する使用済み燃料を地下1 km以上の深地層に処分するためのFSの実施に協力する。USTDAのE. エボン長官とブルガリアの国家放射性廃棄物取扱企業(DPRAO)のS. ツォチェフ理事長が合意書に調印した。エボン長官は、「米国の最先端技術を利用して、使用済み燃料の安全な長期処分オプションを作ることで、さらなる発電所建設への扉を開くことにもなる」と述べた。ツォチェフ理事長は、「ディープ・アイソレーション社との提携は、最先端技術を活用し、放射性廃棄物の安全な管理のために革新的で持続可能なアプローチを探求するという我々の長期的なビジョンの一歩となる」と今回の支援合意を評価した。もう一方の技術支援では、ブルガリアが計画する1基以上のSMRの原子力発電所の導入に対し、米国製のSMRの詳細な技術的分析をBEHに提供する。これに加え、BEHが計画しているSMR発電所の建設候補地の調査や、資金調達方法など実施までのロードマップの策定も行うという。BEHは米ウェスチンングハウス社のAP1000×2基の新規建設が計画されているコズロドイ原子力発電所も含め、ブルガリアの主要な発電所を所有している。ブルガリアのV. マリーノフ・エネルギー相は、「今回の助成支援の合意は、国民の繁栄とブルガリア経済の競争力を確保するために、予測可能で安価なエネルギーを供給するという我が国の政策を成功へ導き、最先端技術の導入を可能にするもの」と、USTDAとの合意の意義を強調した。USTDAはこれら支援を、2024年2月に締結されブルガリアの民間原子力発電プログラム開発における協力関係を定めた「米-ブルガリア政府間協定」を推進させるものと位置付けている。
23 Dec 2024
373
ポーランド産業省のW. ヴロースナ次官兼戦略エネルギー・インフラ担当全権代表は12月11日、ワルシャワで記者会見を行い、ポーランドの第1原子力発電所の運転開始について、当初の予定より3年遅れ、初号機が2036年の営業運転開始を想定していることを明らかにした。同会見には、同省のP. ガイダ原子力局長も同席。2023年12月の政権交代を機に、これまで気候・環境省の所掌にあった原子力政策・開発分野が産業省に移管された。会見でヴロースナ次官は、2020年に閣議決定された原子力発電プログラム(PPEJ)の更新作業が最終段階にあり、更新版では、ポーランド初の原子力発電所の初号機の運転開始は2036年、2号機、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を想定していると述べた。また、第2原子力発電所の建設計画は継続しており、競争入札によってパートナーを選定すると強調した。また、数週間以内に、欧州委員会(EC)による第1原子力発電所への国家補助の承認手続きが開始されるだろうと指摘。ポーランドは今年9月、ECに対し、第1原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)のPEJを支援する計画を通知していた。これに対してECは12月18日、ポーランドの計画がEUの国家補助規制に沿っているかどうかを評価するための詳細な調査の開始を明らかにした。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。ガイダ原子力局長は、第2原子力発電所の計画について、現在、旧石炭火力発電所の4サイトを建設候補地として検討していることを明らかにした。システム要件に合致し、閉鎖後の投資も呼び込みやすいため、だという。同原子力局長はまた、今年11月に産業省の委託により実施された原子力に対する国民の世論調査の結果について、回答者の92.5%がポーランドでの原子力発電所の建設を支持し、回答者の79.6%が原子力発電所が自分の居住地の近くに建設されることに同意していると言及。これは、2012年より毎年実施されている世論調査の中でも最高の数値を記録したという。現行のPPEJでは、総発電設備容量600万~900万kWeの、2サイトでの原子力発電所の建設を想定している。前政権は、第1原子力発電所のパートナーとして米国のウェスチングハウス(WE)社とベクテル社によるコンソーシアムを入札を経ずに指名した。第1原子力発電所(WE社製AP1000×3基、合計出力375万kWe)は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設が計画されている。第1原子力発電所の建設プロジェクトの総投資額は約450億ユーロ(1,920億ズロチ、約7.3兆円)と見積もられている。ポーランド政府はプロジェクト費用の30%をカバーする約140億ユーロ(600億ズロチ、約2.3兆円)をPEJに出資。この他、投資プロジェクトの資金調達のためにPEJが負った債務の100%をカバーする国家保証や、60年間の発電所の運転期間にわたり収益の安定性を確保する差金決済契約(CfD)により、プロジェクトを支援するとしている。PEJによると今年12月に入ってから、第1原子力発電所のプロジェクト支援に向けて、カナダ輸出開発公社から最大14.5億米ドル(約60億ズロチ、約2,294億円)の融資可能性の意向書を受け取り、フランスの輸出信用機関のBpifranceや公共開発銀行であるSfilからも37.5億米ドル(約150億ズロチ、約5,736億円)もの融資への関心が示されたという。今年11月には、40億ズロチ(約1,530億円)規模の融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印。米輸出入銀行(US EXIM)も約700億ズロチ(約2.7兆円)相当の融資支援を実施することになっており、これまでにPEJが海外の融資機関から資金拠出の意向表明を受けた総額はおよそ950億ズロチ(約3.6兆円)になる。PEJは、機器供給国を中心とする、輸出ファシリテーターである各国の輸出信用機関と緊密な協力関係を築き、資金調達の構造における輸出信用機関のシェアを最大限に高めたい考えだ。
20 Dec 2024
854
米ウェスチングハウス(WE)社とBWXTカナダ社は12月12日、カナダ国内外における原子力発電の新規建設プロジェクトを支援する覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。WE社は、新規建設プロジェクト遂行のため、カナダにおけるサプライチェーンの構築を進めている。今回のMOUは、BWXTカナダ社による、WE社製AP1000と小型モジュール炉(SMR)であるAP300の原子炉容器、蒸気発生器、熱交換器などの主要コンポーネントの製造を想定している。加オンタリオ州ケンブリッジに拠点を置くBWXTカナダ社は、PWR向け蒸気発生器、核燃料および燃料関連機器、重要プラント機器・部品など、原子力発電設備の設計、製造、試運転、関連サービスにおいて60年以上の経験とノウハウを有している。本社は米国にあるBWXテクノロジーズ社で、米国、カナダ、英国に事業所を置く。WE社は、カナダには西側諸国で最強の一つとされる原子力サプライチェーンがあり、米国のサプライチェーンと組合わせることで、新規建設を迅速に行う強力なプラットフォームになると考えている。WE社はカナダのオンタリオ州において、AP1000を4基建設するプロジェクトを計画しており、早ければ2035年までに完成するとしている。経済効果は建設段階で287億加ドル(約3.1兆円)、運転中に年間81億加ドル(約8,717億円)のGDP増となると試算している。なお、カナダ国外での建設ではカナダのサプライチェーンを通じて、1基あたり約10億加ドル(約1,076億円)のGDP増を見込んでいる。また、カナダ国内に12,000人の高賃金のフルタイム雇用が創出されるという。
19 Dec 2024
688
米ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社は12月12日、同社の小型モジュール(SMR)導入プロジェクトの実施に向けて、加のアトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社をオーナーズ・エンジニアに選定したことを明らかにした。エナジー・ノースウェスト社は、太平洋岸北西部で唯一稼働する原子力発電施設のコロンビア発電所(BWR、121.1万kWe)を所有・運転するほか、水力発電、風力発電、太陽光発電、蓄電池の事業を行っている。同社は今年10月、大手IT企業のAmazon社ならびに先進炉開発企業のX-エナジー社と、X-エナジー社製SMR「Xe-100」(ぺブルベッド型高温ガス炉、8万kWe)を4基(最大12基)建設するプロジェクトへの出資契約を締結した。エナジー・ノースウェスト社はAmazon社と複数年にわたる実行可能性調査の実施で合意したばかりであり、調査では環境、安全、許認可、リスク面に焦点を当てつつ総合的な分析を行う。プロジェクトが承認されれば、建設許可申請を行う計画だ。アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)はCANDU 炉の技術管理者であり、原子力産業において70年以上の経験を有するエンジニアリングサービス企業。今回のオーナーズ・エンジニアリング契約に基づき、SMRプロジェクトの設計、許認可手続き、建設、試運転を支援する。作業は、ワシントン州リッチランドに最近開設されたおよそ3,000㎡のアトキンス社の最先端のエンジニアリング・技術センターで実施される。エナジー・ノースウェスト社は、アトキンス・リアリス社との協業により、AI(人工知能)革命をサポートするSMRの開発支援だけでなく、雇用創出、経済成長、クリーンで安定した電力供給によって、地域に長期的な利益をもたらしたいとしている。
19 Dec 2024
517
米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は12月10日、「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米国における新たなウラン生産能力の拡大にインセンティブを与えるため、低濃縮ウラン (LEU) の調達契約を締結する6社を選定した。燃料分野において、ロシアの影響を受けない強靭なサプライチェーンを構築しつつ、全米の消費者が安価で信頼できる電力と高賃金のクリーンエネルギー関連の雇用を保証する、米政権の肝入りの施策である。DOE原子力局のM. ゴフ首席次官補代理は、「今回の調達契約は、米国におけるウラン濃縮能力の安全かつ責任ある構築を促進するもの。米国のエネルギー安全保障を強靭にするため、米国内における濃縮ウランの生産能力を向上させなければならない」として、今回の契約締結の意義を強調した。DOEが調達契約を締結したのは以下の6社。LEU供給で競争原理を生み出し、強力な投資の促進をねらう。American Centrifuge Operating, LLC(セントラス・エナジー傘下)General Matter, IncGlobal Laser Enrichment, LLCルイジアナ・エナジー・サービシーズ社(ウレンコ傘下)Laser Isotope Separation Technologies, IncOrano Federal Services, LLCDOEはLEUの新たな国内生産能力を掘り起こし、米国の既存の原子力発電所のほか、将来の先進炉の国内外での展開に必要な燃料供給を確保したい考えだ。DOEはこれらの契約を通じ、濃縮施設の新設、または既存の濃縮施設の拡張により生産されるLEUを購入する。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約3.0億円)を支払う。DOEは今年6月、米国内産のLEU購入に関する提案依頼書(RFP)を発行。「米国への投資」アジェンダから27億ドル(約4,148億円)を支援することとしている。米国において、原子力は総発電電力量のほぼ2割を供給しており、急速に増加する電力需要を満たし、CO2削減が困難な産業プロセスと運輸部門の脱炭素化に貢献する最大のクリーンエネルギー源。米国のクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たすと考えられている。米国は2023年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという公約を共同で主導した。この公約の達成には、米国は追加の原子力発電容量を配備する必要があるが、これには大型炉のほか、小型モジュール炉(SMR)、マイクロ炉など、あらゆる規模の新しい原子炉が含まれる。さらに既設炉の運転期間延長、出力向上や、閉鎖炉の運転再開を想定。これら設備容量拡大には、安定した燃料供給源が必要となる。ロシアは現在、世界のウラン濃縮能力の約44%シェアを保有。米国が輸入する燃料の約35%をロシア産が占める。J. バイデン大統領は今年5月、ロシアからのLEU輸入禁止法案に署名し、8月に発効した。一方で、米国の既存の原子力発電所が運転を中断することのないようDOEは、DOE長官が国務長官および商務長官と協議の上、特定の状況下で特定量のロシア産LEUに免除を与えるプロセスを発表。この規定に基づく免除は、2028年1月1日までに終了する。ロシアは11月、対抗措置として、ロシア産濃縮ウランの米国への一時的な輸出制限を決議した。脱炭素化やロシア産原子燃料への依存の回避、エネルギーセキュリティの強化を要因とする、世界的な原子力発電への評価の高まりを受け、世界的に濃縮役務の需要が増加している。英国に本拠地を置く、グローバルな濃縮事業者であるウレンコ社は、米国における濃縮ウランの需要増に応えるため、同社(ウレンコUSA)がニューメキシコ州ユーニスで操業する、米国で唯一の商業用濃縮プラントを拡張し、生産能力の拡大を目指している。同プラントは現在、米国の電力会社の濃縮ウラン需要の約1/3をカバーしている。なお、米原子力規制委員会(NRC)は12月11日、ウレンコUSAに対し、ウラン濃縮レベルを最大10%に引き上げるライセンス修正を承認した。NRCの承認により、既存の原子力発電所の燃料交換期間の短縮や、一部の先進炉への燃料供給が可能となる。
18 Dec 2024
627
米国のエンジニアリング企業であるアメンタム社(Amentum)とノルウェーのコンサルティング企業であるマルチコンサルト・ノルゲ社(Multiconsult Norge AS)は12月11日、ハルデン・シャーナクラフト社(Halden Kjernekraft AS)から、小型モジュール炉(SMR)建設の実行可能性調査を受注した。建設候補サイトは、かつて研究炉が運転していたノルウェー南部ハルデン市。具体的には、SMRを建設する際のノルウェー国内外の機器・サービスに関するサプライヤーの候補企業を調査するほか、採用炉型、環境影響なども評価する予定。ハルデン社は、ハルデン市とノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社、およびエストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社の3者が、同市でのSMR建設の実現可能性を探るため、昨年11月に共同で設立した企業。アメンタム社のA.ホワイト上席副社長は「マルチコンサルト社と協力し、SMRとサプライチェーンに関する豊富な知識を活用して、客観的で事実に基づいた評価を提供し、原子力が将来のエネルギー問題の解決に貢献できるか、ハルデン市が十分な情報に基づいた決定を下せるよう支援したい」と意気込みを示した。ハルデン社を設立した3者によると、ノルウェーでは、オスロ特別市やハルデン市など18の自治体を含むエストフォル県で既に160億kWhの電力不足が発生しており、電力の需給ギャップが問題となっている。ノルウェー国内では、ハルデン市のみならず、さまざまな自治体でSMRの導入検討や建設可能性の調査が行われている。なお、ハルデン市では、エネルギー技術研究所(IFE)のハルデン研究炉(BWR、2.5万kWt)が1950年代から運転されていたが、2018年6月に閉鎖されている。
18 Dec 2024
543
英国の原子力規制庁(ONR)、環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)は12月12日、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」(BWR、30万kWe)が、包括的設計審査(GDA)のステップ2に進んだことを明らかにした。GDAとは英国で初めて建設される炉型に対して行われる設計認証審査で、原子力規制庁(ONR)が設計の安全性とセキュリティの観点から、環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)が環境影響の観点から、英国の基準を満たしているかを、規制プロセスの早い段階から、立地サイト特定後の建設申請とは別に評価する。ステップ1において各機関は、GDAのステップ2(実質的な技術評価段階)を開始するために必要な取決め、プロセス、提出書類を確認し、BWRX-300の技術評価の範囲とスケジュールで合意に達した。ステップ2では、BWRX-300の基本的な設計の妥当性を評価し、英国で安全、安心かつ環境を保護しながら建設、運転、廃止措置が可能かどうかを確認する。ステップ2は、2025年12月に完了する予定だ。ONRのR. エクセレイ・BWRX-300担当の規制責任者は、「ONRは、米原子力規制委員会(NRC)と加原子力安全委員会(CNSC)双方との協力関係の構築に努めており、国ごとの設計変更を最小限に抑えて標準的な原子炉設計を維持するというGEH社の姿勢を全面的に支持する」「英国の規制当局は基本的に同じ設計を並行して審査する。GEH社が可能な限り共通の設計を維持できるよう、より効率的な規制の共有に尽力していく」とコメントした。今回のGDAの実施にあたり、GEH社はBWRX-300に関するGDAのウェブサイトを新たに立上げ、設計に関する詳細情報とパブリックコメントのプロセスを公開している。パブリックコメントのプロセスでは、誰でも同炉型に関するコメントや質問を提出して回答を得ることができる。規制当局はこれらの質問と回答を確認し、必要に応じて、残りのGDAプロセスにおいて評価に役立てることとしている。GEH社は2022年12月、現在のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の前身であるビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に、BWRX-300を対象とした2ステップのGDA申請書を提出した。BEIS/DESNZは規制当局の審査に先立ち、GEH社が提出したGDA申請書を事前に精査し、BWRX-300がGDA開始前の評価基準をクリアしていることを確認。これを受け、2024年1月、ONR、EA、NRWがGDAのステップ1を開始した。同月、GEH社はDESNZの「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」からBWRX-300の設計開発を支援する補助金を獲得。補助金はGDA申請やSMRの商業展開にむけた準備活動に充てられる。これとは別にGEH社は、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMR支援対象選定コンペに参加しており、最終選考に残った4社のうちの1社である。
17 Dec 2024
723
スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設を計画するシャーンフル・ネキスト(KNXT)社は、12月5日に韓国・ソウルで開催されたスウェーデン・韓国戦略産業サミットにおいて、韓国の建設大手のサムスンC&T社(サムスン物産)と協力覚書(MOU)を締結した。KNXT社はこのパートナーシップを、脱炭素エネルギー源の拡大を目的に、スウェーデン南部で実施する小型モジュール炉(SMR)開発を加速・強化する「Re:Firm South SMR」プログラムの一環に位置づけている。韓国のサムスンC&T社は、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所の建設プロジェクトに参画。また、2023年6月にルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)と同国南部ドゥンボビツァ県のドイチェシュテイ(Doicesti)におけるSMR建設を目指して、建設プロジェクトの基本設計(Front-End Engineering Design:FEED)に共同参画している。KNXT社は、サムスンC&T社の最新の建設工法や設計、ライセンス、資金調達に関するノウハウを自社プロジェクトへ活用させたい考えだ。KNXT社は、スウェーデン南東部のバルデマーシュビークとニュヒェーピングの両自治体を建設候補地として予備的な実行可能性調査(FS)を実施している。両社は、今回のMOU締結により、炉型選定、環境影響評価など、SMR発電所建設へ向けた作業に直ちに着手する予定だ。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向けて大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。最近では、米国のMicrosoft社やAmazon社などの大手IT企業がスウェーデンにデータセンターを増設するという計画を発表。スウェーデン政府はSMRをはじめとする原子力発電所を建設し、データセンターに必要な電力供給を計画している。KNXT社とサムスンC&T社はこの機を捉え、2032年までにSMR発電所を建設、電力購入契約(PPA)を通じて、信頼性の高いクリーンな電力をデータセンターなどのエネルギー集約型施設に直接供給する事業モデルを検討している。今後も多数の発電所を建設し、同時にデータセンターの持続的な誘致を構想する。サムスンC&T社は今回のスウェーデン市場での協業を通じて、欧州市場でのSMR事業の一層の拡大をねらっている。
17 Dec 2024
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核燃料サイクル政策について青森県知事と関係閣僚らが意見交換を行う「核燃料サイクル協議会」が12月24日、総理官邸で開催された。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉同協議会は、1997年以来、核燃料サイクル政策の節目、政権の動きを機に、これまで13回行われてきた。前回は、2023年8月、同6月に就任した青森県・宮下宗一郎知事の要請を受け開催。その後、六ヶ所再処理工場およびMOX燃料加工工場の竣工目標につき、それぞれ「2026年度中」、「2027年度中」への変更(2024年8月29日)、むつ中間貯蔵施設の事業開始(同11月6日)の他、高レベル放射性廃棄物等の地層処分地選定に向けた北海道寿都町・神恵内村における文献調査報告書取りまとめ(同11月22日)など、核燃料サイクル政策をめぐり動きがあった。今回の協議会で、宮下知事は、立地地域の立場から、 (1)原子力・核燃料サイクル政策の推進 (2)六ヶ所再処理工場の竣工・操業に向けた取組 (3)むつ中間貯蔵施設における中長期の貯蔵計画等 (4)プルトニウム利用 (5)高レベル放射性廃棄物等の最終処分と搬出期限の遵守 (6)資源エネルギー庁による「青森県・立地地域と原子力の将来像に関する共創会議」の方針――について、国・事業者による取組姿勢の確認を要請。国からは、林芳正官房長官、浅尾慶一郎内閣府原子力防災担当相、城内実同科学技術担当相、あべ俊子文部科学相、武藤容治経済産業相が、事業者からは林欣吾電気事業連合会会長が出席した。現在、次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論が佳境となっている。原子力・核燃料サイクル政策の推進について、国からは、「エネルギーの安定供給と経済成長、脱炭素を同時に実現する上で、安全性確保を大前提とした原子力利用が不可欠であり、原子力・核燃料サイクルの推進を、国の基本方針として堅持する」との姿勢があらためて示された。また、六ヶ所再処理工場の竣工については「必ず成し遂げるべき課題」として、日本原燃に加え、産業界全体に対し、原子力規制委員会への審査対応など、進捗管理の徹底や必要な人材確保を強く指導し「総力を挙げて取り組む」と強調。事業者の立場から、電事連の林会長は、電力安定供給を担う使命として、「原子燃料サイクルは原子力発電所の安定運転と不可分」との姿勢をあらためて示し、使用済み燃料の管理、プルトニウムの利用などに着実に対応していくと述べた。
25 Dec 2024
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中国電力の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kW)が12月23日13時、発電を再開した。同社では今後、「安全性を確認しながら原子炉の出力を上昇させ、安定して連続運転できることを確認していく」としている。原子力規制委員会による使用前確認証交付を経た営業運転再開は2025年1月10日の見込み。2012年1月の定期検査入り以来、およそ13年ぶりの戦列復帰となる。〈中国電力発表資料は こちら〉2013年の新規制基準施行以来、原子力発電プラントの発電再開は、これで14基目。BWRについては、11月15日の東北電力女川原子力発電所2号機に続き2基目となる。島根2号機は、2011年3月の東日本大震災後も稼働し続け、2012年1月の定期検査入りに伴い停止。その後、2013年12月に新規制基準に係る審査が申請され、2021年9月に原子炉設置変更許可に至った後、地元の了解を得て、2024年12月7日に原子炉を起動させた。今回の島根2号機の発電再開について、中国電力の中川賢剛社長は、関係者および地元への謝意を表した上で、「中国地域を中心とした電力の安定供給を支えるとともに、カーボンニュートラルの達成や電力料金の安定化に不可欠」と、その意義を強調。さらに、環境負荷の少ない低廉な電気を安定供給していくという電力事業者としての使命をあらためて述べ、緊張感を持って営業運転を再開し、その後の安定運転継続に向け、設備健全性の確認を着実に進めていく姿勢を示した。*理事長メッセージは こちら
23 Dec 2024
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原子力発電環境整備機構(NUMO)は12月4~6日、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催された環境保全をテーマとする国内最大級の展示会「SDGs Week EXPO 2024 エコプロ 2024」(日本経済新聞社他主催、エコプロ)に出展した。 エコプロは例年、循環型社会の啓発や災害対策に関する展示も多く、企業間のビジネスマッチングだけでなく、小中学生の環境・防災学習の場としても活用されている。今回も540社余りが出展し、会期中は約63,000人の来場者があった。 NUMOがエコプロに出展するのは昨年に続き2回目。展示ブースには3日間を通じ計4,000人超が来場した。今回は、SDGs目標の一つである「つくる責任、つかう責任」を柱に、クイズラリー形式でNUMOが取り組む地層処分について理解を深めてもらうよう、展示内容を工夫。特に、11月の北海道寿都町・神恵内村での文献調査報告書公表を踏まえ、電力消費地で理解活動を通じ、引き続き処分地選定に向け「国民全体で考えなければならない」ことの訴求に努めた。 エコプロは実体験型の展示が注目される。NUMOでは今回も、全国各地の科学館や商業施設を巡回する地層処分展示車「ジオ・ラボ号」を会場に搬入。日本のエネルギー利用の現状や各発電方法の利点や課題、海外の処分場の映像をVRゴーグルで体験しながら体験させる展示など、計7つのエリアを設け、地層処分事業の概要を紹介した。 修学旅行の生徒らも多く訪れ、「大都市の人が北海道のことをもっと知らなければならないと思った」、「他人事ではなく、自分事として考えるようになった」、「世界の状況も含め、皆が知るべきと思った」といった声も聞かれた。 NUMOでは、今回の展示成果も踏まえ引き続き地層処分の認知・理解を深めてもらうよう努めていくとしている。
20 Dec 2024
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九州電力は12月13日、玄海原子力発電所3・4号機(PWR、各118万kWe)の蒸気タービンを、より優れた材質・構造を採用した最新設計の蒸気タービンに更新することとし、設計・工事計画認可を原子力規制委員会に申請した。〈九州電力発表資料は こちら〉蒸気タービンは、高圧タービン1基と低圧タービン3基で構成。蒸気タービンの更新時期は、3・4号機それぞれ、2027年度、2028年度となっており、九州電力は、「信頼性が向上するとともに、発電効率が向上する」と説明している。今回、蒸気タービンの更新工事は、三菱重工業が受注。高砂製作所(兵庫県高砂市)で設計・製造し、現地で取替工事を実施する。三菱重工の発表によると、納入される蒸気タービンは、国内で4例、海外で5例の実績がある自社設計開発の54インチ翼タービンを採用。三菱重工は1月にも、0.01mmオーダーの加工精度が要求される蒸気発生器で、フランス電力(EDF)から受注した3基(取替用で計9基受注)の製造を完了するなど、PWRプラントメーカーとして、国内外で高い技術力を発揮している。〈三菱重工発表資料は こちら〉現在、玄海3・4号機は、運転開始からそれぞれ30年、27年が経過。3号機については、「GX脱炭素電源法」で、2025年6月に本格施行される高経年化した原子炉に対する規制として、30年以降の運転に必要な「長期施設管理計画」の審査が行われている。
19 Dec 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京海上日動火災保険相談役)は12月17日、第7次エネルギー基本計画の原案を示した。〈配布資料は こちら〉現行の第6次エネルギー基本計画が2021年10月に策定されてから、エネルギー政策基本法に定める3年目の見直し時期が経過。現行計画の策定以降、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限導入、安全性の確保を大前提とした原子力発電所の再稼働への取組が進められ、昨年には、「GX実現に向けた基本方針」に基づき、脱炭素電源導入推進を図る新たな法整備がなされた。海外では、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、エネルギー安全保障に係る地政学的リスクも高まっている。こうしたエネルギーをめぐる国内外状況を踏まえ、同分科会では5月より、次期エネルギー基本計画の検討を重ねてきた。17日の会合では、冒頭、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が挨拶に立ち、これまで13回にわたる議論を振り返り、「様々な角度から貴重な意見をいただいた」と委員らに謝意を表明。その上で、「将来の電力需要増に見合う脱炭素電源をいかに確保できるかがわが国の経済成長のカギ」と、エネルギー政策と経済政策とが一体で進められるべきとの考えを強調。さらに、資源が乏しく国土に制約のある日本のエネルギー安全保障の脆弱性を踏まえ、「バランスの取れたエネルギー政策が必要。特定の電源や燃料源に依存しないという方向性が示された」とも述べた。前日16日には、同分科会下の発電コスト検証ワーキンググループが、2023年時点および2040年時点で、新たに発電設備を建設・運転した場合のコストを18の電源細目別に試算した「発電コスト検証」を取りまとめており、今回の会合ではまず、同WG座長の秋元圭吾氏(地球環境産業技術研究機構主席研究員)が検討結果を報告。〈既報〉続いて、資源エネルギー庁が第7次エネルギー基本計画の原案について説明した。それによると、引き続き、エネルギー政策の原点として、「福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組む」ことを第一に、「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)を基本的視点として掲げている。原子力に関しては、「優れた安定供給性、技術自給率を有し、他電源とそん色ないコスト水準で変動も少なく、一定の出力で安定的に発電可能」とのメリットを強調。立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションの深化・充実、バックエンドプロセスの加速化、再稼働の加速に官民挙げて取り組むとしている。また、これまでの「原発依存度の可能な限りの低減」の文言は削除。新増設・リプレースについては、「廃炉を決定した原子力を有する事業者の原子力発電所サイト内での、次世代革新炉への建て替えを対象として、(中略)具体化を進めていく」と記載された。次世代革新炉の開発・設置に向けては、研究開発を進めるとともに、サプライチェーン・人材の維持・強化に取り組むとしている。また、検討結果の裏付けとして、2040年のエネルギー需給見通しも合わせて提示された。発電電力量は1.1~1.2兆kWh程度、電源構成では、再生可能エネルギーが4~5割、原子力が2割程度、火力が3~4割程度となっている。次期エネルギー基本計画の取りまとめに向け、基本政策分科会では、月内に再度会合を行い、最終原案を確定。パブリックコメントも経て、地球温暖化対策計画など、関連する政策と合わせて年度内にも改定され、2040年頃の日本の産業構造も含めた国家戦略「GX2040ビジョン」に盛り込まれる見通しだ。
18 Dec 2024
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総合資源エネルギー調査会の発電コスト検証ワーキンググループ(座長=秋元圭吾・地球環境産業技術研究機構主席研究員)は12月16日、2023年時点および2040年時点で、新たに発電設備を建設・運転した場合のkWh当たりコストを電源別に試算した「発電コスト検証」の取りまとめを行った。〈配布資料は こちら〉エネルギー基本計画の見直しに向け、同WGが7月より進めてきたもので、翌17日に行われる同調査会の基本政策分科会で報告される。今回の検証は、異なる電源技術の比較・評価を機械的に行う「モデルプラント方式」を採用し、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、原子力、LNG、水素、アンモニア、石炭など、18の電源細目別に試算した。その結果、2040年時点(政策経費あり)で、原子力が12.5円~/kWh(設備利用率70%、稼働年数40年を想定)、太陽光(事業用)が7.0~8.9円/kWh、洋上風力が14.4~15.1円/kWh、LNG(専焼)が16.0~21.0円/kWh、水素(専焼)が24.6~33.0円/kWh、石炭(アンモニア20%混焼)が20.9~33.0円/kWhなどとなった。現行のエネルギー基本計画策定時に行われた「2021年の発電コスト検証」から変動がみられており、資源エネルギー庁では「昨今の物価上昇なども影響している」などと説明している。原子力については、事故対策費用が含まれるが、委員からは、技術的視点からPRA(確率論的安全評価)を用いた炉心損傷頻度に関する言及もあった。また、太陽光や風力など、「自然変動電源」の導入を見据え、電力システム全体として追加的に生じるコストを見据えた「統合コストの一部を考慮した発電コスト」に関し、その設備容量割合4、5、6割ごと、3つのケースで検証を行っている。16日の会合では、その分析結果について、東京大学生産技術研究所の荻本和彦特任教授らが説明。「自然変動電源」に関しては、出力制御の影響の他、追従運転に伴う火力の燃料使用量増により、「原子力や火力に比べ上昇幅が顕著」などと分析した。例えば、設備容量4割想定の場合、太陽光(事業用)が15.3円/kWh、原子力では16.4円/kWhとなるのに対し、同6割想定の場合は、それぞれ、36.9 円/kWh、18.9 円/kWhと、発電量当たりのコストは逆転する。荻本特任教授らは、再エネの出力変動に追従運転し火力が効率運転する「メリットオーダー」に伴う燃料使用増の要因を指摘。委員からは立地点ごとの特異性も検討すべきとする意見もあり、座長の秋元氏は、一見して太陽光の優位性も解される中、「不確実性もあり色々な解釈の仕方がある」として、さらなる精査の必要性を示唆した。これまでのWGの議論で産業界からは「2030年では、2040年では」といった技術導入のタイムスパンに関する意見も多く出されている。今回の「発電コスト検証」について、資源エネルギー庁の畠山陽二郎次長は、「電源構成の重要な基礎材料だ。エネルギーミックスの検討に資するもの」と述べ、基本政策分科会で議論を深めていく考えを強調した。
16 Dec 2024
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日本財団は12月9日、「若者の望むエネルギーとは?」と題し、これまでに実施してきた18歳前後の若者を対象とした「18歳意識調査」の結果をベースに、エネルギー問題への関心喚起に向け、有識者とのインタビュー記事を公開した。「18歳意識調査」は、選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられたのを契機に、2018年以降、同財団が社会、政治、経済格差、環境保全、戦争など、幅広いテーマで、インターネットを通じ、これまで計66回にわたり実施。調査結果は同財団のウェブサイトで公開されている。現在、資源エネルギー庁では、次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論が佳境となっている。政府では、2040年を見据えた日本の未来像を標榜し、年内にも同計画の他、地球温暖化対策、社会保障なども含めた総合的な政策パッケージ「GX2040年ビジョン」の素案が示される運びだ。日本財団は今回、政府が現行エネルギー基本計画策定の翌年、2022年夏にGX基本方針「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革を促す」ことを打ち出したのを契機に実施した「18歳意識調査」の結果を振り返った。同財団が2022年にエネルギーをテーマとして実施した「18歳意識調査」では、日本のエネルギー政策に「非常に関心がある」、「やや関心がある」と回答した割合は合わせて54.4%と半数超。また、調査時期に先立つ2021年度冬季には、電力需給ひっ迫が懸念されたが、節電について「取り組んでいる」との回答割合は67.0%に上るなど、若者のエネルギーに係る意識の高まりがうかがえている。こうした調査結果を振り返り、今回、岩手大学理工学部教授の高木浩一氏が日本財団によるインタビューに応じ、「若者には既存のエネルギーが底をつくという危機感がある」と指摘。同氏は、電力会社やNPOとも協力し小中学校への出前授業に出向くなど、エネルギー問題に対する啓発に努めている。学校でのエネルギー教育の進展に対し、一定の評価を示した上で、将来の化石燃料枯渇に対する不安の高まりなどから、原子力発電の利用に関しては「若い世代では、エネルギー供給の手段の一つとして考える傾向が強く、特別視する抵抗感のようなものはそれほど強くない」と分析。実際、2022年の「18歳意識調査」では、現行のエネルギー基本計画が示す「総発電電力量に占める原子力発電の比率20~22%」について、「高めるべきである」との回答が17.6%、「賛成である」との回答が43.6%と、概ね理解が得られている結果が示されていた。さらに、高木氏は、過去の教科書主体の情報入手から、現在ではSNSを中心とする通信ネットワークが普及している状況を踏まえ、「学生がエネルギーについて考えるとき、情報が足りないというより、多すぎる状態だ」とも指摘。電源構成の多様化に関し、「すべてに万能なエネルギーはない」とも述べ、それぞれの長所・短所を理解した上、ディスカッションなども通じ生徒・学生らが「自分で考える」ことの重要性を強調している。「18歳意識調査」ではこれまで、恋愛・結婚、生理など、性意識をテーマとした調査を多く実施してきた。2022年のエネルギーに関する調査では、多くの設問で男女差が顕著に表れており、例えば、「日本のエネルギー自給率が低いことを知らなかった」とする回答は、男性で25.5%、女性で35.4%と、約10ポイントの認知度の差が示されている。
13 Dec 2024
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高レベル放射性廃棄物の処分問題について知識を深めるワークショップが、7日、福井市で開催された。若い世代に「自分事」として原子力問題に一層の興味を持ってもらうために、福井工業大学らが中心となって主催しているこのワークショップは、今回で14回目の開催。この日は福井県内から同大のほか、福井大学、福井県立大学、福井南高等学校から34名が参加した。また特別ゲストとしてお笑い芸人の「span!」さんの2人も参加し、グループの中に入って場を和ませながら、熱心に議論していた。はじめに講師として、日本原子力産業協会の武田精悦調査役および杉山一弥調査役がHLW処分問題について講演。なぜ地層処分方式が選ばれたのか、人間や環境への影響、先行する海外事例などを紹介すると、学生たちは真剣な様子で聞き入っていた。その後、学生たちは5つの班に分かれ、教育現場などでも用いられるデジタルゲーム、マインクラフトを通してHLWやエネルギー問題への理解・関心をさらに深める取組に挑戦。福井工業大学の学生が考案したもので、ゲーム内でエメラルドを集めていく過程で、次々とクイズが出現し、正解することでポイントを獲得していく。そのポイントの合計数を各班で競い合う仕組みだ。クイズの答えを導くためには、配布資料を読み返し、同じ班のメンバーとの意見交換が必要になるため、メンバー同士、活発な議論が生まれていた。また、アイデアバトルと呼ばれる問題が出ると、それぞれの問いを受けて話し合った結果を会場全体に発表するルールになっており、その間はゲームが一時中断される。各班、必ず1回以上、発表のタイミングがあり、さまざまな考え方や意見に触れながら、自分たちのアイデアに活かす訓練になっていた。例えば、「地層処分を生かしたまちづくりについて、話し合ってください」の問いには、「発電から放射性廃棄物の処分まで、福井県のみで実現できれば、それは一種のブランドイメージ向上になるのではないか?」といった意見が飛び出た。ただ、それに対して「経済性や公平性の観点から全国に分散することも大切で、各県に自分事としてこの問題を捉えてほしい」といった意見もあがった。また、「エネルギー自給率を向上させるために必要な政策や技術、再エネの活用方法を話し合ってください」の問いには、「各個人による省エネ家電の導入などの努力をしつつ、今ある発電施設の有効活用、新型革新炉やアンモニア発電など、さまざまな新しい技術の導入を模索していくべきだ」といった意見が出た。「あなたの住む街に処分場が来たらどうする?」といった問いには、原子力施設等への立地に伴う地域振興の例を用いて、反対する人々と積極的に意見を交換し合う、といった意見が出た。回答に応じて、獲得エメラルド数が異なるなど、ゲーム内にいくつかの仕掛けが施されており、「70分という制限時間があっという間に感じた」という声もあがっていた。他にも、「デジタルゲームを活用することで、全員に参加意識が生まれやすく、問題解決のために、複数の方法や視点を組み合わせた意見が出た」「文系や理系を問わずいろんな考えや背景を持った人と討論することで、自分の意見を相手に伝えることの難しさを感じることができた」といった声があがっていた。
13 Dec 2024
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日本経済団体連合会は12月9日、「FUTURE DESIGN 2040 『成長と分配の好循環』 ~公正・公平で持続可能な社会を目指して~」を発表した。2040年の日本の未来像を見据え「将来世代の立場も踏まえて日本の未来社会の姿を描く」ことを目指し作成された「FUTURE DESIGN 2040」は、 (1)全世代型社会保障 (2)環境・エネルギー (3)地域経済社会 (4)イノベーションを通じた新たな価値創造 (5)教育・研究/労働 (6)経済外交――の6つの施策が柱。石破内閣発足後、10月31日に行われた「GX実行会議」では、同じく2040年を見据えた「GX2040年ビジョン」、「エネルギー基本計画」、「地球温暖化対策計画」の3つの案を年内に取りまとめる方針があらためて示されており、これらの検討にも資するものとみられる。経団連の十倉雅和会長は、「FUTURE DESIGN 2040」の冒頭、今井敬・同名誉会長の言葉「経団連は国全体のことを考えて正論を主張しなければならない」に言及。2021年6月の就任後、任期最後の1年に際し、今回の提言作成に取り組んだ気概を述べた。まず、日本の2040年を展望し、「少子高齢化・人口減少」、「資源を持たない島国」の2つの制約条件を認識。さらに、柱に据えた6つの施策に関し、相互に絡み合う「入れ子構造」を成していると指摘した。その上で、産業界の立場から、政府のみならず「企業も含めたステークホルダー全体で進めることが必要」と述べ、「全体最適」の視点の重要性を強調。データを示しながら、各論の説明につなげている。環境・エネルギーの関連では、GXなどの施策の一体的進展、世界のカーボンニュートラル実現への貢献、国際的に遜色ない価格による安定的なエネルギーや資源の供給実現を、「目指すべき姿」として標榜。政府の役割として、「『S+3E』を大前提に、再生可能エネルギー・原子力といった脱炭素電源の最大限活用」を、特に原子力に関しては「国が前面に立った取組」を求めている。次期エネルギー基本計画の検討では、データセンターの進展に伴う電力需要の増加が議論されているところだが、日本の発電電力量について、近年の1兆~1.1兆kWhから、2050年度には1.35兆~1.5兆kWh、もしくはそれ以上となる可能性を示し、「電力の安定供給に向けた対応が不可欠」と指摘。カーボンニュートラル実現に向けては、脱炭素電源の確保にとどまらず、材料リサイクル、省エネの徹底、生産プロセスの変革など、産業界による多様な取組の必要性を訴えている。原子力については、「多様なエネルギー源のベストミックスの追求」の中で、 ・安全性・地元理解を大前提に既存原子力発電所の再稼働加速 ・核燃料サイクルの確立と最終処分場の確保 ・革新軽水炉の建設に向けた政府方針の早期具体化 ・高速炉・高温ガス炉の早期実用化 ・核融合開発目標の前倒し――を推進すべきとしている。先般閣議決定された総合経済対策にも関連し、全世代型社会保障については、「日本の総人口は今後も減少し続け、2100年には6,300万人に半減する」との試算(人口戦略会議・三村明夫議長)などを示した上で、企業・経済界の役割として、多様な人材の労働参加、働き方改革、仕事と家庭の両立支援に向けた環境整備やさらなる推進を述べている。
11 Dec 2024
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原子力規制委員会は12月9日、電力事業者・メーカーを招き革新軽水炉の規制に係る技術的意見交換会の初会合を開いた。〈資料は こちら〉同委では随時、電力関係の原子力部門責任者と技術面での意見交換を行うCNO会議を行っている。今春からは三菱重工業が開発を進めている革新軽水炉「SRZ-1200」を中心に、新型炉の導入に向けた規制対応が焦点となってきた。「SRZ-1200」は、「超安全」(Supreme Safety)、「地球に優しく」(Zero carbon & Sustainability)、「大規模な電気を安定供給」(Resilient light water Reactor)がコンセプト。現行規制基準の理念を踏まえ、「さらに新たな安全メカニズムを取り入れて、地震・津波の他、自然災害への対応、大型航空機衝突・受動的安全システム等の安全対策」を図ること目指し、基本設計が進んでいる。今回の意見交換では、第1ラウンドとして、このような安全対策を中心に、原子力エネルギー協議会(ATENA)の佐藤拓理事他、原子力発電所を有する各電力会社のグループリーダー・課長クラスが出席し説明。原子力規制庁の技術基盤グループらが、今後の規制対応に係る課題を指摘するなどした。佐藤理事は、PWRを有する電力事業者4社と三菱重工とで開発を進めている「SRZ-1200」について、「設計がかなり進んできたが、この先を進めるに当たっては、予見性が不明確な部分がある」と、事業者としての規制面での問題点を強調。さらに、現在検討が進められている次期エネルギー基本計画を見据え、「原子力を一定程度確保する必要があり、新しい原子炉を開発していかねばならない」とした上で、産業界として、今後の新型炉に係る規制対応を議論していく必要性を述べた。メーカー側からは、三菱重工原子力セグメントSRZ推進室長の西谷順一氏が、技術的観点から説明。シビアアクシデント対策やテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」との関連について、「合理的範囲での設計思想」を図る必要性を述べたほか、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、「これまで想定されていないような溶融炉心残存についても冷却水の注水を継続する」として、より厳しい事象に対しても安全対策の強化に努めていく姿勢を強調した。
10 Dec 2024
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は12月6日、記者会見を行い、最近の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会での発言内容、同協会が毎年取りまとめている「原子力発電に係る産業動向調査報告」の最新版について説明した。増井理事長はまず、既に理事長メッセージとして公表済みだが、11月20日に行われた原子力小委員会での発言をあらためて紹介。現在、資源エネルギー庁において検討中の次期エネルギー基本計画に関し、 1.現行のエネルギー基本計画にある「原子力の依存度の低減」の記載を削除 2.新規建設を前提とした原子力の必要容量と時間軸を明記 3.資金調達、投資回収などの事業環境整備の方針を明記――することを要望事項としてあげた上で、「民間事業者の意思決定に大きく影響する重要なものになる」との認識を示した。「原子力発電に係る産業動向調査報告」については、原産協会が定期的に発行している「看板出版物の一つ」として、継続的に実施してきた意義を強調。今回公表の2024年調査版は、国内で12基が稼働していた2023年度を対象に、原産協会会員企業318社にアンケートを行い、243社から有効回答を得て集計・分析したもの。調査結果の概況として、増井理事長は、電気事業者の支出高について、2兆510億円と、対前年度比12%増となったことをあげた。また、会員企業の人材採用・配置計画、原子力事業の位置付けについては、事業拡大もしくは現状維持との回答がそれぞれ84%、94%と、いずれも「昨年並み」との認識を示した。原子力産業界を取り巻く景況感に関しては、「良い」、「普通」、「悪い」の選択肢のうち、「良い」が9%(前年度は8%)、「普通」が48%(同44%)となり、2020年度(調査対象年次)以降、両者の回答が右肩上がりで推移。安全保障対策・気候変動対策への関心増から、「少しずつ良くなっている」との見方を示した。さらに、増井理事長は、11月11~24日にアゼルバイジャン・バクーで開催されたCOP29についても紹介。前回COP28を振り返り、「原子力の低炭素電源としての価値が公式文書に書き込まれた歴史的転換点になった」と強調。今回のCOP29では会期中、複数のサイドイベントが開催され、前回のCOPに続き現地にて出席・登壇した植竹明人常務理事は、今回の会見に同席し、記者からの質疑に応じ、「昨年の原子力推進のモメンタムが維持された」と評価するとともに、「若手の活動も非常に活発だった」と、所感を述べた。〈理事長メッセージは こちら、原子力関係活動報告は こちら〉
06 Dec 2024
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日本原子力産業協会は11月21日、柏崎市内のホールで、ユニバーサルエネルギー研究所社長の金田武司氏を招き、講演会「世界情勢から日本のエネルギー・経済問題を考える」を開催した。同協会が原子力施設の再稼働や運転開始を控えた地域に対する理解活動の一環として行ったもの。冒頭の挨拶で、原産協会の増井秀企理事長は、近年のエネルギーをめぐる価格上昇、需要増を懸念。生成AIの利用増やデータセンターの設置に伴い、日本についても「数年前は人口減少に伴い段々とエネルギー需要が減っていくと言われていたが、最近では増加していくとみられている」と指摘した。今回の講演会に際し、金田氏には「エネルギー資源に乏しい日本がたどってきた数奇な歴史を世界的な文脈で語ってもらう」よう期待。さらに、柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市での開催について、「エネルギーの一大生産地として、日本の産業および生活の発展の向上を支えてきた」と、あらためて感謝の意を述べた。金田氏は、「エネルギー問題を幅広い視点で見てみたい」と切り出し、まず、最近の世界のエネルギーをめぐる問題として、2021年2月に米国テキサス州を襲った大規模停電に言及。その中で、「一般家庭の電気料金が100倍に高騰した」要因として、記録的寒波により風力発電設備が凍結し予期せぬ大停電に至ったことから、自然ハザードに伴うエネルギー途絶や単一電源への依存の問題点を指摘した。日本の石油輸入に関しては、地政学的リスクを背景に「タンカーが狙われる」こと踏まえ、エネルギー資源を確保することの困難さを強調。同氏は、日本の風力発電に関し、「総設備容量は約500万kWだが稼働率は約2割。全部動かしても原子力発電所1基分程度にしか過ぎない」との規模感を述べた。また、近代を振り返り、ペリー来航にまつわる米国の石炭確保と捕鯨(油)の関係性、昭和に始まった日本の石油利用、オイルショックなど、エネルギーの歴史的背景を概観。あらためて「日本には自前のエネルギー源はない」として、日本が原子力発電開発を進めてきた意義を説いた。さらに、世界経済の仕組み、海外の産業事情、エネルギーと外貨相場との関連にも言及した上、「エネルギー問題は表面だけではなく、多面的に見なければいけない。」と指摘。常に「なぜでしょうか?」と問いかけながら話を進めるとともに、エネルギーに係る本質的な問題が知られていないことを懸念し、報道のあり方についても「事の重大さ、ヒストリーがわかっていないのでは」と、強く問題視した。会場には柏崎市民を中心に125名が参集。全国の原子力発電所立地地域の状況、電力消費地域を始めとする国民理解を求める声もあった。柏崎刈羽原子力発電所は現在、7号機の再稼働に向け、地元の理解が焦点となっている。なお、原産協会では、原子力立地地域への理解活動として、日本原子力発電との共催により、3月にも水戸市内で、主に親子連れを対象に「ざんねんないきもの事典」の著者である丸山貴史氏を招いたトークイベントを開催している。
05 Dec 2024
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