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28 Mar 2025
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オランダ 米製SMRの燃料・材料試験を実施へ
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26 Mar 2025
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米テラパワー 韓HD現代と「Natrium」のサプライチェーン拡大で提携
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25 Mar 2025
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原子力機構・筑波大 燃料デブリ解明につながる3次元可視化手法を開発
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25 Mar 2025
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経済同友会・新浪代表幹事 柏崎刈羽を視察
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25 Mar 2025
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ロシア レニングラードⅡ-4が着工
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24 Mar 2025
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カザフスタン 原子力庁を設立へ
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24 Mar 2025
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「原子力サプライチェーンシンポジウム」でパネル討論
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24 Mar 2025
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原子力小委 運転期間延長認可について議論
オランダの原子力研究機関のNRGパラス(Nuclear Research and consultancy Group PALLAS)は3月20日、米ケイロス・パワー(Kairos Power)社と、ケイロス社が開発する小型モジュール炉(SMR)で使用される燃料と材料を評価する試験契約を締結した。ケイロス社は2024年10月、米IT企業大手Google社と、ケイロス社が開発する先進炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結している。そのため、ケイロス社は開発中の第4世代SMRであるフッ化物塩冷却高温炉 (KP-FHR、熱出力32万kW、電気出力14万kW)の商業化に向けて、オランダ・ペッテンにあるNRGの高中性子束炉(HFR)での燃料照射プログラムを通じて、燃料および材料の照射試験を行い、米原子力規制委員会(NRC)に対して、燃料の安全性を実証したい考えだ。また、ケイロス社がNRGと協力して実施する黒鉛照射試験は、KP-FHR炉心で使用される黒鉛反射体構造の高レベルの中性子曝露に対する安全限界を実証するもの。照射後特性は、NRCの許認可において重要な指標となり、原子炉技術の安全性を示すものとなる。原子炉容器と構造部材に使用されるステンレス鋼材料の照射試験も実施し、安全性と設計限界を実証することで、ケイロス社の許認可活動を支援するという。なお、NRCはケイロス社の実証炉「ヘルメス」と後継の「ヘルメス 2」の建設許可をすでに発給しており、ケイロス社は、これらヘルメス炉から学んだ教訓を基に、2030年までにGoogle社向けの商用フリートに初号機を配備、稼働させる計画である。ケイロス社のM. ハケット燃料・資材担当副社長は、「当社の原子炉技術を進歩させるために、正確で信頼性の高い照射性能データに依存している。優れた照射データの作成に長年の実績のあるNRGは、Google社や将来の他クライアントとのコストやスケジュール面でのコミットメントの達成を支援する、信頼できるパートナーである」と語った。
28 Mar 2025
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は3月11日、同社が開発する先進炉「Natrium」の部品のグローバル製造サプライチェーンの拡大に向けて、韓国のHD現代重工業と戦略的提携を発表した。テラパワー社の最先端技術と、HD現代の製造ノウハウを組み合わせ、ナトリウム冷却高速炉と統合エネルギー貯蔵システムを備えたNatrium(34.5万kWe)の大規模生産と迅速なグローバル展開を可能にする新たなサプライチェーン能力の構築が目的。この提携は2024年、米ワイオミング州に建設予定のNatrium初号機の原子炉容器供給者にHD現代重工業が選定されたことが契機となっている。HD現代重工業は、造船を専門とするHD現代の傘下企業である。テラパワー社のC. レベスクCEOは、「当社は、米国でNatrium初号機導入の後、今後10年間に米国内外で競争力のある価格で後継機の迅速な展開をしていく。Natriumは、ベースロード電力とギガワット級のエネルギー貯蔵を提供し、増大するエネルギー需要に応える、信頼性が高く、柔軟性のある電力供給が可能。世界的に高い評価の製造能力を有する、HD現代重工業との協力により、Natriumのグローバル展開に不可欠な商業規模の生産能力を確立していく」と抱負を語った。HD現代重工業のK. ウォン上級副社長は、「Natriumの部品製造において、当社の実証済みで高精度な製造ノウハウと、大規模生産が可能なサプライチェーン能力を活用し、テラパワー社の商業展開のビジョンを支援していく。本提携は、次世代原子力エネルギーソリューションの商業可能性を加速させる、画期的な協力関係の始まりとなる」と意気込みを示した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つ(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。初号機は、米ワイオミング州南西部のケンメラーで閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込む。同社は2024年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。原子力部の着工は早くて2026年、送電開始は2030年を予定している。
26 Mar 2025
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ロシアのレニングラード第Ⅱ原子力発電所4号機(PWR=VVER-1200、119.9万kW)が3月20日、着工した。昨年3月には、同型の3号機が着工している。計画では、同第Ⅱ発電所の3号機、4号機を稼働させ、1980年代初めに運開した3、4号機(軽水冷却黒鉛減速炉のRBMK-1000、100万kW級)を閉鎖する。1、2号機(RBMK-1000、100万kW級)は45年の運転期間を経て、第Ⅱ発電所1、2号機の運転開始後の2018年12月と2020年11月に閉鎖され、現在は廃止措置の準備中である。着工式典には、ベラルーシのベラルシアン原子力発電所、エジプトのエルダバ原子力発電所、バングラデシュのルプール原子力発電所の代表者らも、オンラインで参加した。これらの発電所では、ロシア国営原子力企業ロスアトムの支援を受けて建設された、または建設中のVVER-1200を採用している。VVER-1200はロシアが開発した第3世代+(プラス)炉で、動的と静的、2種類の安全系を持ち、コンクリート製の二重格納容器や、設計基準外事象の発生時に放射性物質の漏洩を防ぐコア・キャッチャーを備える。ロシアではノボボロネジ第Ⅱ原子力発電所1、2号機で先行採用・運転されている。ロスアトムのA. ペトロフ第一副総裁(原子力発電担当)は本着工に際し、「国のエネルギーミックスにおける原子力発電の割合を増やすという主要な国家目標に向けた新たな一歩、早ければ今年中には、スモレンスク原子力発電所とコラ原子力発電所でリプレース作業を開始し、ベロヤルスク原子力発電所では第4世代の高速炉(BN-1200M)の建設に向けたエンジニアリング調査を完了する予定。今後20年間で、ロスアトムはシベリア、ウラル地域、極東において新たな建設プロジェクトに取組み、国民はクリーンなエネルギーにアクセス可能になる」と展望を示した。ロスアトムは、露大統領の指示により、2045年までに総発電電力量に占める原子力シェアを25%にすることを目指している。ロスアトムのA. リハチョフ総裁は3月7日、ニジニ・ノヴゴロド州南端のサロフ市で開催された「情報Day」で、「大統領の指示により、今年は沿海地方で原子力発電所(VVER-1000×2基)の建設に取組む必要があり、早ければ2032年に送電開始する」と語った。また、今年内にはクルスク第Ⅱ発電所の1号機の営業運転を開始させるほか、海外では、トルコとバングラデシュで建設中の発電所で初併入、ウズベキスタンのSMR発電所の建設契約の実現とともに、大型炉の建設契約の獲得に努める、と語った。さらにリハチョフ総裁は、「世界市場で競争が激化し、経済的圧力と制裁下でも、技術力を活かし、グローバル市場でのリーダーシップの強化に努めなければならない」と強調。国内市場での技術とハイテク製品および輸入代替品の不足、労働市場の競争激化、厳しい経済・金融状況という困難の中、限られたリソースを活用し、効率的に活動すると明言した。具体的には、不採算事業の見直しに加え、諸手続きのデジタル化と簡素化、人工知能の活用により、あらゆる企業機能と投資およびプロジェクト活動の質と効率を向上させるとしている。また、BRICS+およびCIS諸国との協力も継続的に発展させる考えだ。2024年12月末に政府承認された、2042年までの原子力発電設備計画によると、ロシアでは既存および新規(シベリアや極東のような新たな地域を含む)の計15サイトで、大型炉、中型炉、小型モジュール炉(SMR)など計38基(約2,455万kWe)を新設する計画。一方、運転期間を満了する原子炉の閉鎖は約1,037万kWe規模である。この計画が実現すると、2042年の総発電設備容量は現在の11.7%から15.7%に拡大。総発電電力量に占める原子力シェアは、現在の18.9%から2042年に24%になると予測されている。
25 Mar 2025
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カザフスタンのK.-J. トカーエフ大統領は3月18日、大統領直属の機関として原子力庁を設立する大統領令を発令した。3月14日には、自身が議長を務める全国クルルタイ(国民会議)で演説し、今後数十年にわたる経済発展の強固な基盤となる新たなエネルギー産業の創出に向けて、原子力庁を設置することを明らかにしていた。原子力庁は、原子力産業の一層の発展と核セキュリティの強化を目的に、エネルギー省の機能及び権限を移転させ、ウラン採掘に関連する地下利用、原子力利用、住民の放射線安全の確保ならびに原子力発電所の建設及び運転の責任を負う。長官には、A. サトカリエフ・エネルギー相が就任した。(エネルギー相にはE. アッケンジェノフ次官が就任)。トカーエフ大統領は全国クルルタイでの演説の中で、ハイテクはあらゆるセクターの発展に必要な機関車であると指摘。政府は高度なデジタル化と人工知能(AI)の広範な導入に適した環境を作り出すため、エネルギーのポテンシャルを高めるとともに、電力の完全自給自足を達成するだけでなく、世界のエネルギー市場の主要な輸出国にならなければならない、と語った。そのうえで、現在のエネルギー需要だけでなく、今後数十年にわたるダイナミックな経済発展に向けて、新たなエネルギー産業の創出の戦略的重要性を説き、原子力発電所を1サイトではなく、3サイト建設する考えを示した。カザフスタンでは2024年10月、ソ連からの独立後、初となる原子力発電所の建設を問う国民投票が実施され、原子力発電所の建設に7割が賛成した。同年12月、政府はアルマティ州のジャンブール地区を建設地区に決定。今年中には、炉メーカー(またはコンソーシアム)を選定し、政府間協定および関連契約の締結を計画している。なお、省庁間委員会が2月25日に開催され、同国初となる原子力発電所の建設について、以下の提案が検討された。今後、各提案の徹底的かつ包括的なレビューを継続するという。・中国核工業集団公司(CNNC)製「華龍一号(HPR-1000)」(100万kW級PWR)・露ロスアトム製VVER-1200(120万kW級PWR)・韓国水力・原子力(KHNP)製「APR1000」「APR1400」(100万kW級/140万kW級PWR)・フランス電力(EDF)製EPR-1200(120万kW級PWR)サトカリエフ・エネルギー相(当時)や同省幹部は3月中旬、米エネルギー省(DOE)のC. ライト長官、中国核工業集団公司(CNNC)の申彦锋・総経理、仏EDFの幹部らと会談し、原子力分野における協力について協議を実施している。
24 Mar 2025
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インドネシアのPT Thorcon Power Indonesia(PT TPI)社は3月4日、インドネシア原子力規制庁(BAPETEN)に対し、米国のデベロッパーThorcon社製の先進的熔融塩炉を採用した実証プラント「Thorcon 500」(50万kWe)の建設に向けて、許認可手続きを開始したことを明らかにした。同国バンカ・ブリトゥン州のバンカ島の沖合にある、ケラサ島が同プラントのサイトとして提案されている。 シンガポールを拠点とするThorcon International社の子会社であるPT TPI社は2月13日、BAPETENに、サイト評価プログラム(PET)およびサイト評価管理システム(SMET)の承認を得るための申請書類を提出した。PT TPI社は、インドネシア史上初の原子力発電所の建設申請者。なお、インドネシアの国家エネルギー審議会(議長:大統領)が、Thorcon実証プラントを次の5か年計画に組み入れているという。 今回の申請は、約2年間にわたるBAPETENとの事前ライセンス協議に続くもの。2023年3月、両者は熔融塩炉(25万kWe)を2基搭載したThorcon 500の許認可取得に向けて3S(原子力安全、核セキュリティ、保障措置)の確保を前提に、協議を開始することで合意。プラント建設のためのマスタープラン文書のレビュー、原子炉プロトタイプおよび非核分裂性試験プラットフォーム(NTP)施設に係るロードマップに関する協議の他、許認可手続きに必要となる技術文書などの準備、および原子炉の設計承認について協議を行ってきた。PT TPI社は、審査プロセスにおいて迅速かつ徹底的な評価を確実にするために、BAPETENからのいかなるフィードバックにも全力で取組む意向を示している。 Thorcon 500は、1960年代に米エネルギー省オークリッジ国立研究所が開発した技術に基づいく。低圧下で熔融フッ化物塩を一次冷却材として使用、低濃縮ウラン燃料を用いた25万kWeの原子炉2基で構成され、交換可能な密閉「カン」(Can)に格納されている。造船所で船体に組み入れられ、浅瀬のサイトまで曳航される。8年間の運転後、原子炉モジュールは切り離され、カン交換のためにメンテナンスセンターに曳航される。熔融塩燃料は、緊急時には受動的に冷却タンクに排出され、核分裂を即座に停止。加熱のリスクを排除し、安全性を維持する運転員の介入や外部電源の必要はないという。モジュール製造向けに設計されたThorcon 500は、最高の国際安全基準に適合しており、インドネシアのエネルギー移行において重要な役割を果たすと期待されている。ケラサ島で実施された、安全性、生態学的要素、立地適性に焦点を当てた予備的なサイト調査により、同島が有力なサイト候補地とされた。PT TPI社は、2032年までにThorcon 500を稼働させ、インドネシア国営電力会社PLNに売電を計画する。すでに鉱業やIT企業から、ケラサ島でのプラントの完成後、電力購入契約の締結の打診もあるという。PT TPI社はプラントの初稼働後、Thorcon炉の国内製造・組立ラインを開発し、インドネシアの新しい産業部門の成長を促進させたい考えだ。 BAPETENは、3Sの枠組みの中で積極的に協議に参加したPT TPI社の取組みを評価し、事前協議は、許認可プロセスの継続にあたり、技術と管理両面での障壁を最小限にするものである、と指摘した。 インドネシア政府は、再生可能エネルギーや原子力など新たな無炭素電源の研究開発を促進して、CO2排出量の実質ゼロ化に移行していく方針。原子力発電所の設備容量を2035年に800万kWe、2060年には5,400万kWeへの拡大を目指している。現状、総発電電力量の約8割を火力発電(主に石炭火力)が占める。PT TPI社は、Thorcon 500プラントは「太陽光や風力などの再生可能エネルギーを補完する安定した低コストのベースロード電源となる」と語っている。
24 Mar 2025
737
フランスのE. マクロン大統領は3月17日、自らが議長を務める閣僚級の「原子力政策評議会(CPN)」を招集。フランス電力(EDF)が計画する改良型欧州加圧水型炉(EPR2)6基の建設費の少なくとも半分を国が優遇融資で支援する方針を決定した。CPNは2022年より定期的に開催されており、フランスの原子力政策全般や各プロジェクトを短期的・長期的に管理・調整する役割を担っている。2022年2月のマクロン大統領による仏東部ベルフォールでの演説で示されたエネルギー政策目標に沿って、エネルギー複数年計画(PPE)に反映すべく、原子力再生に向けた戦略を協議している。同大統領はこの演説で、フランスのCO2排出量を2050年までに実質ゼロとし、国内の原子力産業を再活性化するため、フランスでEPR2を新たに6基建設し、さらに8基の建設に向けた調査を開始すると表明していた。EDFは、パンリー、グラブリーヌ、ビュジェイの各原子力発電所にEPR2を計6基建設し、2038年までに初号機の試運転を計画している。今回のCPNでは、EDFのEPR2による建設プログラムの資金調達と規制スキームの主要原則を検討。建設費用の少なくとも半分を国が優遇融資で支援し、最大100ユーロ/MWhの差金決済取引(CfD)を実施することで合意した。さらにCPNはEDFに対し、コストとスケジュールの管理強化を求め、コストと期限に関するコミットメントを今年末までに提示するよう指示。2026年のEDFによる最終投資決定(FID)を視野に、今後数週間で国とEDFの間で協議をまとめ、欧州委員会(EC)の承認取得に向けた交渉を迅速に開始する方針だ。また、世界各国で新設計画や新型炉の導入が発表される中、CPNは現在の地政学的状況におけるウラン主権の確保のため、サイクルの上流(採掘)における行動計画、特にフランスへの中長期的なウラン供給に向けて、オラノ社に対する国の支援を承認した。使用済み燃料の取扱いについては、ラ・アーグ再処理工場でオラノ社が主導するバックエンド施設の更新・投資計画の継続を確認。既存炉や新設されるEPR2の使用済み燃料を貯蔵するため、2040年までにラ・アーグ工場で新たな貯蔵プールの操業を開始する必要があるという。CPNはさらに、今世紀後半には天然ウラン輸入を必要としない、クローズド・サイクルを達成するためのガイドラインを確認し、研究再開に向けた準備作業を開始。プルトニウムと劣化ウランから燃料を製造し、高速炉で燃焼させた後の再処理には、大規模な技術開発が必要となるため、CPNは、燃料製造業者(EDF、フラマトム社、オラノ社)や仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)、および高速炉に係るすべての関係者に対し、今年末までに作業計画と産業組織の提案を国に提示するよう求めた。また、2021年10月にマクロン大統領が発表した産業投資政策「フランス2030」では、2030年までに10億ユーロを投じて、革新的な小型炉の実証をめざしている。CPNは、この開発プロジェクトの第一段階が順調に進んでいることを評価。2030年初頭に実証炉の試運転につながる可能性が最も高いプロジェクトに優先順位を付け、支援を継続する権限を投資総局に与えた。なおCEAに対しては、マルクールとカダラッシュのサイトに関連するデータを要請する企業がアクセスできるようにし、同サイトで最先端プロジェクトを実施するための協議を開始するよう求めている。
21 Mar 2025
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米ウェスチングハウス(WE)社は3月11日、欧州のデータセンター開発・運営企業であるData4社と、欧州における将来のデータセンターへの電力供給を目的に、同社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(PWR、30万 kW)の導入評価に関する了解覚書(MOU)を締結した。Data4社は、フランス・パリに本拠地を置き、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、ドイツ、ギリシャで35のデータセンターを運営している。米ゴールドマン・サックスの調査によると、生成AI関連サービスの成長に伴い、データセンターの電力需要は2030年までに23年比で165%増加すると予測されている。データセンターは、24時間365日稼働させるため、豊富で信頼性の高い、クリーンな電力が不可欠である。WE社のAP300は先進的な第3世代+炉で、既に運転実績のあるAP1000をベースとした、安全でコンパクトかつ柔軟な設計が特徴。AP1000のエンジニアリングやライセンス、コンポーネント、サプライチェーンを活用できるため、導入が容易で、2030年初めの運転開始をめざしている。同社は「エネルギー集約型の次世代コンピューティングに対して、コスト効率が高く、クリーンな電力をオンサイトで提供できる」としている。Data4社は「これまでのデータセンターは従来の電力会社のみに依存していたが、将来はオンサイト発電と従来のグリッド供給、エネルギー貯蔵を統合し、複数の電源を活用する時代に入る」と指摘。そのうえで、「AP300の導入は、キャンパスのエネルギーの自律性を高め、自給自足の持続可能なデータセンター・インフラ確立に向けた大きな一歩になる」と強調している。一方、WE社製のマイクロ炉「eVinci」について、米ペンシルバニア州立大学は2月28日、ユニバーシティパーク・キャンパスの新しい原子力研究施設への設置に向け、米原子力規制委員会(NRC)に申請プロセスの最初のステップとなる意向表明書(LOI)を提出した。この取組みは、ペンシルベニア州立大学とWE社が2022年に開始した、マイクロ炉の研究開発協力が発展したもの。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。キャンパス全体の研究施設や建物に電力を供給し、燃料補給なしに8年以上にわたり電力の安定供給が可能だ。同大学には、1955年に全米初の運転認可を取得した研究炉BNRがある。WE社のJ. ボールeVinciマイクロリアクター担当プレジデントは、「ユニバーシティパークの研究施設は、ペンシルベニア州を世界有数の原子力イノベーションハブとし、学生や研究者に原子力を活用する新たな方法を見つける機会を提供する」と重要性を強調している。
19 Mar 2025
849
インドで建設中のラジャスタン原子力発電所7号機(PHWR、70万kW)が3月17日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は、2024年9月19日に初臨界を達成している。インド原子力発電公社(NPCIL)は、計16基からなる70万kW級の国産PHWR建設プロジェクトを掲げており、ラジャスタン7号機が営業運転を開始すると、同プロジェクトではカクラパー3、4号機に次いで、3基目となる。ラジャスタン8号機、ゴラクプール1、2号機が建設中で、10基が計画中。すべて2031年までに運開予定であり、インド原子力省(DAE)は同年までに原子力発電設備容量を2,248万kWに増強する計画である。インドの原子力発電開発をめぐっては、N. シタラマン大臣が2025年2月、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1億kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、民間企業がこのセクターに参入するための大きなハードルとなっていた原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えを示している。インド政府で原子力や科学技術を担当するJ. シン閣外専管大臣は、3月12日付けの下院議会への答弁書で、バーラト小型モジュール炉(BSMR)の開発状況について説明した。既存のPHWRを改良したBSMR-200(20万kWe)は、バーバ原子力研究所(BARC)とNPCILが設計・開発したもので、鉄鋼、アルミニウム、セメントなどのエネルギー集約型産業向けの自家発電用や、閉鎖予定の火力発電所の代替、送電網が未整備で接続されていない遠隔地への配置を想定している。現在、概念設計が完了し、当局の承認待ちであるという。建設期間はプロジェクト認可取得後、60~72か月を見込み、機器および部品の製造と納入はDAEが開発した国内のベンダーを通じて実施される。また、出力5.5万kWeの先行2基のツインユニットを2033年までにDAEのサイトに設置することも明らかになった。
18 Mar 2025
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韓国国会は2月27日、高レベル放射性廃棄物管理特別法案を可決した。本特別法は、高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料)の管理・処分方針を定めた韓国初の法律であり、高レベル放射性廃棄物を安全に管理するための施設整備とその操業に必要な事項を規定し、誘致地域などの支援策を具体化するもの。可決から15日以内に公布され、公布から半年後に施行される。本特別法では、高レベル放射性廃棄物を管理し、管理施設の設置サイトの調査及び選定に必要な業務を行う独立機関として、国務総理(首相)の下に「高レベル放射性廃棄物管理委員会」(委員会)を設置し、高レベル放射性廃棄物の管理事業者を韓国原子力環境公団(KORAD)とすることを定めている。同委員会は、サイト適合性調査を策定、管轄市・郡・区の申請を受けて基本調査を実施後、深地層調査の対象サイトを選定、当該サイトを対象に同調査を実施する。その結果を評価し、住民投票などを経て管理施設のサイトを最終選定することとしている。また、サイト選定前に、研究専用の地下研究所をサイト内の地下環境に建設・操業し、地質学的特性など、処分施設の安全性に係る性能を研究・実証することとなっている。なお委員会は、管理施設のサイト選定、建設及び操業などに関する許可の申請前には、安全性確保のための規制に関する事項について原子力安全委員会の意見聴取を行うことが義務化されている。同一サイト内に建設される高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設は2050年までに、処分施設は2060年までの操業開始をめざしている。現在、韓国の原子力発電所の運転に伴って発生する使用済み燃料は、すべて発電所サイト内のプールや乾式貯蔵施設に一時貯蔵されている。2024年末までに合計540,924体の使用済み燃料集合体が貯蔵されており、2031年の古里原子力発電所とハンビット(霊光)原子力発電所を皮切りに、サイト内の貯蔵施設は徐々に飽和状態になると予想されている。2021年12月、閣僚級会合である原子力振興委員会で、高レベル放射性廃棄物管理基本計画(第2次)が承認されていたが、原子力産業界は、特別法の制定により計画を明確にし、サイト選定と主要課題、日程などの手続きを拘束力のある法律に詳細に盛り込む必要性を求めていた。KORADのチョ・ソンドン会長は、「特別法が国会本会議を通過したことは、高レベル放射性廃棄物管理のための第一歩を踏み出した歴史的な出来事」とし、「KORADは国家放射性廃棄物管理専門機関として高レベル放射性廃棄物管理事業を適時に推進していく」と語った。KORADは、今回の特別法と政府の高レベル放射性廃棄物管理基本計画を基に、高レベル放射性廃棄物管理のための、①研究用の地下研究施設を活用した実証技術の適時確保、②円滑な事業推進のための人材育成、③透明で合理的なサイト選定手続きの策定、④韓国の実情に適した安全基準の策定、⑤地域住民と国民の合意形成による受容性の確保、などに尽力するとしている。
18 Mar 2025
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仏オラノ社は3月10日、欧州投資銀行(EIB)と、フランス南部のトリカスタン・サイトのジョルジュ・ベスⅡ(GB-Ⅱ)濃縮工場の拡張プロジェクトにおいて、投資の一部である4億ユーロ(約648億円)の融資契約を締結したと明らかにした。この融資は、顧客からの高まる濃縮役務への需要に対応するため、オラノ社がGB-Ⅱ工場のウラン濃縮能力を30%増強するために行っている約17億ユーロ(約2,756億円)の総投資の一部を賄うもの。EIBのエネルギー部門の融資政策および欧州委員会(EC)のREPowerEUプログラムに従い、低炭素電源への移行を加速すると同時に、欧州のエネルギー主権とエネルギー安全保障を強化する欧州戦略の一環である。この融資により、欧州の電力生産の約25%、低炭素電源のほぼ半分を占める原子力発電への支援に貢献するという。仏オラノ社は2024年10月、GB-Ⅱ工場の拡張工事の定礎式を開催した。既存の14基の遠心分離モジュールに4基を増設し、生産能力を30%以上、2,500tSWU/年規模を拡張する。オラノ社は欧州の技術を採用する設備に資金を提供し、大部分はフランスのサプライヤーを利用する。増設した遠心分離機による生産開始は2028年、フル生産は2030年の予定。GB-Ⅱ工場は2011年に遠心分離による生産を開始、2016年には7,500tSWU/年のフル生産能力に達した。なお、ジョルジュ・ベスI工場は、ガス拡散によるウラン濃縮を実施していたが、2012年に閉鎖されている。この拡張プロジェクトは、2023年9月にユーラトム条約に基づく通知の対象となり、ECは2024年10月に肯定的な意見を発表。プロジェクトが同条約を遵守しており、欧州におけるエネルギー安全保障に貢献していると強調した。EIBはREPowerEUプログラムの一環として、エネルギー移行を促進し、エネルギー安全保障と競争力のカギとなる、欧州の自律性の強化に向けたプロジェクトを積極的に支援している。2024年、EIBは欧州のエネルギー安全保障の強化に過去最高の310億ユーロ(約5兆円)の融資を行っている。これにより、再生可能エネルギー、送電網との相互接続、エネルギー効率とエネルギー貯蔵に合計1,000億ユーロ(約16.2兆円)以上の投資を動員することが可能になった。オラノ社は3月6日、ウクライナの原子力発電事業者であるエネルゴアトム社と、2040年までの濃縮役務の提供に関する長期契約を締結した。同社は、ウクライナのエネルギー自立を支援し、欧州のエネルギー安全保障に貢献するという当社のコミットメントの顕れ、としている。
17 Mar 2025
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世界原子力協会(WNA)は濃縮事業者のウレンコ社と3月12日、米テキサス州ヒューストンで開催されている「CERAWeek」において、エネルギー安全保障の提供、および多様なエネルギー集約型産業の電力供給と脱炭素化における原子力の役割に焦点を当てた、セクター横断的なパネルを共催。これに合わせ、大手IT企業を含む14社が、2050年までに世界の原子力発電設備容量を少なくとも3倍に増やすという目標を支持する誓約書に署名した。誓約書に署名したのは、Allseas、Amazon、Bureau Veritas、Carbon 3 Energy (C3E)、Clean Energy Buyers Association (CEBA)、CORE POWER、Dow、Fly Green Alliance (FGA)、Google、Lloyd's Register、Meta、Occidental、ORLEN Synthos Green Energy (OSGE)、Siemens Energyなど、いずれも世界有数の大規模な電力ユーザーだ。この誓約では、原子力が従来の送電網による電力供給を超えて拡大する潜在能力を有し、エネルギー利用者にとりコスト競争力のある事業運営を支える、豊富で持続的なエネルギー源であると言及。また電化率の向上、テクノロジー分野を含む幅広い経済活動、プロセス熱の供給においても、最も信頼性が高く、拡張可能でクリーンなエネルギー源であると指摘する。Meta社エネルギー部門責任者のウルヴィ・パレク氏は、同社が今回の声明を支持した理由について、「コストのかかる原子力発電所の建設という課題を乗り越えるためには、開発業者や電力会社、政府、そして電力ユーザーとの間で大規模な連携が必要だ」と指摘し、「今回の発表は、各国政府に対し原子力発電拡大のための規制緩和を促し、電力会社に対しては『電力を購入する顧客が確実に存在する』というシグナルを送る狙いもある」と説明した。CERAWeek(3月10日~14日)は、米金融サービス企業のS&P Global社が主催する、エネルギーの未来に向けて、政策立案者やエネルギー業界全体が洞察を行う、世界的権威のある年次総会。「2050年までに原子力発電設備容量を3倍に:データセンター、精製所、製造業などへの電力供給における原子力の潜在能力の解放」と題する上記パネルでは、信頼性が高く、クリーンで経済的な原子力を、テクノロジーから石油化学、航空産業などの多様な分野において活用し、世界のエネルギー需要の増加への対応とともに、ビジネスの将来の戦略計画を支援する可能性について議論した。WNAは、業界パートナーとともに、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に増やすという目標(現在、31か国が支持)を達成するため、原子力開発を迅速に進める政策を政府指導者に訴求している。すでに、世界140か国で原子力関連事業を手がける120社・機関も目標に向け最善を尽くすとする誓約に署名するほか、世界有数の金融機関14社がファイナンス支援の表明を行っている。脱炭素化と安定した電力供給の確保を目指す多様な業界で、原子力発電の活用への期待が高まる中、WNAは誓約への参加を呼び掛けるとともに、参加企業はさらに増えると予想している。
14 Mar 2025
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フィンランドで世界初となる使用済み燃料の深地層処分場を建設しているポシバ社は3月4日、地上の使用済み燃料の封入プラントにおける試験操業の完了を明らかにした。最後となる5本目の試験用キャニスターに封入作業を行い、地下430mの貯蔵施設への搬送を成功裡に終えた。なお、実際に使用済み燃料は使用しておらず、非放射性の試験要素を使用している。使用済み燃料は、最終処分がオルキルオトの地下岩盤に行われる前に、地上の封入プラントで鋳鉄製と銅製の二重構造の最終処分用のキャニスターに封入される。封入プラントの試験操業中に、一部の設備では改善の調整作業が必要と判断された。封入のプロセスは、高規格の放射線遮蔽機能を備えた施設で遠隔制御下にて行われ、キャニスターの損傷を想定し、キャニスター1本を封入プラントに戻す、回収試験も実施された。最終処分の試験操業は2024年8月に始まった。ポシバ社は、試験操業は最終処分プロセス全体の機能性と、実際の操業に向けた従業員の準備状況を組織的かつ技術的に検証する重要な段階と捉え、封入プラントの試験操業では、システムや手順の改善に時間を掛けると同時に、全従業員の能力強化と継続的な育成に重点を置いたという。なお、試験操業は、地下設備のすべてで個々の試験が適切に完了後、継続されることになっている。
14 Mar 2025
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日本原子力研究開発機構と筑波大学は3月21日、液体が大量の液滴に分裂する現象を3次元で可視化する手法を開発したと発表した。原子炉の事故時に燃料デブリが形成される過程の理解を深め、福島第一原子力発電所の廃炉への貢献や原子炉の安全性向上につながるもの。〈原子力機構他発表資料は こちら〉今回の研究では、原子炉の過酷事故時、炉内の燃料が溶けて下部の冷却材プールに落下した際、大量の細かな液滴に分裂して広がるという現象に着目。溶融燃料や液滴が冷え固まると燃料デブリとなるのだが、特に、プールが浅い場合、溶融燃料がプール床に衝突しながら液滴に分裂するため、非常に複雑な状況で燃料デブリが形成される。つまり、燃料デブリ形成過程の解明は非常に困難となる。原子力機構と筑波大の研究グループは、溶融燃料が液滴へ分裂する現象を研究対象とし、実験や詳細数値シミュレーション手法の開発を推進。溶融燃料と冷却材を模擬した2つの液体を使用し、大量の微小液滴が発生する現象を実験室レベルで再現することに成功した。しかしながら、液滴の量や一つ一つの大きさを計測することまでは実現できていなかった。今回、研究グループでは、レーザー光の制御が可能な「ガルバノスキャナー」と呼ばれる反射鏡を用いた3次元可視化手法「3D-LIF法」を開発。溶融燃料を模擬した液体の3次元形状データを取得し、コンピューター処理することで、液滴一つ一つの大きさや広がる速さを高精度に計測することが可能となった。「3D-LIF法」をプールに適用し実験を行ったところ、液滴は目視では理解できないほど複雑な広がりを見せたが、他の手法も併用することで、異なる2つの液体の速度差や遠心力による「サーフィンパターン」と、重力による「液膜破断パターン」で発生することが明らかとなった。研究グループでは、「3D-LIF法」が微粒子の動き解明につながることから、内燃機関や製薬など、幅広い分野で適用されるよう期待している。
25 Mar 2025
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経済同友会の新浪剛史代表幹事らは3月22日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を訪問し、中央制御室、7号機オペレーティングフロア、防潮堤などの安全設備を視察した。〈東京電力発表資料は こちら〉視察後、新浪代表幹事は、「福島第一原子力発電所で発生した問題を、いかにすべて起こらないようにするかの対応がしっかり打たれている。想定される問題について、あらゆる対応がなされていることに、驚きとともに敬意を表したい」と強調。さらに、現場で働く人の意識に関して、「『ワンチームであろう』という努力も相当なものと感じた。そういった意味で、安全面で大変努力し、非常に高いレベルであると感じた」と述べた。経済同友会は2023年12月、「『活・原子力』-私たちの未来のために、原子力活用のあり方を提起する-」を公表。既存炉の再稼働にとどまらず、「中長期的なリプレース・新増設については、安全性の高い革新炉の導入を前提として、既成概念にとらわれずに、新たな規制の整備や立地の選定を行うことが望ましい」との考え方を示している。同会は東日本大震災後、「縮・原発」を提唱。「活・原発」では、2050年カーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障の重要性などから、原子力を「活用していく」表現として、見直したものとなっている。新浪代表幹事は、2024年7月の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所により首都圏が受ける電力供給の恩恵に言及。経済団体として、「きちんと『ありがたい』と思う首都圏にしていかなくてはならない」と述べている。原子力規制委員会による審査をクリアした柏崎刈羽6・7号機の再稼働に関しては現在、地元判断が焦点となっている。
25 Mar 2025
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原子力サプライチェーンの維持・強化策について議論する「原子力サプライチェーンシンポジウム」(第3回)が3月10日、都内ホールで開催された。経済産業省資源エネルギー庁が主催し、日本原子力産業協会が共催した。武藤容治経産相の開会挨拶(ビデオメッセージ)、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官の基調講演などに続き、「サプライチェーン強化に向けた取組」と題しパネルセッション(ファシリテータ=近藤寛子氏〈マトリクスK代表〉)が行われた。パネルセッションの前半では、三菱重工業、東芝エネルギーシステムズが、革新型軽水炉として、それぞれ取り組む「SRZ-1200」、「iBR」の開発状況を紹介。サプライチェーンとしては、岡野バルブ製造が自社の取組について発表。同社は、高温高圧バルブを90年以上製造している実績を活かし、2023年より次世代革新炉向けのバルブ開発に取り組んでいるという。パネルセッションの後半では、三菱総合研究所と日本製鋼所M&E、日立GEと四国電力がペアとなって発表し議論。それぞれ、次世代炉建設に必要な人材維持に向けた「技能者育成講座」、原子力発電所におけるAI活用の取組について紹介した。これを受け、原産協会の増井秀企理事長は、ものづくりにおける人材確保の重要性をあらためて強調。原産協会が行う就活イベント「原子力産業セミナー」など、学生・次世代層への働きかけを通じ、「多様な人材確保につながれば」と期待した上で、「情報に触れて自分の頭で考える機会を与える」ことの意義も述べた。また、「サプライチェーンの課題を解決するためには、産官学の緊密な連携が必要」とも指摘。引き続き広報・情報発信に努めていく姿勢を示した。増井理事長は、プレゼンの中でリクルートワークス社による労働需給シミュレーションを紹介し、「2040年に1,100万人の働き手不足が生じる」と危惧し、将来的に「人口減・仕事増の矛盾解消策、総合的な対策が必要」と指摘。同シミュレーションによると、2040年の労働人口不足率は、地域別に、東京都はマイナス8.8%と供給過剰の見通しだが、原子力発電所の立地道府県では、新潟県が34.4%と全国的に最も厳しく、女性の就業率が高いとされる島根県では0.9%と、地域間のギャップが顕著となっている。同シンポジウムの初開催(2023年3月)に合わせ設立された「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の会員企業は現在、約200社に上っている。パネルセッションの前半と後半の合間に、NSCP参画企業約20社によるポスターセッションが行われた。パネルセッションの締めくくりに際し、行政の立場から、文部科学省原子力課長の有林浩二氏がコメント。業種の枠を越え交流が図られたポスターセッションについては「いかに企業が若い人材を確保することが大変か」との見方を示した上、北海道大学で制作・公開が始まっている誰もが利用可能なオンライン型「オープン教材」の企業内教育における活用などを提案。また、資源エネルギー庁原子力政策課長の吉瀬周作氏は、国際展開の見通しにも言及し「若者に未来を示すことが出発点」、「しっかりと次世代にバトンをつないでいくことが必要」、「新たなチャレンジを」と所感を述べ、産官学のさらなる連携強化の必要性を示唆した。なお、電気業連合会の林欣吾会長は、3月14日の定例記者会見で、今回のシンポジウムに関し、先に決定されたエネルギー基本計画にも鑑み「サプライチェーンの維持には、事業予見性の向上はもとより、技術・人材を維持する観点から、国が具体的な開発・建設目標量を掲げることが重要だと考えている」とコメント。さらに、「将来にわたり持続的に原子力を活用していくには、いずれ新増設も必要になると考えている」とも述べている。
24 Mar 2025
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)が3月24日、第7次エネルギー基本計画の閣議決定(2月18日)後、初めて開かれた。〈配布資料は こちら〉冒頭、資源エネルギー庁の久米孝・電力・ガス事業部長が挨拶。前回、2024年11月の小委員会以降の国内原子力発電をめぐる動きとして、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機の再稼働をあげた。これに続き、原子力政策課が最近の原子力に関する動向を説明。新たなエネルギー基本計画の概要についてもあらためて整理した。今回は、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)に基づく原子力発電の運転期間(電気事業法)に関し議論。同法では、「運転期間は最長で60年に制限する」という従前の枠組みは維持した上で、事業者が予見し難い事由による停止期間に限り、運転期間のカウントから除外する、いわゆる「時計を止める」ことが規定されている。同規定は6月6日に施行となるが、認可要件に係る審査基準の考え方が、資源エネルギー庁より示され、「事業者自らの行為の結果として停止期間が生じたことが客観的に明らかな場合」については、カウント除外の対象には含めないとされた。事例として、柏崎刈羽原子力発電所での核燃料物質移動禁止命令、敦賀発電所2号機の審査における地質調査疑義に伴う停止期間をあげている。委員からは、杉本達治委員(福井県知事)が、立地地域の立場から、原子力政策の明確化を引き続き要望。六ヶ所再処理工場の竣工時期変更に鑑み、核燃料サイクル事業に関し国が責任を持って取り組むよう、具体的枠組みを早急に検討すべきとした。運転期間延長認可について、遠藤典子委員(早稲田大学研究院教授)は、「現在の最大60年という規定は科学的根拠が乏しい」と述べ、主要国における長期運転の動向も見据え、中長期的視点からの制度整備検討を要望。長期運転に関し、同小委員会の革新炉ワーキンググループ座長を務める斉藤拓巳委員(東京大学大学院工学系研究科教授)は、プラントの劣化管理におけるリスク情報の活用などを、小林容子委員(Win-Japan理事)は、規制の観点から、国内では原子炉圧力容器の中性子脆化を調査する監視試験片の数が十分でないことを指摘し、原子力規制委員会の国際アドバイザーの活用を提案。原子力技術に詳しい竹下健二委員長代理(東京科学大学名誉教授)は、学協会の活用、国際組織によるレビューに言及した。新たなエネルギー基本計画に関する意見では、次世代革新炉の開発・設置に取り組む方針が明記されたことに対する評価は概ね良好。一方で、長期的見通しの深掘りなど、不十分な部分を指摘する発言もあった。専門委員として出席した日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、サプライチェーン・技術継承・人材確保の重要性を強調したほか、次世代革新炉の開発に関する事業環境整備の必要性を指摘した。〈発言内容は こちら〉運転期間延長認可の要件に係る審査基準については、今後パブリックコメントに付せられ、成案決定となる運び。
24 Mar 2025
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関西電力は3月14日、大飯発電所1・2号機から発生したクリアランス金属を加工し製作したリサイクルベンチを美浜町の公共施設、発電所のPR施設に設置したと発表した。同社の原子力発電所で発生したクリアランス金属の再利用製品が一般供用の施設に設置されるのは初めてのこと。〈関西電力発表資料は こちら〉大飯1・2号機は、いずれも1979年に運開した100万kW級のPWRだが、新規制基準への適合が困難なことなどから、2017年12月に廃炉が決定。現在、廃止措置が進められている。このほど、リサイクルベンチが設置されたのは、美浜町の公共施設「道の駅若狭美浜」と大飯発電所のPR施設「エルガイアおおい」だ。リサイクルベンチの素材はステンレス製で、寸法は幅約150cm、高さ約40cm、奥行き約45cmで、総重量約230kg中、約188kgのクリアランス金属が使用されている。ベンチの座面は木材で、クリアランス金属の使用箇所はベンチの部分となる。関西電力では、原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物の低減に向けて取り組むとともに、クリアランス制度を活用し循環型社会の形成に貢献していくとしている。
19 Mar 2025
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量子科学技術研究開発機構(QST)と日本電信電話(NTT)は3月17日、核融合エネルギーの実用化に向けて重要なプラズマ閉じ込めに適用するAI予測手法の確立を発表した。QSTとNTTは2020年に連携協力協定を締結。核融合エネルギー開発に関して、QSTは国際プロジェクトとなるITER計画を始め、それを補完する日欧協力「幅広いアプローチ」活動の一つとして、トカマク型実験装置「JT-60SA」(QST那珂研究所)の開発を進めてきた。NTTも総合資源エネルギー調査会に参画し、通信ネットワーク産業の立場から、革新的原子力技術の重要性を訴えてきた。核融合エネルギーの実用化に向けて、プラズマ閉じ込めが重要な技術課題の一つとなっている。今回の発表においても、両者は「計算量の大きな複雑な方程式を解く操作を段階的に行わなくてはならない」と、制御が困難なプラズマ閉じ込めに係る背景として、演算手法を確立することの重要性を強調。こうした背景から「混合専門家モデル」と呼ばれる複雑な状態を評価する新たな手法を開発した。同手法を「JT-60SA」に適用し、プラズマ閉じ込め磁場を評価した結果、従来手法では不可能だった「プラズマの不安定性を回避するために重要となるプラズマ内部の電流や圧力の分布まで、複数の制御量をリアルタイムに制御できる見通し」が得られたという。核融合エネルギーの実現に向けては、ITER計画に続き、発電実証を目指す原型炉開発の検討が文部科学省のワーキンググループで進められているほか、内閣府でも核融合の安全確保の考え方に関しパブリックコメントが行われた。ベンチャー企業を含む産業界の関心も高まりつつある。QSTは、NTTの通信ネットワーク構想「IOWN」を始めとし、先進技術を核融合研究開発に適用しながら、早期実用化に向け取り組んでいくとしている。
18 Mar 2025
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は3月13日、資源の有効利用や脱炭素化への貢献が期待される「ウラン蓄電池」を開発したことを明らかにした。〈JAEA発表資料は こちら〉軽水炉(通常の原子力発電所)の燃料となるウランは、核分裂を起こしやすいウラン235が約0.7%、核分裂を起こしにくいウラン238が約99.3%含まれており、燃料集合体に加工して原子炉に装荷する際、核分裂の連鎖反応を持続させるため、ウラン235の割合を3~5%まで濃縮する必要がある。今回の研究開発では、濃縮の工程で発生するウラン235含有率が天然ウランより低い「劣化ウラン」に着目。「劣化ウラン」は、軽水炉の燃料には使用できないため、「燃えないウラン」とも呼ばれる。今回、JAEAは、ウランの化学的特性を利用し資源化を図ることで、再生可能エネルギーの変動調整にも活用できる「ウラン蓄電池」を開発した。原子力化学の技術で資源・エネルギー利用における相乗効果の発揮を目指す考えだ。「劣化ウラン」保管量は日本国内で約16,000トン、世界全体では約160万トンにも上っており、JAEA原子力科学研究所「NXR開発センター」は、資源利用としての潜在的な可能性を展望し、研究開発に本格着手。電池はイオン化傾向の異なる物質が電子をやり取りする酸化還元反応を利用し、電気エネルギーを取り出すのが原理。その電子数(酸化数)が3価から6価までと、幅広く変化する化学的特性を持つウランについては、充電・放電を可能とする物質として有望視され、2000年代初頭「ウラン蓄電池」の概念が提唱されてはいたものの、性能を実証する報告例はなかった。同研究で開発した「ウラン蓄電池」では、負極にウランを、正極に鉄を、いずれも酸化数の変化によって充電・放電を可能とする「活物質」として採用。つまり、蓄電池の充電・放電には、ウランイオンと鉄イオン、それぞれの酸化数の変化を利用するのが特徴。今回、試作した「ウラン蓄電池」の起電力は1.3ボルトで、一般的なアルカリ乾電池1本(1.5ボルト)とそん色なく、実際に、充電後の蓄電池をLEDにつなぐと点灯を確認。電池の分極は電圧降下を来す化学現象だが、試作した蓄電池では、充電・放電を10回繰り返しても性能はほとんど変化しなかったほか、両極とも電解液中に析出物が見られず、安定して充電・放電を繰り返せる可能性が示された。原子力発電に必要なウラン燃料製造に伴い発生したこれまで利用できなかった物質が、別のエネルギー源の効率化につながる「副産物」として活かせる可能性が示されたこととなる。「NXR開発センター」は、「新たな価値を創造し社会に提供する」ことを標榜し、2024年4月に開設された新組織。同センターは3月13日、オリジナルサイトを開設し、研究成果の発信に努めている。
17 Mar 2025
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政府の原子力災害対策本部は3月7日、飯舘村・葛尾村に設定された帰還困難区域の一部を、3月31日午前9時に解除することを決定した。原子力災害に伴う避難指示の解除は、富岡町の一部地域における2023年11月以来のこと。帰還困難区域について、線量の低下状況も踏まえ避難指示を解除し居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」が6町村に設定されていた。 「特定復興再生拠点区域」の避難指示解除が完了したのに続き、今回の飯舘村・葛尾村における解除は、原子力災害対策本部が2020年12月に決定した「特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除」に基づくもの。帰還・居住に向けた避難指示解除とは異なり、住民が日常生活を営むことが想定されない事業用の土地活用が主目的。飯舘村については堆肥製造施設用地および周辺農地(イイタテバイオテック社)、葛尾村については葛尾風力・阿武隈風力発電事業用地(葛尾風力社・福島復興風力社)の用地がそれぞれ対象。飯舘村の施設では、脱水汚泥や畜糞などを乾燥させ堆肥原料を製造。乾燥のための燃料として、重油に加え、資源作物とされるソルガムを栽培し活用する。葛尾風力発電所では村内に3,200kWの発電機を5基、阿武隈風力発電所では4自治体を跨いで同規模の発電機を46基設置。風力発電機は、良好な風を受ける阿武隈山地の稜線に設置し、観光拠点として展望エリアも整備する計画だ。
13 Mar 2025
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日本原子力研究開発機構はこのほど、福島第一原子力発電所の廃炉作業の加速化に資するアルファ線検出器を開発した〈原子力機構発表資料は こちら〉同機構福島廃炉安全工学研究所によるもの。福島第一原子力発電所の廃炉作業では、アルファ核種を含むダスト(アルファダスト)による内部被ばく評価が重要とされるが、従来の測定器では、全体の放射能量しか測れず迅速な評価が困難だった。同研究所の環境モニタリンググループは、ガラス研磨剤などに用いられるセリウムを用いた従来の約8倍の精度を有する「YAP Ce(セリウム)シンチレータ」を開発し、国内では困難なアルファダストの実試料を用いた性能確認試験を、米国エネルギー省(DOE)のサバンナリバ―国立研究所(SRNL)の協力で実施。現地でエネルギーレベルの異なる2種類のアルファ線核種として、プルトニウム238、ネプツニウム237を含む酸化物粒子のサンプルを用いた試験を実施した結果、いずれも現場でリアルタイムに識別測定できることが実証された。研究グループでは、新たな検出器が迅速にアルファ線をイメージングできることから、医療分野での応用にも期待を寄せている。
13 Mar 2025
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経済産業省資源エネルギー庁と日本原子力産業協会は3月10日、国内原子力関連企業による海外展開や事業承継、人材育成支援など、原子力サプライチェーンの維持・強化策について議論する「原子力サプライチェーンシンポジウム」を都内ホールで開催した。会場・オンライン合わせて約600名の参加があった。 開会に際し、ビデオメッセージを寄せた武藤容治経産相は、先月閣議決定された第7次エネルギー基本計画に言及し、既設炉の再稼働と運転期間延長を最重要課題にあげたほか、将来の次世代革新炉の開発に向けて、「サプライチェーンと人材確保は必須の課題」と述べ、同シンポジウムの開催意義を強調した。 毎年3月に開催されている同シンポジウムは今回で3回目となる。2023年に経産省より「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の設立発表に合わせ開催され、2024年の開催時には、来日中だったR.M.グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長も出席するなど、海外からも注目を集めている。NSCP設立以降、経産省では、国内サプライヤーからなる視察団の海外派遣、セミナー・意見交換会・座談会の開催、原子力関連企業約400社を対象としたヒアリングなど、原子力人材育成支援も含めた支援策を積極的に展開している。 「原子力産業の現在と未来」と題するセッションでは、総合資源エネルギー調査会革新炉WGの座長を務める斉藤拓巳氏(東京大学教授)、電気事業連合会副会長の佐々木敏春氏がそれぞれの立場から事業の予見性確保の重要性を強調した。 パネルセッションは、近藤寛子氏(マトリクスK代表)がファシリテーターを務め、大手メーカーの他、中小サプライチェーン企業からもパネリストが登壇し、次世代革新炉の開発・建設に向けた取組、供給途絶対策、国際連携、人材確保・育成について議論。同じく登壇した経産省と文科省の担当課長は、省庁が連携した取組の重要性を強調した。 今回もポスターセッションが行われ、革新炉開発に取り組む大手メーカーの他、プラントの健全性を支えるバルブ・配管等を製造する中小企業も参加。海外展開も見据えて、それぞれの強みをアピールしていた。
11 Mar 2025
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資源エネルギー庁はこのほど、中高生を対象として、「エネルギー政策~エネルギー安定供給と脱炭素社会の実現の両立~」とのテーマで、政策提案型パブリック・ディベート全国大会(実行委員会委員長=江間史明・山形大学大学院教育実践研究科教授)をオンラインで開催。3月1日に日本科学未来館(東京都江東区)において、優勝チームらの表彰式が行われた。〈エネ庁発表資料は こちら〉本大会は、ディベート形式を通じた直接討論を通じて、地域を越えた交流を図り、次世代層に対し日本のエネルギーの未来について考えさせるのがねらい。2回目となる今回、折しも第7次エネルギー基本計画の検討時期となったが、「エネルギーの未来をつくるのは君だ!」と標榜し、提案を募集。中学生16校37チーム、高校生24校47チームから応募があり、それぞれ16チームがリーグ戦討論に参加。高校生の部では岐阜県立岐阜高校、中学生の部では慶進中学校(山口県)が優勝した。ディベートでは、 (1)社会の課題を解決するための従来にない着眼点があるか (2)政策を支える大事な理念や価値観を示すとともに実現可能な実施方法が考えられているか (3)提案された政策の実行によりどの程度の効果が見込まれるか――との観点から審査。高校生の部で2連覇を果たした岐阜高校は今回、送電ロスの課題に着目。フレキシブルな着脱が可能なペロブスカイト型太陽電池、マイクロ水力発電の活用などにより、年間約9.35億kWhの送電ロスを軽減する試算を示した。中学生の部で準優勝を獲得した中央大学附属中学校(東京都)は、「CARBON 30+30」(カーボンサーティサーティ)と題する政策を提案。カーボンニュートラルの実現につき「2030年から30年かけて実行する」ことを目指し、2030年以降の原子力発電所の再稼働推進、火力発電の依存度低減、再生可能エネルギーの技術向上などを展望している。実行委員長の江間氏は、「実によくリサーチをして政策を提案してくれた」と高く評価。将来の革新炉開発に関しても、高温ガス炉を利用した政策提案などもあったことから、今大会を出発点に「中学生や高校生の皆様のエネルギー問題への関心がさらに広がっていくことを期待する」とのメッセージを送った。
06 Mar 2025
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内閣府(科学技術政策)は3月18日まで、核融合エネルギーの安全規制の検討に向け、その前提となる指針「フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方(素案)」についてパブリックコメントを募集している。政府の統合イノベーション戦略推進会議による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づき、2024年3月、内閣府の呼びかけにより核融合エネルギーの産業化を目指す「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会」(J-Fusion)が設立された。ITER(国際熱核融合実験炉)計画の進展を踏まえ、核融合による将来の発電実証が行われるよう、民間企業の積極的参画を見据えたものだ。これを受け、同年5月からは、「フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方検討タスクフォース」が立ち上がり、検討が進められてきた。今回、取りまとめられた基本的な考え方では、まず、核融合装置の法令上の位置付けを整理。燃料としてトリチウムを使用し放射線を発生することが想定されることから、「放射性同位元素等の規制に関する法律」(RI法)の規制対象となるとしている。実際、量子科学技術研究開発機構の「JT-60SA」、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置「LHD」などが、「プラズマ発生装置」として該当している。その上で、世界各国での多様な方式による核融合エネルギー実現に向けた取組の進展、今後数年間でパイロットプラントや原型炉の建設が行われる可能性を見据え、「予見性を高め、民間企業の参画やイノベーションを促進する観点から、安全確保の枠組みの整備が急速に求められる」と、問題意識を強調。今後検討すべき課題を、法的枠組み、安全確保の枠組みを検討する体制、知見の蓄積、セキュリティと不拡散に整理し、「規制当局と安全確保のあり方について対話するなど、早期の検討が不可欠」と述べている。2月26日の原子力規制委員会定例会合では、本件について取り上げられ、開発の現状や今後の見通しについて、事業者を招き公開の場でヒアリングを実施する方針が了承された。
05 Mar 2025
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