国内NEWS
23 Jun 2025
230
日加原子力フォーラム初開催 福島視察も
海外NEWS
23 Jun 2025
255
米オクロ社 アラスカ軍事基地に電力供給へ
海外NEWS
23 Jun 2025
169
カナダ 第2地層処分場の選定プロセスを準備へ
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20 Jun 2025
600
英政府 SZCプロジェクトに大型支援
国内NEWS
19 Jun 2025
1178
内閣府 核融合戦略を改定
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19 Jun 2025
578
フランス原子力産業界 戦略協定に署名
海外NEWS
19 Jun 2025
547
米WE社のマイクロ炉 INLでの試験に向けて前進
海外NEWS
18 Jun 2025
741
カザフスタン 原子力発電所建設の主契約者を選定
米空軍省(DAF)と国防兵站局(DLA)エネルギー部は6月11日、米国で先進炉と燃料リサイクル開発を進めているオクロ社に、アラスカ州アイルソン空軍基地向けに電力と蒸気を供給する、同社の「オーロラ」発電所の配備に向けて、発注意向書(NOITA)を発出したことを明らかにした。オーロラ発電所の配備は、重要な国家安全保障インフラのエネルギーレジリエンスと信頼性の強化を目的とした、DAFのマイクロ炉のパイロットプロジェクトの位置づけ。オクロ社によるとオーロラ発電所は、実証済みの高速炉技術を活用し、電力網から独立して稼働できるため、アイルソン空軍基地のような遠隔地にある重要任務施設のエネルギーセキュリティにとって最適だという。NOITAは、包括的な評価プロセスを経て、オクロを再度指定して発出された。DAFが進める「マイクロ炉パイロット・プログラム」に則して、国防総省(DOD)のDLAエネルギー部はDAFとDODを代表して、2023年8月、オクロ社にNOITAを発出。しかし、連邦請求裁判所に提出された事前異議申立通知を受け、米司法省による適正調査と業者選定プロセスの審査が完了するまで、NOITAは撤回されていた。オクロ社は今後の契約条件下で、オーロラ発電所の設計、建設、所有、運営を行うため、米原子力規制委員会(NRC)から認可取得後、DLAと30年間の固定価格による電力購入契約(PPA)の締結に向けた交渉を開始する予定。なお、DAFとNRCは現在、環境影響評価を準備中であるという。オクロ社のJ. デウィットCEOは、NOITAの発出を受け、「重要任務施設にクリーンで安全なエネルギーソリューションを提供する当社の能力に対する継続的な信頼の証。米国が開拓した高速炉技術の価値を実証しながら、国防のレジリエンス目標を支援できることを光栄に思う」とコメントしている。オーロラは、高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万kWeと5万kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。オクロ社は、2027年末までに米アイダホ国立研究所(INL)サイト内でオーロラ発電所の導入を目標に、NRCとの間で許認可申請前活動を実施。年内にCOLの申請を予定している。
23 Jun 2025
255
カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は6月5日、中レベルおよび高レベル放射性廃棄物を地層処分するための新たなサイトの選定プロセスに対する意見の募集を開始した。これはNWMOにとって2番目となる地層処分場プロジェクトであり、2028年から開始するサイト選定プロセスをさらに改善させることが目的。カナダにおける中レベル、高レベル放射性廃棄物は現在、安全に一時貯蔵されているが、超長期的には適していない。NWMOのL. スワミCEOは「国際的な科学的合意により、中・高レベル放射性廃棄物を長期的に管理する最も安全な方法は、地層処分である」と指摘した。NWMOは2024年11月、包括的なサイト選定プロセスを経て、オンタリオ州北西部のワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)–イグナス地域をカナダの使用済み燃料の地層処分施設の建設予定地に決定した。同地域は間もなく、複数年にわたる関係規制当局による許認可プロセスに入る予定である。それに続く第2地層処分場のサイト選定においても、技術的な安全性と地域社会の受入れ意思を主要な選定基準とする方針を堅持するが、2028年からのサイト選定プロセスの開始に先立ち、NWMOは同プロセスについて、前回の使用済み燃料の地層処分向けのサイト選定プロセスで得た教訓を反映するだけでなく、さらに改善するため、広く意見を募集する。第2地層処分場は、中レベル廃棄物および非燃料の高レベル廃棄物、さらに将来的にカナダで新設される原子炉の使用済み燃料を含む可能性もあるという。中レベル廃棄物には、炉内の機器や部品が含まれる。また、非燃料の高レベル廃棄物の例としては、医療用アイソトープの製造プロセスで用いられた微量の材料がある。カナダは世界有数の医療用アイソトープの生産国であり、その多くは、がんの治療や診断、医療機器の滅菌などに使用されている。NWMOで第2地層処分場のサイト選定を担当するJ. ジャシク部長は、「第2地層処分場のサイト選定プロセスの開始前の2年間に、カナダ国民、先住民、ステークホルダーと幅広く対話活動などを通じて市民参加を促進し、信頼と透明性に基づいた関係の構築に尽力する」と強調した。なおNWMOは、第2地層処分場に係わる今後のスケジュールの大枠を示しており、2030年半ばまでに、選定プロセスへの参加に関心を表明したコミュニティを対象に、サイト特性調査や予備的評価を行った上で、サイトを絞り込み、選定。その後、追加的なサイト調査や詳細設計を実施し、関係規制当局による許認可プロセスを経て着工、2050年代には操業開始を予定している。
23 Jun 2025
169
英政府は6月10日、イングランド東部サフォーク州に建設されるサイズウェルC(SZC)原子力発電所(EPR-1750×2基、各172万kWe)への142億ポンド(約2.8兆円)の投資を発表した。この投資は、政府の歳出見直し(Spending Review)の一環として行われる。SZCプロジェクトでは、既に地元企業と3.3億ポンド(約646億円)の契約を締結しているという。英国全土のサプライチェーンを強化するため、契約の約70%が英企業3,500社に発注されると予想されており、本投資によって、建設、溶接などの新たな雇用の創出が見込まれている。SZCは隣接するサイズウェルB(PWR、125万kWe)が1995年に運転を開始して以来、ヒンクリー・ポイントC(HPC)発電所(EPR-1750×2基、各172万kWe)の建設(2018年~)に続く、新設プロジェクト。SZCの建設により、1,500人の研修・実習職を含む、1万人の雇用が創出され、英国全土でさらに数千人の雇用が見込まれている。EDFエナジー社は2020年6月に英原子力規制庁(ONR)にサイト許可(NSL)を申請。2022年11月、英政府はこのプロジェクトに6.79億ポンドの直接投資を発表し、EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とともにSZCプロジェクトの50%株主となった。2022年7月に開発合意書(DCO)、2024年5月にはサイト許可(NSL)がそれぞれ発給されており、現在、サイト内および周辺で土木・インフラ工事が進行中。なお、SZCプロジェクトは、新しい資金調達方式であるRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を適用している。資金調達モデルに関する最終的な投資決定(FID)は、今夏後半に予定されているという。R. リーブス財務相は、「我々は再び英国の再生に投資しており、これは一世代ぶりの最大規模の原子力建設計画だ」と語り、E. ミリバンド・エネルギー安全保障・ネットゼロ(DESNZ)相も、「将来への投資を怠り、英国のエネルギー不安という現状を受け入れるつもりはない」「家計を守り、エネルギー主権を取り戻し、気候危機に対応するには、新たな原子力が必要。これはクリーンエネルギーの黄金時代を切り開く政府の使命である」とコメントした。英国で現在稼働している原子炉は9基で、合計出力は約650万kWe。英政府はサイズウェルBを除き、既存炉は2030年代初頭までに段階的に廃止される可能性が高いと言及。また、SZCはミリバンド大臣が2009年当時のエネルギー相在任時に新規原子力発電所の候補地として特定した8サイトの内の一つであったが、その後の保守党政権下での14年間、同プロジェクトには十分な資金が提供されなかったと指摘する。英政府(前政権)は2024年1月、2050年のCO2排出実質ゼロの達成とエネルギー安全保障の強化のため、原子力ロードマップを発表。2050年までに国内で合計2,400万kWeの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力で賄うとする野心的な原子力開発目標を示した。SZCが完成すれば、約600万世帯分に相当する電力供給が可能になり、英国の原子力発電電力量は、2030年代にSMR、SZC、HPCが運転開始することで、過去半世紀を上回ると見込まれている。英政府は今回の投資が、長年にわたるプロジェクト遅延と不確実性に終止符を打つものと捉え、エネルギー安全保障と経済成長の促進を目指し、SZCプロジェクトを強力に支援している。 なお同日の6月10日、英政府は同国初となる小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた国際コンペにより、英ロールス・ロイスSMR社を支援対象の優先権者に選定している。
20 Jun 2025
600
フランス原子力産業界の戦略協定の署名式が6月10日、原子力産業戦略委員会(CSFN)の主導により、パリで開催された。原子力産業の復興を目指した2025年~2028年までの共通ビジョンを策定し、エネルギーと産業主権、欧州の競争力、低炭素エネルギーへの移行を目標に、主要なプロジェクトを中心に原子力産業界全体を動員することを目的としている。署名式には、E. ロンバール経済・財務・産業・デジタル主権相、M. フェラチ産業・エネルギー担当相のほか、フランス電力(EDF)、オラノ、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)、フラマトム、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)など主要な原子力関連機関・企業、企業労働組合の代表者らが出席。CSFNは2011年に設立され、政府、企業、労働組合の三者間の連携と、原子力産業の組織化の促進を役割とする団体。今回の署名を受け、CSFNのX. ウルサット会長は、「この協定は、私たち全員を団結させるコミットメント。行動と信頼の協定だ」とその意義を強調した。CSFNは、2022年2月にE. マクロン大統領が行ったベルフォール演説で、原子力復興をエネルギー戦略の要とするとしながらも、様々なステークホルダーを調整するための共通枠組みが存在しなかったと指摘。同大統領はベルフォール演説で、安全性を損なわないことを条件にすべての既存炉の運転期間延長と、EPR2×6基の新設(さらに8基建設の調査も)を提案しており、最初の6基はパンリー、グラブリーヌ、ビュジェイの各発電所サイトで建設をする計画を示していた。またCSFNは、今回の戦略協定を、ベルフォール演説に沿って、フランスの原子力産業を長期的に構造化、強化し、予測するための戦略的な一歩と捉え、産業、エネルギー・気候変動に関する主要な課題に対する具体的な取組みとして、6基のEPR2の建設と燃料サイクル施設の更新既存炉などの運転期間延長研究開発の強化および小型モジュール炉(SMR)の開発燃料サイクル技術の促進とそのクローズド化旧原子力施設の解体と核物質・放射性廃棄物の管理を掲げた。また、以下4つの主要な戦略的優先事項を中心としたロードマップを示した。産業パフォーマンス:建設の納期・コスト・品質を最適化、設備近代化・サプライチェーンの強化技能と雇用:年間1万人の採用目標。初期トレーニング、見習い、キャリアの移行、および地域全体での人材誘致と動員の実施。イノベーションと将来技術:SMR、次世代炉、産業デジタル化、高度な燃料サイクル管理など、戦略分野での研究開発を加速。エネルギー移行:原子力を仏・EUの脱炭素戦略の柱に。信頼性と競争力ある電力供給を確保。CSFNは、政府と産業界と連携してこの協定の実施を監視し、取組みの調整、優先プロジェクトの支援、進捗の評価、必要に応じて修正を行う役割を担うこととしている。
19 Jun 2025
578
米エネルギー省(DOE)は6月3日、ウェスチングハウス(WE)社が開発するマイクロ炉「eVinci」の予備安全設計報告書(PSDR)を承認した。 WE社はPSDRの承認を受けた初のマイクロ炉開発企業となった。PSDRの承認は、米アイダホ国立研究所(INL)内の国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッドでの試験の実施にあたりDOEが求める要件の一つであり、DOMEテストベッドに設置するeVinci実験炉の詳細な設計と、安全の妥当性を示すセーフティケースの概要を示したもの。 DOEは2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するWE社、ラディアント(Radiant)、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に、フロントエンドエンジニアリングおよび実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design: FEEED)プロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRIC-DOMEテストベッドを使った試験の計画策定を行う開発者の支援を目的としている。PSDRの提出はFEEEDプロセスの重要なマイルストーン。この承認に続きWE社は現在、DOMEテストベッドへの設置に向けて、DOEの段階的承認プロセスにおいて必要となる4つの提出物のうち3番目となる予備安全解析書を準備している。 NRICは現在、1964年~1994年にINLで稼働していた高速増殖実験炉II(EBR-II)の格納ドームを利用したDOMEテストベッドを改修中である。同テストベッドは高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけて市場投入までの時間を短縮することを目的としている。そのため、eVinci実験炉はより大規模な商業用eVinciの開発に先駆け、その設計の性能と安全機能の実証を目的に0.3万kWtと縮小したものとなっている。DOMEでの試験開始は、2026年秋の予定だ。 2025年3月には、米原子力規制委員会(NRC)が、eVinciに関する基本設計基準(PDC)トピカルレポートを承認。PDCは原子炉の構造、システム、および構成要素の各部分がどのように機能するかを定義し、原子炉設計がNRC規則に適合することを保証するもの。PDC承認により、eVinciを導入するための許認可取得の明確な道筋が示され、顧客による許認可取得手続きの簡素化および合理化が期待されている。 eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。燃料交換なしで8年以上にわたり電力の安定供給が可能。工場で製造・組立、燃料装荷された状態で迅速に現地に輸送・設置される。TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料を使用し、この設計はDOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)により支援されている。
19 Jun 2025
547
カザフスタン原子力庁(KAEA)は6月14日、ソ連からの独立後、初となる原子力発電所建設に向けた主契約者にロシア国営原子力企業のロスアトムを選定したことを明らかにした。KAEAは原子力発電所建設に向けて、外国企業との協力により国際コンソーシアムの発足を目指している。KAEAによると、国際コンソーシアムのリーダーとなる主契約者の最終候補として残ったのは、ロスアトム、中国核工業集団公司(CNNC)、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力(KHNP)の4社。いずれも、建設コストの見積、プロジェクトの実施時期、資金調達モデル、設備と建設工事の現地化へのアプローチ、科学面・教育面での訓練と開発のための提案、原子燃料サイクルにおける協力の機会など、包括的な提案を提示したという。なお、各社の提案炉型は以下のとおり。・CNNC製「華龍一号(HPR-1000)」(100万kW級PWR)・露ロスアトム製VVER-1200(120万kW級PWR)・KHNP製「APR1000」「APR1400」(100万kW級/140万kW級PWR)・EDF製EPR-1200(120万kW級PWR)KAEAとカザフスタン原子力発電所(KNPP)は、仏エンジニアリング会社Assystemの参加を得て開発した方法論に基づき、企業からの各種提案について、原子力発電所の安全性、技術的・財政的側面、国際的な経験、人材育成、技術移転など複数の分野で評価を実施。その結果を原子力産業の発展に関する省庁間委員会に提出した。同委員会は、ロスアトムの提案が最適と結論づけ、ロスアトムを同国初となる原子力発電所建設プロジェクトの国際コンソーシアムのリーダーに選定した。ロスアトムのA. リハチョフ総裁は、今回の選定結果を歓迎し、「ロシアの第3世代+(プラス)のVVER-1200は、実績あるエンジニアリングと最新の安全システムを融合させており、国際的な安全基準を厳格に準拠した設計。ロシアで4基、ベラルーシで2基が稼働中であり、ハンガリー、エジプト、トルコ、バングラデシュ、中国でも建設中である」と指摘。ロスアトムは顧客のニーズに合った最新技術の導入が可能であると強調した。カザフスタン側では現在、ロスアトムの提案に基づき、ロシアからの国家輸出融資の提供に関する検討を開始しているという。カザフスタンでは2024年10月、原子力発電所の建設を問う国民投票が実施され、原子力発電所の建設に7割が賛成した。同年12月、政府はアルマティ州のジャンブール地区を初の原子力発電所の建設地区に決定。今年中には、炉メーカー(またはコンソーシアム)を選定し、政府間協定および関連契約の締結を計画していた。
18 Jun 2025
741
欧州の原子力産業団体である欧州原子力産業協会(nucleareurope)は6月5日、「経済的および社会的影響に関する報告書」を発表。2050年までにEU域内の原子力発電設備容量を1.5億kWまで拡大した場合、EU全体で年間3,300億ユーロ(約55兆円)超の経済規模を創出し、約150万人の雇用を支えるとの見通しを示した。報告書はコンサルティング企業のデロイトがnucleareuropeの委託で作成したもので、原子力分野への投資の経済的・社会的波及効果を明らかにし、原子力導入の経済的意義を定量的に示すことで、政策立案者や投資家の判断材料とすることが狙い。報告書では、原子力の導入規模ごとに1億kW、1.5億kW、2億kWの3シナリオを設定し、それぞれの経済効果、公的収入、可処分家計所得、雇用創出への影響を分析した。最も高い2億kWシナリオでは、年間3,830億ユーロ(約64兆円)の経済効果、719億ユーロ(約12兆円)の税収、593億ユーロ(約9.9兆円)の可処分家計所得がもたらされ、約166万7,000人の雇用が創出されると推定している。現状(2023年)では、EU域内の原子力発電設備容量は1億600万kWで、原子力産業は年間2,512億ユーロ(約42兆円)の経済効果、476億ユーロ(約8兆円)の税収、380億ユーロ(約6.3兆円)の家計所得を支え、88万3,000人以上の雇用を生み出している。報告書は、将来的な原子力拡大が、これらの経済指標を大幅に押し上げる可能性を示している。nucleareuropeのE. ブルティン事務局長は、「原子力は、欧州に根ざした数少ないネットゼロバリューチェーンの一つだ。投資によって経済成長と雇用創出を実現できるだけでなく、エネルギーセキュリティや脱炭素の目標達成にも貢献する」と述べ、欧州委員会(EC)に対して、原子力の長期的な政策的支援を求めた。報告書は、原子力事業がもたらす直接的な影響に加え、関連産業への間接的な影響や、家計支出による誘発的な影響も含めて、全体的な経済効果を算出している。欧州では、2050年までに脱炭素経済を実現するという政策目標が掲げられており、原子力はその達成手段の一つとして再評価されている。昨年、M. ドラギ氏(元イタリア首相)がECの要請を受けて作成した報告書「欧州の競争力戦略(A competitiveness strategy for Europe)」でも、エネルギーの競争力・安定供給・脱炭素の観点から原子力の役割が重視されている。
17 Jun 2025
785
欧州の原子力産業協会であるnucleareuropeは5月29日、ポジションペーパー「#原子力2050 1億5,000万kW―目的に適った原子力実証プログラム(Nuclaer Illustrative Programme: PINC)をデザインする―」を公表した。欧州委員会(EC)が年末までに改定を予定する次期PINCに対し、nucleareuropeは、現在および将来の原子力プロジェクトを支援する財政、規制、政策面の枠組みを盛り込むよう要請。原子力が欧州におけるクリーンで持続可能、かつカーボンニュートラルな未来への移行に果たす、役割の重要性を改めて確認すべき、と勧告した。PINCの改定は8年ぶりで、原子力分野における投資ニーズに関する評価が主な目的。脱炭素化の加速や「REPowerEU」、「クリーン産業ディール(CID)」といった政策目標に即し、EU全体の原子力開発動向と投資ニーズについて、事実に基づく最新かつ包括的な概要を示すもの。nucleareuropeはまず、EUがロシア依存の低減や脱炭素化、産業競争力の強化といった課題に直面するなか、多くの加盟国が原子力分野への投資を検討している現状に言及。既存原子力発電所の運転期間延長や出力増強に加え、大型原子炉、小型モジュール炉(SMR)、原子燃料施設などの新たなプロジェクトが進行しているとした。また、原子力が大きな経済的利益を生み出すとともに、EU域内で90万人以上の直接・間接の雇用を創出。欧州の技術的優位性を象徴し、サプライチェーン全体にも恩恵をもたらしていると強調している。加盟国が提出した国家エネルギー・気候計画(NECP)と各国政府の最近の発表によれば、EUの原子力発電設備容量は、現在の約1億kWから2050年までに1億4,300万kWに達する可能性がある。nucleareuropeは、次期PINCがこうした野心的な計画を反映すべきとし、特に、①原子力を検討する加盟国の増加、②運転期間延長の重要性、③新たな大規模プロジェクトや燃料サイクル施設、SMRの動向など、前回のPINC策定時とは大きく様変わりした、現況を十分にふまえた内容とする必要があると指摘した。そのうえで、次期PINCでは、原子力開発の目標達成に向けて、原子力投資の支援・促進を図るため、以下のような具体的な政策措置を盛り込むよう勧告している。原子力拡大に向けた安定した政策枠組みすべてのネットゼロ技術に対する公平な競争の場を提供野心的なEU2040の枠組み公的および民間ファイナンスへのアクセス国家援助プロセスの合理化公正な税制措置強固な欧州の原子力サプライチェーンへの支援供給多様化に向けた明確な枠組み研究・人材育成・バリューチェーン・SMRに関する支援さらに、2050年にEUの総電力需要が3.6兆kWh~6.8兆kWhに拡大すると予想されるなか、EUのエネルギーミックスにおける原子力の将来像を明確にするためにも、原子力による発電目標の数字もPINCに盛り込むべきとした。nucleareuropeによると、2024年、原子力はEUの総発電電力量のほぼ4分の1を占め、低炭素電力の中で最大の供給源となった。現在、12の加盟国で計100基が運転中である。こうしたなか、ECは6月13日、第8次PINCを公表。そのなかで、加盟国の原子力計画を実現するためには、既存の原子炉の運転期間延長と新たな大型原子炉の建設の両方に、2050年まで約2,410億ユーロ(約40兆円)の投資が必要と試算。さらに、SMR、先進型モジュール炉(AMR)、マイクロ原子炉、そして核融合にも追加投資が必要と評価した。なお、PINCの「基本シナリオ」では、2050年時点でEUにおける大型原子炉の原子力発電設備容量は1億900万kWになると予測する一方、既存原子炉の運転期間が70~80年に延長され、計画中の新規炉が予定どおり完成した場合には、原子力設備容量は2050年に1億4,400万kWに達する可能性があるとしている。さらに、SMRの導入ついては、追加で1,700万kW~5,300万kWの範囲になると予測している。PINCは今後、欧州経済社会委員会の意見を経て、最終版が公表される予定。また、2025年6月16日にルクセンブルクで開催されるエネルギー理事会においても、加盟国間で議論される見通しだ。
16 Jun 2025
639
世界銀行の理事会は6月10日、原子力発電プロジェクトへの融資を禁止する措置の解除を決定した。電力需要の急増が予想される開発途上国での安定供給を支援していく。複数のメディアによると、世界銀行のA. バンガ総裁は翌11日、スタッフに送った電子メールの中で、すでに原子炉を保有する国での稼働期間の延長、送電網の更新や関連インフラへの支援のほか、小型モジュール炉(SMR)の開発への支援にも取組むなど、原子力への参入を進め、国際原子力機関(IAEA)と連携していく方針を示しているという。世銀発足以後、原子力発電への融資は、1959年、イタリア南部のガリリアーノ原子力発電所(BWR、16.4万kWe、1982年閉鎖)建設プロジェクトへの4,000万ドル相当、建設費のほぼ3分の2に充てる融資が最後で、以降は途絶えている。世銀は貧困削減や開発支援を目的とした国際機関。経済成長を促進し、生活水準を向上させるインフラプロジェクト等に低金利で融資を行い、加盟国の貧困層の発展を支援している。しかし、原子力インフラについては、2013年発表のエネルギー部門に対する方針の中で、原子力施設の安全性と不拡散は専門分野ではないため、原子力発電の資金提供またはその評価・開発に関する具体的な技術支援を行わず、原子力発電に係る内部能力の強化もしないとしていた。その一方、世界では、エネルギー需要の急増が予測されるため、持続可能な開発、脱炭素化の迅速な達成に向けて、クリーンで信頼性の高いエネルギーが大量に必要とされ、他の低炭素技術とともに原子力発電の展開を加速するよう求める新たな世界的コンセンサスが生まれている。こうした気運を受け、2023年12月、アラブ首長国連邦のドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の成果文書ではCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記され、参加25か国(現在31か国)が2050年までのネットゼロ達成に向けて、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという誓約に署名。同誓約では世界銀行、国際金融機関、地域開発銀行に対し、原子力を融資対象に含めるよう呼びかけていた。また、2024年6月、国際原子力機関(IAEA)のR. グロッシー事務局長は、世銀グループの理事会に出席。世銀をはじめとする国際開発金融機関(MDB)に対し、途上国における原子力発電導入プロジェクトへの融資解禁を強く訴え、原子力発電への融資は、この「新たな世界的コンセンサス」にMDBが歩調を合わせることになると言及していた。今回の世銀理事会の決定を受け、世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は声明を発表。「国際エネルギー政策にとって重大な転換。クリーンで信頼性の高い原子力発電の恩恵の享受には、資金へのアクセスが重要である。当協会は、世界銀行や他のMDBとさらに協力し、原子力への融資に関する意思決定のための能力開発を支援していきたい」と意欲を示している。
13 Jun 2025
1907
中国の広東省恵州市で6月10日、中国広核集団(CGN)の太平嶺(Taipingling)原子力発電所の3号機(PWR=華龍一号、115.0万kWe)が着工した。太平嶺サイトでは、現在、1、2号機(華龍一号、各112.6万kWe)がそれぞれ2019年、2020年に着工しており、さらに3基、合計6基の華龍一号が建設される予定。華龍一号は、HPR1000と呼ばれる中国が独自開発した100万kWe級の第3世代PWR。中国国内で2020年代に入ってから5基(防城港3、4号機、福清5、6号機、漳州1号機)が運転を開始している。中国の主力輸出炉としても位置付けられており、中国核工業集団(CNNC)が輸出した、パキスタンのカラチ原子力発電所2、3号機が稼働しているほか、昨年末にはチャシュマ5号機が新たに着工した。
13 Jun 2025
782
英国発の先進炉開発企業で、現在仏パリに本社を置くニュークレオ社は6月3日、スロバキア国営の原子力廃止措置企業であるJAVYSと、合弁会社の「使用済み燃料利用開発センター(CVP)」の設立に向け、イタリア・ローマで株主間契約を締結した。スロバキアでJAVYSが所有、廃止措置を実施する閉鎖済みのボフニチェ原子力発電所(V-1)の1、2号機(VVER-440、各44万kWe)のサイトで、ニュークレオ社が開発する第4世代の先進モジュール炉(AMR)である鉛冷却高速炉(LFR)の建設プロジェクトを進める。今回の契約は、2025年1月にニュークレオ社とJAVYSが締結した枠組み協定に続くもの。契約締結式には、スロバキアから、R. フィツォ首相、D. サコヴァ副首相兼経済相、イタリアからはG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相が出席した。ニュークレオ社は現在、フランス、英国、イタリア、スイス、スロバキアを拠点とし、自社の先進炉開発プロジェクトだけでなく、サプライチェーンの開発も支援するなど、活動の場を広げている。設立された合弁会社は、JAVYSが51%、ニュークレオ社が49%の株式を保有し、ボフニチェV-1サイトに、ニュークレオ社が開発する鉛冷却高速炉LFR-AS-200(20万kWe)を4基建設する。その燃料には、スロバキア国内の既設炉から回収された使用済み燃料を再処理、MOX燃料として加工製造して利用。再処理はフランスで行い、燃料棒の組立はニュークレオ社がフランスで建設を計画するMOX燃料製造施設で行う。ニュークレオ社は、既存の使用済み燃料は、欧州の電力需要を数千年にわたり支える可能性があり、放射性廃棄物の量および放射性毒性を大幅に削減し、長寿命の放射性物質を高コストの深地層処分場に処分する必要性も大きく軽減されると指摘。この新たな運用モデルが、熱中性子炉と高速炉の相乗効果を生みだし、使用済み燃料の再利用によってクローズド・サイクルの確立に貢献すると強調している。同社は、欧州のエネルギー安全保障と自立を高めるソリューションとして、スロバキアのみならず、原子力発電を運用する他の国においても同モデルの事業展開を進める考えだ。合弁会社CVPが今後、ボフニチェV-1サイトでのLFR-AS-200配備に向けた包括的な実現可能性調査を開始するのと並行し、両社はフランス政府および燃料サプライチェーンとの連携を継続し、使用済み燃料の輸送・再処理事業の開発・展開、ならびにフランス国内におけるMOX燃料製造施設の建設プロジェクトを進めていくとしている。なお、ニュークレオ社は6月10日、LFR-AS-200の英国の包括的設計審査(GDA)への参加申請が受理されたと発表した。原子力規制庁(ONR)、環境庁(EA)、およびウェールズ自然保護機関(NRW)がLFR-AS-200設計の安全性、セキュリティ、および環境影響面について、英国の基準を満たしているかを2段階で評価する。ニュークレオ社は2024年12月、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)に、商業規模となるLFR-AS-200のGDAを申請。AMRとしては今回が初の受理となった。現在、ニュークレオ社の英国のプロジェクトチームが、英国内で建設可能性のあるサイトについて調査しているという。ニュークレオ社は、LFRの非核先行炉を2026年までにイタリアで完成させ、実証炉(LFR-AS-30、3万kWe)をフランスで2031年末までに、商業炉(LFR-AS-200)を2033年に稼働させる計画だ。
12 Jun 2025
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米国で先進炉と原子燃料リサイクル開発を進めているオクロ社は5月23日、韓国水力・原子力(KHNP)と第4世代炉の開発における協力促進を目的に覚書(MOU)を締結した。MOUの締結により、オクロ社とKHNPは、オクロ社が計画するオーロラ(Aurora)発電所(7.5万kWe)の標準設計開発とライセンス戦略について協力する。両社はまた、オーロラの主要機器の製造、BOP(バランスオブプラント=原子炉以外のタービン、発電機等の付帯設備)サプライチェーンの確立、市場における実現可能性評価においても協力していく方針。オーロラは、HALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万kWeと5万kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。オクロ社は、2027年末までに米アイダホ国立研究所(INL)サイト内でオーロラ発電所の導入を目標に、米原子力規制委員会(NRC)との間で許認可申請前活動を実施。年内に建設運転一括認可(COL)の申請を予定している。これに続き、顧客基盤の拡大に伴う、1,400万kWeを超える受注残向けの申請をしていく計画だ。オクロ社のJ. デウィットCEOは、「当社は、初号機のサイト特性調査のためのボーリング掘削を完了し、商業化を最優先課題として建設準備を進めている。世界有数の原子力発電所の建設企業であるKHNPとのMOUは、製造、建設、サプライチェーン開発などの重要要素において連携する貴重な機会をもたらすもの。KHNPが1971年から継続的に原子力発電所を建設してきた経験は、当社の取り組みを補完し、オーロラの商業化を効率的に進め、早期建設の実現を可能にするものだ」と述べた。KHNPのJ. ファン社長は、「当社は韓国独自のSMR(i-SMR)の継続的な技術開発を通じて世界的な競争力の獲得を目指している。急速に発展する第4世代のSMR市場では、安全性が引き続き最優先事項であり、早期の市場参入を実現するためには、世界の技術リーダーとの緊密な協力が不可欠」と指摘。「米国の大手SMR企業とKHNPの強みを合わせ、次世代SMRの設計・建設・運用では強力なシナジー効果が期待できる」と強調した。
12 Jun 2025
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日本原子力産業協会とカナダ原子力協会(CNA)は6月19日、東京都港区の在日カナダ大使館で「第1回 日本・カナダ原子力フォーラム」を開催。100名を超す参加者が詰めかけた。両協会は、2021年に協力覚書を締結しており、今回のフォーラムはその活動の一環。両国の原子力産業界のさらなるビジネス交流の促進を図り、協業の在り方を模索するのが目的。カナダ側はCNAのほか、原子力研究所、在日カナダ商工会議所、各州政府在日事務所、原子力関連企業らが参加した。冒頭挨拶に立ち、日本原子力産業協会の増井理事長は、「CANDU炉に象徴されるように、カナダは原子力技術の面で世界をリードし、日本とはウラン供給などにおいて長年協力関係にある。また、西側諸国初のSMR(BWRX-300、30万kWe)実用化計画が進むダーリントン原子力発電所において、日本企業が関与するなど、以前から着目していた国のひとつだ。このフォーラムを通じて両国の新たな連携の芽が育まれる契機となってほしい」と述べた。CNAの一行は翌20日、福島県双葉郡に位置する東京電力廃炉資料館と、福島第一原子力発電所を視察。廃炉資料館では、東日本大震災の発生から原子炉の冷温停止までの経緯や、現在進められている廃炉作業の詳細について、映像や展示物を通じて説明を受けた。また、福島第一では、1~6号機の現状や処理水の海洋放出の流れ、燃料デブリの取り出しに関する取り組みについて、約1時間の構内バスツアーを通じて視察し、理解を深めた。CNAのジョージ・クリスティディス理事長は福島県での視察を終えて、「日本の原子力産業界関係者のレジリエンスに大きな感銘を受けたほか、緻密に計画された工程で廃炉作業に取り組んでいることを学んだ。この事故によって発生した犠牲や痛みを軽んじるつもりは一切ないが、ここで得られた知識や技術には大きな価値がある」と述べ、福島第一での経験が、今後多くの国の廃炉プロジェクトにも活かされるとの期待を示した。
23 Jun 2025
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内閣府は6月4日、核融合エネルギーの開発と推進を掲げた「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定した。2023年に策定された同戦略の改定は今回が初めてで、「世界に先駆けた2030年代の発電実証を目指す」と明記し、実現に向けた具体的な指針を打ち出した。改定された同戦略の冒頭では、日本の低いエネルギー自給率を踏まえ、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行と同時に、エネルギー安全保障を確保する重要性が強調されている。昨今の異常気象の激化や地政学的リスクの高まりを背景に、核融合はCO₂を排出せず、海水中に豊富に存在する重水素を燃料とすることで、資源の偏在性を克服できる。こうした特性から、核融合は現代の多様なエネルギー課題を解決する可能性を秘めた「夢のエネルギー」として注目されている。今回、内閣府は今後10年を見据え、「フュージョンエネルギーの産業化」をビジョンに掲げた。次世代のグローバルエネルギーとして期待されるフュージョンエネルギーの実用化に向け、技術的優位性を活かして市場での勝機を狙っている。今回の戦略改定を通じて、国が主導して開発を進める姿勢を打ち出すことで、民間からの投資を呼び込む狙いがある。そして、改定後の最初の協力国として英国を選出。両国は核融合技術の開発協力に関する覚書を交わし、6月19日にロンドンで署名式が行われる予定だ。施設の相互利用や人材育成、安全規制の整備でも協力する方針だという。
19 Jun 2025
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三菱重工業は6月17日、英国のサイズウェルC(SZC)原子力発電所1~2号機(EPR-1750、172万kWe×2基)向け海水ポンプなど、計5機種34台を受注したことを明らかにした。同社は今後、兵庫県の高砂製作所にてポンプを製造し、運転試験を実施予定の英国トリリアム・フロー・テクノロジーズ社に、順次納入を進める。このトリリアム社が、プロジェクト管理、モーターの調達、工場試験、現地据付指導を手掛ける予定だ。SZCは、フランス電力(EDF)と英国政府が英国東部のサフォーク州サイズウェルにて計画するプロジェクトで、英国ですでに建設が始まっているヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所1~2号機(EPR-1750、172万kWe×2基)と同一設計。三菱重工はこれまでに、HPC向けにポンプ5機種、計34台を受注・製作しており、今回もその流れを受けた受注となった。
18 Jun 2025
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東北電力は6月16日、2024年3月に竣工した女川原子力発電所(BWR、82.5万kWe×2基)の防潮堤かさ上げ工事が、2024年度の公益社団法人土木学会の「技術賞」、および、公益社団法人地盤工学会の「技術業績賞」を受賞したと発表した。いずれの賞も、土木・地盤分野における優れた技術や、社会の発展に大きく寄与したことが認められたプロジェクトに贈られる最高峰の技術賞で、同社としては初の受賞となった(施工した鹿島建設株式会社と共同受賞)。2013年5月に着工した同工事は、東日本大震災の教訓と最新の科学的知見を踏まえ、津波や地震などの自然災害に対する安全性をさらに高めることを目的に実施された。津波の流入を防止するため、岩盤を支持層とした鋼管式鉛直壁およびセメント改良土による盛土堤防で構成された「防潮堤」を敷地の海側に設置。海抜約29mという国内最大規模の高さを誇る。また、防潮堤の前面には漂流物防護工を設置し、漂流物衝突や地盤液状化などの複合リスクに対応した構造となった。工事途中には、安全性向上のための追加補強や、施工済みの杭の深部の地盤改良など、難易度の高い工事がいくつも発生したが、さまざまな技術的工夫を重ね、品質と安全を確保しながら、2024年3月に完成。こうした課題克服に向けた工夫や技術開発が、社会や技術の発展に大きく貢献したものとして、高く評価された。同社は「引き続き『原子力発電所の安全対策に終わりはない』という確固たる信念のもと、さらなる安全性向上に取り組んでまいります」とコメントしている。
17 Jun 2025
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日本原子力産業協会は6月13日、定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2024年度決算および事業計画、2025年度の事業計画・予算案がそれぞれ報告、承認された。総会には、委任状を含む合計322人の会員が出席した。新理事には安藤康志電気事業連合会副会長、竹内努東芝エネルギーシステムズ取締役パワーシステム事業部長CNO、中西宏典発電設備技術検査協会理事長の3氏が就任した。総会の冒頭、日本原子力産業協会の三村明夫会長は、「今年は第7次エネルギー基本計画が閣議決定し、原子力の最大限活用が明確に打ち出され、ファイナンス、サプライチェーン、人材確保・育成といった課題への対応が盛り込まれた。原子力政策がようやく正常化し、力強く前に進みはじめたことは、原子力産業界全体にとって心強いかぎりだ」とコメント。その上で、原子力最大限活用の課題として、1.既設炉の再稼働と建設中プラントの早期完成2.新規建設の具体化3.原子燃料サイクルの確立と高レベル放射性廃棄物の最終処分を挙げた。そして、既設炉の再稼働と建設中プラントの早期完成について、「昨年の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kWe)と島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)の再稼働により、BWRのサプライチェーンにも動きが見られた一方で、全国には運転開始に至っていないプラントも多く、再稼働の加速が求められる」と指摘。「次世代に安心感と使命感を伝えるには、早期再稼働と現場の安定運営が必要だ」と語った。新規建設の具体化については、「持続可能な技術力の活用やサプライチェーン、人材の確保を支えるためにも、新設計画の着手は喫緊の課題」と述べ、政府に対して、「資金調達や投資回収の事業環境整備を早急に進めるよう求めていきたい」と語った。原子燃料サイクルと高レベル放射性廃棄物の最終処分については、「原子燃料サイクルの確立は、原子力の安定的な活用の前提条件」とした上で、関係者の連携によるさらなる前進を呼びかけた。また、来賓として挨拶に立った加藤明良経済産業大臣政務官は、「世界的に原子力の導入・再稼働が加速する中で、日本も脱炭素・エネルギー安定供給の柱として原子力を最大限活用するために、再稼働や新設、次世代革新炉の開発が重要」と強調。国内原子力産業の基盤・人材の維持強化、海外展開支援にも取り組む意向を示した。政府は政策と予算面で環境整備を進め、産業界には具体化と加速を期待。官民連携で原子力政策の実行を進める必要性を訴えた。同じく来賓の赤松健文部科学大臣政務官は、文部科学省として、次世代革新炉の研究開発や人材育成を強化していく方針を示し、高速実験炉「常陽」や、高温ガス炉のHTTRを活用した実証、核融合エネルギーの官民連携に言及した。さらに、先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)を軸とした産学連携による人材育成の取り組みを重視する考えを強調。産業界の協力を求めつつ、同分野での今後の連携強化に期待を寄せた。
16 Jun 2025
690
北海道電力は6月11日、泊発電所(PWR、57.9万kWe×2基、91.2万kWe×1基)の再稼働に向けた安全対策の一環として、同発電所の構外北側に新港を建設する計画を発表した。同社は、泊発電所の北側・渋井地区に新たな荷揚場と専用道路を整備し、将来の原子燃料の事業所外運搬に備える計画だ。輸送ルートは新設するトンネルや橋を活用し、周辺の居住地に影響が出ないように設計。防護フェンスや監視カメラ、警備員の配置など、構外においても構内と同等の安全対策を徹底し、異常事態への対応も既存の防災計画に基づいて行う。例えば、泊発電所専用港湾に停泊する燃料等輸送船が、津波に伴い漂流し、防潮堤など津波防護施設を損傷させる可能性がある。これを防ぐために、燃料等輸送船を泊発電所専用港湾に入港させず、構外に新たに設置する荷揚場にて燃料等の搬入出を行うことも可能となる。同社は「引き続き、荷揚場および専用道路の新設に向けて、原子力規制委員会はもとより、その他関係機関、地元の皆さまをはじめ、道民の皆さまにご理解いただけるよう、しっかりと説明を尽くしてまいります」とコメントしている。
13 Jun 2025
1840
東京電力は6月10日、柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)で、燃料装荷を開始した。6号機は、新規制基準を踏まえた安全対策工事の施工や、燃料装荷までに行う使用前事業者検査を実施し、同日、原子力規制委員会の承認を受けている。また、5月22日の稲垣武之柏崎刈羽原子力発電所長の定例会見にて、同社の保安規定に定められた、重大事故が発生した際の対応が出来るかを確認する「シーケンス訓練」と「大規模損壊訓練」をそれぞれ5月13日から15日と、5月21日に実施したことを報告した。6号機では制御棒を挿入した後、使用済み燃料プールにある872体の燃料を1体ずつ専用の装置でつり上げて原子炉に移し、約2週間かけて順次装荷していく予定。これにより、再稼働に向けた準備が先行する柏崎刈羽原子力発電所7号機(ABWR、135.6万kWe)に続き、技術的な準備が最終段階に入る見通し。順調に進めば、8月中にも再稼働が可能な状態となる。同社は、今回の燃料装荷について「課題等が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる」とコメントしている。
12 Jun 2025
1124
「リーゼ・マイトナー・プログラム(LMP)」の開講式が、6月9日、国際原子力機関(IAEA)と内閣府の共催で、東京大学で開かれた。原子力分野の実務経験者や、博士課程等を専攻する女性を対象とした人材育成研修プログラムで、今回が初の日本開催となる。LMPはIAEAのリーダーシップの下、原子力分野の実務者や博士課程を専攻する女性を対象とした人材育成研修として2023年にスタート。これまで米国、韓国、アルゼンチンで開催された。今回は81か国から373名の応募があり、選ばれた15名が参加した。多くの応募があったことについて、東京大学大学院工学系研究科原子力専攻の出町和之准教授は「日本という国に魅力を感じている応募者が多いようだ。また、福島第一原子力発電所の視察など、日本ならではのプログラムの前評判も良い」と話した。また、同プログラムを通して、参加者の技術的知識やリーダーシップ・スキルの強化が図られ、原子力分野でより多くの女性の活躍が促進されるよう期待を示した。約2週間にわたり開催される同プログラムでは、前半は座学研修、後半は原子力関連施設への視察が予定されている。座学研修では、IAEA、東京大学、東京電力、原子力関連メーカーなどの担当者より、原子力安全や廃棄物管理などをテーマに講義を実施。また、現地視察では、中部電力の浜岡原子力発電所、東京電力の福島第一原子力発電所や廃炉資料館、日本原子力研究開発機構の原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター、大洗研究所、原子炉安全性研究炉(NSRR)、楢葉町遠隔技術開発センターなどを視察する予定だ。また、静岡県内では日本文化を体験するプログラムも用意されており、事務局担当者は、「以前、韓国で実施された際には文化体験の評価が高かったと聞いている。日本ならではの企画を通じて、参加者同士の円滑なコミュニケーションの促進につながれば」と話している。
11 Jun 2025
1191
核融合エネルギーの開発ベンダーである「EX-Fusion」は6月5日、総額約26億円の資金調達を実施したと発表した。同社は、大阪大学出身の若手研究者によるスタートアップ企業。これまでに30億円の資金調達を実施しており、累計調達額は56億円となった。核融合の代表的な方式としては、ドーナツ型の燃料プラズマを生成し、それを太陽のように高温・高密度の状態にして磁場で閉じ込める「トカマク型」や、物体がその場にとどまろうとする慣性の法則を利用し、一瞬だけ閉じ込めたプラズマにレーザーなどを照射して加熱し、瞬間的な核融合反応を繰り返す「レーザー型」などがある。核融合は、エネルギー効率の高さや豊富な燃料資源、高い環境保全性がメリットで、脱炭素化とエネルギー安全保障の観点から、世界各地で開発が進められており、日本政府も2030年代の発電実証を目指している。同社は今回の資金調達により、1秒間に10回の核融合反応を連続的に起こす連続運転の実証を目指す。実証できれば、高出力レーザーや光制御技術を通じて、発電以外にも、加工、医療、宇宙など多分野への応用が可能となる。同社は「レーザー核融合を起点に新たな光産業を創出し、エネルギーと産業の姿を変えていきたい」と強く意欲を示している。
10 Jun 2025
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GX脱炭素電源法が、6月6日に全面的に施行された。同法案は、脱炭素電源の利用促進を進めながら電力の安定供給を保つために整備された法案で、計5本の法改正を束ねて2023年5月に成立した。このうち、原子力発電に関連する「電気事業法」や「原子炉等規制法」の改正により、実質的に「60年超」運転が可能となった。運転期間の原則40年、最大60年という枠組みは維持されたが、新規制基準の審査や司法判断など、事業者が予見しがたい事由による停止期間が、運転期間のカウントから除外されることになった。例えば、関西電力の高浜発電所1号機(PWR、82.6万kWe)は、審査等で約12年半稼働していないため、運転開始から72年後の2047年頃まで稼働可能となる。一方で、高経年化炉に対する安全規制は強化された。運転開始から30年を超える原子炉については、10年以内ごとに「長期施設管理計画」を策定し、原子力規制委員会の認可を受けることが義務付けられた。
06 Jun 2025
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関西電力とフランス電力(EDF)は6月3日、美浜発電所(PWR、82.6万kWe×1基、ほか2基が閉鎖)とビュジェイ発電所(PWR、94.5万kWe×2基、91.7万kWe×2基、ほか1基が閉鎖)との間で「姉妹発電所交流協定」を締結した。協定の締結期間は5年で、当日は福井県美浜町の美浜原子力PRセンターにて調印式が実施された。双方の発電所長らが年に1回程度、交互にプラントを訪問し、設備運用、技術、人材育成など幅広い分野で知見を共有することが目的。両社はすでに、2010年から原子力分野における包括協力協定を締結しており、今回の協定はその関係をさらに深めることになる。両発電所は、ともに40年超運転や廃止措置を実施しており、安全性や信頼性向上に向けた情報交換の強化が期待されている。
05 Jun 2025
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九州電力は6月3日、川内原子力発電所(PWR、89.0万kW×2基)で設置工事を進めてきた「廃棄物搬出設備」の工事が完了し、運用開始したことを発表した。同設備は、原子力発電に伴って発生する低レベル放射性廃棄物のうち、雑固体廃棄物と呼ばれる金属類などを、安全かつ効率的に処理・搬出するためのもの。「圧縮固化処理棟」と「固体廃棄物搬出検査棟」から構成され、廃棄物を圧縮した後、モルタルで固化し、「充填固化体」として搬出する仕組み。年間約1,500本のドラム缶を処理する計画だ。搬出先は、青森県六ケ所村にある日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センターで、2027年度以降の搬出開始を予定している。なお、液体の低レベル放射性廃棄物については、川内原子力発電所の運転開始当初から固化設備を導入し、アスファルトで均質・均一に固化した上で搬出を行ってきた。今回の新設備の導入により、固体廃棄物についても、発電所のサイト内で充填固化体として搬出できるようになり、廃棄物の処理体制が強化される。九州電力は運用を開始するにあたり、「地域の皆さまに安心し、信頼していただけるよう、引き続き、低レベル放射性廃棄物の計画的な搬出に取り組んでまいります」とコメントしている。
04 Jun 2025
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