国内NEWS
22 Nov 2024
673
総合エネ調原子力小委 エネ基素案に向け論点整理
海外NEWS
22 Nov 2024
505
ポーランド企業 加企業とSMR導入に向けた調査を実施
海外NEWS
21 Nov 2024
668
米ラディアント マイクロ炉開発に進展
国内NEWS
20 Nov 2024
738
前原子力規制委員・石渡氏 新知見を活用する重要性を強調
海外NEWS
20 Nov 2024
899
トランプ次期米大統領 DOE長官らを指名
海外NEWS
20 Nov 2024
509
米開発銀行 ポーランド初の原子力発電所への融資に関心表明
海外NEWS
19 Nov 2024
995
ベトナム 原子力発電プロジェクトを再開か
国内NEWS
19 Nov 2024
952
女川2号機が発電再開 新規制基準施行後BWRで初
ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は11月14日、ワルシャワで加ローレンティス・エナジー・パートナーズ社と、ポーランドにおける初の小型モジュール炉(SMR)の開発と導入に向けて、予備安全分析報告書(Preliminary Safety Analysis Report:PSAR) の作成支援に係る契約を締結した。契約額は最大4,000万加ドル(約44億円)。今回の契約は、OSGE社がポーランドで導入を検討している米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設の安全性の実証が目的。PSARは、ポーランドの原子力規制当局である国家原子力機関(PAA)が、建設許可申請の一環で要求する包括的な安全性分析報告書で、PSARの作成は許認可手続きにおいて最重要作業の一つである。PSARでは、提案されている原子炉のシステム、構造、機器の一般的な設計側面と詳細な説明の両方を提示。建設準備と管理体制、環境や地域の状況、核燃料管理を含む発電所の運転期間のほか、廃炉プロセスの説明も含んでいる。ローレンティス社は、環境条件、サイト特性、施設の建設、運転、将来の廃止措置に関する資料作成を担当。OSGE社は、BWRX-300発電所の所有者兼運転者として、分析のためのデータの準備や進行中の作業のマネジメントを担当する。今後2年をかけてPSARを作成し、2026年半ばに完成する予定。OSGE社はまた、GEH社からもPSAR作成の支援を受け、GEH社はBWRX-300の設計者として、技術面および安全関連の分析を担当する。OSGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、大手化学素材メーカーであるシントス社(Synthos SA)のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資し、2022年に設立された合弁企業。2023年12月に気候環境省から、国内6地点における合計24基のBWRX-300建設計画へ原則決定が発給され、OSGE社は現在、許認可手続きの準備を進めている。一方、ローレンティス社は、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社の100%子会社で、プロジェクト管理、許認可、運転準備、運転員支援などで、60年の経験とノウハウを有する。OSGE社に対しては2022年以降、SMRの導入に向けた初期的な計画立案などを支援しており、OPG社のダーリントン・サイトにおけるBWRX-300建設プロジェクト支援の実地経験を活用できるのが強み。OPG社は、2029年にBWRX-300初号機の稼働を計画している。OSGE社のR. カスプロウ会長は、「今回締結された契約は、これまでの一連の契約を締め括るもの。建設許可申請の重要要素であるPSARの作成にあたり、OPG社の一部であるローレンティス社との契約により、カナダの知識とノウハウを最大限に活用できる」と語り、両社間の協力への期待を滲ませた。「BWRX-300」は電気出力30万kWの次世代原子炉のBWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。
22 Nov 2024
505
米エネルギー省(DOE)は11月14日、スタートアップ企業のラディアント社が、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「Kaleidos」プロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) プロセスを完了したことを明らかにした。マイクロ炉「Kaleidos」は、早ければ2026年半ばにもINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始する。ラディアント社のT. シバナンダン最高執行責任者は、「FEEEDプロセス完了は大きなマイルストーン。多くの設計レビューを行い、概念安全設計報告書も提出。すべて予定通り、予算内で実施した」と語り、INL/NRICとの今後の連携に意欲を示した。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するウェスチングハウス(WE)社、ラディアント(Radiant)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に対し、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドを使った試験の計画策定を目指している。DOMEテストベッドは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してNRICが改修中。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。ラディアント社は引き続き、NRICと協力して「Kaleidos」試験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保に着手する。なお、米WE社のマイクロ炉「eVinci」はFEEEDプロセスを今年9月に完了している。USNC社は高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」(0.1万kWe)を開発していたが、同社は破産申請ならびに業務継続を条件とする売却手続きを今年10月末から実施している。「Kaleidos」は電気出力0.12万kW、熱出力0.19万kWの高温ガス冷却炉。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を使用し、運転サイクルは5年。コンパクト設計のすべてのコンポーネントは単一の輸送コンテナに梱包されるため、迅速な配備が可能。遠隔地のディーゼル発電機の代替から、病院、軍事施設、データセンターへのバックアップ電源や、熱供給、海水脱塩まで、幅広い用途に対応する。
21 Nov 2024
668
米国のトランプ次期大統領は、このほど、来年1月20日に発足する新政権のエネルギー省(DOE)長官、ならびに新設される国家エネルギー評議会の議長を指名した。なお就任にあたっては、米上院の承認が必要である。DOE長官には、エネルギーサービス会社リバティ・エナジー社のCEOである、C. ライト氏を、国家エネルギー評議会の議長には、ノースダコタ州知事のD. バーガム氏を指名した。なお、バーガム氏は内務長官にも指名されている。DOEの新長官に指名されたライト氏は、コロラド州に本社を置く2011年設立のリバティ・エナジー社の創設者。同社は北米で陸上の石油・天然ガス探査・生産企業向けに、革新的なサービスと技術を提供している。同氏は、先進炉のマイクロ炉「オーロラ」を開発するオクロ社の取締役も務める。トランプ次期大統領は、自身のソーシャルメディアに掲げる声明の中で、「クリスは、エネルギー業界の傑出した科学技術者で起業家。米国シェール革命を立ち上げ、米国のエネルギー自立を促進し、世界のエネルギー市場と地政学を変革した先駆者の一人」「DOE長官として、イノベーションを推進し、官僚的な形式主義に陥ることなく、米国の繁栄と世界平和の新たな黄金時代を先導する重要なリーダーとなる」と述べている。ライト氏はDOE長官の指名を受け、「世界中のあらゆるコミュニティにエネルギーの恩恵をもたらす気概を持ち、原子力、太陽光、地熱のみならず、現在は石油、ガス、次世代地熱に取り組んでいる。エネルギーが安全かつ安定し、手頃な価格で、人々の生活を向上させるのであれば、それがどこから来ても構わない」「国家に奉仕し、米国内外の市民に手頃な価格で信頼性の高いエネルギーを提供するという使命を継続できる機会を非常に光栄に思う」とコメントしている。国家エネルギー評議会議長への指名を受けたバーガム氏は、2016年からノースダコタ州知事を務め、現在2期目。それまでは政治経験がなく、ビジネスで成功を収め、全米の州知事の中で最も裕福な一人といわれている。米国の天然資源を保護・管理し、公有地の管理などで中心的な役割を果たす内務省の長官のほか、国家安全保障会議のメンバーも兼ねる。トランプ次期大統領によると、新設される国家エネルギー評議会は、「あらゆる形態の米国のエネルギーの許認可、生産、発電、流通、規制、輸送に関わるすべての省庁から構成」される。また、「官僚的な形式主義に陥ることなく、経済のあらゆる部門で民間部門の投資を強化し、長年にわたり続いてきた、全く不必要な規制より、イノベーションに焦点を当て、米国をエネルギー大国へと導く」という。さらに、「ライト氏とバーガム氏は長年の知己であり、共に仕事をしてきたチーム。米国のエネルギー支配を推進し、インフレを押し下げ、米国の外交力を拡大して、世界中の戦争を終結させる」との期待を示した。バーガム氏は自身のソーシャルメディアで、「米国のエネルギーを前進させるため、連邦政府組織間の前例のないレベルの調整を促進する。米国のエネルギー支配を確立して経済を活性化させ、消費者のコストを削減し、財政赤字削減のために数十億ドルの歳入を生み出す」「国の課題を解決するために規制よりもイノベーションに焦点を当て、米国のエネルギーをスマートに拡大し、敵国からエネルギーを買うのではなく、友好国や同盟国にエネルギーを販売し、世界をよりクリーンで安全なものにする」と、抱負を語った。
20 Nov 2024
899
ポーランド国営PEJは11月12日、ポーランド初となる原子力発電所の建設プロジェクトへの融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印した。融資額は、40億ズロチ(約1,515億円)規模。PEJは、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転の実施主体で、国営の特別目的会社(SPV)。米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000を3基、同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ・サイトに建設する。初号機は2033年に運転開始予定だ。DFCは、低所得国および中低所得国のプロジェクトを優先的に支援する米国の政府系開発金融機関。民間セクターと提携し、エネルギー、医療、重要インフラ、テクノロジーなど、開発途上国が直面する最重要課題の解決策に金融支援を実施している。PEJは、DFCの関与が米政府による本プロジェクトへの関心を裏付けるものであり、ポーランドをはじめ、世界のエネルギー移行に関心を持つ米国市場の主要機関とPEJとの数か月間にわたる協議の結果であるとの考えを示す。DFCは、中・東欧全体の地域エネルギー安全保障の強化に取組んでおり、今回のLOI締結をロシア産エネルギーへの依存を削減するとともに、経済成長の強化、雇用の創出に向けた一歩であると評価する。米WE社と米ベクテル社はコンソーシアムを結成し、PEJによる原子力発電所の建設プロジェクトに協力している。米輸出入銀行(US EXIM)もWE社との数年にわたる交渉の末、同プロジェクトに対して、約700億ズロチ(約2.6兆円)相当の融資支援を実施することになっている。
20 Nov 2024
509
ベトナム商工省は11月17日、党政治局がベトナムでの原子力発電開発の再開に合意したことを明らかにした。ファム・ミン・チン首相が11月12日に実施した第15期第8回国会における演説によると、同国では2025年には電力需要が12~13%増大し、その後の数年間でさらなる増加が予測されている。さらに、2045年の電力需要は2023年5月決定の第8次国家電力開発基本計画で示された予測の1兆 kWhを上回り、1.2兆kWhに達するという。国会会期中の11月7日には、エネルギー需要の高まりを受け、多くの議員がニントゥアン原子力発電プロジェクトをできるだけ早期に再開するよう求めていた。政府では現在、商工省が中心となって電力法の改正手続きを進めており、原子力発電の開発についても改正法案に含まれている。2030年までに発電設備容量を2022年比でほぼ倍増、2050年までにネットゼロの目標を達成し、国家のエネルギー安全保障を確保すべく、再生可能エネルギー(風力、太陽光など)の開発を強力に進めるとともに、新しいエネルギー源(原子力と水素)の導入に向け、第8次国家電力開発基本計画を修正するとしている。2016年11月、ベトナムの国会は経済状況を理由にニントゥアン原子力発電プロジェクトの中止を決定した。同プロジェクトでは、ロシアと日本がベトナムに協力して、第一および第二原子力発電所(各200万kW)を建設する計画であった。
19 Nov 2024
995
国際原子力機関(IAEA)と欧州復興開発銀行(EBRD)は第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)会期中の11月13日、IAEAのR. グロッシー事務局長とEBRDのO. ルノーバッソ総裁が両機関の協力強化を目指す覚書を締結した。この新たな覚書の下で両機関は、EBRDの活動対象国が原子力利用を検討するにあたり、エネルギー政策・戦略、ガバナンスと資金調達の枠組み、ネットゼロ目標を達成するためのメカニズムなどの策定に向けた活動を支援する。原子力発電および非発電利用分野における原子力・放射線安全分野と技術インフラのほか、関連施設の廃止措置、放射性廃棄物の管理を支援対象とする。MOUに署名したIAEAのグロッシー事務局長は、「我々は共に、原子力安全における長年の協力をベースとするだけでなく、能力構築、クリーンエネルギー、経済回復力に向けて新たな扉を開いた。EBRDのような金融機関とのパートナーシップは、低炭素社会の実現に必要な投資を活性化するとともに、原子力のメリットがあらゆる人にアクセス可能で、安全で、持続可能であるために不可欠である。特に、SMRの技術的および商業的可能性についてEBRDと意見交換できることを楽しみにしている」と述べ、原子力エネルギーを拡大するための金融機関や民間セクターとのパートナーシップの重要性を強調した。IAEAは、政府、産業界、銀行、その他のステークホルダーに対し、資金やノウハウなどの提供を要請している。EBRDは、中東欧諸国における自由市場経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を支援することを目的として、1991年に設立された国際開発金融機関。東欧、ロシア、中央アジアでも原子力関連施設の廃炉や環境復旧活動を支援する他、いわゆる「アラブの春」以降、チュニジアやヨルダン、エジプトなど、地中海の東南岸諸国も支援対象地域に加えている。2021年、IAEAとEBRDは、ウクライナ当局と協力して、チョルノービリ原子力発電所の廃炉と立入禁止区域における放射性廃棄物の管理に向けた安全で費用対効果の高い解決策に向けて、引き続き協力することで合意した。チョルノービリ関連プロジェクトに加え、IAEAはブルガリア、リトアニア、スロバキアにおける原子力発電所の廃炉のための技術的助言を実施するほか、中央アジアにおけるウラン採掘・製錬サイトの環境復旧活動においてEBRDと連携した。
19 Nov 2024
531
加ブルース・パワー社は11月1日、過去2年間の同位体生産システム(IPS)による医療用放射性同位体(RI)のルテチウム177(Lu-177)の生産実績に基づき、医療用RIの生産能力を拡大する計画を発表した。ブルース・パワー社は、加原子力安全委員会(CNSC)に書簡を送り、同社のブルース原子力発電所7号機(CANDU、87.2万kWe)におけるルテチウム177の生産実績に基づき、他の原子炉にもIPSを設置する計画を示した。ルテチウム177は、神経内分泌腫瘍や前立腺癌など、様々ながんの治療に使用される医療用RI。ブルース・パワー社は、需要のある他の医療用RIも生産するため、2025年に運転認可の修正を申し入れる計画だとしている。ブルース・パワー社のJ. スコンガック副社長は、「カナダは医療用RIの生産において世界でも超大国。当社のCANDU炉は、電力の安定供給をしながら、大規模かつ一貫した規模で同位体を照射する能力がある。コバルト60とルテチウム177の生産能力を最大限に高め、需要のある他の医療用RIの生産の追加を検討し、世界中のがん患者のために社会的責任を果たしていきたい」との考えを示した。ブルース・パワー社は2019年にIsogen社(Kinectrics Inc.とFramatome Canadaの共同出資会社)と提携し、ルテチウム177を生産するIPSを7号機に設置した。IPSは2022年10月に稼働、今年10月には2番目の生産ラインが稼働した。7号機は運転期間延長に向けて主要部品交換(MCR)を伴う大規模改修を2028年後半に開始する予定にしており、停止中もRIのサプライチェーンを維持できるよう、2027年までに6号機に2つ目となるIPSの設置を計画する。2029年には生産容量の拡大のため、ブルースA(1~4号機)の原子炉に3つ目のIPS設置の可能性を検討する予定だ。ブルース・パワー社は、医療用RIの販売大手である加ノルディオン社とのパートナーシップを通じて、医療器具・機器の滅菌や脳腫瘍や乳がんの治療にも使用されるコバルト60を長年にわたり安定供給している。ブルースB(5~8号機)のMCRによる停止期間中でも、運転期間延長期限である2064年までコバルト60の供給を確保しており、今回の改修により生産量の増加が見込まれている。なお、加オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー電化大臣は11月8日、ブルース発電所サイトを訪問。ブルース・パワー社とパートナー企業が、がん治療用RIを処理するホットセル施設を設置することを発表した。同大臣は、「これにより、短寿命のルテチウム177の処理能力が向上し、世界中のがん患者にタイムリーに届くようになる。がん治療用RIの生産と処理における世界的リーダーであるオンタリオ州の地位をさらに確固たるものにする」と語った。ブルース・パワー社とパートナー企業のIsogen社は、ブルース発電所サイトまたはIsogen社の施設のいずれかにホットセルを設置する計画だ。ホットセルは、機器の制御・操作が可能で安全な封じ込め機能を持ち、RIから人体を保護するシールド施設。これにより、ブルース発電所の7号機で製造されたルテチウム177の初期処理が可能になり、全体の処理時間を短縮、生産から2週間以内に患者への投与が可能になるという。
18 Nov 2024
717
アゼルバイジャンのバクーで11月11日~22日の日程で開催されている、第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)において11月13日、COP議長国と国際原子力機関(IAEA)共催による首脳級パネルが開催された。「原子力など低炭素エネルギーへのファイナンスに関する首脳級パネル」と題した同パネルでは、低炭素電源の大規模展開に必要な資金調達について議論された。2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという「原子力の三倍化宣言」には、同日あらたに6か国が署名し、現時点で31か国が署名している。「パリ協定」で示された1.5℃目標の達成には、クリーンエネルギーの拡大と効率改善が必要であるが、そのための資金調達は喫緊の課題である。この首脳級パネルには、アゼルバイジャンのP. シャフバゾフ・エネルギー大臣、IAEAのR. グロッシー事務局長、国際エネルギー機関(IEA)のF. ビロル事務局長、世界原子力協会(WNA)のS. レオン事務局長のほか、ガーナ・エネルギー省、欧州復興開発銀行(EBRD)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連欧州経済委員会(UNECE)の高官が登壇した。グロッシー事務局長は、「金融機関は市場が求めるものに適応し、歩調を合わせなければならない。原子力には明確な需要がある」とした上で、「政府支援、グリーンローン、官民パートナーシップ、国際協調融資などの手段がある。今はコミットメントが必要。1.5℃の目標を達成可能な範囲に維持するためには、原子力は不可欠であり、我々が一丸となってその可能性を最大限に引き出す時が来た」と語った。IAEAが最近発行した、「気候変動と原子力発電」に関する報告書2024年版によると、2050年までに「原子力の三倍化」を達成するには、年間1,500億ドル(約23.4兆円)の投資が必要になるという。パネルでは、先進国と新興国・途上国(EMDEs)の双方で必要とされる低炭素技術の展開の大規模な拡大に対処するために必要な資金調達の選択肢について議論された。また、気候資金の新規合同数値目標(New Collective Quantified Goal on Climate Finance: NCQG)とともに、資金調達を支援・投資を誘致するための政府、民間セクター、多国間開発銀行の役割について検討され、官民セクター間の協力の重要性が示された。なお、パネルの最後に、シャフバゾフ・エネルギー大臣とIAEAのグロッシー事務局長は、エネルギー計画分野における協力に関する覚書を締結した。シャフバゾフ大臣は、「クリーンエネルギーへの移行にあたり、小型モジュール炉(SMR)を含む原子力エネルギーの可能性の分析に焦点を当てたIAEAのAtoms4NetZeroイニシアチブの下での協力は、アゼルバイジャンのエネルギー部門に新たな弾みを与えるものだ。原子力エネルギーの開発に関するIAEAとの共同研究やプロジェクトを通じて、アゼルバイジャンの将来の原子力エネルギー導入とエネルギーシステムの多様化を進めていく」との抱負を語った。これまで原子力とは縁のなかった産油国、産ガス国であるアゼルバイジャンが、COP議長国として堂々と原子力の価値を語り、COP29に原子力推進の風を吹かせたことは、現地でも驚きをもって迎えられている。昨年のCOP28では、初めてCOP公式文書に原子力の価値が盛り込まれ、大きなエポックメイキングとなったが、これはバラカ原子力発電所を有するアラブ首長国連邦が、議長国としてリーダーシップを取ったことが大きく影響していた。COP29に参加している日本原子力産業協会の植竹明人常務理事は「COP29は、非原子力国かつ産油/産ガス国のアゼルバイジャンが議長国であることから、会議全体の雰囲気が、原子力に対して冷ややかなものになると予測していた。しかしながら、本日のMOU締結や、原子力に対するアゼルバイジャンの力強いまでのポジティブな姿勢は嬉しい誤算であり、数年前まではタブーとまで言われていたCOPにおける原子力の議論が、今や堂々と公式プログラムの中で語られており、驚いている」と、COP会場を包む原子力への追い風について力強く語った。
15 Nov 2024
1297
アゼルバイジャンのバクーで11月11日~22日に開催されている第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)において、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという「原子力の三倍化宣言」にあらたに、エルサルバドル、カザフスタン、ケニア、コソボ、ナイジェリア、トルコの6か国が署名した。11月13日、COP29議長国、国際原子力機関 (IAEA)、米国、世界原子力協会(WNA)共催の「『原子力三倍化』の取組みを推進する」と題するサイドイベントにおいて、同6か国が署名。これにより同宣言を支持する国の総数は31か国((アルメニア、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、エルサルバドル、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、ジャマイカ、日本、カザフスタン、ケニア、韓国、コソボ、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ナイジェリア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、英国、アメリカ合衆国 (以上31か国)))となった。昨年、UAEのドバイで開催されたCOP28で日本をはじめとする米英仏加など25か国は、「パリ協定」で示された1.5℃目標((世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える努力目標))の達成に向け、野心的な同宣言に署名した。2020年比で世界全体で3倍とする目標に向けた協働だけでなく、小型モジュール炉(SMR)や先進炉の導入拡大、原子力を利用した水素製造の活用などにも言及するなど、電力以外の産業分野への応用も視野に入れている。なお、同宣言に盛り込まれている取組内容は以下の通り。最高水準の安全性、持続可能性、セキュリティおよび核拡散抵抗性を保持しつつ、責任を持って原子力発電所を運転すること、 長期にわたって責任を持って使用済み燃料を管理すること新しい資金調達メカニズムなどを通じ、原子力発電への投資を奨励すること原子力発電所が安全に稼働するために、燃料分野を含む強靭なサプライチェーンを構築すること技術面で実行可能かつ経済性がある場合には、原子力発電所の運転期間を適切に延長させること原子力導入を検討する国々を支援すること同宣言に署名した、カザフスタン・エネルギー省のS. エシムハノフ次官は演説の中で、「署名は持続可能でクリーンな未来に向けた重要な一歩である。我々は、エネルギー安全保障の強化だけでなく、国際社会と協力し、世界的な炭素排出削減に大きく貢献していきたい」との意欲を語った。カザフスタンは、2060年までにカーボンニュートラルを達成するため、原子力を将来のエネルギーミックスの重要な要素と考えている。イベントの進行を務めたWNAのサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、新たに6か国が「野心的な連合」に加わることを心から歓迎するとした上で、「この発表は、費用対効果が高く、公平な方法でパリ協定の目標を達成する上で、原子力の重要な役割を強調するもの。リーダーシップを発揮するには、2050年だけでなく、その後数十年にわたって世界が必要とするものに備える先見性も必要。この宣言の署名国は長期的なコミットメントを行っている。不確実性の高い世界においてエネルギーの確実性と信頼性を提供するものだ」と高く評価した。昨年のCOP28で採択された成果文書である「UAEコンセンサス」では、COP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記された。2050年までのネットゼロを達成するため、参加国に対し、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行を要求する中で、その移行手段として、再生可能エネルギーやCO2回収・貯留(CCUS)と並ぶテクノロジーとして、原子力が取り上げられた画期的な出来事であった。他の低炭素エネルギー源とともに原子力導入の加速が求められたことを受けて、今年3月、IAEAとベルギー政府が共催する、原子力エネルギー・サミットが初開催された。30か国以上の首脳や閣僚、300名以上の原子力関係者らが出席し、化石燃料の使用の削減、エネルギー安全保障の強化、持続可能な開発の促進という世界的課題に対する原子力の重要な役割を再確認した。9月には、ニューヨークで開催された気候イベント「Climate Week」会期中にサイドイベント「原子力を3倍にするファイナンス」(Financing the Tripling of Nuclear Energy)が開催され、世界の主要な銀行と金融機関14社が、原子力発電プロジェクトに対するファイナンス支援を表明した。さらに、低炭素エネルギーへの移行を急ぐエネルギー集約型産業のみならず、世界の大手テック企業が、生成AI(人口知能)の普及によるデータセンターの電力需要の増大に応えるために原子力発電の利用に注視する事例も増えている。原子力エネルギーは、低炭素エネルギーで気候変動問題に対応し、安定した供給と手頃な価格でエネルギー安全保障にも貢献するとして、原子力利用への関心は高まりを見せている。なおCOP29の開幕と合わせ、米政権は11月12日、2050年までに2億kWeの原子力発電容量を導入し、現在の約1億kWeの設備容量を3倍化する計画の概要を示す枠組みを発表した。大型炉のほか、小型モジュール炉(SMR)、マイクロ炉を含む新規炉の建設、既存炉の出力向上や運転期間延長、経済的理由により閉鎖された原子炉の再稼働などによる容量増大を想定している。
14 Nov 2024
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アレスリ加アトキンス・リアリス(AtkinsRéalis、旧SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)社傘下にあるCandu Energy社は10月31日、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)の新型炉MONARK(100万kWe)について、加原子力安全委員会(CNSC)と特別プロジェクト契約を締結し、許認可申請前設計審査の計画を策定すると発表した。同プロジェクトでは、カナダにおけるMONARKの許認可および建設の適合性が検討される。アトキンス・リアリス社のJ. ジュリアン原子力部門長は、「2027年までにMONARKの設計を完了し、初号機の建設を早ければ2029年に開始、2030年代半ばまでに運開させる」との見通しを示した。この特別プロジェクトでは、CNSCスタッフにMONARKの設計に精通してもらい、将来の設計審査で必要となるフィードバックを提供してもらうことを目的としている。アトキンス・リアリス社では、スタッフ約300人をMONARKの設計作業に投入し、概念設計を今年9月にすでに完了している。カナダで原子力プラントを建設しようとするベンダーは、CNSCの許認可申請前ベンダー設計審査(Vendor Design Review: VDR)を任意で受けることができる。CNSCの職員が設計の早い段階でベンダーにフィードバックを提供し、規制上の要件などを検証できる仕組みである。VDRを完了させることで、供給者は新しい設計の認可手続き上において基本的な問題点を特定し、あらかじめ解決する。同時に、プラントを導入する電力会社にとっても予見可能性を高めるものとなる。一般的なVDRは3段階構成(①規制基準全般の適合評価、②許認可上障害となる点の特定、③指摘事項を解決するフォローアップ)であるが、MONARKの設計は、VDRの3段階すべてを完了した過去のCANDU炉のプラットフォームと、実際に認可を取得・建設した実績を最大限に活用している。そのため、アトキンス・リアリス社はCNSCに対し、VDRまたは予備的規制設計評価(Preliminary Regulatory Design Assessment)のいずれかの評価方法を検討するよう要請した。前者が設計全体を評価するものであるのに対し、後者は評価対象となる技術・設計変更に特化し、新しい技術の個々の設計要素に関してフィードバックを行うものである。まずCNSCの専門家グループが、VDRと予備的規制設計評価の両方についてスケジュールと評価見積りを作成する。見積りには、MONARKに施されたさまざまな改良点や、すでにVDRの3段階フェーズをすべて完了した過去のCANDU設計との相違点、規制要件などの変更点が反映される。その後、アトキンス・リアリス社はMONARKの設計プログラムをサポートする最適な評価方法を選択し、厳格な審査によるフィードバックを得て、ライセンス取得にかかるコストやリードタイムを明確にさせ、MONARKの新規建設プロジェクトに取組みたい考えだ。「MONARK」は、CANDU炉では第3世代+(プラス)炉に分類され、運転寿命は70年。構造は簡素化され、建設時間を短縮するモジュールベースの建設工法を採用。運転を停止させることなく燃料交換ができるため、高い設備利用率(95%)を達成するほか、燃料には天然ウランに加え、再処理ウラン、トリウム、MOX燃料などの装荷も可能。水素製造や医療用アイソトープ製造にも活用できる。現時点で、CANDU炉だけがCNSCのVDRの3段階すべてを完了しており、カナダでは国内で稼働するすべての原子炉がCANDU炉である。CANDU炉は、1950年代後半から連邦政府直轄のカナダ原子力公社(AECL)が主体となり、カナダが独自に開発し実用化した重水炉だ。AECLの原子炉部門は2011年、SNC-ラバリン社に売却された。CANDU炉はカナダの他、アルゼンチン、中国、韓国、ルーマニアで稼働中である。カナダ国内に250企業以上、専門的および熟練したスキルを有する76,000人もの従業員を抱えるCANDU炉の一大サプライチェーンが確立されており、アトキンス・リアリス社はMONARKのカナダ国内外での展開を目指している。
13 Nov 2024
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気候変動問題の解決に向けて活動する、米国の非営利団体であるエコアメリカ(ecoAmerica)が10月29日に発表した最新の世論調査「米国人の気候展望調査2024 (American Climate Perspectives Survey 2024, Vo.Ⅲ)」によると、米国民の半数以上が原子力発電を支持していることが分かった。同調査は、エコアメリカがオンラインアンケートのSurvey Monkeyを利用して、2024年7月24日から8月9日にかけて1,011人を対象として実施したもの。同調査によると、米国人の55%が原子力発電を「強く支持する」または「やや支持する」と回答、前年から支持が3ポイント上昇した。過去7年間に実施した調査で、米国人の半数以上が一貫して原子力発電を支持する結果となっている。支持政党別でみると、共和党支持者が原子力発電への支持が最も高く(61%)、民主党支持者と無党派層は半数強(各々52%と53%)にとどまった。性別でみると、男性を自認する米国人は原子力を強く支持する一方(67%)、女性を自認する米国人の支持は41%と男性と比べて低い結果となった。また、年齢層別で最も支持が高いのは65歳以上(71%)で、最も支持が低かったのは18歳から24歳(39%)であった。原子力発電への支持が高まっている理由として、回答者の70%が、原子力発電が経済成長と同時に、気候や健康に害を及ぼす汚染削減に役立つと回答。また、回答者の多くが、原子力発電所が安定して電力を供給し、米国の競争力とエネルギーの自立を維持している点を挙げた。さらに、70%が「低コストの再生可能エネルギーが利用可能になるまで」、あるいは、68%が「長期的に費用対効果が高い限り」、原子力発電所の運転を継続するべきと回答したほか、67%が「気候変動の原因となる汚染物質を排出しない」という点で、原子力発電を支持するとした。「研究開発費」に関する設問では、回答者の72%が「風力・太陽光により多くの研究開発費を費やすべき」と回答。次世代原子力エネルギーについても、風力・太陽光に次ぎ、半数以上(56%)が研究開発費の増額を支持、天然ガス(52%)、石油(42%)、石炭(30%)に対する支持を上回った。これらの調査結果により、エコアメリカは、石炭、石油、天然ガスからの移行加速に向けた、社会的条件が成熟しつつあると分析している。なお、支持政党別では、民主党支持者の56%が、共和党支持者の62%が、それぞれ「次世代原子力エネルギーに対する研究開発費の増額」を支持している。一方で、回答者の多くが、健康と安全(74%)、廃棄物処分(72%)、軍事利用(68%)など、原子力発電について何らかの懸念を表明しており、原子力発電に対する全体的な懸念は依然として高いことが判明。但し、懸念を表明する回答者の割合は、2018年の調査と比べ全般的に減少傾向にあることも分かった。
12 Nov 2024
853
チェコ政府内で独立した第三者機関である競争保護局(ÚOHS)は10月31日、チェコ電力(ČEZ)が原子力発電所増設プロジェクトの優先交渉者に韓国水力・原子力(KHNP)を選定した入札手続きに対する、米ウェスチングハウス(WE)社ならびに仏EDFによる異議申立てを、第一審で却下した。ČEZは今年7月、ドコバニとテメリン両原子力発電所における最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者としてKHNPを選定した。しかし、入札に参加を認められなかったWE社と、選外となったEDFは翌8月、ÚOHS に入札手続きの見直しを求め、異議を申立てた。WE社は契約権限者による公共調達法の枠外となる国家安全保障上の例外適用に一部異議を唱え、また、WE社とEDFはKHNPの選定に関して公共調達の基本的原則に準拠しない違法性(公共契約の履行対象の大幅な拡大、優先交渉者であるKHNPの契約履行能力の欠如など)を訴えたが、ÚOHSは、WE社が例外適用を認識した時点から15日以内(2022年3月)の異議申立て期限を過ぎていること、また、例外適用により公共契約を行う契約権限者の特定の手続きに対する法的異議の申立ては受入れられないとして、行政手続きを終了させた。このほか、外国補助金規則の違反とする両社の主張については、契約権限者が公共調達法により従うべき手続きではないため、異議を却下した。ÚOHS は今回の一審判決の前日30日には、最終判決が出るまでKHNPとの契約締結の仮差止めを命じている。なお、今回の一審判決への不服申立ては、 ÚOHS長官宛てに控訴することで可能だ。今回の裁定を受けČEZは声明を発表。契約締結の仮差止めは通常の措置であるとし、ドコバニ発電所5、6号機の増設に関する最終契約についてはKHNP社と交渉が進行中であり、 ÚOHSの最終判決は、予定する来年3月末の契約調印に間に合うだろうとの見通しを示した。なおWE社は、「KHNPのAPR1000およびAPR1400設計は、WE社がライセンス供与した技術を利用、KHNPはその基本技術を所有しておらず、WE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有していない。米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけである」として、知的財産権と輸出管理をめぐり、現在、国際仲裁および米国で訴訟が進行中である。WE社とKHNP間で係争が続く中、11月1日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に仮調印した。両国の当局者は、最高水準の不拡散、安全、保障措置、安全保障を支持しつつ、原子力の平和利用を促進するという相互のコミットメントを再確認し、両者は民生用原子力技術の輸出管理を強化するとしている。同時に、気候変動対応、グローバルなエネルギー移行の加速化及びサプライチェーンの確保などの分野での協力も拡大し、両国の産業に数十億ドルの経済効果と数万人の雇用をもたらすと強調している。両国企業間の紛争にも係らず両政府の協力意向を明確に示し、原子力輸出管理分野のコミュニケーションを通じて将来の紛争防止を図り、今後グローバル市場で両国間の原発輸出協力を緊密に行いたい考えだ。
11 Nov 2024
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は11月20日、年末を目途とする次期エネルギー基本計画の素案取りまとめに向け、これまでの議論を整理した。〈配布資料は こちら〉エネルギー基本計画の見直しについては、同調査会の基本政策分科会で5月より検討が本格化。これを受け、原子力小委員会は6月より議論を開始した。石破内閣発足後初となった10月31日の「GX実行会議」では、年内の素案提示を目指し、2040年を見据えた「GX2040ビジョン」に資するよう、新たなエネルギー基本計画および地球温暖化対策計画を取りまとめる方針があらためて示されている。今回の小委員会の冒頭、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏は、原子力をめぐる最近の動きとして、先般の東北電力女川原子力発電所2号機における発電再開に言及。特に東日本における電力安定供給を支える意義とともに、事業者他、関係者の尽力への敬意、原子力施設の立地地域によるエネルギー・原子力政策への理解・協力に謝意を述べた上で、今後、新規制基準をクリアしたプラントとして、中国電力島根原子力発電所2号機の再稼働にも期待を寄せた。原子力小委員会は、今夏からの論点整理の一項目として、「立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション」を提示。立地地域の立場から、杉本達治委員(福井県知事)は、これまでの会合で「国の原子力政策に対する方向性の明示」を一貫して求めてきた。今回の会合で、立地地域との共生に関して、小野透委員(日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行)は、「産業の発展に立地地域が果たしてきた役割を常に意識せねばならない」と、エネルギー多消費の産業界としても、あらためて電力生産地に対する理解・謝意の必要性を示唆。昨今、地層処分地の選定に向け動きがみられているが、「バックエンドプロセスの加速化」の論点に関連し、「原子力発電の恩恵を受けてきた現世代の責任」とも述べた。委員からは、現行のエネルギー基本計画に記載される「可能な限り原発依存度を低減する」ことに係わる発言も多く、「新増設は必須」、「事業環境整備は先送りできない喫緊の課題」など、既設炉の最大限活用に加え、次世代革新炉の開発・建設を視野に、具体策を求める意見があった。「サプライチェーン・人材の維持・強化」も大きな論点となった。専門委員として出席した日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、次期エネルギー基本計画の素案に向け、(1)「原子力への依存度低減」の記載を削除する、(2)新規建設を前提とした原子力の必要容量と時間軸の明記、(3)資金調達・投資回収などの事業環境整備の方針明記――を掲げた上、「民間事業者の意思決定の根拠となるような明確な指針」となるよう期待した。〈発言内容は こちら〉
22 Nov 2024
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原子力規制委員会の委員を2期10年間(2014年9月~2024年9月)務めた石渡明氏が11月18日、日本記者クラブで記者会見を行い、自然ハザードに対する同委の対応を振り返るとともに、元旦に発生した能登半島地震で得られた知見、今後の原子力規制行政に係る課題について意見を述べた。同氏は、委員在任時、地震・津波関連の審査を担当。最近、11月13日に新規制基準適合性に係る審査で「不合格」となった日本原子力発電敦賀発電所2号機の「審査書案」取りまとめや、2023年に「GX脱炭素電源法」検討の中、原子力発電所の60年超運転も視野に入れた規制制度の見直しに関して、委員の中でただ一人反論するなど、現行の原子力規制行政のあり方に対し頑なに厳しい態度を示してきた。石渡氏は、東日本大震災時、東北大学に在任。現地調査を踏まえ、「津波引き波」、「津波火災」など、津波被害対策の重要性を強調。当時の経験が、原子力規制委員会委員を引き受ける上で「大きな比重になった」という。福島第一原子力発電所は過酷事故に至ってしまったが、石渡氏は東北電力女川原子力発電所に関して、敷地高さ15mに対し、実際の津波高(13m)は「地震により1m地盤が沈降したため正にギリギリだった」と説明。活断層に関して、石渡氏は、これまでの審査から、「上載地層法」と「鉱物脈法」による判断を技術的見地から紹介。新規制基準を初めてクリアした九州電力川内原子力発電所1・2号機を例に、設置変更許可後、2016年4月に発生した熊本地震(M7.3)の経験などを踏まえ、自然ハザードへの対応に関し、「不確定さが大きい」と述べ、新たに得られた知見に対し現行の規制要求でも満足することを確認する「バックフィット」の重要性を強調した。石渡氏は、地質学、岩石学、地球化学が専門。委員在任時、会合の中で、「令和3年台風10号」が宮城県に上陸した観測史上初の台風であったことを指摘し、自然ハザードに対する議論を随所で喚起するなど、いわば「理科年表」的な存在でもあった。今回の会見の中で、同氏は、能登半島地震について、委員退任も近くなった8月の現地調査を振り返り、4mもの隆起があった地盤変動に関し、「関東大震災の隆起1mに比しても非常に大きな地殻変動。こんな状況を生きている間に目にするとは思わなかった」と強調。今後の原子力規制行政に向け、「日本は自然ハザードが起きやすい。絶えず改善していく必要がある」と述べた。
20 Nov 2024
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東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が11月15日、再稼働(発電再開)した。東日本大震災後、2013年の新規制基準が施行されてから、BWRの再稼働は初となる。今後、原子力規制委員会による総合負荷性能検査を経て、12月中にも営業運転復帰となる見通し。同機の発電再開は、2010年10月の定期検査入りから、およそ14年ぶり。2011年3月の東日本大震災時、起動作業中であったが、発災により自動停止した。女川2号機の新規制基準適合性に係る審査は2013年12月に申請。6年以上におよぶ審査期間を経て、2020年2月に原子炉設置変更許可に至り、同年11月には、宮城県知事他、立地自治体が再稼働への同意を表明。海抜29m高の防潮堤建設など、安全対策工事は、2024年5月に完了した。10月29日に原子炉起動となったが、11月3日に設備点検に伴い一旦停止。11月13日に再度、原子炉を起動し、11月15日18時に発電を再開した。東北電力では、今回の発電再開に際し、これまで自然ハザードに対処してきた経験を振り返りつつ、「発電所をゼロから立ち上げた先人たちの姿に学び、地域との絆を強め、福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わるという決意を込めて『再出発』と位置付ける」と、コメント。東日本大震災の教訓を踏まえ、原子力発電所のさらなる安全性の向上を目指し取り組んでいくとしている。これに関し、武藤容治経済産業相は、東日本の電力供給の脆弱性、電気料金の東西格差などの観点から、「大きな節目であり、重要な一歩」とした上で、エネルギー安定供給を所管する立場から、立地自治体の理解・協力に謝意を表し、引き続き安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めていくとの談話を発表した。また、電気事業連合会の林欣吾会長は、11月15日の定例記者会見で、「長期間、停止していた発電所が再稼働を果たすということは、業界としても、大変感慨深く感じている」と、女川2号機発電再開の意義を強調した上で、今後、立地地域の理解を得ながら、中国電力島根原子力発電所2号機など、電力業界を挙げて早期の再稼働に取り組んでいく姿勢を示した。〈電事連コメントは こちら〉日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、メッセージを発表し、「わが国の原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きな意義を持つもの」と強調している。〈理事長メッセージは こちら〉
19 Nov 2024
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東京電力は11月12日午後、福島第一原子力発電所2号機から試験的取り出しとして採取した燃料デブリを、日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所に輸送を完了した。翌13日には、車両への積載作業の模様を紹介した動画を公開。14日には、原子力規制委員会の事故分析検討会で、作業状況について説明を行った。〈東京電力発表資料は こちら〉福島第一原子力発電所廃止措置ロードマップで、燃料デブリ取り出しは2号機より着手することとされており、試験的取り出しのため、今夏、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、原子炉格納容器(PCV)にアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入し準備を開始。ガイドパイプの接続手違いによる作業中断も生じたが、10月30日に同装置は燃料デブリに到達し、11月7日には試験的取り出しを完了した。原子力機構に輸送された燃料デブリは今後、数か月から1年程度をかけて分析が行われ、本格的取り出しに向けて、工法、安全対策、保管方法の検討に資することとなる。燃料デブリを受入れた原子力機構では、分析に必要な設備・装置を有する照射燃料集合体試験施設(FMF)で、その性状を評価し、炉内状況推定の精度向上を図っていく。同機構廃炉環境国際共同センター(CLADS)技術主席の荻野英樹氏は12日夜、大洗原子力工学研究所で行われた記者会見の中で、「取り出された燃料デブリは0.7g程度」としながらも、今後の試料分析に際し「結晶構造がどのような温度変化をたどって、どのくらいの速さで事象が進捗し形成されたかが推測できる」と述べ、技術的立場から試験的取り出しの意義を強調した。分析が完了後、使用目的のない残りの燃料デブリについては東京電力に返却される。〈原子力機構発表資料は こちら〉今後、燃料デブリの分析・評価の中心となる大洗原子力工学研究所の構内・近隣には、走査型電子顕微鏡などの高度な分析機器を備えた日本核燃料開発、材料研究や学生の実習受入れでも実績のある東北大学金属研究所が立地している。段階的に燃料デブリの取り出しが進む中、分析・評価の成果は、将来的に廃炉人材の育成や事故耐性燃料(ATF)の開発にも活かされそうだ。
14 Nov 2024
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原子力規制委員会は11月13日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)に係る新規制基準適合性審査について、「適合するものであると認められない」とする審査結果を正式決定した。2013年に原子力発電所の新規制基準が施行されてから、試験研究炉や核燃料サイクル施設も含め、「不合格」が決定した初の事例となる。本審査については、8月28日の同委定例会合で「審査書案」が了承された後、1か月間のパブリックコメントに付せられていた。敦賀2号機における地震・津波関連の審査では、同機敷地内の「D-1破砕帯」(原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性および連続性が焦点となり、「K断層」について、「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない」、「2号機原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことを確認。今回の結論に至った。敦賀2号機の審査は、2015年11月に申請がなされており、9年越しでの結論となった。審査申請当時の委員5名中、4名が既に入れ替わっているが、今回の決定に際しては各委員の意見が一致。その中で、プラント審査担当の杉山智之委員は、「許可を与えるには、すべての基準に適合していることを一つ一つ説明する必要がある。一方で、許可しない決定には『適合しないケースを一つ示せば十分』だが、決してそのケースだけに特化した審査が行われてきたわけではない」と発言し、規制委の審査経緯や事業者の主張について、広く社会に説明していく必要性を示唆した。定例会終了後の記者会見で、山中伸介委員長は、初の事例となる今回の判断に関し、「論点を絞った審査となったが厳正に審査した」と、規制委員会としての姿勢を強調。加えて、審査の中で、申請書に係る疑義が生じたことに関し、「異常な状態だった」とも述べ、事業者に対し厳しく反省を促した。今回の審査結果を受け、日本原子力発電は「大変残念」とした上で、敦賀2号機の設置変更許可の再申請、稼働に向け、必要な追加調査の内容について、社外の専門家の意見を踏まえ具体化していく、とのコメントを発表した。
13 Nov 2024
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日本とポーランドにおける原子力分野での協力が進展している。経済産業省の竹内真二大臣政務官は11月3~9日、エネルギー関連企業など、計23社とともに、ルーマニアおよびポーランドを訪問。7日のポーランド訪問では、マジェナ・チャルネツカ産業相と会談し、原子力分野を中心に、両国間の協力可能性について議論した上で、覚書への署名がなされた。〈経産省発表は こちら〉会談には日本企業も同席。2040年までのポーランドのエネルギー政策に従い、同国におけるSMR(小型モジュール炉)を含む原子炉の開発・配備を通じて、「強固で強靭な原子力サプライチェーンを構築する」など、相互にとって有益な協力分野を開拓していく。ポーランドでは、石炭火力発電への依存度が高く、排出ガスに起因した酸性雨などの環境影響が深刻な問題だ。そのため、エネルギーセキュリティ確保と環境保全の両立に向けて、同国政府は、原子力発電の導入を目指し、2043年までに大型軽水炉を6基導入する計画。2022年11月には、大型炉の米国WE社製AP1000を3基建設することを正式決定。また、産業振興も視野にSMR導入を目指す動きもみられている。既に2024年5月、東芝エネルギーシステムズと地元企業との間で、蒸気タービンや発電機の供給協業で合意に至っており、民間企業レベルでの協力も進みつつある。今回の覚書のもと、日本とポーランドは、人材育成、理解促進、原子力安全確保の分野で、情報交換、セミナー・ワークショップ、企業間マッチングなどの活動を実施。国際的基準・勧告に沿った放射性廃棄物管理・廃炉など、バックエンド対策も含めて、原子力発電導入に向けた理解活動に取り組んでいく。なお、日本によるポーランドへの原子力・放射線分野の協力は、エネルギー分野のみにとどまらず、これまでも、IAEAによる支援のもと、電子線加速器を利用した排煙脱硫や、その副産物として肥料生産も行われるなど、環境保全・食料安全保障の分野での実績も注目される。
12 Nov 2024
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東京電力は11月7日、福島第一原子力発電所の2号機において、燃料デブリの試験的取り出しを完了した。〈東京電力発表資料は こちら〉廃止措置ロードマップで、いわば「本丸」となる燃料デブリ取り出しの初号機とされる2号機については、原子炉格納容器(PCV)の内部調査に向けて、英国との協力で開発したロボットアームの導入を予定している。今回、試験的取り出しのため、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、PCVにアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入。8月22日にガイドパイプが挿入されたが、接続の手違いにより一旦作業が中断した。9月10日に、パイプの復旧作業および現場確認が完了し作業を再開。同日、「テレスコ装置の先端治具が隔離弁を通過した」ことで、試験的取り出し作業が開始となった。その後、同装置先端部のカメラからの映像が遠隔操作室のモニターに適切に送られていないことが確認されたが、10月24日にはカメラ交換作業を完了し、28日に試験的取り出し作業を再開、30日に燃料デブリに到達することができた。試験的取り出しで採取した燃料デブリは、日本原子力研究開発機構大洗研究所などの構外分析施設に輸送し、詳細分析が行われる。同研究所に隣接する日本核燃料開発では既に電子顕微鏡などを用いた分析準備も進められており、分析結果は、今後の本格的取り出しに向けた作業計画の立案や、従事者への教育・訓練にも資することとなる。今回の燃料デブリの試験的取り出し完了を受け、武藤容治経済産業相は11月8日、閣議後の記者会見の中で、「より本格的な廃炉作業を迎える中で重要な一歩となる」と、その意義を強調。加えて、今後の分析を通じ廃炉進捗に資する情報・知見の取得を期待するとともに、東京電力に対しては、引き続き安全確保に万全を期し作業を進めていくよう求めた。
08 Nov 2024
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原子力規制委員会は11月6日、リサイクル燃料貯蔵(RFS)が青森県むつ市に立地する「リサイクル燃料備蓄センター」(むつ中間貯蔵施設)について、使用前確認証を交付。同施設は、事業開始となった。むつ中間貯蔵施設は、原子力発電に伴い発生する使用済み燃料(東京電力、日本原子力発電)を、再処理するまで、最長50年間(順次設置する施設ごと、キャスクごと)、安全に貯蔵・管理するもの。使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムをMOX燃料として加工した上で、有効利用する核燃料サイクルの推進は、わが国のエネルギー政策の基本的な方針だ。1990年代後半、使用済み燃料貯蔵対策について、長期的な貯蔵量の増大を見通し、官邸レベルでも議論されるようになり、サイト外貯蔵に関しては、「2010年までに確実に操業開始できるよう、国および電力事業者は直ちに所要の制度整備、立地点の確保等に取り組むことが必要」との報告書がまとめられた。2000年には、むつ市より東京電力に対して立地に係る技術調査の依頼があり構想が具体化。2003年には、過日逝去した同社・勝俣恒久社長(当時)に対し、立地要請がなされた。その後、施設の建設工事が進捗するも、2011年の東日本大震災発生により停滞。原子力規制委員会が発足し、新規制基準施行を踏まえ、RFSより同委に対し2014年1月に事業変更の許可申請がなされ、審査を経て2020年11月に許可となった。RFS 他事業者は2024年8月、青森県およびむつ市との間で、むつ中間貯蔵施設に係る安全協定を締結。9月26日には、東京電力柏崎刈羽原子力発電所より、使用済み燃料を入れたキャスク1基の搬入がなされた。今回の事業開始後、2025、26年度にそれぞれ2基、5基のキャスク搬入が予定されている。RFSでは、「安全最優先で事業に取り組むとともに、事業の透明性を高め、地域に根差した事業運営に努めていく」とコメント。また、東京電力も2000年からの調査に対し、立地地域による理解・協力への謝意を表した上で、「サイクル全体の運営に柔軟性を持たせ、中長期的なエネルギー安全保障に寄与する」と、施設の意義を強調し、引き続きRFSを支援していくとしている。
07 Nov 2024
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は11月1日、記者会見を行い、10月に開催された「原子力産業セミナー2026」、「東アジア原子力フォーラム」について紹介し、質疑に応じた。「原子力産業セミナー」は、原産協会と関西原子力懇談会との共催により、「原子力産業界の人材確保支援と原子力産業への理解促進」を目的として、2006年度より毎年行われているもの。今回は、主に2026年春に大学・高専を卒業する学生を対象に、10月5、14日と、それぞれ大阪・梅田、東京・浜松町で開催され、両会場合わせて計433名(前年度は430名)が参加した。出展企業・機関数は、89社(同85社)に上り過去最大。新卒・若手の就職活動が売り手市場となる中で、企業の採用欲が高まっていることがうかがえる結果となった。〈既報〉来場者へのアンケート結果によると、原子力産業界への就業意欲、理解の深まりについては、それぞれ肯定的な回答が85%、96%に達しており、増井理事長は、「全般的に好意的な反応が見られている」と評価。さらに、出展企業ブースでの質疑応答の状況からも、「学生さんは結構よく勉強してきている」などと振り返った上で、今後も同セミナーを原子力人材確保の「重要な場」として活用していく考えを述べた。また、「東アジア原子力フォーラム」は、10月23、24日に中国・敦煌で開催。今回、10回目となり、原産協会、中国核能行業協会(CNEA)、韓国原子力産業協会(KAIF)、台湾核能級産業発展協会(TNA)の関係者ら約60名が参加。5年ぶりの対面開催となり、各国・地域の原子力エネルギーの現状、安全性向上の取組。気候変動対策における役割、放射性廃棄物管理などについて意見が交わされた。増井理事長は、セッションの内容とともに、会期中に行われたテクニカルツアーについて、高レベル放射性廃棄物の処分研究施設「北山地下研究所」、敦煌から西に約20km離れたゴビ砂漠にある100MW級溶融塩タワー型太陽熱発電所を紹介。同太陽熱発電所は、東京ドーム約124個分の敷地を有し、高さ260mのローソク状タワーに向け、12,000基ものミラーが太陽の動きに合わせ集熱する壮大な規模感で、「非常に興味深かった」と印象を述べた。増井理事長は、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会に、専門委員として参加しており、最近、行われた10月16、30日の会合での発言についても説明。〈発言内容 10月16日、30日〉いずれも、原子力産業界の立場から、サプライチェーンの維持・強化について意見を述べており、今後の課題に係る記者からの質問に対し、「代替品があるかどうか」、「数量を確保できるか」、「特定の技能を持つ人しか作れないものか」と、3点を指摘した。
05 Nov 2024
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は10月30日、立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション、次世代革新炉の開発・建設、ウラン燃料のサプライチェーンに関する取組について議論した。〈配布資料は こちら〉前回、16日の会合では、核燃料サイクルを中心に議論。一週おいての開催となった今回会合の冒頭、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏は、引き続き「原子力政策をめぐる諸課題」について、有意義な議論がなされるよう期待を寄せた。資源エネルギー庁は、最近の原子力動向・課題・論点に関する整理の中で、10月29日晩に原子炉起動に至った東北電力女川2号機についても言及。2013年の新規制基準施行後、東日本およびBWRプラントとしては初めての再稼働となったことから、「非常に意義深い」ものと述べた。同機については、11月上旬の発電再開を想定し、各種検査・試験などが進められている。〈東北電力コメント、電気事業連合会会長コメント〉立地地域との共生に関しては、福井県、青森県について、それぞれ2021年6月、2023年11月に、関係自治体・行政機関、電力事業者の参画する「原子力発電所の立地地域の将来像に関する共創会議」が始動。今回の原子力小委員会会合の翌日、2024年10月31日には、青森県について、「地域の将来像の実現に向けた基本方針と取組」および工程表が取りまとめられ、今後、その具体化に向け、ワーキンググループ・立地市町村も含めた検討会が立ち上がることとなった。資源エネルギー庁は、今後の論点として、立地地域の持続的発展とともに、防災体制の充実・強化に向けた取組を進めていく方向性を提示。実際、2023年4月に始動した国と全国原子力発電所立地市町村協議会(全原協)が中心となって意見交換を行う「原子力政策地域会議」では、立地地域共通の課題として、避難道路の整備など、防災対策の充実があげられている。こうした状況に関し、杉本達治委員(福井県知事)は、今回、書面により意見を提出。その中で、最近の福井県議会による「安全・安心に避難するための道路整備がなされなければ、国の原子力政策に協力できない」との指摘をあげ、原子力防災対策について、実効性ある取組が次期エネルギー基本計画に明記されるよう求めた。また、防災医療の立場から、越智小枝委員(東京慈恵会医科大学教授)は、福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ、災害時の情報発信、広域の搬送体制も含む医療との連携について検討する必要性を指摘。国民への理解活動の一例として、資源エネルギー庁は、若年層向けのYou Tube広告「metichannel」に、2022年11月以降、累計1億回を超す再生の成果を強調したが、メディアの立場から、伊藤聡子委員(フリーキャスター)は、「新規制基準により、何がどう安全になったのか、よく理解されていない。率直な疑問に対し、『目線を降ろした丁寧な説明』が必要」と、改善の余地を示唆した。次世代革新炉の開発・建設については、原子力小委員会のもと、2024年10月22日に行われた革新炉ワーキンググループ会合での意見を整理し議論。ウラン燃料の確保については、欧米のウラン燃料支援に係る動向などを踏まえ、「同志国間での安定的・自律的なウラン燃料のサプライチェーン確保に向け、積極的に貢献していくことが重要」との方向性が資源エネルギー庁より示された。竹下健二委員長代理(東京科学大学名誉教授)は、核燃料サイクルの技術的観点から、世界のウラン燃料需給バランスの問題に言及し、西側諸国と連携したウラン濃縮の拠点を構築することを提案。専門委員として出席した日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、現在、六ヶ所村で操業中のウラン濃縮に関し「オールジャパンで開発されたものであって、非常に優れたもの」と、日本の技術力を評価。さらに、「技術をサプライチェーンとともに維持していくことは、わが国のエネルギーセキュリティ戦略として極めて重要」と述べ、国における必要な支援を求めた。〈発言内容は こちら〉
01 Nov 2024
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関西電力は10月28日、美浜発電所3号機について、原子力発電所の長期運転を支援するIAEAプログラム「SALTO」(Safety Aspects of Long Term Operation)による評価報告書を受領したと発表した。〈関西電力発表資料は こちら〉美浜3号機は、新規制基準をクリアした後、2021年7月に国内初の40年超運転を開始。同機については、2024年10月15日、来年6月に本格施行となる「GX脱炭素電源法」で規定される運転開始から30年を超すプラントに必要な「長期施設管理計画」の認可申請も行われている。「SALTO」は、原子力発電所の長期運転に係る組織や体制、設備・機器の劣化管理などの活動がIAEAの安全基準に適合しているかを評価し、事業者に対して、さらなる改善に向けた推奨・提案事項を提供するプログラムだ。これまで海外では、欧州の他、中国、南アフリカ、メキシコなどで実績があるが、今回の美浜3号機は国内初の受入れとなった。「SALTO」チームは、4月16~25日に同機に係る調査を実施。良好事例6件、推奨事項7件、提案事項4件があげられた。今回の調査結果を受け、関西電力では、「経年劣化管理および安全な長期運転に向けた活動について、概ねIAEAの安全基準の推奨通りに管理されていることや、今後、改善が計画されていることについて評価された」と、述べている。同社では、今回の提案・推奨事項に対する改善をさらに進め、2026年度にも「SALTO」チームによるフォローアップを受け入れる予定だ。
29 Oct 2024
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政府は10月25日、2024年度の文化勲章受章候補者7名を発表した。原子力・放射線分野では今回、中西準子氏(横浜国立大学名誉教授)が受章する。同氏は、環境リスク管理学の分野で、環境政策の立案や法整備に貢献。科学的定量化に基づく環境リスク評価・リスク管理のスキームを世界に先駆けて提唱するなど、産業技術の発展や原子力災害対策で功績があった。先端技術の製品化に係る工業ナノ材料開発の他、2011年の福島第一原子力発電所事故後は、放射能汚染、避難、除染に関して、住民らが自身で判断するために有用なリスク情報の提供にも取り組んできた。食品中の放射性物質に係る基準値の理解に向けては、「原発事故と放射線のリスク学」などを著し、放射線分野のリスクコミュニケーション啓発にも努めている。今回の受章決定は、研究成果として、「化学物質環境リスク研究の国家拠点形成や環境問題での政策立案に活かされた」ことが高く評価されたもの。高度経済成長が停滞し始めた1970年代は公害が喫緊の社会問題となっており、同氏は、都市工学の視点から、化学物質の広域大気濃度推定モデル開発など、環境汚染の定量的評価に着目し技術面で貢献。産業技術総合研究所にも籍を置き、化学物質リスク管理の社会実装に取り組んできた。受章決定に際し、中西氏は、「少し先の時代の声に耳を傾けつつ、研究を進めてきた」とするとともに、高等教育に携わってきた経験から「多くの学生たちの知性と応援もあった」とのコメントを発表した。2013年には瑞宝重光章を受章している。今年度の文化勲章は、中西氏の他、「あしたのジョー」や「おれは鉄兵」の著者として知られる漫画家のちばてつや氏も受章する。
28 Oct 2024
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