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26 Nov 2025
431

新潟県 柏崎刈羽の再稼働に関する補正予算案を提出へ
海外NEWS
26 Nov 2025
362

米DOE TMI-1の運転再開に向けて10億ドルを融資
海外NEWS
26 Nov 2025
693

中国の熔融塩実験炉がトリウムからウランへの転換を達成 世界初
海外NEWS
26 Nov 2025
322

米Xエナジー社 SMR燃料工場の建屋建設進展 照射試験も開始
海外NEWS
25 Nov 2025
458

中国 CGNが「華龍一号」を2サイトで連続着工
国内NEWS
25 Nov 2025
764

新潟県 柏崎刈羽6、7号機の再稼働を容認へ
海外NEWS
21 Nov 2025
662

スウェーデン ウラン採掘を解禁へ
国内NEWS
21 Nov 2025
774

伊方1号機の廃炉作業に進展 廃止措置計画が第2段階へ移行

米エネルギー省(DOE)は11月18日、DOEの融資プログラム局(LPO)が電力大手のコンステレーション・エナジー社と10億ドルの融資契約を締結したと発表した。同社がペンシルベニア州で所有する、クレーン・クリーン・エナジー・センター(旧称:スリーマイル・アイランド原子力発電所)1号機(PWR、89万kWe)の運転再開を支援する。同融資は、2025年7月に成立した「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」(OBBBA)(=ワーキングファミリー減税法)に基づき推進されている「エネルギー支配資金(EDF)プログラム」(貸出枠2,500億ドル、2028年9月30日まで)から拠出される。同1号機は1974年に営業運転を開始したが、安価なガス火力との競合で経済性が悪化し、2034年まで運転認可を残したまま2019年に閉鎖された(同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進行中)。コンステレーション社は今年6月、最短で2027年の運転再開を目指す方針を示しており、米原子力規制委員会(NRC)による許認可を得た上で運転再開する。運転再開後は約80万世帯分に相当する電力供給が可能となり、電気料金の抑制、雇用創出、系統信頼性の強化に寄与するとされる。AI関連の電力需要の増加傾向が続く中、米政権が目指す「AIイノベーション主導」と国内製造業再興に資する点も強調されている。一方、同社は11月4日、メリーランド州で最大580万kWeの新規発電および蓄電を含む大規模エネルギープロジェクトに対する数十億ドルの短・長期の投資計画を公表した。電力需要の増加に対応しつつ、電気料金の引き上げを回避し、同州の経済成長を支える次世代のクリーン電源の導入を目指している。長期的には、同社のカルバートクリフス原子力発電所の既存炉2基(PWR、各90万kW級)の運転期間延長(80年運転)と出力向上を行い、2034年と2036年に予定された閉鎖を回避する考えだ。これに加えて、同サイトで約200万kWe規模の次世代炉新設も検討しており、同発電所の合計出力を400万kWe規模へと実質倍増させる計画である。これらが実現すれば、現在50%強を占める州のクリーン電源比率が約70%へ引き上げられる見込みだ。なお、カルバートクリフス発電所2号機では、仏フラマトム社製のPROtect事故耐性燃料集合体が照射試験されている。同先行燃料集合体(LFA)は、DOEの事故耐性燃料プログラムを通じて開発されたもので、2021年に商業炉としては初装荷された。2023年春、2025年春の燃料交換停止時に各24か月運転サイクル後の検査を実施。この48か月の運転において、堅牢な燃料特性が設計通りに機能していることが確認され、2027年春に3回目の運転サイクルを完了予定。その後、DOE傘下の国立研究所に送られ、許認可取得活動の一環として、照射後試験を実施する。LFAは2019年のコンステレーション社との契約に基づき、ワシントン州リッチランドのフラマトム社の施設で製造。176本のクロム被覆燃料棒とクロミア添加燃料ペレットが含まれ、炉心の変化に対する耐性の向上、高温条件下での腐食や水素生成の抑制が期待されている。フラマトム社、GEベルノバ社、ウェスチングハウス社はいずれも、2030年までに事故耐性燃料が広く採用されることを目指し、全国の商業炉で試験を実施しているところ。DOEは事故耐性燃料の利用は、既存炉の経済性と性能の向上に寄与し、トランプ米大統領が掲げる2030年までに既存炉による500万kWeの電力供給の目標を支える可能性があると指摘している。
26 Nov 2025
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中国科学院の上海応用物理研究所(SINAP)は11月1日、同研究所が中心となって、甘粛省のゴビ砂漠に建設した0.2万kWt液体燃料トリウム熔融塩実験炉(TMSR-LF1)において、トリウム(Th-232)からウラン(U-233)への転換を実現したことを明らかにした。同炉は現在、世界で唯一、トリウム燃料を投入して運転を行っている熔融塩炉。熔融塩炉は、高温の熔融塩を冷却材とする第4世代炉であり、固有の安全性、水冷却不要、常圧運転、高温出力などの特長を持つ。1960年代には米国のオークリッジ国立研究所でトリウム熔融塩炉の開発が推進され、1964~1969年にフッ化物熔融塩実験炉が稼働。1970年代には熔融塩増殖炉の開発が進められたが、1976年の政策変更等により熔融塩炉研究開発はすべて中止された。一方、中国は、トリウム資源の大規模開発・利用を通じ、トリウム熔融塩炉の研究開発を進め、太陽光・風力発電、熔融塩蓄熱、高温熱による水素製造などとともに、多様なエネルギーが相互補完する低炭素複合エネルギーシステムを構築し、自国のエネルギー安全保障を強化していく方針である。中国はレアアース(希土類元素)の世界最大の供給国であるが、レアアース鉱にはトリウムが約10%含まれており、トリウムは豊富に存在する。2011年、中国科学院は国家のエネルギー安全保障と持続可能な発展という戦略的ニーズに応えるため、戦略的先導科学技術特別プロジェクト「未来先進原子力―トリウム熔融塩炉原子力システム」を立ち上げ、専門の研究開発チームを結成した。2017年11月、実験炉のサイトに甘粛省武威市を選定。2020年1月に着工し、2023年6月に中国国家核安全局が運転認可を発給。2023年10月に初臨界を達成し、2024年6月に定格出力での運転を実現した。2024年10月にはトリウム投入を完了し、世界に先駆けて独自の特徴を備えた熔融塩炉とトリウム・ウラン燃料サイクル研究プラットフォームを構築。今回、トリウム(Th-232)が中性子を吸収し、核分裂の連鎖反応を引き起こすウラン(U-233)に転換したことを実験データによって確認した。発表によると、実験炉の国産化率は90%以上、重要な炉心設備は100%国産化を実現し、トリウム熔融塩炉関連技術のサプライチェーンは、すでに中国でほぼ構築されているという。
26 Nov 2025
693

米国のX-energy社(以下:Xエナジー社)は11月17日、テネシー州オークリッジで建設中の先進炉「Xe-100」向けTRISO燃料製造施設「TX-1」において、建屋の地上部工事を開始したと発表した。今年8月には、同社子会社のTRISO-X社が米クラーク・コンストラクション・グループと4,820万ドル(約75億5000万円)で建屋建設契約を締結しており、今回の工事では約2万平方メートル規模の施設本体を建設する。操業開始および初号燃料の製造開始は2027年を予定している。Xエナジー社が開発中のTRISO燃料「TRISO-X」は、ビリヤード球大の“ぺブル状”に成形され、中心のウラン燃料核を炭素とセラミックの複数層で被覆する構造を持つ。高温環境でも溶融せず、放射性物質の放出を抑制する高い健全性が特徴とされる。この燃料を使用するXe-100実証プロジェクトは、米エネルギー省(DOE)が先進炉展開の加速を目的に創設した先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の支援対象であり、5~7年以内の実証運転を目指す二炉型の一つとして位置づけられている。DOEは総事業費の最大50%を負担する。さらにXエナジー社は11月6日、米アイダホ国立研究所(INL)において、TRISO-X燃料の商業利用に向けた性能確認照射試験を開始した。DOEおよびINLの国立原子炉イノベーションセンター(NRIC)と連携して実施するもので、13か月間、出力・温度・燃焼度などの想定運転条件下で燃料の健全性を検証する。商業用SMR燃料が米国で本格的な照射試験を受けるのは初めてであり、その後は、INLおよび米オークリッジ国立研究所で照射後試験(PIE)が行われる予定である。TX-1は完成後、米原子力規制委員会(NRC)による初のカテゴリーII(※)燃料製造施設として認可される見通しで、米国では50年以上ぶりの新規燃料施設となる。操業により地域で400人以上の雇用が生まれ、年間約70万個のTRISO燃料を製造する計画だ。これはXe-100換算で11基分の燃料供給能力に相当し、ダウ・ケミカル社と建設を進めるテキサス州シードリフトのロング・モット(Long Mott)発電所(Xe-100×4基)向けに供給される見通しである。※カテゴリーIIは、一定量の核物質を扱う施設に適用される規制区分で、高い物理的防護と核不拡散対策が義務付けられている。
26 Nov 2025
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中国では11月18~19日の2日間で、中国広核集団(CGN)による「PWR=華龍一号(HPR1000)」の新規建設が2サイトで相次いで始まった。三澳原子力発電所(浙江省)3号機が着工11月19日、浙江省温州市で三澳(Sanaocun)原子力発電所3号機(華龍一号、121.5万kWe)が着工した。三澳プロジェクトは2007年にサイト調査が開始され、2015年に国家能源局が総計6基のサイト取得・整備作業等の実施を承認。2024年8月には国務院常務会議がII期工事として3‒4号機の建設を承認し、今月13日に国家核安全局(NNSA)が建設許可を発給した。I期工事の1・2号機(各120.8万kWe)は、2020年12月31日と2021年12月30日にそれぞれ着工している。プロジェクト完成後、浙江省および長江デルタ地域に年間540億kWh超の電力供給が見込まれている。招遠原子力発電所(山東省)1号機も前日に着工前日の11月18日には、山東省煙台市で招遠(Zhaoyuan)原子力発電所1号機(華龍一号、121.4万kWe)が着工した。招遠プロジェクトも6基の「華龍一号」建設を計画しており、省内の原子力・風力・太陽光・蓄電を統合したクリーンエネルギー産業クラスター形成を担う重点プロジェクトである。2024年8月に国務院がI期工事として1‒2号機の建設を承認し、NNSAが今月13日に建設許可を発給した。本プロジェクトでは、「華龍一号」に初めて二次系循環冷却技術を採用し、高さ203m、散水面積16,800㎡となる自然通風冷却塔6基が設置される予定である。この冷却塔により、タービン建屋の直接冷却源は海水から大気へと切り替えられ、海水は補給水としてのみ使用される。海水を大量に汲み上げて循環させるポンプや海水処理設備の稼働による電力消費を抑え、冷却水のリサイクルを実現して冷却水源の安全確保が可能になるとしている。自然通風冷却塔はその大きな貯水容量により、外部からの補給水が途絶える特殊な状況でも、少なくとも2時間は原子炉の継続運転を確保。また本プロジェクトでは、「華龍一号」に対して初めて原子力級の機械通風冷却塔を配置。大容量の貯水池を備え、補給水が失われた状況でも、原子炉に対して30日以上の冷却能力を提供し、原子炉側の冷却安全性を一層強化するという。中国の原子力発電所は通常、沿岸沿いにあるが、将来的には、内陸地での原子力プロジェクトの開発を視野に入れる。同建設プロジェクト完了後、発電量は年間500億kWhに達し、約500万人の年間電力需要および生活需要を満たす規模になると予測されている。さらに同発電所は、山東省膠東半島におけるクリーン暖房ネットワークに利用され、原子炉1基あたり約1,000トン/時の蒸気供給を行い、発電所周辺地域を含む、1,500万㎡以上の範囲をカバーする計画。今後、産業用蒸気や原子力水素生産、海水淡水化などでの利用も検討されている。
25 Nov 2025
458

スウェーデン議会は11月5日、ウラン採掘を再び可能とする政府提案を賛成多数で承認した。2018年から続いていた探査・採掘禁止を撤廃し、2026年1月1日に施行される。同国は2035年までに大型原子炉2基、2045年までに小型モジュール炉(SMR)を含む10基相当の新増設を進める方針を示しており、エネルギー安全保障や脱炭素に向けて、原子力推進を着実に進めている。ウラン採掘の禁止は、放射性廃棄物管理や環境負荷などへの懸念から、2018年の環境法改正で導入されたもの。しかし近年、ネットゼロ目標達成や原子力拡大の必要性が高まる中、政府は資源政策の見直しにも踏み切った。今回の改正では、ウランが社会的有用性の高い「コンセッション鉱物」に分類され、許認可手続きが鉄鉱石や銅など他の鉱物と同じ枠組みに統一される。少量のウランを扱う事業では自治体の拒否権が廃止され、許可申請も不要となる。今回の決定により、外国企業による投資機会も拡大する見通しだ。豪州のオーラ・エナジー(Aura Energy)社はスウェーデン北部にあるヘガーン鉱床を100%保有しており、ウラン抽出が可能になることで資源開発価値が高まるとして歓迎のコメントを発表。同社エグゼクティブ・チェアマンのP. ミッチェル氏は「スウェーデンには欧州で確認されているウラン資源の約27%があるとされ、商業的ポテンシャルは極めて大きい。世界的に原子力の役割が再評価される中、ウランを廃棄物ではなく、資源として有効活用することは合理的だ」と述べた。
21 Nov 2025
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国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30、ブラジル・ベレン)で11月17日、世界原子力協会(WNA)主催、日本原子力産業協会(JAIF)、カナダ原子力協会(CNA)、欧州原子力産業協会(Nuclareurope)の共催による公式サイドイベント“Meeting the growing demand for clean electricity and heat with nuclear energy”が開催された。2023年にUAEのドバイで開催されたCOP28における、2050年までに世界の原子力設備容量を3倍化するとの国際宣言の進展状況と、クリーンエネルギー移行における原子力の役割をテーマに意見交換が行われた。3倍化宣言に署名した国は、先週新たに加わったセネガルとルワンダを含め、33か国に拡大。また、新規原子力プロジェクトへの資金供給を約束した16の主要金融機関にSTEFLとCIBCの2行が加わっている。冒頭講演した東京大学公共政策大学院の有馬純客員教授は、ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫化、深刻化する気候変動と電力価格の高騰を背景に、エネルギー安全保障・脱炭素・価格抑制を同時に満たす現実的な選択肢として原子力が再評価されていると指摘。日本が第7次エネルギー基本計画で原子力と再エネを組み合わせる「包括的アプローチ」に転じたことは、世界的な潮流と軌を一にすると述べた。また、WNAのJ.コブ気候問題上級責任者は、11月14日にWNAが公開した「World Nuclear Outlook 2025」のプレビューとして、人口増加やAI・デジタル化により世界の電力需要は大幅に増加する一方、既存炉の長期運転や建設中・計画中の炉を積み上げれば、各国目標を総合して、2050年に12億kWe規模の原子力設備が十分達成可能だと報告した。ただし、「3倍化目標の実現には、各国政府や産業界、金融機関、規制当局が一体となった迅速な行動が不可欠」との認識を示し、原子力を電力用途だけでなく産業用熱供給やオフグリッド用途にも展開しながら、ウラン採掘、転換、濃縮、燃料製造など燃料サイクル全体の拡充も不可欠だと強調した。その後のパネル討論には、JAIFの増井秀企理事長が参加。日本が3倍化宣言に署名した意義について、「日本のエネルギー政策にとって強い追い風となり、『原子力依存度の低減』から『原子力の最大限活用』へと政策転換を後押しした」と強調した。そのうえで、原子力の位置付けが国際的にも明確になったことで、「世界的な推進機運と各国間の協力強化を促す契機となり、日本の産業界にはサプライチェーン維持や輸出拡大への期待が生まれている」と述べた。国内情勢については、エネルギー安全保障への懸念や電力価格の上昇、脱炭素技術としての役割が再認識されるなかで、「原子力に対する国民の支持は福島第一原子力発電所事故直後から大きく回復しつつある」と説明。運転再開地域では電気料金の抑制効果も見られ、「原子力をめぐる構造的変化が日本全体の新たなエネルギー政策を支えている」との見方を示した。一方、日本の金融機関、官民連携、国際協力は、原子力バリューチェーン全体での投資加速にどのような役割を果たせるかとの問いに対して、増井理事長は、日本の原子力新設に向け、資金調達や投資回収の制度が見直されつつあると説明。自由化された電力市場では、建設・運転・廃炉を含む長期事業への資金投入は困難だが、政府の金融支援や2024年開始の長期収入保証制度により、新設プロジェクトへの道が開かれつつあり、福島第一原子力発電所事故以降、途絶えていた新増設も、政策転換や関西電力の地質調査の開始など、現実的に再開可能の兆しがみえてきたと評価した。また、JAIFが設立した原子力国際協力センター(JICC)を通じ、原子力導入を目指す国々へ研修・支援を続けていることを紹介し、「3倍化宣言を実行に移すには、政府・産業界・金融界・市民社会を横断した国際的な協力こそが成功のカギだ」と訴えた。会場からは、送電網強化や投資環境整備、人材育成など、原子力を含む低炭素電源拡大に必要な制度面の整備を求める声が上がった。原子力3倍化への道筋は描かれつつあり、今後は「宣言から実行へ」と移せるかどうかが問われる局面に入っている。■N4C、COP30に合わせポジション・ペーパー発表COP30の開催に合わせ、世界150以上の原子力関連組織が参加する「Nuclear for Climate(N4C)」は11月12日、ポジション・ペーパーを公表した。各国政府に対し、パリ協定の2030年目標とネットゼロ達成に向け、原子力を包括的な気候問題へのソリューションとして政策支援の対象に位置付けること、特にグローバル・サウスの持続的成長に資する投資環境整備を加速するよう強く求めている。【N4Cポジション・ペーパーPDFへのリンク】(日本語版)
19 Nov 2025
874

ブラジルの原子力発電事業者であるエレトロニュークリア社(Eletronuclear)は11月5日、建設が中断しているアングラ原子力発電所3号機(PWR、140.5万kWe)について、ブラジル国立社会経済開発銀行(BNDES)が実施した最新の調査報告書を公表した。同報告書では、建設プロジェクトを放棄した場合に発生する総費用が、建設を完了させる場合を上回る可能性が示されており、建設継続の費用優位性が裏付けられた形だ。調査結果は鉱山エネルギー省(MME)に提出され、国家エネルギー政策評議会(CNPE)が最終判断を下す見通しである。調査によれば、建設完了に必要な費用は239億レアル(約6,970億円)、一方で放棄した場合の費用は220億~260億レアル(約6,400億~7,600億円)に達するとした。放棄した場合、維持管理費として年間約10億レアル(約29億円)の負担も発生する。同機の建設進捗率は66%で、これまでに約120億レアル(約3,500億円)が投じられている。両者の差は大きくないものの、放棄を選択した方が国の財政的負担は大きくなると結論付けた。また報告書は、操業開始後の電気料金を778~817レアル/MWh(約2万2,700~2万3,800円/MWh)と試算。昨年の試算値である653レアル/MWh(約1万9,100円/MWh)から上昇した。建設遅延や金融コストの再評価が上昇要因とされるが、それでも同地域の火力発電所の平均値と比較しても依然として下回るという。アングラ3号機は1984年に着工したが、景気後退や汚職調査の影響で1986年と2015年の2度中断。2022年に工事が再開されたものの、2023年には地元自治体との環境補償を巡る対立から再び建設が阻止された。2024年に司法判断により建設禁止措置が解除され、現在は入札や契約協議が進行している。CNPEでは昨年12月、今年2月、10月の3回にわたり審議されたが、費用試算や資金調達の妥当性などをめぐり結論が先送りされてきた。最終判断は、2025年中に開催される次回会合で下される見通し。同社は、承認が得られれば建設作業を本格化させ、2033年の営業運転開始を目指すとしている。
19 Nov 2025
406

国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、最新の年次報告書「World Energy Outlook(WEO)2025」を公表した。化石燃料の供給不安に加えて、重要鉱物や電力インフラの脆弱性など、エネルギー分野全体でリスクが高まるなか、IEAは各国政府に対し、エネルギー供給の多様化と国際協力の強化を求めている。IEAによると、今後のエネルギー需要の中心はインド、東南アジア、中東、アフリカ、中南米へと移行する見通しだ。これらの地域は、過去10年以上にわたり世界の石油やガス、電力需要増をけん引した中国に代わり、「エネルギー市場の新たな中心地」になりつつある。今回の報告書では、2050年までの世界のエネルギーミックスを以下の3種類((2035年の電力ユニバーサルアクセス、2040年のクリーンクッキングアクセス達成を前提とした「Accelerating Clean Cooking and Electricity Services Scenario (ACCESS)」もある。))のシナリオで分析した。「現行政策シナリオ」(Current Policies Scenario, CPS):すでに実施中の政策や規制のみを反映。新技術導入には慎重な前提。「公表政策シナリオ」(Stated Policies Scenario, STEPS): 政府の公表済み戦略等を含むが、意欲的目標の完全達成は前提としない。「2050年実質ゼロ排出量シナリオ」(NZEシナリオ):2050年ネットゼロ前提。報告書は、電力が現代経済の中核であり、すべてのシナリオで総エネルギー需要を上回るペースで増加すると指摘。電力供給や電化関連の投資は、世界のエネルギー投資の約半分(約1.6兆ドル)を占めているとした。現在、電力は世界の最終エネルギー消費の約20%にとどまる一方、世界経済の4割超を占める部門で主要なエネルギー源になっているとも指摘。F. ビロル事務局長は「世界はすでに “電力の時代” に入った」と述べ、データセンターやAIの急速な普及が先進国の電力需要を押し上げているとの見方を示した。2025年のデータセンター投資額は5,800億ドルに達し、石油供給への投資(5,400億ドル)を上回る見通しだ。一方、電力システム整備は追いついておらず、送電網や蓄電など柔軟性確保が最大の課題となっている。発電分野への投資が2015年以降で約70%増の年間1兆ドルに達する一方、送電網への年間投資は4,000億ドルにとどまる。発電分野では、全シナリオで太陽光を中心とした再生可能エネルギーが最速で成長するものの、原子力発電も復活の兆しを見せている、2035年には、世界の原子力発電設備容量が少なくとも2024年比3割増の5億6,300万kWに拡大。2050年には、CPSで7億2,800万kW、STEPSで7億8,400万kW、NZEシナリオでは10億7,900万kWに増加すると予測した。原子力の発電シェアは、いずれのシナリオも約10%程度となる見込み。気候目標では、すべてのシナリオで世界の平均気温が1.5℃を超過する可能性を示している。気温上昇は、電力インフラへの影響など新たな脆弱性をもたらし得るが、NZEシナリオでは長期的に1.5℃未満へ戻す余地が残るとした。原子力回帰へ――投資拡大とSMRなど新技術の台頭IEAは今回、全シナリオの共通項として「原子力発電の復活」を強調した。従来型の大型炉に加え、小型モジュール炉(SMR)など新技術への投資が拡大し、2025年の原子力発電電力量は過去最高を記録する見通し。現在、40か国以上が原子力を自国のエネルギー戦略に盛り込んでいる。報告書によると、世界で建設中の原子力発電設備容量は7,000万kW超と、過去30年間で最大級の規模となっている。特にSMRを中心としたイノベーションが追い風となっており、IT企業がデータセンター向け電源として3,000万kW規模のSMR計画に合意・関心を示している。一方で、米欧の一部大型プロジェクトでは工期遅延やコスト超過、放射性廃棄物処分への懸念など課題も残る。しかし、CO₂排出増や安全保障リスクを背景に、原子力回帰の機運はむしろ強まっていると指摘した。地域別では、中国が世界の建設中原子力発電設備容量の約半分を占め、2030年頃には世界最大の原子力発電国となる見通し。米国も政策支援やIT企業のSMR需要を背景に、2035年以降は原子力発電設備容量が増加に転じるとみられる。欧州でも、フランス、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スウェーデンなどが新増設や建設再開に向けた政策や投資確保を進めている。報告書はまた、建設や燃料製造、濃縮サービスなどが特定のプレーヤーに集中しがちな原子力産業において、サプライチェーンの多様化が不可欠と強調。持続的に拡大していくためには、イノベーションに加え、コスト管理や将来の収益見通しの透明性確保が不可欠と指摘している。また、燃料供給の多様化に向けた取組みが、米欧や中国で進みつつあるとした。さらにIEAは、2023年のCOP28で誓約された「2050年原子力3倍化」が実現した場合、世界の原子力発電設備容量は2020年の4億1,300万kWから2050年には12億4,000万kWへ拡大し、NZEシナリオの見通しを1億6,000万kW上回ると分析。達成には、2030年代~2040年代に年間4,000万kWの大規模な導入ペースが不可欠で、投資額も現在の700億ドル超から2035年頃に2,100億ドルへ急増すると試算した。強靭なサプライチェーンや高レベルな労働力、長期的な政策支援が不可欠とも指摘している。IEAは、米国がこうした世界的な動きで中心的な役割を果たす可能性にも言及。2025年5月の大統領令は、米原子力規制委員会(NRC)の改革を通じて国内原子力産業の再活性化をめざし、2050年までに3億kWを米国内で新設する方針だ。さらに、欧州連合(EU)、中東、アフリカ、東アジア、北米、中米でも、脱炭素化戦略の一環として原子力への関心が再燃している。
19 Nov 2025
1151

韓国の李在明大統領は11月14日、米国のD. トランプ大統領との10月29日の会談の成果文書となる合同説明資料(Joint Fact Sheet)を発表。米政府が韓国のウラン濃縮および使用済み燃料再処理の実施を支持し、さらに原子力潜水艦の建造の推進を承認したことを明らかにした。先月、慶州で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議への出席を機に、両大統領は関税および安全保障関連の協議を実施。韓国側は、ロシア産原子燃料への大幅な依存や使用済み燃料のサイト内貯蔵の限界という喫緊の課題について、平和利用目的のためのウラン濃縮と使用済み燃料の再処理の実施が緊要であると主張。米国側は、原子力などの主要戦略産業における協力の機会を増やすために、高度な能力を強化する必要があるとの見解を表明した。また、北朝鮮の原子力潜水艦建造などの状況変化に対応して、原子力潜水艦の導入を必要とする韓国側の主張に対し、米国側は、両国の同盟に対する韓国の積極的な役割を高く評価し、引き続き協議を行う姿勢を示していた。今回公表された説明資料によると、米国側は、両国間の原子力協力協定(123協定)に準じて、米国の法的要件を遵守する範囲内で韓国の民生用のウラン濃縮および使用済み燃料の再処理の実施に関する手続きを支持し、大枠で合意した。現行の協定では、核拡散に対する米国の懸念から、韓国が米国の事前同意なしに20%未満の低濃縮も実施できず、再処理は原則的に禁止されている。韓国では現在、26基が運転中で、使用済み燃料貯蔵設備は飽和状態となっており、再処理なしに燃料の自給率を高めることができない。ウラン濃縮と再処理の実施は韓国にとって、長年にわたる悲願であった。今回の大枠合意を受け、米国が現在の123協定の枠組み内でウラン濃縮と使用済み燃料の再処理を許可するのか、それとも協定を改正するのか、今後、両国間で広範囲にわたり具体的に協議が行われる見通しである。また、仮に濃縮や再処理が認められたとしてもIAEAの査察の受入れなどの制度・設備の整備、国内の住民合意形成や国際社会からの信頼の醸成などの課題が山積しており、多くの時間がかかると予想される。さらに米国側は今回、韓国による攻撃型原子力潜水艦の建造を承認し、燃料調達を含む造船プロジェクトの要件について、韓国と緊密に協力していく方針を示した。
18 Nov 2025
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ウクライナのチョルノービリ原子力発電所は10月31日、同国の国家原子力規制検査局(SNRIU)が、同発電所にある機材の解体中に生成された炭素鋼バッチのクリアランスを初承認したことを明らかにした。その重量は約20トンにのぼる。ウクライナ企業は、規制対象から除外される同発電所の「クリアランス金属」を再利用することができる。クリアランスの検査作業の前に、廃材は断片化され、除染された後、定置型の高純度ゲルマニウムガンマ分光測定システムのFRM-03にて、ガンマ線分光モニタリングを用いて徹底的に検査され、再利用が可能なクリアランスレベルであることが確認された。FRM-03は、2022年のロシア軍による発電所の占拠にもかかわらず損傷を受けることなく、発電所の廃止措置を支えるインフラの重要な一部として、2025年9月に運転を開始。欧州委員会の原子力安全協力プログラムからの資金手当てにより、チェコ企業が納品し、1日あたり最大10トンの廃材の検査処理能力を有する。このクリアランスの適用開始は、放射性廃棄物の減容に役立つとともに、廃止措置活動向けの追加資金を生み出し、ウクライナの国家予算の負担の軽減に貢献するとされる。ウクライナの原子力発電会社であるエネルゴアトム社も、その傘下企業に同様の検査設備の導入を計画している。チョルノービリ発電所は、今後、廃止措置中の3基(1~3号機)の解体から発生する廃材のクリアランス作業に事業を拡大し、ウクライナの放射線モニタリングシステムの信頼性と有効性を示していく方針である。
18 Nov 2025
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南アフリカ国家原子力規制委員会(NNR)は11月6日、クバーグ原子力発電所2号機(PWR, 97万kWe)の運転期間を20年延長し、2045年11月9日までの運転を認可したと発表した。2号機は当初40年の運転期間を設定していたが、今回の延長により合計60年となる。昨年には1号機も2044年7月までの延長が認可されており、これに続く措置。両機の運転継続により、今後20年間にわたり約186万kWeのベースロード電源が確保される。NNRは今回の認可にあたり、安全評価や技術審査、設備更新の進捗状況を総合的に確認した。2025年9月末から10月初旬にかけて計3回の公開ヒアリングを開催し、地域住民の意見を含め幅広い観点を審査に反映した。2号機は延長に向けて蒸気発生器3基の交換や燃料交換などを実施して2024年末に送電網へ再接続されている。長期運転(LTO)を申請した国営電力会社エスコムの最高原子力責任者V.ントゥリ氏は、「延長は高度なスキルを持つ従業員と国内サプライチェーンの支えによる成果だ」と述べた。クバーグ発電所は1号機(運転開始1984年)、2号機(運転開始1985年)の総出力約194万kWeを有する南アフリカ唯一の原子力発電所。同国は総発電電力量に占める石炭火力シェアが約80%と高い上、慢性的な電力不足や計画停電が続く中、既存原子力の活用は重要政策となっている。南アフリカ政府は10月19日に公表した統合資源計画(IRP)2025で、原子力を「低炭素で費用対効果が高く、信頼性の高いベースロード電源」と評価し、2039年までに520万kWeの原子力導入を目指す方針を示した。今回の2号機延長はIRP2025の新規導入枠には含まれないが、既存原子力の安全な継続運転を確実にする措置であり、新規原子力と両立する電源構成の基盤を形成する。政府は小型モジュール炉(SMR)導入の可能性も検討しており、原子力を中長期のエネルギー戦略の柱とする姿勢を明確にしている。
18 Nov 2025
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米ニューヨーク州営のニューヨーク電力公社(NYPA)は10月30日、同州で少なくとも合計100万kWe規模の先進炉導入に向け、2件の情報提供要請(RFI)を開始した。今年6月、同州のK. ホークル知事(民主党)が、州北部での次世代原子力発電所建設の検討開始をNYPAに指示したことを受けた措置。NYPAは、系統の信頼性を確保、電力コストを抑制し、エネルギーの自立性とサプライチェーンを強化といった州のエネルギー政策を支える方針であり、再生可能エネルギーを補完する、排出量ゼロの安定した電力供給を目指している。ニューヨーク州では現在、米大手電力会社コンステレーション社が3サイト・計4基の原子炉を運転している。RFIのうち1件は、NYPAの先進原子力プロジェクトの誘致に関心のあるニューヨーク州北部のコミュニティを対象とし、もう1件は、原子力プロジェクトの開発、建設、運転またはサービス提供の経験を持つ開発事業者を対象としている。両RFIの提案提出期限は2025年12月11日。NYPAはホークル知事の指示を受け、直ちに人材育成について労働団体を含む幅広い利害関係者や、誘致に関心のあるコミュニティリーダーや選出議員と意見交換を行うなど、事前実現可能性調査を開始。NYPAのJ. ドリスコルCEOは、「この先進原子力プロジェクトの成功は、地域社会、政府機関、民間部門の協力にかかっている。今回のRFIを通じ、ニューヨーク州北部の開発業者やコミュニティから情報を収集し、サイト選定とパートナーシップの形成を目指す。州の経済を支え、雇用創出を促進し、クリーンエネルギーへの移行を後押しする豊富な電力供給を実現していく」と意欲を示した。NYPAは、州北部で立地可能性のあるサイトをその規模や水源、外的危険性や、地元からの支持の観点から特定し、技術的な推奨事項、立地に関する考慮事項、コストとスケジュールの前提条件、所有構造、パートナーシップモデルなど、実行可能なプロジェクトの概念の検討を進め、2033年までに建設開始を目指している。イリノイ州では大型炉建設を解禁一方、イリノイ州議会は10月30日、「クリーンで信頼性の高い送電網の手頃な価格法(Clean and Reliable Grid Affordability Act)」を可決した。同法は、大型炉建設の解禁を盛り込んでおり、J. プリツカー知事(民主党)の署名により2026年1月1日より施行される。同州では1987年以降、高レベル放射性廃棄物の恒久的な処分方法が確立されていないことを理由に、原子力発電所の建設が一時的に禁止されていた。2023年12月、小型モジュール炉(SMR)の建設を認める州法が制定されたが、プリツカー知事は同年8月、「先進炉」を広く定義する同様の法案に対し、この定義がコストのかかる大型炉の建設を許すものだとして、拒否権を行使していた。しかし、AIや量子コンピューティングの発展に伴い、全米で進む廃炉発電所の運転再開や新規建設の動きを受け、今回のモラトリアム解除に踏み切った。電力料金の値下げや、テクノロジー企業の誘致につながると期待されている。2024年時点で、イリノイ州では6サイト・計11基の原子炉が運転しており、すべてコンステレーション社によるもの。その発電量は、州の総発電量の53%を占め、他のどの州よりも多くの電力を原子力発電で賄い、全米の原子力発電量の8分の1に相当する。州内のバイロン、ドレスデン両原子力発電所は2021年に閉鎖予定であったが、州議会は同年、2040年までにクリーンエネルギー比率50%、2050年までに100%への移行を義務付ける法律を可決。カーボンクレジット計画を通じて州が原子力発電所を支援することとなり、これを受け、両発電所の運転が継続されることとなった。今年6月にはイリノイ州でコンステレーション社が運転するクリントン原子力発電所(クリントン・クリーン・エネルギー・センター)からの電力をIT大手のMeta社に20年間にわたり供給する契約を締結し、同発電所は継続的な運転を確保している。
17 Nov 2025
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新潟県の花角英世知事は11月26日の記者会見で、来月開会する県議会の定例会に総額約73億円の補正予算案を提出すると発表した。これらは原子力複合災害時の避難道路整備費や鳥獣被害対策など幅広い分野で使われる予定だ。そのうち約3,100万円は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)の再稼働に関する広報費等に充てられる。これら広報費について花角知事は、県議会で議論がしやすくなるよう、通常の補正予算案と議案を分けることにしたという。国の再稼働交付金を活用し、原子力発電所の安全・防災対策を県民に周知する冊子等を作成し、理解促進を図る。また、安全協定に基づき、これまでも実施してきた自治体職員による原子力発電所のチェック体制をさらに強化し、外部の専門家を交えたチームを新たに創設する。記者団から、これら理解促進事業にどのような効果を期待するかと問われた花角知事は、「定量的な数値目標は定めていないが、県民公聴会や意識調査では、安全対策に関する認知が十分に浸透していない現状が明らかになった」と述べ、「県や各市町村が長年にわたり取り組んできた防災対策を県民に正しく伝えることは我々の責務だ」と語った。これまでの意識調査では、安全・防災対策の認知度が高いほど再稼働に肯定的であること、また、20~30代の若年層は再稼働に賛成している傾向が強いことが明らかとなっている。また、発電された電力の多くが首都圏に送られている点について問われた花角知事は、「生産地と消費地の非対称性は、電力に関わらず多くの場面で存在する。ただ新潟県民がどういった思いで原子力に関する諸問題に向き合ってきたのか、電力を使う側に知ってもらいたいとも思う」と語った。赤沢亮正経済産業大臣は11月21日の記者会見で、花角知事のこれまでの取り組みに敬意を表した上で、「国として原子力防災の充実・強化、東京電力のガバナンス強化、地域振興策の具体化を進め、丁寧な情報発信に努める」と強調。さらに、UPZ(緊急防護措置準備区域)が30km圏に拡大したにもかかわらず、電源立地対策交付金制度が見直されていない点を問題視し、公平な制度運用のため早期の見直しを要請した花角知事の発言に触れ、「地域の持続的発展に向け、見直しに向けた議論を深めていく」と述べた。また、赤沢大臣は「まだ再稼働が決まったわけではないが、柏崎刈羽原子力発電所6号機が定格出力で稼働したと仮定すれば、2%程度、東京エリアの需給を改善する効果がある」と電力供給面での再稼働の重要性を示した。
26 Nov 2025
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新潟県の花角英世知事は11月21日の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)の再稼働に同意する意向を表明した。判断は12月の新潟県議会に諮った上で、国へ正式に報告する。知事は同意の前提として、国に対して次の7項目を確実に対応し、責任を持って確約するよう求めた。国へ求めた7項目①県民への丁寧な説明の徹底原子力の必要性・安全性について、取り組み内容が県民に十分伝わっていないとの意識調査結果を踏まえ、国と東京電力に対し改めて丁寧な説明を要請。②新たな知見に基づく安全性の再確認最新知見が得られた場合、迅速に安全性を再確認するよう要請。③緊急時対応での国の関与強化避難・屋内退避で民間事業者では対応困難なケースに備え、国の実動組織が確実に行動できるよう、平時から関係機関の連携強化を要請。④避難道路・退避施設、豪雪対応の集中的整備原子力関係閣僚会議が示したインフラ整備を、新潟の豪雪事情も踏まえ早期かつ集中的に実施するよう要請。⑤使用済み燃料処分、武力攻撃対策、損害賠償の確保県民の大きな懸念である課題へ、国が責任を持って対応するよう要請。⑥東京電力の信頼性回復依然として十分に信頼が回復していないと指摘。国が設置する「監視強化チーム」の実効性と、活動成果の確実なフィードバックを要請。⑦UPZ拡大と交付金制度の見直しUPZ(緊急防護措置準備区域)が30km圏に拡大したにもかかわらず、電源立地対策交付金制度が見直されていない点を問題視し、公平な制度運用のため早期の見直しを要請。花角知事は容認判断の理由として、同6、7号機が原子力規制委員会の審査に合格し安全性が確認されたこと、原子力発電が優れた安定供給力と国産化率を有し、国が原子力の最大限活用を推進する方針を示していること、同発電所の再稼働が東日本の電力供給構造の脆弱性や電気料金の東西格差を是正し、脱炭素電源を活用した経済成長にも寄与するとの見通しを示し、「国民生活と国内産業の競争力を維持・向上させるためには、柏崎刈羽原子力発電所が一定の役割を担う必要があるとの国の判断は、現時点において理解できる」と述べた。このタイミングで容認となった背景について花角知事は、「昨年3月に経済産業省から理解要請を受けて以来、長い時間をかけて関係各所と議論した。リスクを完全にゼロにはできないが、ただ漠然とした不安や合理性のない理由で再稼働を止めることはできないと考えていた」と説明。また、県民意識調査では、安全・防災対策の認知度が高いほど再稼働を肯定する意見が増加する傾向や、20~30代の若年層で賛成する傾向が強いことが示された一方、依然として原子力に不安を抱えている県民が多いことも明らかになった。その上で知事自身が、今月半ばに福島第一原子力発電所を視察し、事故の影響や復旧作業の現状を直接確認した事を踏まえ、「原子力規制委員会が新規制基準を策定し、その知見と教訓が柏崎刈羽原子力発電所にも適用されている」と強調。19日の定例知事会見では発電所内の新しい技術や設備の改善にも触れ、「災害発生時の柔軟な対応を可能にする可搬型(モバイル型)設備の充実は、多重防護の観点からも教訓が反映されている」と評価。また、現場で働く東京電力社員の努力についても言及し、「約5,000人の職員や協力企業の方々がチームで動く意識を持ち、コミュニケーションを重視していた。『ワンチーム』という言葉が繰り返され、意識の高さを感じた」と語っていた。また、花角知事は、自身の判断が県政全体の信頼の上に成り立つべきだとの姿勢を示し、県議会に対し、知事職継続への信任を求める意向を示した。
25 Nov 2025
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四国電力は11月20日、伊方発電所1号機(PWR、56.6万kWe)の廃止措置計画について、第2段階の実施に向けた計画変更認可申請書を原子力規制委員会に提出し、愛媛県および伊方町に対して安全協定に基づく事前協議の申し入れを行った。使用済み燃料の搬出や管理区域内設備の解体計画の作成など、第1段階の作業が計画通り完了したことを受け、廃止措置作業は次の工程へ進む。第2段階では、管理区域内設備のうち、原子炉領域周辺のポンプ・タンクなど放射能レベルが比較的低い設備の解体撤去に着手する。作業にあたっては、作業員の被ばく低減と放射性物質の飛散防止を重視し、密閉型の囲いや局所排風機を活用するほか、粉じん抑制のための適切な工法が採用されるという。また、解体撤去物のうちクリアランス制度の対象となり得るものは一時保管し、国の認可を得て一般廃棄物として再利用または処分する。クリアランス処理できない撤去物は固体廃棄物貯蔵庫で適切に管理される。伊方発電所は現在、3号機(PWR、89.0万kWe)が運転中で、1・2号機はそれぞれ2017年、2021年より廃止措置作業に着手している。廃止措置の全体工程は、第1段階「準備作業(約10年)」、第2段階「1次系設備の解体撤去(約15年)」、第3段階「原子炉容器や蒸気発生器等の原子炉領域設備の解体撤去(約8年)」、第4段階「建屋等の解体撤去(約7年)」の順で進められ、約40年をかけて実施される。同1号機の廃止措置完了は2050年代半ばを見込む。また四国電力は、同発電所の事故を想定した原子力総合防災訓練を11月28日~30日にかけて実施する予定だ。複合災害時の対応等、半島で孤立地域が発生したというシナリオで、自衛隊、警察、消防らと連携し、住民の避難経路を確保する手順などを検証する。原子力総合防災訓練は、原子力防災体制や緊急事態における連携確認、住民理解の促進等を目的として、国が主催し毎年度実施しているもの。
21 Nov 2025
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原子力規制委員会は11月19日、第14回「緊急時活動レベル(EAL)の見直し等への対応に係る会合」を開催した。EALは、原子力災害時に、原子力事業者が原子力施設の状況に応じて緊急事態レベルを判断するための基準で、2011年の福島事故を受け、国際基準を踏まえて2013年に導入された。その後、段階的な見直しを経て現在の体系に至っている。具体的には、放射線の線量変化・設備機能の喪失・格納容器の状態に応じて、「警戒事態」、「施設敷地緊急事態」、「全面緊急事態」の3区分に分類される。緊急時にはこのレベルに応じて、周辺住民の被ばく低減のための避難、屋内退避、ヨウ素剤の服用等の防護措置が実施される。今回の会合では、日本と米国およびIAEAにおけるEALの考え方を比較検証した結果が示された。その中で、日本の基準では設備機能が喪失した段階で全面緊急事態へ移行するケースが多く、実際のプラントの状態と緊急事態区分の深刻度が一致しない可能性が指摘された。結果として、避難の早期化や、緊急度の低い避難指示の発出を招くおそれがあると懸念された。いわゆる、日本のEALは設備の機能喪失に起因する発出条件が多く、今後はプラントの状態そのものに応じた実際のリスクの大きさに基づき判断する手法(放射性物質放出のリスク状態に応じる必要性)に切り替えるべきだとの意見が挙がった。EALの見直しの必要性は以前から議論され、必要な知見の蓄積が規制委の重要な研究課題となってきた。次回会合(12月中旬予定)では、屋内退避解除の判断基準を取り上げ、議論を深める予定だ。
20 Nov 2025
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北海道・東北の水産業を応援する「シーフードフェア」が11月20日、東京・JR新橋駅前SL広場で始まった。福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出を契機にスタートした取り組みで、今年で3回目を迎える。会場には浜焼きの香ばしい香りが漂い、初日から多くの来場者でにぎわった。実行委員会の一員である東京電力は、ALPS処理水の海洋放出以降、販売促進を目的とした「ホタテ応援隊」の活動を継続。今年から対象地域を北海道・東北全体に広げ、イベント名を「ホタテ祭り」から「シーフードフェア」に改めた。会場には9つのブースが並び、うち4つが初出店。青森県産ホタテ焼き、福島県産メヒカリやアンコウのから揚げ、宮城県産ホヤのほか、水産加工品、日本酒、クラフトビールなど多彩な品が提供された。約400席が設けられているが、実行委員会によると例年2日間ほぼ満席状態が続き、昨年は全店合わせて8,500食を完売したという。午後3時の開場と同時に、多くの来場者が足を運んだ。福島県の海産物専門店「おのざき」の担当者は「多くの方に常磐もののおいしさを知ってほしい」と話す。販売現場の実感として、来場者の関心の中心は「処理水問題」よりも水産物そのものの品質に向いているという。来場した女性は「SNSで知って立ち寄った。メヒカリのから揚げは初めてなので楽しみ」と笑顔を見せた。一方、水産業は課題も抱える。中国による日本産水産物の輸入停止措置が実質継続しているほか、海面水温の上昇による漁獲量の減少も懸念されている。ホタテ焼きを販売する青森県漁業協同組合連合会の担当者は「例年は7~8万トン獲れていたホタテが、今年は1万トン程度に減少している。たくさん食べてほしいが、出せるものが少ないのが現状だ」と話していた。フェアは明日21日まで開催される。開催時間は午後3時から午後8時。
20 Nov 2025
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日本製鋼所(JSW)は11月14日、松尾敏夫社長がオンラインで行った第2四半期決算説明会において、火力・原子力発電関連製品の増産に向けた約100億円規模の設備投資を発表した。室蘭製作所の発電機部材の製造設備を増強し、発電機用ロータシャフトや蒸気タービンの設備能力を2028年度末までに現在の1.5倍に引き上げる。なお、今回の投資には人員の増強なども含まれる。同社の素形材・エンジニアリング事業では、電力・原子力製品や防衛関連機器が想定を上回る受注を確保し、売上や営業利益が前年同期比で増収・増益となった。特に、電力・原子力分野の需要拡大が顕著であり、市場の回復基調が明確になっていることから、2026年度末の受注高・利益見通しを上方修正した。松尾社長は会見で「特に欧米で原子力発電の新設計画や運転期間の延長が進んでいる。フランスは改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を計6基新設するほか、カナダではSMRの建設計画が進んでいる。米国でも既設炉の運転期間延長や小型モジュール炉(SMR)の新設計画が本格化しており、将来の市場の一つとして期待している」と展望を語った。記者から「資料にはAP1000やSMRに関する記載があるが、受注状況はどうか」と問われた松尾社長は「SMRは昨年度に受注済みである。AP1000は建設が決まり、機器製造メーカーが固まれば、当社にとって大きなビジネスチャンスになるだろう」と答えた。また、日本国内でも原子力の最大限活用方針の下、既存炉の運転期間延長や次世代革新炉の開発が進む中、「使用済み燃料の輸送・保管用のキャスク部材の需要が顕著だ」と述べ、「長期的な需要増に対応する体制整備を急ぎたい」と意欲を示した。今回の設備投資では、原子力・高効率火力向け大型部材製造に必要な二次溶解装置(ESR)の更新・大型化に加え、鍛錬工程の効率を向上させる鋼材搬送装置(マニプレータ)を増設する。さらに、大型ロータシャフト需要の高水準な継続を見込み、超大型旋盤を新たに導入し、生産能力の拡大を図る。
20 Nov 2025
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MOX燃料を搭載した輸送船「パシフィック・ヘロン号」が11月17日、フランスから福井県の高浜発電所に到着した。輸送船は、9月7日にフランス北西部シェルブール港を出発し、喜望峰・南西太平洋ルートを経由し約2か月かけて到着した。関西電力によると、MOX燃料32体を積載した輸送船は17日早朝に接岸し、午前10時すぎに荷下ろしを開始。同日18時半ごろまでに、全作業工程を完了したという。同発電所へのMOX燃料輸送は、2022年11月以来で、累計7回目となる。燃料は仏オラノ社が加工したもの。使用された輸送容器は、長さ約6.2m、外径約2.5m、重量約108トンの炭素鋼製円筒容器。輸送船には自動衝突予防装置や二重船殻構造の採用、緊急時の通報体制整備など、多重的な安全対策が施されている。また、同社が実施した輸送容器の放射線量測定では、表面線量は0.03mSv/h、表面から1m地点でも0.008mSv/h以下と、いずれも国の基準値を大幅に下回った。表面汚染密度についても基準値の半分以下で、同社は「法令の基準値を満足していることを確認した」としている。MOX燃料とは、使用済み燃料から再処理で取り出したプルトニウムをウランと混合して製造する燃料。関西電力では、使用済みのMOX燃料の再処理実証に向け、2027〜29年度に使用済み燃料約200トンをフランスへ搬出する計画も進めている(既報)。
18 Nov 2025
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ラジオアイソトープの安全管理や環境放射能対策の向上に尽力し、優れた成果をあげた人物を称える「令和7年度放射性安全管理功労・環境放射能対策功労表彰」の表彰式が11月10日、原子力規制庁にて執り行われた。同表彰は、原子力安全技術センター、日本アイソトープ協会、日本分析センター、放射線障害防止中央協議会ら4団体が原子力規制委員会の後援を受けて共同主催。放射線の安全利用に関わる関係者の意欲向上と、放射線に対する国民理解促進を目的に、今年度から新設されたもの。今回は、放射線安全管理功労者11名、環境放射能対策功労者3名の合計14名に、原子力規制委員会委員長賞が授与された。表彰式の冒頭、原子力安全技術センターの石田寛人会長は、「本表彰制度は、文部科学省の後援のもと平成22年度まで実施していたが、翌年の東日本大震災を契機に中断されていた。しかし多くの要望を受け、原子力規制委員会の後援のもと再開する運びとなり、大変嬉しく思う」と述べた。そして、「原子力の安全確保は、現場の不断の努力、関係者の支援、そして規制当局との真摯な連携によって成り立つもの。長年にわたり専門性と努力を積み重ね、偉大な功績を挙げられた皆様に敬意を表したい」と受賞者を称えた。続いて挨拶に立った原子力規制委員会の山中伸介委員長は、「放射線利用は、がん治療・画像診断、産業利用など社会基盤を支える重要な技術であり、環境放射能対策は地域の不安解消、正確な情報提供、リスクコミュニケーションの要である」と述べ、「皆さんの活動は社会の信頼を支える柱であり、規制当局にとっても大変心強い存在だ」と受賞者のこれまでの貢献に謝意を述べた。放射線安全管理功労者を代表して、製薬放射線コンファレンス世話人代表の大河原賢一氏が登壇。同氏は、製薬業界における放射線安全管理の在り方の検討や協力体制の構築、人材育成に貢献してきた自身のキャリアを振り返り、「今後も放射線・放射性同位元素の安全利用が社会に幅広く受け入れられるよう、努力を続けていきたい」と語った。環境放射能対策功労者を代表して挨拶したのは、弘前大学被ばく医療総合研究所の木村秀樹客員研究員。長年にわたり環境放射線モニタリング業務に従事してきた経験を踏まえ、「モニタリング担当者は、平常時は計画調査を淡々と進め、異常なデータが得られれば原因を徹底して究明し、有事には即時緊急体制へ移行しなければならない。今回の表彰は、そのような現場の地道な努力に光を当てていただき、大変感慨深く受け止めている」と語った。さらに、「環境放射能対策は、住民の安全と安心、そして回復のために行うものであり、出発点は常に住民のために何ができるかという問いである。その志を若い世代へ確実に引き継いでいきたい」と次世代への継承に向けて意気込みを示した。
17 Nov 2025
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経済産業省・資源エネルギー庁は11月11日、総合資源エネルギー調査会「第6回電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ」を開催し、原子力発電所や送配電網等の大規模投資の費用の一部を、公的融資の対象とする新たな支援制度の創設方針を示した。政府は、第7次エネルギー基本計画で掲げた「原子力の最大限活用」を政策ベースで後押しするため、このタイミングで金融支援策を具体・拡充することで、政府の信用力をテコに積極的な民間投資を促し、脱炭素電源の確保をねらう。新制度では、国の認可法人である電力広域的運営推進機関(OCCTO)の金融機能を用いて融資を実施。民間の金融機関と公的機関による協調融資スキームの構築を想定する。OCCTOは、これまでも送電設備に金融支援をした実績があり、今後、担当者を増員して融資能力を高めるという。また、政府は制度創設と並行して、電気事業法等の関連法の改正も目指す方針だ。原子力発電所の新設には巨額投資が必要で、計画から営業運転開始まで長期間を要するため、事業者側は投資回収に相応の時間を要する。一方で、電力会社の収益環境は、燃料費や資材の高騰、原子力関連の安全対策の厳格化等に左右されやすく、民間金融機関にとっても、貸し出しリスクが伴う。すでに諸外国では政府による債務保証を活用した事業環境整備が進んでおり、日本でも同様の施策が求められていた。今回の公的融資スキームは、こうした課題への一つの回答であり、政府は脱炭素電源の安定確保に向けて金融面からの後押しを強化する。赤澤亮正経済産業大臣は同日の記者会見で「電力需要の増加が見通される中、脱炭素電源や送電網の大規模投資に向けて、民間融資だけで十分か否かを集中的に検討し、政府の信用力を活用する制度や法改正に関する議論を深めたい」と述べ、原子力を含むベースロード電源の確保・強化に公的関与が不可欠との認識を示した。
14 Nov 2025
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フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)は11月6日と7日の2日間、フュージョンエネルギーの早期社会実装に向けた政策提言の詳細を検討するワークショップを開催。会員企業らを中心に20法人29名が参加し、産業界主導での戦略策定に向け活発な議論が交わされた。今年6月、政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定し、タスクフォースによる取りまとめを進める方針を明記。これを受けてJ-Fusionは、発電実証、商取引・規格の策定、人材育成などを中心に具体的な方向性を整理し、これら白書を今年度中にとりまとめ、政策提言へと繋げる考えだ。ワークショップの冒頭、J-Fusionの小西哲之会長は「日本にはすでに強力なフュージョンサプライチェーンが整っている。今後は単なる情報交換だけでなく、分析や戦略策定に踏み込んでいく段階」と述べ、公的部門が中心となってきたフュージョン分野が、産業界主導の新たなフェーズに移行したとの認識を示した。さらに同氏は参加者に対し、「今後のエネルギー政策の転換を支える主役は私たち産業界にある。共に素晴らしい戦略を作り上げたい」と呼び掛け、民間による積極的な関与の重要性を強調した。続いて、ゲストとして出席した内閣府の澤田和弘科学技術イノベーション推進事務局参事官は、「国のフュージョンエネルギー戦略は少しずつ整いつつあり、勢いを感じている。高市首相が掲げる強い経済の実現のための投資対象17分野にフュージョンエネルギーが選ばれたことは、まさにその好例だ」と述べた。また、「産業界、アカデミア、政策担当者が率直に意見を交わせるこのような場は非常に重要だ」と語り、同ワークショップの意義を強調。そして、「具体的な戦略を描くためには、今一歩踏み込んだ議論が必要。関係者間の緊密な連携が重要だ」と述べ、政府として高い目標の達成に取り組む姿勢を示した。
13 Nov 2025
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東洋炭素株式会社は11月7日、同社の子会社であるTOYO TANSO USA, INC.(TTU)が、米国のX-energy社(以下:Xエナジー社)から高温ガス炉用黒鉛製品(黒鉛製炉心構造材など)を受注したと発表した。今回受注したのは、Xエナジー社が開発を進める小型モジュール炉(SMR)の高温ガス炉「Xe-100」(8.0万kWe)向けの製品で、炉心構造材として同社の等方性黒鉛材「IG-110」が用いられる。納品は2028年を予定しており、現在は部品試作・材料認定等を行っている。来年中には最終設計を決定した上で、製造および加工を開始するという。売上高は約50~60億円規模と見込んでいる。「IG-110」がXe-100の炉心構造材等に採用された背景として同社は、優れた熱的・機械的特性と耐中性子照射特性等を備えた信頼性や、日本や中国、フランスの高温ガス炉の試験炉・実証炉・商業炉において採用実績を有していることなどを挙げた。高温ガス炉は、黒鉛を中性子減速材に、ヘリウムガスを冷却材に使用する次世代型の原子炉で、約950℃の高温熱を得られることが特長だ。発電のみならず、水素製造や化学プラントなど幅広い分野への応用が期待されている。高温環境・高線量下で使用されるため、炉心構造材には極めて高い耐熱性と放射線耐性が求められるが、同社の「IG-110」は、長期間にわたり安定した物性を維持し、優れた耐熱衝撃性や高純度・高強度を備える。国内外の公的機関と共同で実施した照射試験データにより、その信頼性が科学的に裏付けられている点も大きな強みだという。今年2月に策定された第7次エネルギー基本計画では、次世代革新炉(革新軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合)の研究開発を進める必要性が示され、世界的にも次世代革新炉の開発・導入が加速する中で、日本製の黒鉛材料が国際的な次世代炉プロジェクトに採用されたことは、原子力サプライチェーンにおける日本企業の存在感の高まりに繋がっている。Xe-100をめぐっては、米化学大手のダウ・ケミカル社が、テキサス州シードリフト・サイトで、熱電併給を目的にXe-100の4基の導入を計画中。同社は今年3月、建設許可申請(CPA)を米原子力規制委員会(NRC)に提出し、5月に受理された。2026年に建設を開始し、2030年までの完成をめざしている。そのほか、Amazonが出資するワシントン州で計画中の「カスケード先進エネルギー施設(Cascade)」でも、最大計12基のXe-100を導入する計画が進められており、2030年末までの建設開始、2030年代の運転開始を想定している。さらに、Xe-100の展開加速に向けて、韓国の斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)および韓国水力原子力(KHNP)が協力し、米国内でのXe-100の展開を支援している。
12 Nov 2025
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山口県上関町の上関町総合文化センターで10月26日、上関町青壮年連絡協議会主催による「エネルギー講演会」が開催された。後援は日本原子力産業協会。講師にはユニバーサルエネルギー研究所の金田武司代表取締役社長が招かれ、「エネルギーから見た世界情勢と日本の歴史~改めて原子力を考える~」をテーマに約2時間の講演を行った。冒頭、同協議会の守友誠会長が登壇し、第7次エネルギー基本計画で原子力を最大限活用する方針が示されたことに加え、中国電力が上関町で使用済み燃料の中間貯蔵施設の立地が可能であると報告したことについて触れ、「中間貯蔵施設の建設は上関町や周辺の市町村が抱える人口減少・高齢化・厳しい財政状況といった現実を打開し、地域活性化に繋げることができる」と述べ、原子力がもたらす経済的メリットをまちづくりに生かす意義を強調した。続いて登壇した金田氏は、世界各地の経済・社会問題の背後にエネルギー問題が存在することを指摘。国家の破綻、通貨価値の暴落、停電、戦争などを例に挙げ、「ニュースで報道される出来事の多くは、エネルギーの視点から見るとその構造が理解できる」と語った。同氏は、ベネズエラで発生したハイパーインフレを取り上げ、「米国企業による石油独占に反発した国有化政策が、米国の経済制裁を招き、結果的に通貨の暴落につながった」と説明。また、ロシアとウクライナの戦争の背景にもエネルギー資源の争奪があると述べた。さらに、米国テキサス州で2021年に発生した大寒波による大停電を例に挙げ、「同州は風力発電に依存していたが、マイナス18度の寒波で風車が凍結し停止、大規模な停電が発生した。その結果、電気代が高騰し、一般家庭に180万円の電気料金の請求書が届くなど大混乱となった」と紹介。同氏はこの事例を通じて、電力自由化の落とし穴を指摘し、自由化の影響や再エネ依存のリスクについて再考を促した。また、ドイツのエネルギー政策についても「環境重視のあまり石炭火力や原子力を廃止した結果、隣国からの電力供給に頼らざるを得なくなり、ロシア産天然ガス依存が経済を直撃した」と分析した。日本については「エネルギー資源を持たず、他国との電力連系線もない特殊な環境にある」とし、「こうした現実を踏まえたうえで、安定供給と経済成長の両立を考えるべきだ」と述べ、現実的なエネルギー政策への転換を呼びかけた。講演の後半では、原子燃料サイクルの重要性にも触れ、「再処理を前提とするサイクルを維持するには中間貯蔵施設が不可欠である」と強調。国全体での一貫した政策推進の必要性を訴えた。質疑応答では、参加者から「原子力発電所敷地内にも中間貯蔵施設があるが、六ケ所再処理工場が稼働しても処理しきれない使用済み燃料があるのではないか」「上関町に施設を建てても、再処理の順番が回ってこないのでは」といった質問が寄せられた。金田氏は、「再処理工場の稼働準備は国策として進められており、長期にわたり再処理工場が動かないということは基本的にない」と説明。また、「施設は十分な容量を確保しており、満杯になっても増設で対応できる設計になっている」と述べ、燃料サイクルへの理解を求めた。
11 Nov 2025
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