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27 Aug 2025
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スウェーデン リングハルス新設でSMR 2社に絞る
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27 Aug 2025
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スイス 原子力新設禁止の撤廃に向け前進
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27 Aug 2025
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日本製ジャイロトロン ITERに初号機据付け完了
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26 Aug 2025
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関電 福井県などに毎年50億円拠出へ
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26 Aug 2025
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南ア 原子力発電所新設の環境許可の決定を維持
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25 Aug 2025
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台湾 馬鞍山発電所の運転再開めぐる国民投票不成立
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25 Aug 2025
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敦賀2号の再稼働へ 追加調査
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22 Aug 2025
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NEMS2025 海外13か国から計28名が参加
スウェーデンの国営電力会社バッテンフォールは8月21日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR、110万kWe級×2基)に隣接して建設を計画している新規炉について、供給候補4社から米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と英ロールス・ロイスSMR社の小型モジュール炉(SMR)を最終候補に決定したことを明らかにした。この決定を受け、バッテンフォールのA. ボルグCEOは、「40年以上ぶりのスウェーデンの原子力発電所建設に向けた新たな一歩。当社の目標は、ヴェーロー半島でのプロジェクトを成功させることであり、プロジェクトの成功は、さらなる原子力開発の基礎も築く」と強調した。同社はこの2社について、妥当な期間と予算内で納入できる最適な前提条件を備えており、最終的な供給者を選定するプロセスは続いていると説明している。当初の75社から2024年秋には4社に候補を絞りこんでいた。最終候補に残った炉型は、GVH製BWRX-300(BWR、30万kWe)とロールス・ロイスSMR(PWR、47万kWe)。BWRX-300×5基、またはロールス・ロイスSMR×3基で合計約150万kWを供給可能である。ロールス・ロイスSMRは、オスカーシャム1号機(BWR、2017年閉鎖)とほぼ同じ設備容量である。候補企業・炉型の評価プロセスでは主に、技術面、サイトと物流、商業的側面の3つの観点から実施。2社を選定した大きな理由として、両社のSMRは実証済み技術と簡素化された設計を特徴とし、燃料についてはバッテンフォールがすでに確立しているサプライチェーンの利用が可能であることを挙げている。このほか、SMRは欧州でまだ建設実績こそないものの、初期投資が比較的低く、シリーズ建設による学習効果も期待できるため、コスト超過リスクが抑えられる点を評価。立地条件については、ヴェーロー半島は、送電網容量やインフラ、原子力エンジニアの存在、エネルギー供給の国家的重要地点に指定されている点で最適であるものの、サイト面積は限られており、現在自然保護区となっている土地の利用が必要になるという。さらにリングハルスの既存炉2基は、60年から80年への運転延長が計画されており、選定した2種のSMRの方が少人数の建設要員と小さいサイト面積で済むため、建設による既存炉の運転への影響が小さいことが考慮されたようだ。同社のD. コムステッド副社長(新原子力担当)は、「選定にあたり、供給者と炉型を綿密に評価。SMRのシリーズ建設はコスト上の利点が明らかで、必要となるスペースも人員も少なく、物流もより管理しやすくなる。これにより建設段階における人員の確保・住居・輸送の課題も軽減され、コスト増加のリスクが低下する」と指摘した。今後は、国の資金調達・リスク分担制度への申請を行い、2社との交渉を集中的に実施、最終的な供給者の選定に進む。環境法や原子力技術法に基づく申請準備も進行中。最終投資判断はプロセスがさらに進んだ段階になる予定。さらに次のステップとして、閉鎖済みのリングハルス1-2号機(2019~2020年に閉鎖。廃止措置中)に隣接するサイトで100万kWeの設備を追加建設する可能性も検討中であるという。スウェーデン議会(リクスダーゲン)は今年5月、国内の新規原子力発電プラントの建設を検討する企業への国家補助に関する政府法案「新規原子力発電プラント建設の資金調達とリスク分担に関する法案」を採択した。新法は今年8月1日に施行されており、申請が可能となっている。本制度は、低利の借入コストである政府融資の利用により、資金調達コストの削減、ひいては原子力発電自体のコスト削減を目的としている。スウェーデンでは電力供給問題と化石燃料を使わないベースロード電源の拡大のため、2023年11月に原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップが発表された。これには、総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉で最大10基分を新設することなどが盛り込まれている。2024年1月には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする旧・制限事項が撤廃されるなど、原子力推進に向けた環境整備が着々と進められている。
27 Aug 2025
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スイス連邦政府(連邦参事会)は8月13日、昨年3月に開始された「いつでも誰でも電気を(停電を阻止せよ)(Electricity For Everyone At All Times[Stop Blackouts])」イニシアチブ(国民発議)への対案となる法案を採択、連邦議会に提出した。政府は同イニシアチブに反対しており、対案として原子力法の改正を主張。スイスで原子力発電所の新規建設が再び認可され、原子力がスイスの長期的なエネルギー供給の安全保障のための選択肢として残されることを目指している。同イニシアチブは、電力供給を常に確保することを憲法に明記し、政府がその責任を負うことを求めている。政府は、憲法ではすでに広範なエネルギー供給とともに、連邦と州がそれぞれの権限の範囲内でエネルギー供給に尽力しなければならないと規定済みであるとし、同イニシアチブを拒否。さらに政府は、同イニシアチブの、原子力発電所新規建設の禁止撤廃を含む、気候変動に配慮したあらゆる電源を認めるべきとの要求には賛同するものの、原子力法の改正で十分で、不確実性のある憲法改正までは不要との考えを示している。また、政府は2024年12月から今年4月にかけて各政党、経済団体、大手電力会社や自治体と行った協議を踏まえ、対案では、原子力発電所の新規建設および既存の発電所の改修に関する禁止条項を原子力法から削除し、将来的に新たな許認可の発行を可能にすることを提案。スイスのエネルギー政策を特定の電源に偏らない形で設計し、再生可能エネルギーの拡大が不十分な場合や蓄電の進展が乏しい場合に備え、原子力が保険的な役割を果たすと位置付けることとした。なお、原子力発電所を新規建設するという具体的な決定に関するものではないため、資金調達や認可制度の改正などについては考慮しておらず、再生可能エネルギーと原子力発電所の新規建設は両立可能であり、再生可能エネルギーの拡大を引き続き推進する方針を明確化している。スイスでは、2011年の福島第一原子力発電所事故後、50年の運転期間を終了した原子炉を2034年までに段階的に閉鎖する方針を政府決定。2017年5月の国民投票を経て、2018年1月1日に施行した改正エネルギー法では、安全である限り、既存の原子力発電所の運転継続が認められたが、原子炉閉鎖後のリプレース(新規建設)や使用済み燃料の再処理は禁止された。一方で、2050年までのネットゼロ目標の達成や人口増により、電力消費量は今後数年間で急増が予測され、国内の電力生産を拡大する必要性は顕在化。さらにロシアのウクライナに対する軍事侵攻による、地政学的およびエネルギー供給状況の悪化により、近年、原子力発電をめぐる議論が再燃している。スイス原子力フォーラムのH. ビグラー会長は、今回の政府による対案の発表を歓迎。「電気化、デジタル化、人工知能の進展により、スイスの電力需要は2050年までに900億kWh超に増加する見込み。気候目標と地政学的状況を踏まえると、ガス火力発電は持続可能な選択肢ではなく、再生可能エネルギーの拡大は停滞する。低炭素電源を含む計画は、より適切なアプローチであり、原子力発電所の新規建設禁止の撤廃は重要な一歩である」と指摘した。今後、スイス連邦議会はイニシアチブと政府の対案を審議、2026年8月までに決定する必要があるが、同イニシアチブが撤回されないかぎり、国民投票で最終決定されるという。スイスでは現在、ベツナウ1、2号機(PWR、38.0万kWe×2基)、ゲスゲン(PWR、106.0万kWe)、ライプシュタット(BWR、128.5万kWe)の計4基・310.5万kWeが運転中。2024年の原子力発電電力量は230億kWh、原子力シェアは27%だった。スイスの原子力発電所には運転期間の制限はなく、安全性が保証されることを条件に、当局の承認を得て、運転期間を設定することができる。
27 Aug 2025
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南アフリカのD. ジョージ林業・水産・環境相は8月8日、西ケープ州ドイネフォンテインにおける新たな原子力発電所の建設および運転に係る、環境影響面での許可を支持すると決定したことを明らかにした。同許可は南アフリカの国営電力会社であるエスコム(Eskom)に、2017年に発給されていたが、複数の環境団体などから異議申し立てを受けていた。同相は、「これらの異議を検討するにあたり、発電所設備と付帯インフラが環境に及ぼす環境影響評価報告書を徹底的にレビューしたほか、本プロジェクトに関する独自のピア・レビューを実施し、最終的には、1998年国家環境管理法(NEMA、法第107号)の原則を踏まえ、環境的・社会的・経済的な考慮を十分に理解した上で決定をした」と述べた。また南アフリカの環境保護と保全は何ものにも優先されると強調した。南ア政府は2010年の統合資源計画(IRP)に基づき、2030年までに計960万kWの原子力発電設備を新たに建設することを計画。エスコムは2016年3月、候補に上がっていた5サイトから、西ケープ州のドイネフォンテインと東ケープ州のタイスプントの2サイトに絞り、サイト許可を国家原子力規制当局(NNR)に申請した。うち、ドイネフォンテイン・サイトについて、環境問題省(当時)は2017年10月、最大400万kWe新設の環境許可を発給した。が、これを不服とする複数の環境団体や個人らが、詳細かつ包括的な意見書から簡潔なものまで、多様な内容の異議を提出していた。このたび、ジョージ大臣はNEMAの関連条項に基づき、これらの異議を却下し、エスコムへの環境認可付与の決定を承認した。ただし、これにより直ちに、エスコムが原子力発電所の建設や運転を開始できるわけではなく、同社は依然として、NEMAの関連条項に従い、事業を進める前に以下の許認可を取得する必要がある。NNRからの原子力施設許可南アフリカ国家エネルギー規制当局(NERSA)からの承認水・衛生省からの水利用許可その他、鉱物・石油資源相による承認などジョージ大臣は、「林業・水産・環境省は、包摂的な成長、雇用創出、貧困削減を中核に据え、よりクリーンで持続可能なエネルギーへの移行を南アフリカが進めていくことを支援する」と語った。南アフリカ原子力公社(NECSA)のL. タイアバッシュCEOは、ジョージ大臣による決定を受け、「原子力産業と、社会経済発展を可能にし、気候に配慮するバランスのとれたエネルギーミックスの実施に向けた南アフリカにとって重要なマイルストーン。原子力発電所の新設サイトの選定のプロセスの厳格さを示しており、原子力技術への信頼を反映している。NECSAは、原子力発電の利益を最大化するためにノウハウを提供する」と述べた。NECSAは原子力研究開発の平和利用を目的に、医学利用、ウラン化学、放射性廃棄物に関する研究を行っている。現在、南アフリカでは、アフリカ大陸で唯一稼働する原子力発電所であるクバーグ1-2号機(PWR、各97万kWe)がそれぞれ1984年と1985年からエスコムにより運転されている。1号機は2044年7月21日までさらに20年間延長する認可をNNRから取得。同2号機についても現在、NNRは20年間の運転期間延長に係る申請を審査中である。なお、上述のドイネフォンテイン・サイトはクバーグ・サイトに隣接している。
26 Aug 2025
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台湾では8月23日、台湾南部の屏東県にある馬鞍山原子力発電所(PWR, 1号機:98.3万kW、2号機:97.5万kW)の運転再開の是非を問う、国民投票が実施された。中央選挙委員会の発表によると、賛成が有権者総数の21.7%の約434万票に対して、反対は約151万票と賛成多数となったが、成立要件となる有権者総数の25%に達せず不成立となった。投票率は29.53%にとどまった。投票結果を受けて、頼清徳総統は総統府で談話を発表。「投票結果を尊重し、エネルギー選択肢の多様性に対する社会の期待を理解する」と評価。「国民が求めているのは安心と安定した電力供給。政府は、『安全性に懸念がないこと』『放射性廃棄物の処分に解決策があること』『社会の共通認識』の三つの原則を遵守して原子力問題と向き合う。そのうえで、技術がより安全になり、放射性廃棄物が減り、社会的受容度が高まれば、先進的な原子力を排除することはない」と将来に期待を残した。さらに、原子力安全は科学的に検証が必要な問題であり、一度の国民投票で解決できるものではない、と指摘。運転再開の可否については、今年5月改正の「核子反応器設施管制法(日本の原子炉等規制法に相当)」に基づき、まずは核能安全委員会(原子力安全委員会)が安全審査の方法を定め、第二に、事業者である台湾電力がその方法に基づいて自己安全検査を行う必要性があるとし、同委員会に対し、各界の意見を集めて迅速に対応するよう求めた。国民投票の設問は、「馬鞍山原子力発電所が、安全上の懸念がないことを確認した上で、運転再開することに同意するか」。台湾の立法院(国会)で5月20日、馬鞍山原子力発電所の運転再開を求める、国民投票の実施提案が賛成58、反対49票で可決された。国民投票の実施は、少数野党の台湾民衆党(TPP)が主導したもの。台湾で唯一稼働していた同発電所2号機が5月17日に40年間の運転期間を満了し、法律により、永久閉鎖された。国民投票実施の可決は、与党・民進党政権が掲げる目標である「2025年の脱原子力国家(非核家園:原子力発電のないふるさと)の実現」を達成してから、わずか3日後のことであった。台湾ではたびたび大停電が発生、産業界は安定した電力供給を求め、政府に対しエネルギー政策の見直しを要請していた。政府は再生可能エネルギーの拡大推進を掲げるが、それが主力となるまで、火力・ガス発電への依存による大気汚染、電気料金の上昇、企業の経営コスト上昇による台湾の競争力低下への懸念は高まった。最大野党の国民党(KMT)は排出ネットゼロの気候目標と国内のエネルギー供給構造の安定維持を目的に、核子反応器設施管制法の第六条条文のうち、原子力発電所の運転期間を40年から最長で20年延長とする改正法案を立法院に提出。5月13日に賛成61、反対50票で可決されていた。
25 Aug 2025
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米原子力新興企業のケイロス・パワー社は8月18日、米国の拡大するエネルギー需要に対応し、先進原子力分野における同国のリーダーシップを強化するため、IT大手のGoogle社および米テネシー峡谷開発公社(TVA)と新たな協力関係を発表した。ケイロス社とTVAは電力購入契約(PPA)を締結、テネシー州オークリッジに建設されるケイロス社の実証プラント「ヘルメス2」(出力5万kWe)がTVAの送電網を経由し、テネシー州とアラバマ州にあるGoogle社のデータセンターに電力を供給する。TVAは、先進的な第4世代炉からの電力を購入する米国初の電力会社となる。Google社は2024年10月、自社のデータセンターへの電力供給を目的にケイロス社と2035年までにケイロス社が開発する先進炉のフッ化物塩冷却高温炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeの導入による電力購入契約(PPA)を締結。ヘルメス2は、Google社との同契約の下で最初に建設される発電所となる。ケイロス社はGoogle社のテネシー州モンゴメリー郡ならびにアラバマ州ジャクソン郡にあるデータセンターへの電力供給を加速するために、ヘルメス2の出力を2.8万kWから5万kWeに増強し、1基の原子炉で発電を行う予定で、2030年の運転開始を見込んでいる。Google社は事業の脱炭素化をさらに推進していく考えだ。ヘルメス2は、テネシー大学や他の地元大学と提携して開発された新しいプログラムを通じて、発電所のオペレーターやエンジニアとして高収入の仕事に就く地元の労働力の人材を育成するなど、オークリッジを原子力イノベーションのハブとして再確立するものと期待されている。TVAのD. モールCEOは、「エネルギー安全保障は国家安全保障そのものであり、電力はAIや国家の経済的繁栄を支える戦略的な基盤。世界は米国のリーダーシップを求めており、この画期的な合意は新しいビジネス手法の始まりだ。技術、サプライチェーン、提供モデルを開発して産業を育成し、米国のエネルギーを解き放つことで、Google社のような企業を惹きつけ、支援し、AI競争に勝つことができる」と述べた。3社は、産業用エネルギー利用者に対して革新的なソリューションを提供すると同時に、地域経済の成長と雇用創出の促進を目指している。ヘルメス2の開発・運転で得られる教訓は、後続機の導入が進むにつれてコストの削減に貢献し、TVA管轄エリアやその他の地域におけるクリーンで安定した発電の経済性を改善すると期待を寄せている。ヘルメスは2023年12月に、米原子力規制委員会(NRC)が半世紀ぶりに建設を許可した非水冷却炉(非発電炉、熱出力3.5万kW)。TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉の設計を簡素化しているのが特徴で、2027年に運開予定。すでに2024年7月に土木工事(掘削工事)に着手している。2020年12月に米エネルギー省による「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉に選定された。ヘルメス2は同炉を2基備えた発電プラントで、建設許可が2024年11月に発給されている。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模のフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」(熱出力32万kW、電気出力14万kW)の完成を目指している。
22 Aug 2025
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カザフスタンのアルマティ州ジャムプール地区のウルケン村において8月8日、同国がソ連から独立後、初となる原子力発電所の建設プロジェクトのエンジニアリング調査が開始された。同発電所建設プロジェクトの主契約者は、ロシア国営原子力企業のロスアトム。VVER-1200(PWR、120万kWe)を2基建設する。ロスアトムは6月、カザフスタン原子力庁(KAEA)により、国際コンソーシアムのリーダーとなる主契約者に選定されていた。今回のエンジニアリング調査は、最適な建設サイトを選定し、大規模発電所の設計文書の準備を目的とする。今年6月のロシア・サンクトペテルブルク国際経済フォーラムにおいて、KAEAとロスアトムの間で「原子力発電所建設プロジェクトの指針となるロードマップ」が承認。エンジニアリング調査の実施、設計文書の作成、EPC(エンジニアリング、調達、建設)契約の締結など主要な段階を定めている。また、カザフスタン原子力発電所(KNPP)とアトムストロイエクスポルト(ASE。ロスアトムのエンジニアリング部門)の間で、プロジェクト実施のための主要な協力枠組み協定が締結された。調査では土壌サンプルの採取のために、合計50本以上、深さ30~120mのボーリングを実施する。発電所の信頼性と安全性確保の必須条件となる、地質学的、地震学的、水文学的、環境的な観点から評価し、それに基づき最終的な建設サイトを決定。本調査の実施により、国際的および国内の基準への適合、環境的・技術的リスクを最小化し、効率的な設計の基盤を築く方針だ。調査の開始にあたり開催された式典には、KAEAのA. サトカリエフ長官とロスアトムのA. リハチョフ総裁が出席。サトカリエフ長官は、「本調査の開始は、カザフスタンが新たなハイテク産業を経済に形成していく道を定めるもの。原子力発電所の建設は、近代的なインフラ整備から、新しい学校や幼稚園、社会施設の誕生に至るまで、地域発展を強力に推進し、国全体の長期的な経済成長を牽引するものだ」と指摘。リハチョフ総裁も「原子力発電所建設の適地であるかを確認するため、徹底的に調査を行う。カザフスタンにとって戦略的に重要な本プロジェクトの実現に向け、蓄積したすべての経験を活用する」と強調した。建設されるVVER-1200は、第3世代+(プラス)、国際的な安全基準に厳格に準拠した設計。ロシアでは4基、ベラルーシで2基が稼働中であり、トルコ、バングラデシュ、エジプト、中国で建設中、ハンガリーでは建設準備段階にある。原子炉の設計寿命は60年で、さらに20年間延長することが可能。なおカザフスタンでは、1973年から1998年までカスピ海沿岸のアクタウ市(マンギスタウ州)で高速炉BN-350(15万kWe)が稼働。発電に加えて、世界最大級の海水淡水化施設を備えていた。現在、BN-350は廃止措置中である。K.-J. トカーエフ大統領は今年3月の演説で3サイトでの原子力発電所の建設を示している。先のベンダー選定作業における潜在的な候補には、露ロスアトム、中国核工業集団公司(CNNC)、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力 (KHNP) が含まれており、KAEAはロスアトムの提案の採用に次いで、CNNCの提案を2番目とした。KAEAのサトカリエフ長官は、「中国は間違いなく必要な技術をすべて備えており、完全な産業基盤を持っているため、次の優先事項は中国との協力だ」と述べ、中国側との交渉が行われることを強調した。カザフスタンのR. スクリャル第一副首相は7月31日の合同記者会見で、KAEAとKNPPが第2および第3発電所のサイト候補を評価中であり、今年後半にも評価結果が明らかになるとし、CNNCが第2発電所に続き、第3発電所も建設するだろうと述べた。
21 Aug 2025
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米エネルギー省(DOE)は8月12日、先進炉の実用化に向けた「原子炉パイロットプログラム」の開始にあたり、11件の先進炉プロジェクトを有する10企業を選定した。DOEは2026年7月4日までに少なくとも3基の試験炉を建設し、臨界達成を目指したい考えだ。トランプ政権は、米国を再び原子力分野のリーダーとし、信頼性が高く、多様で、手頃な価格のエネルギー供給を確保して、米国の繁栄と技術革新を推進することに取り組んでいる。DOEは、今回の初期の企業選定が原子炉試験の合理化に向けた重要な一歩であり、商業ライセンス活動を迅速化する新たな道を切り開くものと位置付けている。DOEのJ. ダンリー次官は、「選定されたプロジェクトはすべて、来年の独立記念日(2026年7月4日)までに安全に臨界を達成することを目指しており、DOEはその努力を全面的に支援していく」と語った。DOEは2025年6月、大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」を受けて、先進炉パイロットプログラムを発表。DOE傘下の国立研究所以外でDOEの管理権限の下、先進炉設計の試験の加速と研究開発の促進を目的としており、商業的適合性のための原子炉の実証ではないと強調している。これまで原子炉試験への道筋は、米原子力規制委員会(NRC)の認可下、またはDOEを経由した、DOE所有サイトでの試験または実証であった。今回選定された企業は、原子力法の下でDOEから認可を受けることで、民間資金を確保し、将来的なNRCからの商用ライセンス取得に向けた迅速なアプローチが可能になると予測されている選定された企業・プロジェクトは以下のとおり(アルファベット順)。・Aalo Atomics: 1万kWeのナトリウム冷却Aalo-1を開発。2024年12月、AaloとDOEはアイダホ国立研究所(INL)に実験用原子炉の建設を発表。・Antares Nuclear: 500kWeのナトリウムヒートパイプ冷却R1マイクロ炉を開発。国防イノベーション・ユニットにより、国防総省 (DOD) の軍事施設向け先進原子力(ANPI)プログラムに選定。・Atomic Alchemy: 1.5万kWtの軽水多用途同位体製造炉(VIPR)の開発を進めている放射性同位元素製造会社。2024年にOkloに買収され、子会社に。・Deep Fission: 1.5万kWeのDFBR-1(PWR)を開発。地下1マイルに30インチのボーリング孔を通って建設予定。・Last Energy: 2万kWeのPWR-20 を開発。テキサス州北西部のハスケル郡に30基のマイクロ炉を建設し、同州内のデータセンター顧客向けに電力供給する計画。・Natura Resources: 商業用および研究用熔融塩炉の両方の設計を開発。NRCから初の建設許可を受けた熔融塩炉Natura MSR-1(0.1万kWt)をアビリーン・クリスチャン大学に建設する計画。・Oklo: 7.5万kWeの液体金属冷却、金属燃料高速炉であるオーロラ発電所を含む2つのプロジェクトが選定。初の発電所をINLで建設し、2027年後半から2028年初めの運開を見込む。・Radiant Industries: 0.1万kWeのヘリウム冷却炉Kaleidos を開発。INLのマイクロ炉実験機の実証(DOME)テストベッドで原子炉試験を行う最初の企業の1つ。・Terrestrial Energy: 19.5万kWeの一体型溶融塩炉を開発。EnergySolutionsの閉鎖サイトへの建設で協力覚書を締結。・Valar Atomics: ヘリウム冷却、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料利用の高温ガス炉を開発。各企業は、自らの試験炉の設計、製造、建設、運転、廃止措置に関わるすべての費用を負担する責任を負う。なお今回は初期選考であり、今後さらに多くの申請が審査、選定される可能性がある。さらにDOEは7月、先進試験炉向けの燃料製造を加速するため、燃料製造ラインのパイロットプログラムを発表したが、8月4日、同プログラムの初対象となる企業として、スタンダード・ニュークリア社を選定した。試験炉と同様、DOEが認可を予定している試験炉向けに、米企業が開発した燃料製造ラインをDOE傘下の国立研究所以外に建設、DOEが迅速な承認手続きによって認可する。原子力法の下でDOEが認可した燃料製造ライン設計は、将来のNRCによる商用ライセンス取得において迅速に処理される。申請者にとっては、DOEから認可を受けることで、民間資金の活用を促進し、将来的なNRCからのライセンス取得に向けた迅速なルートを確保、燃料製造ラインの商用化が可能になるというメリットがある。テネシー州オークリッジに拠点のあるスタンダード・ニュークリア社は独自の原子炉開発事業を持たない国内唯一の独立系TRISO燃料製造事業者。TRISO燃料の需要は高まっており、DOEの認可プロセスを活用して、テネシー州とアイダホ州の両方で燃料供給を確保したい考えだ。同社は今回のプログラムへの選定を受け、実証済みのインフラを活用して、2026年半ばまでに複数のサイトで年間TRISOを年間2トン以上生産していく方針を示している。なお、施設の建設、運営、廃止措置に関連するすべての費用を同社が負担。先進炉開発者は、DOEのHALEU(高アッセイ低濃縮ウラン)割り当てプログラムを通じて燃料製造用の原料の調達を行うという。
20 Aug 2025
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韓国水力・原子力(KHNP)は8月8日、チェコのドコバニ原子力発電所5-6号機(APR1000×2基)の増設に係わるサイト詳細調査の着手式を開催した。同調査は2026年8月まで約12か月間かけて実施され、増設部分の土壌や岩盤に関する詳細な情報を取得し、設計の基礎資料として活用することが目的。最大で10台のボーリング装置と補助車両によって順次行われ、今後数か月でボーリング作業などを行い、土壌、岩石、水のサンプル採取や各種試験・測定を実施する。着手式には、KHNPのJ. ファンCEOとドコバニII原子力発電所(EDU II。政府が80%、チェコ電力ČEZが20%所有)のP. ザボドスキー社長をはじめ、L. ブルチェック産業貿易相、現地調査の実施企業の幹部らが出席。KHNPのファンCEOは、「サイト詳細調査はドコバニ発電所増設プロジェクトの最初の現場作業であり、APR1000建設の実質的な出発点。契約工程を遵守するため、計画に従い徹底的かつ体系的に調査を実施する」と述べた。EDU IIの建設は2029年に開始され、初号機の試運転を2036年に見込んでいる。EDU IIとKHNPは6月4日、ドコバニ発電所に2基を増設するためのエンジニアリング・調達・建設(EPC)契約を締結した。なお、EPC契約締結前の5月7日、タービンホールの包括的供給の枠組み合意やシュコダ・パワー社、KHNP、斗山エナビリティ間の蒸気タービン供給の契約を含む、合計9件の予備契約と3件の覚書が締結され、プロジェクトの準備は大きく前進していた。ブルチェック産業貿易相は、すでにプロジェクトへのチェコ企業の関与を約30%達成しているが、建設完了までに60%を目標にしており、チェコ国内に設立されたKHNPのローカライゼーションセンターも、チェコ企業と韓国プロジェクトチームを結びつける役割を果たしていると強調した。産業貿易省は、プロジェクトの完成が教育や地域経済にも好影響をもたらし、最大1,000の新たな企業創出と2,300億チェココルナ(約1.6兆円)超えの投資誘致が見込まれると試算する。2024年7月、KHNPはドコバニとテメリン両原子力発電所における最大4基の増設プロジェクトの主契約者をめぐる優先交渉権を獲得し、EDU IIと約9か月にわたる技術的、商業的交渉を実施した。応札していた米ウェスチングハウス社と仏EDFは、入札プロセスについてチェコの競争保護局(ÚOHS)に異議申し立てを行った。WE社は後に申し立てを取り下げ、EDFは2025年4月に却下された。これにより当初3月に予定されていた最終契約締結は遅延。その後EDFはチェコ地方裁判所に提訴し、5月6日、同地方裁はEDU IIとKHNPの契約締結禁止仮処分を下した。両社はチェコ最高行政裁判所にその決定を不服として控訴。6月4日、最高行政裁判所は契約締結禁止仮処分を取り消し、両社の契約締結が可能になった。テメリン発電所の隣接サイトで、SMR建設に向けた地質調査も実施ČEZは南ボヘミヤ地域のテメリン原子力発電所(VVER-1000×2基、各108.6万kWe)の隣接サイトに同国初となる小型モジュール炉(SMR)の英製ロールス・ロイスSMRを設置する計画で、現在、地質調査を実施している。50〜200mの深さまで合計9本のボーリングを実施し、岩盤などを分析する。この調査結果は、ČEZが2027年中に見込む、サイト許可申請に活用するという。テメリン地域は既存の発電所の稼働前の1980年代にも十分に地質調査されており、原子力利用に適した地質であることが確認されているものの、SMR建設のための調査は今回が2回目。初回調査は3年前に行われ、4本のボーリングで深さ30mまで調査済み。さらに追加の調査も予定であるという。ČEZは2024年9月、合計最大300万kWeの設備容量を確保するためのSMRの優先サプライヤーに、ロールス・ロイスSMR社を選定。ČEZは、ロールス・ロイスSMR社の約20%の株式を取得し、戦略的少数株主となった。ČEZとロールス・ロイスSMR社は今年7月、先行作業契約(Early Works Agreements: EWA)を締結。両社共同でテメリン発電所サイトを対象に、規制手続き、環境評価、サイト準備作業を実施する。初号機の運転開始は2030年代半ばを予定している。ロールス・ロイスSMRは既存のPWRをベースとしており、電気出力が47万kWとSMRにしては大型なのが特徴。少なくとも60年間稼働する。ČEZ傘下にあるシュコダJS(ŠKODA JS)は8月1日、ロールス・ロイスSMR社とチェコ国内外におけるSMR用コンポーネントの開発と生産における協力に関する覚書を締結した。シュコダ社はチェコに拠点を置く、原子力発電所の建設とサービスの経験を持つヨーロッパ有数のエンジニアリングおよび製造会社の1つ。ČEZは、新たな原子力発電の開発と建設にチェコ産業界を関与させることを優先事項としている。
19 Aug 2025
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インドネシアのPT Thorcon Power Indonesia(PT TPI)社は8月7日、インドネシアの原子力規制当局のBAPETENが、PT TPI社によるインドネシア初の原子力発電所の建設に向けたサイト評価プログラム(PET)ならびにサイト評価管理システム(SMET)を承認したことを明らかにした。シンガポールを拠点とするThorcon International社の子会社であるPT TPI社は今年2月、米国のデベロッパーThorcon社製の先進的熔融塩炉を採用した実証プラント「Thorcon 500」(50万kWe)の建設に向けて、BAPETENに対し、PETおよびSMETの承認を得るための申請書類を提出。安全性、生態学的、サイト適合性の観点に焦点を当てた、予備的サイト調査の結果、同国バンカ・ブリトゥン州のバンカ島の沖合にある、ケラサ島を同プラントの建設サイトとして提案している。 PT TPIが提案する「Thorcon 500」は、1960年代に米エネルギー省オークリッジ国立研究所で開発された熔融塩炉(MSR)をベースとしている。低濃縮ウランを燃料とする25万kWe×2基がそれぞれ交換可能かつ密封された「Can(缶)」ユニットに格納されている。「Can」は造船所で船体に組み入れられ、浅瀬のサイトまで曳航される。各発電モジュールでは、常時1基のみが稼働し、運転8年後には、使用済みの原子炉モジュールを切り離して新規モジュールに交換。取り外したモジュールはCan交換のためにメンテナンスセンターに曳航される。Thorcon International社は、東南アジアは世界で最も急速にエネルギー市場が成長しており、信頼性が高く手頃な価格でクリーンな電力は、経済拡大、工業化、長期的に持続可能な開発を支援するために不可欠と指摘。特にインドネシアには原子力発電導入の大きな可能性があると考え、PT TPI社はインドネシア国内に原子力エンジニアリングとライセンスチームを設立した唯一の原子力企業となった。次のステップとして、サイトライセンスおよび設計承認を取得し、2027年に建設開始、2031年のフル稼働を目指している。PT TPI社のD. アシャリCOOは、「原子力発電が最も安全な発電形態の1つであることは現在広く理解されているが、地域社会が当社の開発するプラント固有の設計による安全性を理解できるよう、サイトライセンスと設計承認に向けて地元コミュニティや知事と緊密に連携していく」と述べた。インドネシアは発電設備容量の半分以上を石炭火力に依存しており、インドネシア政府は今年5月、2040年までに1,000万kWeの原子力導入目標を掲げた。PT TPI社は同社の開発するプラント導入により、インドネシアの石炭依存の低減に貢献したいとしている。
18 Aug 2025
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韓国水力・原子力(KHNP)は8月6日、古里原子力発電所4号機(PWR、103.3万kWe)を、40年の運転期間の満了に伴い、運転停止した。同機は、1985年8月7日に運転認可を受け、1986年4月29日に営業運転を開始。国内で5番目に営業運転を開始した原子炉である。KHNPは同機を引き続き運転するために、韓国の原子力規制機関である原子力安全委員会(NSSC)の承認審査を受けている。KHNPは2022年9月、NSSCに継続運転安全評価書を提出し、2023年7月、継続運転に関する放射線環境影響評価報告書に対する公聴会プロセスを完了。同年11月に継続運転の運転変更許可を申請した。政府は電力の需要や経済性などを考慮し、原子炉の設計寿命の終了後でも、法制度に基づき10年間追加で運転を継続する方針である。古里4号機の運転停止に先立ち、2023年4月に2号機、2024年9月には3号機がそれぞれ40年の運転認可期限を迎えて運転を停止しており、現在、継続運転のための審査手続き中である。2号機は早ければ今年後半、3号機と4号機は来年中にNSSCにより継続運転が承認される見込みだ。KHNPによると、古里4号機は今回の運転期間満了までに2,059日連続(5サイクル)の無故障運転を達成。米国ニュークレオニクスウィーク誌が発表する「年間稼働率」で世界400基以上の原子力発電プラントのうち何度も1位に輝いている。同機は運転期間中、約2,773億kWhを発電した。古里発電所のイ・サンウク所長は、「継続運転は、安定したエネルギー供給とカーボンニュートラル実現のカギとなる戦略。市民の安全を最優先に、透明で公正な手続きを通じて継続運転を推進する。徹底した安全審査、安全設備の強化、最新装備の改良を通じて、古里4号機はより安全で効率的な発電所に生まれ変わるだろう」と語った。脱原子力政策を進めた文在寅(ムン・ジェイン)前政権は設計寿命に達した原子炉の延長運転を原則的に認めなかった。古里4号機を含めて現在審査中の古里2、3号機も文在寅政権下で運転期間延長の申請が遅れたのが今回の発電中断の原因となっている。原子炉が中断なく稼働するには運転認可期限に達する3、4年前から延長運転のための手続きを始める必要があるが、文在寅政権下では手続きが行われなかった。古里2号機の場合、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領当選直後の2022年4月に継続運転の申請が行われたが、運転認可期限まで1年しかなかった。今年末にはハンビット1号機が40年の運転認可期限を迎え、停止する。今後、1980年代半ばにかけて運転を開始した原子炉が、2029年までに年1~2基停止していく。1978年4月に営業運転を開始した韓国最古の古里1号機(PWR、58.7万kWe)は、設計寿命30年に追加10年の運転期間延長を経て、2017年6月に永久閉鎖された。KHNPは2021年5月に同機の解体申請を提出、今年6月に承認された。8月からタービン建屋内の設備から順次解体作業に着手し、2031年に使用済み燃料を搬出後、放射性系設備の解体を経て2037年に解体を完了、サイトを復旧する計画である。
14 Aug 2025
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米テキサス州を拠点とするフェルミ・アメリカ(Fermi America)社は7月28日、韓国の現代E&C(現代建設)社と覚書(MOU)を締結。テキサス工科大学(TTU)システム((テキサス州にある州立大学群))との提携によって実施される、次世代AIへ電力供給する民間送電網プロジェクトのうち、原子力コンポーネントの計画・開発において、現代E&C社と協力する。フェルミ・アメリカ社は、次世代人工知能(AI)の実現に不可欠なギガワット(GW=100万kW)規模の電力網の建設を主導する米国のエネルギー開発会社。R. ペリー元米エネルギー省長官・元テキサス州知事が共同創設者に名を連ね、TTUシステムに世界最大の統合エネルギーとAIキャンパス(ドナルド J. トランプ先進エネルギー・インテリジェンス・キャンパス)の建設を加速させている。フェルミ・アメリカ社のT. ノイゲバウアー共同創設者と現代E&C社のイ・ハンウCEOが韓国ソウルで「先進エネルギー・インテリジェンスキャンパス共同開発のための覚書(MOU)」に調印した。本MOUにより両社は、原子力ベースのハイブリッドエネルギープロジェクトの共同計画、プロジェクトフェーズごとに詳細な作業パッケージの開発、フロントエンドエンジニアリング設計(FEED)、および年内の設計、調達、建設(EPC)契約の締結など、プロジェクトのさまざまな分野で協力することとしている。フェルミ・アメリカ社が手がける同プロジェクトは、テキサス州アマリロ郊外の約2,335万m²の敷地に世界最大とされる民間初の電力網キャンパスを建設するもの。大型炉のウェスチングハウス社製AP1000×4基(4GW)、SMR(2GW)、ガス火力複合発電所(4GW)、太陽光発電とバッテリーエネルギー貯蔵システム(1GW)を組み合わせた計11GWの独立電力供給インフラと、この電力に連携される大規模なハイパースケールAIデータセンターを段階的に導入する計画であるという。既存の電力網よりも安定性の高いエネルギーキャンパスとして、次世代AI技術を支える特化システムと位置づけられている。フェルミ・アメリカ社は、現代E&C社が韓国国内で18基の原子炉を建設、アラブ首長国連邦のバラカ原子力発電所で4基の原子炉を手がけた実績を有する他、韓国で2基、ブルガリアで2基の原子炉も現在、建設・設計段階にある点に着目。特に、バラカ・プロジェクトでは、予定より早く、安全かつ予算内で全4基を稼働させたことを評価している。ノイゲバウアー共同創設者は、「現代E&Cチームと提携してAIの未来を支えていく。米国には練習している時間はない。実績あるパートナーと協力することが不可欠。現代E&Cは安全でクリーンな新型原子力を計画・建設してきた成功実績を持っている」と強調した。現代E&C関係者によると、同プロジェクトの初期段階から参加し、多様なエネルギーインフラを活用した世界最大の統合エネルギー・AIキャンパスの造成に貢献できるという点で意義があると指摘。これを重要な出発点として、米国だけでなくグローバル市場でも様々な新エネルギー分野のビジネスチャンスを積極的に確保し、競争力を持続的に強化していくとしている。なおフェルミ・アメリカ社は6月17日、AP1000×4基の建設に向けて、米原子力規制委員会に建設運転一括認可(COL)を申請。同申請は記録的な速さで審査受付されたという。現代E&C社と提携することで、来年にも原子力発電複合施設の建設を開始し、初号機を2032年までに稼働させたい考えだ。
14 Aug 2025
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ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は7月30日、ハンガリーならびにスロバキアの原子力関係機関とそれぞれ、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kWe)の導入をめぐり協力することで合意した。SGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と50%ずつ出資し、2022年に合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立。OSGE社は国内6地点における合計24基のBWRX-300建設に向けて、許認可手続きの準備を進めている。なおSGE社はGVH社と合意に基づき、欧州地域でのBWRX-300建設においてプロジェクト開発者としての役目を担う。ハンガリーにおける導入計画SGE社はハンガリーのHunatom社(原子力発電に関連する技術・イノベーション強化を目的に設立)と、ハンガリーに最大10基のBWRX-300導入を評価する基本合意書(LOI)に調印した。LOIは、BWRX-300の導入に関連して、必要な技術、インフラ、ファイナンス、法的な側面での共同作業を開始する枠組みを確立するもの。LOI調印式には、ハンガリーのP. シーヤールトー外務貿易相、ポーランドのJ. シュラデフスキー臨時代理大使、米国のR. パラディーノ臨時代理大使が立会った。シーヤールトー相は、「我々は電力需要の増加に直面しているが、我々が自力で維持できる唯一の発電方法は、間違いなく原子力。大型炉をさらに建設することは国土の大きさからして現実的ではなく、SMRは理想的なソリューション。特に工業地域での設置に最適だ」と述べた。ハンガリーでは現在、パクシュ原子力発電所の増設プロジェクト(=パクシュⅡプロジェクトとして5、6号機を増設、各ロシア製VVER-1200、120万kWe)が進められている。パクシュⅡは国際プロジェクトであり、ロシア国営原子力企業ロスアトム、仏アラベル・ソリューションズ社のほか多くの西側サプライヤーと提携して実施。今年6月、米政府が同プロジェクトに対する制裁を解除し、建設プロジェクトに弾みが出ると期待されている。スロバキアにおける導入計画SGE社は、スロバキアの大手電力会社のスロバキア電力(SE)社とBWRX-300の導入プロジェクトで協力を模索するMOUを締結した。スロバキアおよびその他の欧州諸国(特にチェコと英国)におけるSMRプロジェクトに係わる投資、許認可手続き、共同開発の可能性を検討する。合弁事業の設立、資金調達の構築、地域サプライチェーンの開発のほか、データセンターなどのデジタルインフラへの活用も視野にいれている。SE社のB. ストリチェクCEOは、「SGE社とのパートナーシップにより、最先端のBWRX-300を詳細に分析し、スロバキアにおける導入可能性を適切に評価できるようになる。原子力発電所の建設・運転で培った当社の長年のノウハウを活かして、地域のSMR開発を支援していきたい」と語った。なおスロバキアは現在、米国と原子力分野における協力に関する政府間協定の締結の準備を進めており、D. サコヴァ副首相兼経済相はこのほど、欧州委員会(EC)が同協定について了承したと明らかにした。EU加盟国ではない国との政府間協定はEU機関による事前承認や審査を受けなければならない。R. フィツォ首相は自身のソーシャルメディアで、同協定の締結を契機に、ボフニチェ原子力発電所の新設に米ウェスチングハウス社製AP1000を採用する計画について言及している。
13 Aug 2025
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量子科学技術研究開発機構(QST)は8月21日、南フランスのサン・ポール・レ・デュランス市で建設中の国際核融合実験炉(ITER)にて、日本製の高出力マイクロ波源「ジャイロトロン」の初号機の据付けを完了したと発表した。「ITER」プロジェクトは、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドが協力し、核融合エネルギーの実現に向けて科学的・技術的な実証を行うことを目的とした国際プロジェクトだ。日本は、主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTが同計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。据え付けが完了したジャイロトロンの開発では、日本が高いプレゼンスを発揮しており、ITERで使用する全24機のうち8機が日本製だ(キヤノン電子管デバイス株式会社が製造)。QSTは、ジャイロトロンの研究開発を1993年に開始し、2008年に世界で初めてITERが要求する出力、電力効率及びマイクロ波出力時間を満たすジャイロトロンの開発に成功した。このほど、世界に先駆けて1号機を設置したことは、同分野における日本の技術的な優位性を改めて示す結果となった。ジャイロトロンは出力のマイクロ波を発生させる大型の電子管(真空管)で、磁力線に巻き付いた電子の回転運動をエネルギー源としている。名前の由来は、磁場中の回転運動(ジャイロ運動)から来ている。核融合反応を起こすために高温状態をつくりだす役割を担っており、電子レンジのようにマイクロ波を発生させて加熱する。装置の全長は約3メートルで、出力100万ワットは電子レンジの約2000倍に相当する。
27 Aug 2025
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関西電力は8月25日、原子力発電所の立地地域の振興や課題解決のための財源として、2025年度から当面の間、毎年50億円前後を拠出する新たな仕組みを福井県に報告した。同社では、2021年度に設置された「福井県・原子力発電所の立地地域の将来像に関する共創会議」において、医療・交通インフラ整備事業など、地域振興事業費用の活用を検討してきた。この度、その具体的な取り組みとして、客観性と透明性の高い新たな地域振興の仕組みを構築。これまでも自治体への寄付活動は行ってきたが、金額を大幅に増額し一本化した形だ。開始年度の2025年度は、初期的な財源基盤も含めて約207億8,000万円を拠出する。同社は、信託銀行に信託を設定して、7基の原子力発電所の稼働実績および燃料価格の実績に応じて、毎年度、資金を拠出する。福井県や立地自治体は、地域振興の事業計画や、それに係る金額を信託銀行に申請し、第三者機関が適切と判断した場合、寄付が行われる仕組みだ。
26 Aug 2025
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日本原電は8月21日、再稼働を目指している敦賀発電所2号機(PWR、116万kWe)の、新規制基準への適合性確認のための追加調査計画を発表。同社の坂井毅志敦賀事業本部長は同日、福井県庁と敦賀市役所を訪れ、計画の概要を説明し、計画を報告した。同機は2024年11月、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で、敷地内のD-1トレンチ内に認められるK断層の活動性及び連続性が否定できないとして、不合格となっていた。同社は早ければ9月から2年程度かけて、敷地内の断層の調査や破砕帯に関する調査・評価に取り組む。社外の専門家の意見も踏まえながら、原子力規制委員会への審査の再申請を目指す考えだ。追加調査では、K断層の分布と性状を詳細に把握すべく、同断層が確認されているD-1トレンチの地下深部までボーリングを実施する予定。そして、12~13万年前より古い断層であることの立証に向け、地層の拡がりや堆積年代に係るデータを蓄積する。また、断層の活動状況や連続性の否定の証明に向け、岩盤までの掘削や原子炉建屋に向けた調査杭を掘り、K断層が重要施設の直下まで連続していないことの証明を目指すという。円滑な調査の遂行に向けて、同社は同日、9月1日付で組織改正を実施することを発表した。地質・地盤調査に関する技術的な総括管理や、計画の進捗管理などを行う追加調査技術総括・推進チームを、開発計画室に設置する。
25 Aug 2025
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将来の原子力業界を牽引する人材の育成を目指した研修コース、「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2025」が8月19日に開講し、東京大学にて開講式が行われた。NEMSは、2010年にイタリアのトリエステで初めて開催されて以来、延べ2146名(112の加盟国)が参加してきた。日本での開催は今年で13回目。アジアや東欧、中近東など、原子力発電新規導入国等における若手リーダーの育成を主たる目的としている。今年は、海外13か国(ブルガリア、エストニア、インド、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、タイ)から18名、日本からは10名、計28名の研修生が参加した。約3週間にわたる日程で開催され、東京大学本郷キャンパスでの講義やグループワークのほか、東京電力福島第一原子力発電所、東北電力女川原子力発電所とPRセンター、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力科学研究所の原子炉安全性研究炉(NSRR)と原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)、産業交流施設「CREVAおおくま」、「株式会社千代田テクノル大洗研究所」等へのテクニカルツアーを通じ、原子力に関連する幅広い課題について学ぶ。開催に先立ち、組織委員長の東京大学大学院工学系研究科の出町和之准教授は、研修生らを大いに歓迎し、研修生同士の関係性向上が将来の人脈に繋がると、指摘した。また、暑さの厳しい時期であることを鑑み、「体調管理に留意し、実りある時間にしてほしい」と研修生を労った。続いて挨拶に立った日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、IAEAをはじめとする関係各位に謝辞を述べた上で、「グループワーク等では、主体的に、そして積極的に議論に参加してほしい」と期待を寄せた。IAEAからは、原子力エネルギー局計画・情報・知識管理部(NEPIK)部長を務めるファン・ウェイ氏が登壇。同氏は、「世界的に原子力の専門人材やリーダーシップの必要性が高まっている」と指摘し、「各国政府や教育機関と連携し、若手の知識や経験の共有、国際的なネットワークづくりを進めていくことが不可欠だ」と述べた。最後に挨拶に立った上坂充原子力委員会委員長は、「他国の知見や政策を積極的に学び、自国にとって最適な形を模索する上で、IAEAの基準や国際的な取り組みを参考にすることは、皆さんの将来にとって重要な学びになるだろう」とNEMSの意義を強調。また、「今回のプログラムで自身の目で見て理解したことを、帰国後にご家族や友人にも伝えてほしい。知識や経験の共有が、国際社会全体の原子力の未来を形づくることにつながるだろう」と述べた。
22 Aug 2025
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大手ゼネコンの大林組はこのほど、脱炭素をテーマにしたさまざまなソリューションや技術を紹介する総合展示会、「OBAYASHI VISION SHOWCASE 2025」を開催した。同社では「MAKE BEYOND つくるを拓く」をブランドビジョンに掲げ、脱炭素や資源循環、自然共生を目的としたサステナブルな社会の実現を目指している。同展示会では、「SOLUTION」「VISION」「CREATION」と大きく3つのテーマに分け、さまざまな技術や施工実績、同社が掲げる構想などを紹介した。例えば、建設プロセスにおける低炭素技術を紹介するセクションでは、建設に欠かせない資材であるセメントの量を減らし、別の材料に置き換えることでCO2排出量を抑えた低炭素型のコンクリート、「クリーンクリート」が紹介された。また、ロボットやドローン技術を活用し、工程の簡素化やCO2の排出を最小限に抑える試みとして、AIを活用した図面の照合システムや、施工箇所にBIMデータを重ね合わせて施工確認や検査などを行う品質管理システム等の展示があった。他にも、建設機械の操作レバーなどに装置を装着することで遠隔からの無人化運転を可能にした汎用遠隔操縦装置(サロゲート®)のシミュレーターを展示。同装置は、搭乗操縦と遠隔操縦の切り替えが容易なため、施工場所の作業環境に応じて、柔軟に工事を進めることができ、危険な場所や災害復旧作業において、最大限効果が発揮される。令和6年能登半島地震の災害復旧作業にも使われており、同展示会では、実際に現場で作業する社員による実演など、来場者が間近で見学することができた。そして、日本全国で高速道路のリニューアル工事を手掛ける同社では、トンネル覆工のスピードをより高めたワンバインドクロスや、高速道路の橋の更新作業にかかる時間を従来の半分に短縮した工法「HOLLOWAL(ホローワル)」の紹介、そして、文化財の恒久的な保存を目指し鉄骨を使わない耐震強化技術など、多様な分野で活用される同社の高い技術力が社会インフラの安全性向上や効率化に寄与するとともに、未来志向のものづくりを支える原動力となっていることが来場者に強く印象付けられた。また、会場にて放映されたプロモーションビデオ内には、原子力産業界で大きく注目を浴びている自律4足歩行ロボット「Spot」の紹介があった。将来的には、原子力発電所の廃止措置における建屋周辺および内部のモニタリング、放射性廃棄物の埋設後の点検作業において活躍が期待されている。そして、核融合発電への取り組みを紹介するコーナーでは、同社が出資する核融合炉開発のスタートアップ「株式会社 LINEA イノベーション」が構想する核融合発電施設のイメージ模型が展示され、ITER プロジェクトにも出向経験のある同社の社員による解説があった。ここでも、同社が培ってきた安全管理のノウハウや、耐震・免震技術を活かした建屋設計の観点が核融合発電の開発事業においても、いかんなく発揮されていることが紹介された。同施設は、「FRC ミラーハイブリッド方式」の先進燃料核融合で、中性子フリーの環境にやさしい核融合炉として期待されている。FRC とは、(Field-Reversed Configuration)、磁場反転配位と呼ばれるプラズマの磁場閉じ込め方式のひとつで、炉構造がシンプルであるため、メンテナンス性が高く経済的な核融合炉として注目されている。
21 Aug 2025
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文部科学省の諮問機関である科学技術・学術審議会原子力科学技術委員会は8月18日、革新炉の取組や原子力基礎研究支援の在り方について議論する「第26回原子力研究開発・基盤・人材作業部会」を開催した。まず、革新炉の取組について、日本原子力研究開発機構(JAEA)から、高速実験炉「常陽」の現在の状況説明が行われた。「常陽」は、「高速炉」を開発するための小型の実験炉である。事業者のJAEAは昨年9月、茨城県及び大洗町から地元了解を得て、現在、新規制基準に適合するための工事を行っている。2026年度半ばの運転再開を目指しており、実現すれば、国内唯一の高速炉の実験施設として、放射性廃棄物の有害度を低減する研究や、がん治療への活用が期待される医療用RIの製造実証など、さまざまな活用方法が期待されている。同作業部会に委員として参加した日本原子力産業協会の上田欽一委員は、「国内外との連携を強化して、世界最先端の高速炉研究拠点としての役割を発揮してほしい。また、医療用RIの安定供給や先端利用など、社会的価値の高い活用に向けて、学生や若手研究者の関心を高め、研究開発や人材育成を強化する必要がある」と指摘した。また、原子力基礎研究支援の在り方について同作業部会では、原子力をエネルギー源として利用するだけでなく、様々な課題解決につながる総合科学技術として捉える必要性が示され、2050年のカーボンニュートラル実現や、健康・医療、製造業等の産業競争⼒の強化に繋がる可能性を秘めていることが改めて共有された。そして、これまで⼤学・研究機関等を中⼼に、⾼い研究⽔準を維持してきたが、さらに安定的・継続的に原⼦⼒利⽤を推進させていくために、国として中⻑期にわたり支援する必要性が議論された。
19 Aug 2025
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全国知事会で原子力発電対策特別委員会委員長を務める中村時広愛媛県知事は8月4日、原子力規制庁を訪れ、「原子力発電所の安全対策及び防災対策に対する提言」と題した提言書を金子修一長官に手渡した。また、中村知事は翌8月5日、経済産業省と内閣府を訪れ、加藤明良経済産業大臣政務官、城内実内閣府特命担当大臣(科学技術政策)、勝目康内閣府大臣政務官(原子力防災)に対し、同提言書をそれぞれ提出した。提言書は、国が責任をもって早急に取り組むべき「原子力発電所の安全・防災対策」について、3つの章に分けて記述。第1章では、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関し、特に廃止措置とALPS処理水を取り上げ、適切な支援と風評の払拭、原子力災害の風化防止対策など、政府一丸となって取り組むことを求めた。第2章では、原子力施設の安全対策に関し、2024年1月に発生した能登半島地震を受けて、原子力発電所の安全性や避難計画の実効性を懸念する声が上がったことを踏まえ、「全国に立地している原子力施設の安全確保に向けて、原子力規制委員会には、常に最新の知見を踏まえた新規制基準の見直し、厳正かつ迅速な適合性審査の実施、そして、その結果を国民全体に明確かつ責任ある説明を行ってほしい」と訴えた。また、同地震の教訓から得られた知見や安全研究の成果を、今後の対策に活かすことを求めた。そのほか、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定など、バックエンド対策の加速も要請され、使用済み燃料の最終処分地については「国全体で負担を分かち合うべき課題」として、都市部を含む全国的な議論と情報公開を呼びかけた。さらに、原子力分野の人材不足や技能継承への懸念を示し、研究開発や安全対策に必要な予算・人材を長期的視点で確保するよう国に求めている。第3章では、原子力防災の強化に関し、自治体が制定する原子力防災対策の幅が広がっていることを踏まえ、国が前面に立ち、予算面から立地自治体を支援する必要性を強調。2024年9月の原子力関係閣僚会議で確認された「避難対策を中心とする具体的対応方針」を踏まえ、自治体の意見を十分反映させることや、複合災害時における省庁間のスムーズな連携を求めた。
18 Aug 2025
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林芳正内閣官房長官は8月10日、就任後初めて福島第一原子力発電所や中間貯蔵施設を訪問し、廃炉に向けた取り組みを視察した。東京電力の小早川智明社長らとの意見交換会も実施し、「安全かつ着実な廃炉、福島の復興は政権の最重要課題。安全確保を最優先し、廃炉作業を一歩一歩進めてほしい」と発言した。その後、記者団の取材に対し、福島県に残る除染土の県外処分に向けたロードマップ(工程表)を、今月中に策定すると明らかにした。このロードマップには今後5年間で取り組むべき課題が盛り込まれ、候補地選定条件の具体化に入る方針だ。その上で「県外での最終処分に向けては、最終処分場の構造や必要な面積などをまとめた複数の選択肢を示しており、候補地の選定を進めたい。国民への理解醸成が特に重要で、政府を挙げて積極的な情報発信に取り組んでいく」と述べた。これらの除染土は、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で一時的に保管されているが、2045年3月までに福島県外にて最終処分することが法律で定められている。政府はこの最終処分量を減らすために、放射性物質の濃度が低い土を、全国の公共工事の盛り土などに用いて再生利用する方針だ。その除染土処分の第一歩として政府は、総理大臣官邸にて除染土を再生利用することをすでに発表している。7月19日~20日にかけて、中間貯蔵施設から除染土を積んだ10トントラックが官邸に到着し、前庭にて、除染土の上から普通の土をかぶせ、表面に芝生を張る作業を実施した。除染土事業を管轄している環境省は今後、1週間に1回程度、放射線量を測定し、ホームページなどで情報を発信する方針。官邸での再生利用をきっかけに除染土への理解醸成につなげる狙いがある。
13 Aug 2025
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原子力発電所の立地自治体などでつくる全国原子力発電所所在市町村協議会の首長らは8月8日、経済産業省を訪れ、原子力発電所の新設に向けた安全規制や資金調達に関する環境整備などについて、武藤容治経済産業大臣と会談し、要請書(原子力発電に関する要請書)を手渡した。要請書の冒頭には、「今年策定された第7次エネルギー基本計画で『原子力を最大限活用する』と明確に示されたことは、立地自治体にとっても大きな意義があると受け止め、安全確保を大前提に、計画に示された施策の着実な実行を求める」の一文が記載された。そして、同協議会の会員の総意に基づき、次の4点を重点項目として強く要請するとしている。福島の復興について被災地支援の継続や財源確保は国の責務であると強調した上で、燃料デブリの取り出し、多核種除去設備等処理水対策や廃炉作業を着実に推進すること。安全規制・防災対策について2024年1月の能登半島地震の被害状況を鑑み、インフラの整備・強靭化は立地自治体における喫緊の課題であり、原子力防災対策の実効性向上と財源確保、自衛隊との連携を含む安全確保体制を強化すること。原子力政策についてエネルギーの安定供給と2050年カーボンニュートラル達成に向けた原子力利用の着実な推進、原子燃料サイクルの早期具体化、バックエンド対策の加速、国民理解の促進を継続すること。立地地域対策について原子力発電の意義を理解し、協力してきた立地地域の持続的かつ自立的発展のため、地域の実情に応じて制度を改善もしくは拡充をすること。なお、面会の冒頭、同協議会の会長を務める福井県敦賀市の米沢光治市長は、関西電力が美浜発電所にて地質調査を開始したことについて触れ、「建設期間を考えると速やかに具体化していかなければならない」と事業者へのさらなる支援を求めた。これを受けて、武藤容治経済産業大臣は、「次世代革新炉への建て替えに向けた研究開発やサプライチェーンなどの事業環境整備に取り組む」と発言したほか、「地域産業や雇用の維持発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り具体化を進めていく」と国として全面的にサポートする姿勢を強調した。
12 Aug 2025
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自然科学研究機構核融合科学研究所(NIFS)と量子科学技術研究開発機構(QST)六ヶ所フュージョンエネルギー研究所は7月27日、共同で調達した新スーパーコンピュータシステム(以下:スパコン)を一般公開した。NIFSとQSTのそれぞれが保有していたスパコンを統合し、共同で調達することで、より高性能な機器の導入が実現。同スパコンは、1秒間に4京400兆回の計算が可能だ。設置場所は、QSTの六ヶ所フュージョンエネルギー研究所で、7月1日からすでに運用を開始している。NIFSとQSTが共同で運用する。同スパコンはNEC製で、計算能力は従来機の2.7倍。昨年12月13日の受注発表時に公開した受注額は、同社として過去最高の45億円。今後、核融合エネルギーの実現に向けたさまざまな研究に活用される予定だ。具体的には、国際プロジェクトの核融合実験炉「ITER」や、日本のトカマク型装置「JT-60SA」の実験予測、運転シナリオの作成に役立てられる。また、計算速度の大幅な向上により、核融合プラズマなどの複雑な現象をシミュレーションできるようになり、想定実験でのリアルタイム制御への応用も期待されている。また、同スパコンは、国内の大学や研究機関でも遠隔で利用可能で、核融合に関連した天体研究などにも活用されるという。
07 Aug 2025
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内閣府は、8月5日に開催した原子力委員会の定例会議にて、日本が2024年末時点で国内外に保有するプルトニウムの総量が約44.4トンであることを明らかにした。内訳は、国内の保管量がおよそ8.6トン、海外での保管量がおよそ35.8トン(英国に約21.7トン、フランスに約14.1トン)であった。2023年末時点の総量は約44.5トンであったため、わずかながらに減少した。減少は4年連続。海外に保管中のプルトニウムとは、国外(英仏)に再処理を委託しているが、まだ日本国内に返還されていないものを指す。これらは原則として、海外でMOX燃料に加工され、国内の発電プラントで利用されることになっている。日本政府は、プルトニウム利用の透明性の向上を図り、国内外の理解を得ることが重要であることから、国際原子力機関(IAEA)の管理指針(プルトニウム国際管理指針)に基づき、国内外において使用及び保管している未照射分離プルトニウムの管理状況を、1994年から毎年公表するとともに、IAEAに提出している。プルトニウムの削減が進まなかった理由として原子力委員会は、2024年は、日本がイギリスとフランスに委託してきた使用済み燃料の再処理が行われず、プルトニウムの回収がなかったことや、MOX燃料の装荷実績がある関西電力高浜発電所3・4号機(PWR、87.0万kWe×2)、四国電力伊方発電所3号機(PWR、89.0万kWe)にて、昨年、新たなMOX燃料が装荷されなかった影響だとしている。
06 Aug 2025
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2025年7月30日から8月6日にかけ、マレーシアのバンギで開催された「第2回国際原子力科学オリンピック(INSO)」において、日本代表の高校生4名が全員メダルを獲得する快挙を成し遂げた。金メダルを獲得したのは東海高等学校3年の田中優之介さん。さらに、筑波大学附属駒場高等学校3年の田部主真さんと武蔵高等学校3年の堀航士朗さんが銀メダルを、大阪府立北野高等学校2年の佐々木柚榎さんが銅メダルをそれぞれ獲得した。また、特別賞として、田部さんが実験試験最高得点賞を受賞し、佐々木さんは最優秀女性選手賞に輝いた。これらの代表選手は、文部科学省の事業として整備が進められている「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)」が提供するe-learningを通じて、INSOの7つの出題項目を日本語の動画で学び、その後2025年4月に実施された国内選抜会(日本語による遠隔試験)を経て選出された精鋭。選抜後には、専門用語に関する英語訓練を含む集中トレーニングを経て本大会へ参加している。本大会には、日本チーム出場支援委員会の代表として東京大学の飯本武志先生をはじめ、日本代表団のリーダーとして、京都大学の角山雄一先生と日本原子力研究開発機構の佐藤大樹先生が同行。リーダーたちは、現地で深夜におよぶ問題検討や設問の日本語訳、さらには採点作業(採点をめぐる各国間でのタフな交渉も含む)などを精力的に行った。日本代表団は、受賞の興奮も冷めやらぬまま、本日帰国する。国際原子力科学オリンピック(INSO)とは、国際原子力機関(IAEA)がアジア太平洋地域の20歳未満の学生を対象に企画した国際競技である。原子力科学技術は発電以外にも医療や農業、犯罪捜査、文化財保護など幅広い分野で活用されており、国連が提唱するSDGsの目標達成にも深く関わっている。INSOでは参加者が理論試験と実験試験を通じて高度な知識や技術を競い、原子力科学の可能性を深く考察し、「原子力科学技術の平和利用に対する認識を高めること」を目的としている。
06 Aug 2025
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