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30 May 2025
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IHIがSMR向け鋼製構造物を公開
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30 May 2025
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UAE BWRX-300の国際展開に向けMOU
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30 May 2025
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韓国 新ハヌル3号機が着工
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28 May 2025
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米廃炉会社 閉鎖サイトでの事前サイト許可を申請へ
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28 May 2025
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電気事業連合会 新CMを公開
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28 May 2025
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IT企業が約3,000万kWの原子力導入にコミット 米NEI理事長が明言(後編)
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27 May 2025
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スウェーデン 新規建設の事業環境整備法案を可決
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27 May 2025
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IT企業が約3,000万kWの原子力導入にコミット 米NEI理事長が明言(前編)
アラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力会社(ENEC)と米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社は5月27日、UAEのアブダビで、GVH社製のSMRであるBWRX-300の国際展開に向けて、包括的なロードマップの評価と策定で協力するMOUに調印した。MOUは、次世代原子力技術の評価と潜在的な展開を加速するために創設されたENEC社のADVANCEプログラムの一部。ENEC社はバラカ原子力発電所(韓国製APR1400×4基)以外にも、クリーン電源である原子力による、エネルギー安全保障と持続可能性の推進のため、UAE国内外での投資、協力、展開の機会の開拓に重点を置いている。今回のMOUは、2023年にドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の際に締結された協力の覚書に続くもの。両社は、原子力が急増する電力需要を満たす重要なソリューションであるとの共通認識のもと、サイトの特定、許認可手続き、投資と商業化戦略、サプライチェーンの開発など、ロードマップの策定において協力を深化し、国際展開の機会を探っていく計画だ。今回のMOUにはENEC社のM. アルハマディCEOとGEベルノバ社の電力部門M. ジンゴーニCEOが世界公益事業会議への出席を機に調印。ENEC社のアルハマディCEOは、「先進炉によるUAEおよび国際市場での展開を加速するため、GVH社との協力の前進を嬉しく思う。両社のノウハウを結集し、安全で効率的かつ品質主導の原子力の展開に向けたロードマップを策定していく」と語った。ジンゴーニCEOは、「SMRは、エネルギーの安全な未来において重要な役割を果たす。カナダと米国でBWRX-300のプロジェクトが進められており、ENEC社との協業はUAEとの関係をさらに強化するものだ」と述べた。GVH社製BWRX-300は、電気出力30万kWの次世代BWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。5月8日、カナダのオンタリオ州はダーリントン・サイトへのBWRX-300初号機の建設計画を承認。5月20日には、米テネシー峡谷開発公社(TVA)は、米国初となるBWRX-300の建設許可を申請している。
30 May 2025
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韓国水力・原子力(KHNP)は5月20日、新ハヌル3号機(PWR=APR1400、140.0万kW)を着工した。新ハヌル3、4号機は2023年6月に産業通商資源部(MOTIE)から実施計画の承認を受け、発電所建設のための用地取得工事を実施。2024年9月には原子力規制機関の韓国原子力安全委員会(NSSC)から建設許可を取得し、主要建物の基礎掘削工事を開始していた。新ハヌル3号機は、2032年に完成する予定。KHNPのJ. ファンCEOは「新ハヌル3、4号機の建設を安全に、スケジュール通り、予算内で実施する目標を達成し、世界の原子力発電所建設市場で、韓国の原子力産業の地位をさらに高めるよう最善を尽くす」と述べた。新ハヌル3、4号機をめぐっては、KHNPが2016年1月、NSSCに両機の建設許可申請を行ったが、当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領による脱原子力政策下で、2017年の「エネルギー転換(脱原子力)ロードマップ」と「第8次電力需給基本計画」に基づき、建設計画が一時白紙化されていた。2022年5月に就任したユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の政権下で両機の新設計画が復活した。新ハヌル3、4号機は韓国製の第3世代の140万kW級PWR設計「改良型加圧水型炉(APR1400)」を採用し、すでに運転中のセウル1、2号機(旧名称:新古里3、4号機)、新ハヌル1、2号機(旧名称:新蔚珍1、2号機)および建設中のセウル3、4号機(旧名称:新古里5、6号機)を含めると、韓国国内における7、8基目のAPR1400となる。 海外では、韓国が初めて海外に輸出したアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所で同炉(計4基)が採用され、全基が運転中である。韓国では、2025年2月に産業通商資源部(MOTIE)が「第11次電力需給基本計画」を発表、原子力発電を拡大する方針を示した。同計画では、セウル原子力発電所3、4号機と新ハヌル原子力発電所3、4号機の建設プロジェクトは計画どおりに進められ、運転期間が満了となる原子炉の運転期間延長と並行して、2038年までに新規大型炉2基と小型モジュール炉(SMR)1基の建設が計画されている。
30 May 2025
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米ユタ州を拠点に原子力発電所の廃止措置や環境復旧サービスを手掛ける、エナジー・ソリューションズ社は5月13日、同社が所有する旧キウォーニ原子力発電所(PWR、59万kWe)サイトにおいて事前サイト許可(ESP)を申請する方針を明らかにした。初期計画とスコーピング、詳細なサイト・環境調査を開始する。ウィスコンシン州に立地する、キウォーニ原子力発電所は1974年6月に営業運転を開始、2013年5月に永久閉鎖された。エナジー・ソリューションズ社は2021年5月、同発電所の所有者兼運転者のドミニオン・エナジー社から、廃止措置の実施を目的に同発電所を買収。翌5月から主要な廃止措置の作業を開始し、完了までに7~8年がかかると見込まれている。今回ESPを取得する主な狙いは、電力会社が原子炉新規建設の投資判断をする前に、サイト特有の安全性や環境影響、緊急時計画について予め原子力規制委員会(NRC)から事前承認を得ることにある。エナジー・ソリューションズ社は、WECエナジー・グループ(WEC)と協力し、ウィスコンシン州での次世代の原子力発電の建設に取り組んでいくこととしている。WECエナジー・グループは、ウィスコンシン州を拠点に電力や天然ガスの供給を手掛ける、同州最大のエネルギー会社。両社は現在、新しい原子力発電をキウォーニ・サイトで稼働させるため連邦政府の承認を求める「複数年」計画の初期段階にある。エナジー・ソリューションズ社のK. ロバックCEOは、「データセンター、人工知能、産業の成長によるエネルギー需要の増加に伴い、信頼性の高い無炭素電源の必要性はかつてないほどに高まっている。当社の原子力許認可とプロジェクト管理のノウハウを活用し、ウィスコンシン州の新規原子力発電の初期計画段階においてWECを支援していきたい」と抱負を語った。この発表を受け、A. ジャック州上院議員は、「キウォーニ発電所での原子力発電の再開を長年提唱してきた私は、ウィスコンシン州とわが国が緊急に必要としているクリーンで信頼性の高いエネルギーを優先する計画の具体化に勇気づけられる。地域への投資により経済的活力を回復し、長期的なエネルギー安定供給の確保のため、コミュニティを結集していきたい」と語った。エナジー・ソリューションズ社は2024年12月にカナダのテレストリアル・エナジー社と協力覚書を締結している。両社は、エナジー・ソリューションズ社が廃炉プロセスで取得した旧原子力発電所サイトにおいて、テレストリアル社が開発するSMRである一体型熔融塩炉(IMSR)の設置と展開の検討で協力することになっている。エナジー・ソリューションズ社は、ウィスコンシン州キウォーニ原子力発電所のほか、ネブラスカ州フォートカルホーン発電所、カリフォルニア州サンオノフレ発電所、ペンシルバニア州スリーマイル・アイランド発電所(2号機)の廃止措置を実施中。ウィスコンシン州ラクロス発電所とイリノイ州ザイオン発電所の廃止措置作業は完了している。ウィスコンシン州では、データセンターによる電力需要の急増が予想されており、超党派の州議会議員らが今後数年間にウィスコンシン州により多くの原子力発電を導入することを提唱。ウィスコンシン州上院は5月15日、州の公共サービス委員会に原子力発電の立地調査の指示を承認する法案を可決した。これを受け、法案提出者のひとりである、J. ブラッドリー州上院議員は、「ウィスコンシン州は、可能な限り早期に原子力発電の拡大を推進する準備を整えておく必要がある。州が成長し、将来の世代にわたって経済を活性化させるための大きな利点となる可能性がある」と述べた。ウィスコンシン州には、他にポイントビーチ原子力発電所1-2号機(PWR、各64万kWe)が1970年代から稼働している。同州における原子力発電シェアは約16%(2023年)。2020年11月にはNRCに、2度目となる運転認可の更新申請をしている。認可されれば80年運転が可能になる。
28 May 2025
519
国際社会でも、原子力はエネルギーに関する議論において、これまでの脇役から主役へと位置付けが変化している。ロシアと中国が国内外で積極的に原子力発電所建設を進める一方、カナダ、日本、英国などの西側諸国も原子力によるエネルギー自立をめざす動きがある。脱原子力国のイタリアでは、原子力発電再開に向けた検討が本格化し、ドイツでも、現在、大多数の国民が原子力プログラムの再開を支持している。最近の報道によると、ドイツはもはや、原子力発電をEU法上で再生可能エネルギーと同等に扱うことに対し、これまでのように阻止しない姿勢へと転じると報じられている。さらに、従来から原子力推進国である、ブルガリア、ルーマニア、インドなども新たな原子力発電所の建設を進めている。翻って米国では、ポーランドにおける同国初の原子力発電所建設に向け、ウェスチングハウス(WE)社とベクテル社が提携している。いまや多くのリーダー、政策立案者、起業家にとって、原子力は最優先のテーマであることは明白だ。我々は、原子力の世界的リーダーとなるために競争している。もし連邦政府のリーダーらが既存の政策やプログラムを維持しないのなら、アメリカは後れをとることになろう。米国では過去1年間で、2基のプラント再稼働申請2基の第1回目の運転認可更新(60年)6基の第2回目の運転認可更新(80年運転)25以上の新たなプロジェクトが進行中今後、少なくとも8件の建設許可申請書、4件の運転認可申請書の提出が見込まれており、これにより、5か所のサイトで建設開始、今後2年間で2基のマイクロ原子炉の運転が可能となる。また、ミシガン州にあるホルテック社のパリセード原子力発電所(PWR, 85.7万kW)は再稼働間近、ネクストエラ(NextEra)社は、アイオワ州のデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR, 62.4万kW)の運転再開の可能性を模索している。原子力産業界が今、必要としていることは、業界内のすべてのステークホルダーが一丸となって行動することである。そのためには、「調整」「最適化」「加速」という3つのステップが必要だ。第一に「調整」。この一環として今年2月、大統領は、公的および民間の利害関係者を結集し、閉鎖炉の運転再開から新しい原子炉の建設まで、幅広い課題に取り組む「国家エネルギードミナンス(支配)評議会(National Energy Dominance Council)」を立ち上げている。第二に「最適化」。NEIは昨年、マイクロ原子炉の審査プロセスについて、5年間かかる可能性があるところ、6か月に合理化するロードマップをNRCに提出した。引き続き、規制プロセスの合理化に向け、多くの改革を求めていく。第三に「加速」。将来の新規建設に向けては、燃料供給を含むサプライチェーンの整備が不可欠である。また、国内の原子力人材確保に向け、全国の学校、大学、インターン制度を通じた原子力教育とSTEM教育の拡充が必要である。AIをリードする者は、世界をリードする。そして、AIの進化の速度が、新規建設の速度によって制約を受けないようにすることは、国家的な緊急課題である。将来にわたって、グリッドのクリーン性と信頼性を保証できる、唯一の現実的なエネルギー源は、原子力である。原子力こそが、スマートで戦略的な答えなのだ。
28 May 2025
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スウェーデン議会(リクスダーゲン)は5月21日、国内の新規原子力発電プラントの建設を検討する企業への国家補助に関する政府法案を採択した。新法は今年8月1日に施行、同日から申請が可能となる。同法案は「新規原子力発電プラント建設の資金調達とリスク分担に関する法案」と題し、2025年3月下旬、E. ブッシュ副首相兼エネルギー・企業・産業担当相、ならびにN. ウィクマン財務次官・金融市場相が議会に提出した。新規建設への投資が収益を生み出すまでの長いリードタイムを勘案し、リスク分担がない場合の民間融資に伴う資金調達コストは、プロジェクトの総コストのかなりの部分を占める。政府の低い借入コストにより、信用リスクを政府に転嫁することで資金調達コストの削減、ひいては原子力発電自体のコスト削減がねらい。議会は、国家補助が、政府と企業の間でリスクと利益の共有を管理するメカニズムの整備を念頭に、新規建設と試運転、および建設前の設計他の準備に向けて、資金調達コストを引き下げるため、低利の借入コストである政府融資の提案を認めた。なお、補助を受ける企業は投資額の全額の借入は出来ず、原子炉の稼働まで売電収入がないため、融資と株式資本の注入で賄う必要がある。融資額は、原子炉が稼働した時点から、原子炉の予想される運転寿命以内に分割返済しなければならない。また議会は、新規炉の運転時に市場リスクを軽減するため、運転事業者と政府による双方向の差金決済取引(CfD)制度の導入の提案も承認。これは、新規炉のフル稼働が許可されてから適用される。但し国家補助の条件として、新規建設は同一サイトで、合計電気出力が少なくとも30万kW以上の場合のみと規定し、特別な理由がある場合は30万kW未満であっても、政府が補助の実施を決定できるとしている。また、補助の範囲を大型炉4基分(約500万kW)に限定し、プロジェクト会社の申請を受けて政府が決定することに加え、プロジェクト会社の株式を他の民間企業や政府が取得し、共同所有者になる可能性にも言及している。N. ウィクマン財務次官兼金融市場担当相は、「これは、新規建設にあたり、公的資金と納税者の資金に対して責任を負う歴史的な発表。原子力発電の拡大は、価格の安定性の向上とシステムコストの削減をもたらし、新規建設を検討する企業だけでなく国民の家計にもメリットがある。新規建設は気候目標の達成とともに、より高い経済成長、より多くの雇用など、より良い条件への道を開くものだ」と期待を示した。スウェーデンは現在、家庭や企業向けの不安定な電力価格と電力システムの不均衡という大きな問題に直面している。これに対処し、化石燃料を使わないベースロードを拡大する必要から、2022年9月に総選挙を経て、翌10月、40年ぶりに原子力を全面的に推進する中道右派連合の現政権が誕生。2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップが発表された。これには、カーボンフリーの電力を競争力のある価格で安定して供給することを目的に、社会の電化にともない総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉で最大10基分を新設することなどが盛り込まれている。また、2024年1月には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする旧・制限事項が撤廃されている。
27 May 2025
547
米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は5月20日、会員企業やその他の原子力関係者らを招いて毎年開催している「Nuclear Energy Policy Forum」で、原子力産業界の現状に関する講演を行った。同理事長によると、AIやデータセンターからの急速な電力需要増を背景に、大手IT企業が全米で約3,000万kWの原子力導入にコミットしており、その規模は今後さらに拡大する見通しだ。また、連邦政府の原子力支援策が後押しとなり、2024年の原子力分野における民間取引額は、過去4年間の合計額を上回ったという。一方で、原子力発電の維持・拡大には、政策支援の継続が不可欠だと強調。なかでも、原子力税額控除(nuclear tax credits)が維持されなければ、原子力の展開は大幅に減速し、あるいは計画そのものが方向転換を迫られる可能性があると警鐘を鳴らした。同理事長の講演概要は、以下のとおり。♢ ♢この20年間、電力需要は停滞していたが、今、状況は変わりつつある。米国の製造業やイノベーション、人工知能、あらゆる分野でより多くの電力が求められている。AI競争を勝ち抜くうえで必要な大規模データセンターには、来年末までに2,800万kW規模の電力が必要だ。原子力産業界は、これまでの漸進的な成長から、信じられないほどの成長へと転じようとしている。原子力への超党派による支援も続いている。C. ライト米エネルギー省(DOE)長官は、就任わずか3日目に「商業用原子力発電を解き放つ(unleash commercial nuclear power)」という長官命令に署名。これは現政権が、原子力エネルギーの価値を、セキュアで強靭、安価かつ豊富で、今後ますますクリーンなエネルギーシステムの一部として、認識していることの証左だ。原子力産業界も準備を整えている。TVA(テネシー峡谷開発公社)は今朝、GEベルノバ日立社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設許可申請書を提出した。また、ベクテル社、デューク・エナジー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社を含むパートナー連合とともに、DOEによる8億ドルの助成金を申請している。ドミニオン・エナジー社は昨年、ノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)の運転期間延長(80年運転)の認可を取得。加えて、IT大手アマゾンと連携し、SMRの活用に向けた検討を進めている。エンタジー社は、急増する産業部門の電力需要に対応すべく、新設および出力増強を検討中であり、同社は、ミシシッピー州に新たな原子炉建設のための事前サイト許可(ESP)を取得している。コンステレーション社は昨年、マイクロソフトと提携し、かつて運転していたスリーマイルアイランド(TMI)1号機を「クレーン・クリーンエネルギーセンター」として再稼働させる計画を発表した。IT大手では、グーグル、メタ、アマゾンが、世界の大手金融機関14社とともに、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にすることを誓約した。これまでに、グーグルはケイロス・パワー社と500万kW相当の電力購入契約を締結。アマゾンは、X-エナジー社への5億ドルの投資を主導し、500万kWの原子力導入をめざしている。メタも、400万kW分の原子力による電力調達をめざし、提案依頼書(RFP)を発行している。さらに今月には、エレメントル・パワー社は、先進型原子炉の3つのプロジェクトサイトを開発する契約をグーグルと締結した。このように、IT企業と原子力事業者による新たなパートナーシップは、全米で約3,000万kWの原子力導入に向けたコミットメントとなっており、その規模は今後も拡大していく見込みだ。原子力分野への投資熱も高まっている。NEIが毎年開催する資金調達サミットには、今年は3年前の第1回開催時の2倍の参加者が集結。さらに、2024年の原子力分野における民間部門の取引額は、過去4年間の合計を上回る水準となった。こうした民間投資の増加は、公的支援の強化と軌を一にしている。米議会は昨年、ロシア依存の低減をめざし、国内燃料サプライチェーンの強化を目的に約30億ドル、また次世代原子炉の実証支援向けに約10億ドルを拠出。加えて、許認可審査の効率化を含む、クリーンエネルギーの多用途かつ先進的な原子力展開の加速化法(ADVANCE法)も可決した。連邦政府による原子力支援策として、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)や融資プログラム局(LPO)、そして原子力税額控除などがある。これらの政策は、原子力発電の維持・拡大に不可欠であり、今後も維持されるべきである。中でも、原子力税額控除は、良質な雇用、コミュニティの繁栄、そして国家安全保障を支えている。もし議会がこの税制措置を維持できなければ、原子力の展開は大幅に減速するか、あるいは完全に方向転換を余儀なくされる可能性がある。これは、米国の未来を前進させるうえで絶対に避けなければならない。ADVANCE法は、原子力規制委員会(NRC)に対して、安全性を確保しつつ、審査プロセスの効率性も重視するよう求めるもの。NRCは昨年、2021年以来初となる第2回目の運転認可更新(subsequent license renewals)を承認した。対象となったのは、エクセル・エナジー社のモンティセロ原子力発電所(BWR, 69.1万kW)であり、当初24,000時間を要すると予想されていた審査時間は、最終的に16,000時間で完了。審査時間は3分の1に短縮された。このような効率性は、例外ではなく、ルールとする必要がある。州レベルでも支援が拡大している。―テネシー州では、ケイロス・パワー社が2基の新実証炉のうちの1基を建設中。―ワイオミング州では、テラパワー社が同州で最初の商業用原子炉を建設中。―コロラド州は、原子力をクリーンエネルギーと認める法案を可決。―テキサス州は、全米最大規模となる可能性のある、原子力エネルギー基金(Nuclear Energy Fund)を創設中。―アイダホ州では、国防総省(DOD)が国内初のマイクロ原子炉の一基を建設中。(つづく)
27 May 2025
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米トランプ大統領は5月23日、原子力エネルギー政策に対する連邦政府のアプローチの再構築を目的とした一連の大統領令に署名した。人工知能(AI)産業、製造業、量子コンピューティングなどの最先端のエネルギー集約型産業での電力需要増に対し、豊富で信頼性のある電力を供給するのがねらい。エネルギー安全保障を確保するとともに、米国の原子力業界の世界的な競争力維持と国家安全保障の強化のため、2050年までに原子力発電設備容量を現在の約1億kWeから4倍の4億kWeとし、このために必要となる原子力の規制緩和を迅速に行う方針だ。具体的には、第3世代+(プラス)炉や先進炉の展開の促進、既存の原子力施設の継続的な運用と適切な拡大を促進しつつ、時期尚早に閉鎖された、または部分的に完成している原子力施設の再活性化を掲げている。そのため米エネルギー省(DOE)が原子力産業界と協業して、2030年までに既存の原子力施設の設備容量を500万kWe増強するほか、新規の大型炉10基の建設に着手することを、DOEの優先作業に設定している。ホワイトハウスで23日に行われた署名式には、国家エネルギードミナンス(支配)評議会の議長を務めるD. バーガム内務長官やP. ヘグセス国防長官のほか、原子力業界の幹部も同席。バーガム長官は「一連の大統領令が、50年以上続いた原子力業界に対する過剰な規制の時計の針を巻き戻す」「米国の電力需要が急増する中、既存の原子力フリートを拡大し、先進炉への投資により、信頼性の高い電力を供給、電力網を強化して、米国のエネルギードミナンスを拡大する」と強調した。なお、一連の大統領令は以下の4つに関するもの。原子力産業基盤の再活性化エネルギー省における原子炉試験の改革原子力規制委員会の改革国家安全保障強化のための先進的原子炉技術の導入C.ライトDOE長官は、「あまりにも長い間、米国の原子力産業は、お役所仕事や時代遅れの政府の政策によって妨げられてきた。AIの出現と大統領の国内製造業強化政策によって、米国の民生用原子力エネルギーは絶好のタイミングで解き放たれている。原子力は、米国にとって最大の追加エネルギー源となる可能性を秘めており、さまざまな規模で運用が可能だ。大統領令は、民生用原子力産業の束縛を解き放つものだ」と語った。ホワイトハウス科学技術局のM. クラツィオス局長は、「過去30年間、原子炉の新設がなかったが、それも今日で終わる。今回の大統領令は、ここ数十年で最も重要な原子力規制改革にむけた措置。強固な米国の原子力産業基盤を回復し、国内の原子燃料サプライチェーンを再構築し、米国が世界の原子力エネルギーを牽引していく。米国のエネルギー安全保障と、AIやその他の新興技術における継続的な優位性にとって重要である」と述べた。大統領令は、DOE傘下の国立研究所における原子炉の設計試験の申請とレビュープロセスの合理化により、迅速な原子炉の商業化を促している。また、国防総省やDOEが、軍事施設や連邦所有地で先進炉の建設にあたり、テストを通して実証された原子炉設計については、原子力規制委員会(NRC)が迅速に承認するなどの規制緩和も示している。AIデータセンターや重要な防衛施設に対する、安全で信頼性の高い原子力による電力供給確保は、AIをめぐる世界的競争、ひいては国家安全保障において不可欠との認識もある。さらにDOEに対し、原子燃料の海外依存を回避するため、国内のウラン採掘と転換・濃縮能力の拡大計画や国内燃料サイクルの強化にむけた勧告を指示するほか、原子力拡大政策を支える労働力の拡大、NRCの改革の必要性を示している。特にNRCに対しては、許認可申請の迅速な処理と革新的な技術の採用を促進するため、政府効率化省との協業によるNRCの再編成、さらに民生用原子力発電の認可と規制に際し、安全性、健康、環境要因に関する従来の懸念のみならず、原子力発電が米国の経済と国家安全保障にもたらす利益を考慮するよう指示。NRCにタイムリーな許認可を出すように要求することで規制上の障壁を取り除きたい考えだ。新規炉は原子炉の種類に関わらず、建設と運転の認可プロセスの簡素化により、数年かかる審査プロセスを18か月に短縮、既設炉の運転期間延長の最終決定は1年以内と期限を定めるなど、許認可の迅速化を指示している。
26 May 2025
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は5月8日、ワイオミング州ケンメラーで自社が開発するNatrium炉について、米原子力規制委員会(NRC)がプロジェクト全体の建設許可申請の審査を継続する一方で、同社による「エネルギー・アイランド」の建設を可能にする例外措置を認めたことを明らかにした。テラパワー社のC. レベスクCEOは、「当社のNatrium炉の設計は、原子炉を発電設備から切り離す革新的なもの。今回のNRCの承認により、建設スケジュールの短縮と材料費の削減が可能になる。Natrium炉は増大するエネルギー需要に対応するために最速で展開でき、最も費用対効果の高いソリューションの1つだ。原子力部の建設許可申請でNRCと引き続き協力していく」と語った。この例外措置の承認は、2024年9月のテラパワー社からの要請による。エネルギー・アイランド内の特別な取り扱いを必要としない、安全関連以外のすべての「構造物、システム、および部品」(SSC=Structures, Systems, and Components)を、連邦規則にある「建設」の適用範囲の定義から除外するもの。その後、NRCとテラパワー社間で協議が重ねられ、NRCはNatrium炉のエネルギー・アイランドでの特定の活動は、公衆の健康と安全に過度のリスクをもたらすものではないと結論。掘削中の杭の打ち込み、地下準備、埋め戻し、コンクリートまたは擁壁の設置や、基礎の設置、または特別な取扱いを必要としないSSCの現場組立、架設、製造、または試験を進めることを認めた。なお、NRCはこの例外措置は最終的な原子炉の建設許可の発給を約束するものでないとし、テラパワー社も建設許可が後に却下される可能性を考慮して、SSCの設置をしていくとしている。テラパワー社は、2024年3月にはNRCに建設許可申請(CPA)を行った。NRCとの間ではCPAおよびトピックレポートの提出に関して1年以上にわたるレビューが行われ、NRCは最近、レビューのスケジュールを前倒ししている。また、初号機建設サイトのある米ワイオミング州からは州レベルの建設許可を得ており、2024年6月に起工式を挙行、非原子力部の建設工事を開始した。「ニュークリア・アイランド」(原子力部)の着工は早くて2026年、送電開始は2030年を予定している。Natrium炉は、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えた34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉。貯蔵技術は、必要に応じてシステムの出力を50万kWeに増強し、5時間半以上を維持することができる。これにより、Natrium炉は再生可能エネルギーとシームレスに統合され、テラパワー社はより迅速に費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現させたい考えだ。
26 May 2025
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台湾の立法院(国会)で5月20日、台湾南部の屏東県にある馬鞍山原子力発電所(PWR, 1号機:98.3万kW、2号機:97.5万kW)の運転再開を求める、国民投票の実施提案が賛成58、反対49票で可決された。この提案は、少数野党の台湾民衆党(TPP)が主導したもの。国民投票で問う設問は、「馬鞍山原子力発電所が、安全上の懸念がないことを確認した上で、運転再開することに同意するか」となっている。台湾で唯一稼働していた同発電所2号機が5月17日に40年間の運転期間を満了し、法律により、永久閉鎖された。国民投票実施の可決は、与党・民進党政権が掲げる目標である「2025年の脱原子力国家(非核家園:原子力発電のないふるさと)の実現」を達成してから、わずか3日後のことであった。立法院では5月13日、最大野党の国民党(KMT)の主導による、「核子反応器設施管制法(原子炉等規制法に相当)」の第六条条文のうち、原子力発電所の運転期間を40年から最長で20年延長とする改正法案が、第三読会で賛成61、反対50票で可決されている。TPPが国民投票を提案した背景には、馬鞍山発電所の運転を、安全上の懸念がないことを所轄官庁の同意を経て継続するという重大な政策案は、国民の意思を示す国民投票に付すべきとの判断がある。TPPは運転継続の理由に、馬鞍山2号機の廃止後、政府が設定した2025年の温室効果ガス排出削減目標の達成が困難になると主張。再生可能エネルギーの開発成果が不十分であり、既存の発電によるエネルギー不足、全原子力発電所の閉鎖後は輸入依存度の高い石炭火力やガス火力発電に頼らざるをえず、ネットゼロ目標と相反し、エネルギー安全保障上も好ましいものではないと指摘している。また、TPPはAI時代を迎え、世界最先端の半導体生産拠点が台湾に集中する現在、産業用電力需要は極めて急を要しているとした上で、台湾の低炭素電源開発は不十分で、2050年ネットゼロ実現は困難を極めるだけでなく、産業経済の発展と国家の競争力にも深刻な影響を与えると懸念を表明。さらに、欧州の多くの国々が、現在の温室効果ガス削減が不十分であり、ロシア・ウクライナ紛争後、エネルギー安全保障の重要性を再認識し、原子力発電の再導入を推進している点にも言及。台湾についても、地理的環境や国際政治情勢のリスクを鑑みれば、産業用電力の安定供給と国民生活の電力確保のためには、原子力を補助的な移行エネルギーとして、一定の運転能力を維持すべきだと主張した。TPPは、安全性の確保を前提に、できるだけ早い原子力による電力供給を回復し、5月13日に立法院で可決された原子力規制法第六条改正に基づき、台湾のエネルギー供給力を強化すべきだと訴えている。国民投票法によると、立法院で国民投票の提案が採択された場合、10日以内に中央選挙委員会に送られ、国民投票の実施が議決される。国民投票法により、投票日は8月の第4土曜日に定められており、2021年以降、2年ごとに実施。今年は8月23日に国民投票が実施される予定。なお、国民投票日は休日になる。
23 May 2025
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米テネシー峡谷開発公社(TVA)は5月20日、米原子力規制委員会(NRC)に、テネシー州オークリッジ近郊の同社クリンチリバー・サイトでの、小型モジュール炉(SMR)の建設許可を申請(CPA)した。GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300(BWR、30万kWe)を採用している。今回のBWRX-300のCPAは米国初となる。北米ではカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社によるカナダ原子力安全委員会(CNSC)へのCPAに続き、2番目(OPG社は建設許可をすでに取得済み)。TVAは同サイトにBWRX-300×1基を建設し、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどに特化した電力供給を狙っている。TVAのD. モールCEOは、「今回のCPAは、TVA、テネシー州、米国にとって重要なマイルストーン。当社はBWRX-300初号機の導入に向けた作業を実施、SMR導入に伴うリスクを軽減し、同炉型の建設を選択する他の電力会社のために道筋を作る。新型炉の導入は、今後数十年にわたって米国の家庭や企業に手頃な価格で安定した電力を供給するために不可欠」と述べた。TVAはBWRX-300の安全性、シリーズ建設の容易性、効率性を利点に掲げる。また、設置面積が小さいために迅速に建設でき、かつコンパクトなサイズのため、操作が簡単で、景観によくフィットすると指摘している。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可で協力する契約を締結した。さらに2023年3月、BWRX-300の建設を計画するカナダのOPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結している。またTVAは今年1月、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などの公益事業会社とサプライチェーンパートナーとの連合を結成、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドルの助成金の申請を主導している。同プログラムは、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR導入への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設されたもの。この申請とは別にTVAは4月初め、DOEによるNRCとのライセンス活動の支援プログラムに800万ドルの助成の申請も行っている。TVAはCPAに先立ち、クリンチリバー・サイトの環境報告書を4月末にNRCに提出。初期のサイト準備は早ければ2026年にも開始。2028年には着工、2032年末には営業運転を開始したい考えだ。今年1月、GEH社はデューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可の推進に向けた活動に投資する契約を締結。AEP社傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社もインディアナ州スペンサー郡で運転するロックポート石炭火力発電所サイト内に、TVA主導のDOE助成プログラムを活用してBWRX-300を建設する計画を表明している。
22 May 2025
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オンタリオ州政府は5月8日、州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社のダーリントン新原子力プロジェクト(DNNP)の建設予定地に建設を計画する、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」(BWR、30万kWe)の4基のうち、初号機の建設計画を承認した。同州での30年以上ぶりの新規建設プロジェクト、北米初の商業用SMRプロジェクトとなる。オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー・電化相は、「今日はカナダにとって歴史的な日。建設プロジェクトはカナダで18,000人の雇用を創出。カナダ製の鉄鋼、コンクリート、材料を用いて、オンタリオ州の経済成長の野心的な目標を実現するために必要な、信頼性の高いクリーンな電力を提供していく」と述べた。州の電力需要が2050年までに少なくとも75%急増すると見込まれる中、州政府は、BWRX-300×4基の完成により120万世帯へ電力を供給し、2030年代初頭に発生する恐れのある電力不足を解消する考えだ。OPG社のN. ブッチャーCEOは、「当社はSMRのパイオニアとして、カナダのエネルギー安全保障を強化しつつ、国内産業をさらに成長させるための能力と専門知識を世界に示していく。オンタリオ州の強固な原子力サプライチェーンと、原子力プロジェクト、特にダーリントン改修での実績により、SMRをスケジュール通り、予算内で完成させる」と強調した。OPG社は今年4月初めにカナダ原子力安全委員会(CNSC)から初号機の建設許可を取得しており、2030年末までに稼働を予定。運転開始前には認可を取得しなければならない。原子炉は小型であるが、DNNPの経済的影響は甚大になる予想されている。民間シンクタンクであるカナダ産業審議会によると、4基のBWRX-300の設置、運転、保守により、カナダのGDPは65年間で385億加ドル(約4兆円)の増加。OPG社は4基を65年間の運転させることで年平均約3,700人の雇用維持に貢献するという。これには建設中の年間18,000人の雇用が含まれている。プロジェクト費用の約80%はオンタリオ州内の80社以上の企業に向けられ、年5億加ドル(約518億円)が州内のサプライチェーンに投入されるという。オンタリオ州の系統運用者(IESO)は、他の脱炭素電源と比較して、DNNPがコストとリスクの点で最良の選択肢であると結論付けている。IESOによると、4基のSMRがなければ最大890万kWeの風力と太陽光発電をエネルギー貯蔵と組み合わせて構築する必要があり、この代替アプローチには大幅な土地要件や大規模な送電網の構築の必要性など、重大なリスクを伴うと説明。これに加え、ダーリントン発電所(CANDU炉×4基、各93.4万kWe)の改修プロジェクトにおけるOPG社の優れた実績が、DNNPを支援するという州政府の決定に寄与し、州政府はDNNPに対し、209億加ドル(約2.2兆円)の支援を明らかにした。これには、サイト準備、エンジニアリング、設計作業、およびSMR全4基の建設のコストが含まれている。なお、最初のSMR初号機の建設コストは61億加ドル(約6,315億円)で、加えて4基に共通するシステムとサービスコストが16億加ドル(約1,656億円)。但し、コストはダーリントン改修プロジェクトと同様、効率の向上とともに後続機ごとに減少すると予想されている。OPG社によると、2022年秋に初期のサイト準備作業が開始され、整地作業のほか、防火管、給水管、衛生下水道管、ネットワークケーブルなどの設備を設置した。サイトでは製造棟を含むいくつかの重要な建物の建設が開始され、原子炉建屋のシャフトの掘削作業が継続されている。また、長さ30m以上、直径6m以上、重さ550 tの原子炉圧力容器(BWXテクノロジーズ社が製造)や、2027年夏までにサイトに到着予定の発電機ローターなど、長納期部品を確保している。ダーリントンサイトには、1990年~1993年にかけて営業運転を開始したCANDU炉(93.4万kWe)×4基がある。OPG社は、2026年までの完了を予定し、順調に進んでいるダーリントンの改修プロジェクトから学んだ7,000以上のノウハウを生かし、SMR建設プロジェクトをスケジュール通りに進める考えだ。旧GE(General Electric)のエネルギー事業を担うGEベルノバ社電力部門のM. ジンゴーニCEOは、「BWRX-300初号機の導入により、オンタリオ州はSMR分野で世界をリードする。OPG社とプロジェクトパートナーとの取組みは、世界の原子力産業のベンチマークとなる」と指摘。GEベルノバ日立SMR カナダ社のL. マクブライド・カントリーリーダーは、「世界がSMRの採用に注目する中、当社はOPG社、アトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社、エーコン(Aecon)社と共同でBWRX-300の初号機の建設に着手できることを誇りに思う。オンタリオ州のサプライチェーンは、このプロジェクトへの大きな貢献が期待されており、すでに州内の企業に国際的な輸出の機会が生まれている。クリーンエネルギー技術におけるオンタリオ州の世界的なリーダーシップを強化し、次世代の原子力イノベーションの世界的なハブとして位置付けるものだ」と述べた。なお同日8日、カナダ建設大手のエーコン社とKiewit Nuclear Canada社合弁のAecon Kiewit Nuclear Partners社(エーコン社が主導)は、DNNPの実行段階の管理、建設計画、実施を範囲とする提携契約をOPG社と締結した。エーコン社分の契約額は約13億加ドル(約1,967億円)。エーコン社は、ダーリントンとピッカリング発電所の改修、ブルース発電所の主要部品交換プログラムなど、オンタリオ州の3大原子力改修プロジェクトの主要な建設業者でもある。
21 May 2025
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ベルギー連邦議会(下院)は5月15日、原子力発電の段階的廃止を撤回し、新規建設を認める法案を、賛成100、反対8、棄権31の賛成多数で可決した。M. ビエ・エネルギー相は法案の可決に際し、「脱原子力政策の撤回であり、ベルギーのエネルギー史上画期的な出来事」と称し、「現実的で強靭なエネルギーモデルへの道を開き、20年に及ぶ停滞に終止符を打つものだ。政府はエネルギーの自立性を強化し、競争力のある価格を保障し、脱炭素化を加速させていく」と述べた。同法案は、同相が議員時代の2024年10月に他の議員らとともに提出したもので、2003年に制定された「脱原子力法」に明記された、原子力発電所の廃止スケジュールおよび新規の原子力発電所の建設禁止に関する規定を排除するもの。現在の地政学的な不確実性に照らして不可欠となるエネルギーミックスを実現するとともに、エネルギー移行に貢献する原子力部門を再活性化し、高レベルの雇用を創出したい考えだ。2003年の脱原子力法では、原子炉の運転期間を40年に制限。同国北部にあるドール原子力発電所×4基、南部のチアンジュ原子力発電所×3基の原子炉を順次、2025年までに閉鎖することとしていた。しかし政府は2015年、電力供給に懸念が生じたため、2025年の運転終了の条件はそのままに、ドール1-2号機、チアンジュ1号機に40年超の運転期間を承認。さらに、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を受け、翌3月には、最新の2基(ドール4号機、チアンジュ3号機)について、運転40年目となる2025年以降も運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定した。原子力発電事業者であるエンジー社とは2023年7月、運転期間延長の最終合意に向けて交渉していくことで枠組み合意し、同年12月には、2035年11月まで運転期間を10年延長する計画の諸条件について最終合意に達した。これにより、両機は2025年に一旦運転を停止した後、最大20億ユーロを投じてバックフィット作業等を実施し、2025年11月の運転再開を予定している。ベルギーでは現在、ドール発電所で2基(2、4号機)、チアンジュ発電所で2基(1、3号機)、2サイトで原子炉が稼働中。いずれもPWRを採用し、計4基の合計電気出力は365.3万kW。2024年の原子力発電シェアは約42%。再生可能エネルギー(風力・太陽光)は約30%と、クリーンエネルギーが7割を占める。ドール1、3号機はそれぞれ2025年、2022年に、チアンジュ2号機は2023年に閉鎖された。今年2月に発足した5党連立政権は連立協定の中で、脱炭素と増大するエネルギー需要に応えるため、再生可能エネルギーと原子力のエネルギーミックスを追求し、短期的には10年ごとに定期検査を実施し、安全基準を満たした既存炉は最大限に活用、長期的には新規建設する方針を示していた。詳細な特集記事はコチラ
20 May 2025
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IHIは5月27日、神奈川県横浜市の自社工場で、原子炉建屋の壁として使われる鋼製構造物の試作品を報道陣に公開した。これは、米国のニュースケール社がルーマニアで建設予定のSMRプロジェクトに使用されるもの。SMRは従来の原子炉よりも小型で、1基あたりの電気出力が30万kW以下。機器やシステムは工場で製造し、モジュール化して立地サイトに搬送することで、プレハブのように現地で組み立てることができる。そのため、量産化が容易で、工期短縮やコスト削減が期待されている。データセンターの急増などで電力需要が高まる中、CO₂を出さない脱炭素電源として世界的に注目されている。同社はこれまでの原子炉圧力容器の製造などで、高い技術を保有しており、同社はこうした海外案件を通じて技術継承や人材育成を図る狙いがある。また、国際的な原子力サプライチェーンの構築にも取り組む。同社は「これらの事業を通じて、技術力の維持・強化や、国内サプライチェーンの拡大にも貢献していきたい。さらに次世代革新炉に対するグローバル展開を推進し、国内外の原子力の安全・事業の発展と、2030年代には売上1,000億円を目指していく。」とコメントを発表している。
30 May 2025
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電気事業連合会は、5月20日、俳優の今田美桜さんが出演する新テレビCM「電気とひとの物語・冷蔵庫あけたら」篇、「電気とひとの物語・この撮影も」篇(各30秒)を、全国で放映開始した。また、5月27日から、新Webムービー「伝わるのは今だ-episode1-」の配信をスタートさせている。先行して公開されたテレビ CM では、日常のなかにある電気のありがたさや、そこに込められた人の思いをやさしく伝える内容となっている。新Webムービーでは、今後の電力需要の増加を見据え、CO₂を排出しない原子力や再生可能エネルギーの活用、火力の脱炭素化といった課題への取り組みを、ドラマ仕立てで紹介。日本のエネルギー自給率が約15%と低い現状を背景に、各電源をバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性を訴える内容となっている。今田さんがシリアスな表情を崩さずに、若干強引気味に説明するシーンがコミカルで、SNS上では早くも話題になっているようだ。Webムービーの最後には「エネルギーのこと、知ってほしいのは今だから」というメッセージが添えられており、若い世代をはじめ、多くの人にエネルギー問題を身近に感じてもらいたいという思いが込められている。また、電事連では安全性を最優先に、「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」の3要素を同時に満たす「S+3E」の実現を掲げており、新しいテレビCMとWebムービーを通じて、こうした取り組みを伝えている。
28 May 2025
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日本原燃は5月21日、青森県六ヶ所村にあるウラン濃縮工場について、設備の設計および工事計画の認可申請を原子力規制委員会(NRA)に提出した。申請の対象は、年間150トンSWU(分離作業単位)の処理能力を持つ「2号カスケード設備(RE-2C)」を含む複数の設備。今後、老朽化した機器を新型の遠心分離機などへ更新し、安全性と効率の向上を図る。今回の申請では、新型遠心分離機の導入に加えて、耐震評価、追加の安全対策を実施。また、ウラン化合物を取り扱う六フッ化ウラン処理設備や高周波電源設備、放射線監視設備、非常用設備についても同様に設備更新や追加の安全対策が行われる予定だ。今回、申請分の設備は2028年度中の完成を見込んでいる。
23 May 2025
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中国電力は5月21日、運転中の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)に係る「長期施設管理計画」が、原子力規制委員会(NRA)から認可されたと発表した。同機は、2024年4月に、高経年化技術評価制度に基づき長期運転に関する認可を受けた。その後、原子炉等規制法の改正に伴い、運転開始から30年を超えて原子力発電所を運転する場合、経年劣化に関する評価を行い、今後実施すべき具体的な保全活動をとりまとめた長期施設管理計画を申請し、原子力規制委員会から認可を受けることとなった。今回は、原子力規制委員会が2025年5月14日までに行った審査内容に基づく補正を経て、正式に認可されたもの。島根2号機は1989年2月に営業運転を開始。すでに運転開始から36年が経過しており、長期施設管理計画の対象期間は、制度施行日である2025年6月6日から、運転40年目を迎える前日である2029年2月9日までとなっている。
22 May 2025
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日本原子力発電は5月19日、廃炉作業中の敦賀発電所1号機(BWR、35.7万kWe)の廃止措置工程について、完了時期を当初計画の2040年度より7年延期し、2047年度の完了を目指す方針を明らかにした。あわせて、同発電所が立地する福井県及び敦賀市に報告するとともに、原子力規制委員会(NRA)に廃止措置計画の変更届を提出した。敦賀1号機は、1970年3月に営業運転を開始した国内初の商業用軽水炉で、2017年から廃炉作業が進められている。廃止措置は3段階で構成されており、現在は第1段階にあたる「原子炉本体等解体準備期間」にある。すでに、解体で発生する廃棄物を効率的に移送するルート確保のため、原子炉建屋、タービン建屋内の設備や軽油貯蔵タンク等の解体、撤去工事を実施中で、2026年度から原子炉本体の解体に着手する計画だった。しかし、原子炉格納容器の一部であるサプレッション・チェンバの解体を予定していたメーカーが、事情により受注を辞退。その後、別のメーカーを選定したが、解体用装置の開発に時間を要することから、廃止措置の完了時期を延期することになった。日本原子力発電は「引き続き安全確保を最優先に、敦賀1号機の廃止措置を着実に進めるとともに、丁寧な情報発信に努めていく」とのコメントを発表している。
21 May 2025
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九州電力は、5月19日、2035年度までの長期経営計画を説明する記者会見の場で、従来の原子力発電所より安全性を高めた「次世代革新炉」の開発・建設を検討することを発表した。6月に代表取締役社長に就任予定の西山勝取締役常務執行役員は、「原子力を検討していくことは、エネルギー事業者として必須。ただ、具体的に検討していくためには、(資金調達など)さまざまな前提条件が揃わなくてはいけない」と説明し、慎重に判断する姿勢を示した。同社は現在、川内原子力発電所1・2号機(PWR、89.0万kWe×2基)と玄海原子力発電所3・4号機(PWR、118.0万kWe×2基)の計4基を所有、運転している。政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、廃炉を決めた原子力発電所の代替として、同一事業者が発電所のサイト内に新設することを「建て替え」として容認。玄海原子力発電所1・2号機(PWR、55.9万kWe×2基)の廃炉を進める同社にとって、新設への道が開かれた形となっていた。具体的な新規建設サイトへの言及はなかったが、川内原子力発電所3号機(APWR、159.9万kWe)の建設予定サイトが次世代革新炉の設置場所の候補とみる向きも多い。
20 May 2025
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九州電力は5月19日、玄海原子力発電所(PWR、118万kWe×2基)において、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置工事を開始した。既存の燃料プールに加え、乾式貯蔵方式を導入することで、中間貯蔵手段の多様化と貯蔵余裕の確保を図る。2027年度の運用開始を目指している。同施設では、15年以上冷却した使用済み燃料を金属製の乾式貯蔵容器に封入し、専用の建屋に貯蔵する。最大960体の燃料集合体を貯蔵可能で、施設は地中構造を含む高さ約30メートル、幅約50メートル、奥行き約60メートルの規模となる。使用済み燃料を封入する貯蔵容器は、金属製の多重構造となっており、空気の循環によって冷却される設計だ。乾式貯蔵方式は、冷却に水や電源を必要としない構造から、地震や津波などの自然災害時にも高い安全性を確保できるとされ、国内外での導入が進んでいる。玄海発電所の乾式貯蔵施設については、2019年1月に原子炉設置変更許可を申請。2021年4月に許可されると、その後2024年6月に設計・工事計画の認可を申請し、今年4月30日には最終的な認可を得ていた。
20 May 2025
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新潟県は5月16日、柏崎刈羽原子力発電所6,7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)において事故が発生した場合の、被ばく線量シミュレーションを公表した。シミュレーションは、原子力規制委員会(NRA)の検討チームが実施した手法をもとに、気象条件など柏崎刈羽地域の実情に合わせて行った。7日後のベント実施や、6・7号機が同時に事故を起こすケースなど、計6通りのシナリオを想定。事故発生後の時間経過に伴う被ばく線量の変化や、防護措置の実施タイミングをそれぞれのケースごとに分析し、IAEAが定める各種基準と比較評価した。今回のシミュレーションでは、発電所から2.5キロメートル圏内では、避難や屋内退避を必要とする100ミリシーベルト/週の実効線量に達する可能性があること、また、4.5キロメートル圏内では、安定ヨウ素剤の服用が推奨される50ミリシーベルト/週に達する場合があることが示された。いずれもフィルタベントを使用した複数のケースで確認されている。一方、発電所から概ね30キロメートル圏内のUPZ(緊急時防護措置準備区域)では、被ばく線量が、IAEAの基準値には達しないことが確認された。屋外にいた場合でも被ばく線量は十分低く、特に鉄筋コンクリート造の施設など屋内退避を行うことでさらに被ばく線量が低減されると分析した。今回の結果は、6月1日、7日に開催する県民への説明会にて説明される予定となっている。
19 May 2025
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原子力規制委員会(NRA)が4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認めた審査書案を了承したことを受け、同電力は5月15日、札幌市で開催された道の原子力専門有識者会合で、同審査書案について説明を行った。今後、北海道電力は、有識者の指摘を踏まえ、3号機の再稼働に向けて必要な対策を盛り込んだ、一般向け説明資料をとりまとめ、公開する方針だ。なお、審査書案は、5月30日までパブリックコメントに付せられている。会合では、前回有識者から要望があった道民向けの説明資料について、北海道電力が、基準津波、対津波設計方針、基礎地盤と周辺斜面の安定性評価、重大事故等対処施設などの項目ごとに、より分かりやすく、内容を充実させた説明を実施。一方で、一部有識者からは、更なる情報の深掘りを求める声が上がった。津波の年超過確率、制御棒の自重落下やホウ酸水を使った原子炉出力抑制、審査対応状況に関する記載などに関して、さらに分かりやすい説明を求める意見が出された。現在、北海道では、次世代半導体の量産を目指す新工場建設や、国内最大級のデータセンターが建設予定。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。
16 May 2025
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「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協、会長=米澤光治・敦賀市長)の年次総会が5月12日、都内で開催された。全国の原子力発電所などを立地する会員25市町村の首長らが一堂に会し、国に対して原子力・エネルギー政策に係る提言を行うもの。2025年度の活動として、「被災地の復興」、「安全規制・防災対策」、「原子力政策」、「立地地域対策」の分野で、計67の重点項目を掲げ、国・関係機関に要請していくことが了承された。総会には、政府より、竹内真二・経済産業大臣政務官、赤松健・文部科学大臣政務官他、内閣府、原子力規制庁、国土交通省も含め、関係省庁の幹部らが出席。立地地域との質疑応答に臨んだ。米澤会長は、政府関係者との意見交換に先立ち、「立地地域は様々な課題を抱えている」とした上で、2月に閣議決定された新たなエネルギー基本計画で「原子力を最大限活用」と明記されたことに鑑み、「今だからこそ、原子力政策の最前線に立つ立地地域の声を今後の政策に反映させて欲しい」と強調。さらに、「できるだけ地元の国会議員にも聴いてもらいたい」とも要望した。今回は、政界から、メーカーで原子力技術に携わっていた経験のある衆議院議員の森英介氏や、自民党政調会長などを歴任した同・稲田朋美氏らが出席。地域の声に耳を傾けた。今回の意見交換では、8市町村が発言。原子力防災に関し、大間町の野﨑尚文町長は、半島特有の課題に鑑み、大間町と函館市を結ぶフェリー「大函丸」の更新に言及。道路に限らない「防災インフラ」の充実化が図られるよう航路維持に係る補助金の創設を要望した。先般原子力規制委員会が策定した屋内退避の考え方に係る意見もあり、BWRとして再稼働した東北電力女川原子力発電所を立地する石巻市の渡邉伸彦副市長は、市内全域がUPZ圏内にあることを踏まえ、市民に分かりやすいQ&A資料の制作・公開を要望。人材育成の関連では、美浜町の戸嶋秀樹町長が、エネルギー環境教育体験館「きいぱす」、福井県内高校生による全国意識調査やクリアランス金属の利活用など、次世代層への原子力に対する理解に向けた取組を紹介した。また、現在、再稼働に向け地元の理解が焦点となっている柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市の櫻井雅浩市長は、エネルギー政策、原子力規制、原子力防災のそれぞれについて意見を陳述。特に、いわゆる「地元の合意」に関し、「法に基づかないものであるが、実質法のごとく拘束力を有している現状は是正されるべき」と主張した。
14 May 2025
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三重大学、海洋研究開発機構、帝塚山大学らによる研究チームはこのほど、高輝度レーザーを活用し、コンクリート中にセシウムを閉じ込めてガラス体を形成する「その場固定化」技術の実証に成功したと発表した。〈三重大他発表資料は こちら〉現在、進められている福島第一原子力発電所廃炉に関しては、汚染水対策や燃料デブリ取り出しの他、放射性廃棄物の処理処分も長期的な課題となっており、日本原子力学会など、アカデミアでは、廃炉の最終的姿、いわゆる「エンドステート」に向け検討を行っている。今回の研究成果は、これにも関連し、廃炉に伴う廃棄物の減容に資することが期待されそうだ。発表によると、福島第一原子力発電所で発生するコンクリート・がれきの総量は、将来的に建物の解体や燃料集合体から生じる推定量として、低表面線量率(0.005~1mSv/h)のコンクリート廃棄物で約130,000㎥、中表面線量率(1mSv/h超)の廃棄物で約60,000㎥。これらの廃棄物を効果的に管理し、長期保管することが重要なことから、より効率的な減容技術の開発が不可欠となっている。今回の研究では、放射性廃棄物の減容に向け、セシウム137(放射性同位体)を効果的に固定化することに着目。福島第一原子力発電所原子炉建屋と同じ組成のセシウム133(安定同位体)を混ぜたコンクリートに、高輝度レーザーを照射し、セシウムを固定化。物性調査・分析の結果、セシウムは、レーザー照射されたコンクリート中でガラス化されていることが示された。さらに、「電子プローブマイクロアナライザー」と呼ばれるX線分析手法により、セシウム捕捉率は実験値で99%と、従来手法による57%より遥かに高い値を確認。つまり、廃コンクリートの表面を、高輝度レーザーでガラス化し、溶融コンクリート内部の放射性物質をガラス体の中に固定化した後、ガラス体とそれ以外の物質を分離することで、効率的な減容が可能となる。研究チームは、「福島第一原子力発電所の廃炉を支援する優れた可能性を秘めている」と、期待を寄せている。なお、今回の研究開発には、東電設計や、産業廃棄物処理で実績のある太平洋コンサルタントからも協力を得ているという。
12 May 2025
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日立GEニュークリア・エナジーは5月9日、カナダ・オンタリオ州の州営電力オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が推進している小型モジュール炉(SMR)4基を建設するダーリントン新・原子力プロジェクト(DNNP)の初号機向けに、パートナーであるGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GEベルノバ日立)と連携し、原子炉の主要機器を供給することを発表した。〈日立GE発表資料は こちら〉DNNPは北米初のSMRプロジェクトだ。OPG社は2021年12月、最速で2029年の運転開始を目指し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)と日立GEが共同開発するSMR「BWRX-300」(BWR、30万kW)を選定。今年4月4日には、カナダ原子力安全委員会(CNSC)により、建設が承認された。〈既報〉合わせて日立GEは、5月8日にその初号機が建設開始されたことも発表。「BWRX-300」は、自然循環の利用によりポンプを排除し、受動的冷却システムにより電源・注水設備・運転員操作なしで7日間の冷却が可能だ。また、圧力容器に隔離弁を直付けすることで、冷却材喪失事故の発生確率の削減につなげている。日立GEでは今後、「BWRX-300」の主要機器で、安全上重要な機器となるRIN(Reactor Internals 炉内構造物の一つで、原子炉圧力容器内に組み込まれ、炉心の支持や炉内の冷却材流路形成などの機能を持つ)、制御棒駆動水圧ユニットを供給する計画だ。日立GEの原子力国際技術本部長の森脇正直氏は、「この先駆的なプロジェクトに貢献できることを誇りに思う。当社は、BWRにおける豊富な経験および確かな技術力により、DNNPの成功を支援していく」と述べ、先進的なSMR開発の実現に期待を寄せた。同社では、DNNP2~4号機についても、初号機の知見を活かし機器の受注を目指す。
09 May 2025
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