核燃料サイクル政策について青森県知事と関係閣僚らが意見交換を行う「核燃料サイクル協議会」が12月24日、総理官邸で開催された。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉同協議会は、1997年以来、核燃料サイクル政策の節目、政権の動きを機に、これまで13回行われてきた。前回は、2023年8月、同6月に就任した青森県・宮下宗一郎知事の要請を受け開催。その後、六ヶ所再処理工場およびMOX燃料加工工場の竣工目標につき、それぞれ「2026年度中」、「2027年度中」への変更(2024年8月29日)、むつ中間貯蔵施設の事業開始(同11月6日)の他、高レベル放射性廃棄物等の地層処分地選定に向けた北海道寿都町・神恵内村における文献調査報告書取りまとめ(同11月22日)など、核燃料サイクル政策をめぐり動きがあった。今回の協議会で、宮下知事は、立地地域の立場から、 (1)原子力・核燃料サイクル政策の推進 (2)六ヶ所再処理工場の竣工・操業に向けた取組 (3)むつ中間貯蔵施設における中長期の貯蔵計画等 (4)プルトニウム利用 (5)高レベル放射性廃棄物等の最終処分と搬出期限の遵守 (6)資源エネルギー庁による「青森県・立地地域と原子力の将来像に関する共創会議」の方針――について、国・事業者による取組姿勢の確認を要請。国からは、林芳正官房長官、浅尾慶一郎内閣府原子力防災担当相、城内実同科学技術担当相、あべ俊子文部科学相、武藤容治経済産業相が、事業者からは林欣吾電気事業連合会会長が出席した。現在、次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論が佳境となっている。原子力・核燃料サイクル政策の推進について、国からは、「エネルギーの安定供給と経済成長、脱炭素を同時に実現する上で、安全性確保を大前提とした原子力利用が不可欠であり、原子力・核燃料サイクルの推進を、国の基本方針として堅持する」との姿勢があらためて示された。また、六ヶ所再処理工場の竣工については「必ず成し遂げるべき課題」として、日本原燃に加え、産業界全体に対し、原子力規制委員会への審査対応など、進捗管理の徹底や必要な人材確保を強く指導し「総力を挙げて取り組む」と強調。事業者の立場から、電事連の林会長は、電力安定供給を担う使命として、「原子燃料サイクルは原子力発電所の安定運転と不可分」との姿勢をあらためて示し、使用済み燃料の管理、プルトニウムの利用などに着実に対応していくと述べた。
25 Dec 2024
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中国電力の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kW)が12月23日13時、発電を再開した。同社では今後、「安全性を確認しながら原子炉の出力を上昇させ、安定して連続運転できることを確認していく」としている。原子力規制委員会による使用前確認証交付を経た営業運転再開は2025年1月10日の見込み。2012年1月の定期検査入り以来、およそ13年ぶりの戦列復帰となる。〈中国電力発表資料は こちら〉2013年の新規制基準施行以来、原子力発電プラントの発電再開は、これで14基目。BWRについては、11月15日の東北電力女川原子力発電所2号機に続き2基目となる。島根2号機は、2011年3月の東日本大震災後も稼働し続け、2012年1月の定期検査入りに伴い停止。その後、2013年12月に新規制基準に係る審査が申請され、2021年9月に原子炉設置変更許可に至った後、地元の了解を得て、2024年12月7日に原子炉を起動させた。今回の島根2号機の発電再開について、中国電力の中川賢剛社長は、関係者および地元への謝意を表した上で、「中国地域を中心とした電力の安定供給を支えるとともに、カーボンニュートラルの達成や電力料金の安定化に不可欠」と、その意義を強調。さらに、環境負荷の少ない低廉な電気を安定供給していくという電力事業者としての使命をあらためて述べ、緊張感を持って営業運転を再開し、その後の安定運転継続に向け、設備健全性の確認を着実に進めていく姿勢を示した。*理事長メッセージは こちら
23 Dec 2024
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原子力発電環境整備機構(NUMO)は12月4~6日、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催された環境保全をテーマとする国内最大級の展示会「SDGs Week EXPO 2024 エコプロ 2024」(日本経済新聞社他主催、エコプロ)に出展した。 エコプロは例年、循環型社会の啓発や災害対策に関する展示も多く、企業間のビジネスマッチングだけでなく、小中学生の環境・防災学習の場としても活用されている。今回も540社余りが出展し、会期中は約63,000人の来場者があった。 NUMOがエコプロに出展するのは昨年に続き2回目。展示ブースには3日間を通じ計4,000人超が来場した。今回は、SDGs目標の一つである「つくる責任、つかう責任」を柱に、クイズラリー形式でNUMOが取り組む地層処分について理解を深めてもらうよう、展示内容を工夫。特に、11月の北海道寿都町・神恵内村での文献調査報告書公表を踏まえ、電力消費地で理解活動を通じ、引き続き処分地選定に向け「国民全体で考えなければならない」ことの訴求に努めた。 エコプロは実体験型の展示が注目される。NUMOでは今回も、全国各地の科学館や商業施設を巡回する地層処分展示車「ジオ・ラボ号」を会場に搬入。日本のエネルギー利用の現状や各発電方法の利点や課題、海外の処分場の映像をVRゴーグルで体験しながら体験させる展示など、計7つのエリアを設け、地層処分事業の概要を紹介した。 修学旅行の生徒らも多く訪れ、「大都市の人が北海道のことをもっと知らなければならないと思った」、「他人事ではなく、自分事として考えるようになった」、「世界の状況も含め、皆が知るべきと思った」といった声も聞かれた。 NUMOでは、今回の展示成果も踏まえ引き続き地層処分の認知・理解を深めてもらうよう努めていくとしている。
20 Dec 2024
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九州電力は12月13日、玄海原子力発電所3・4号機(PWR、各118万kWe)の蒸気タービンを、より優れた材質・構造を採用した最新設計の蒸気タービンに更新することとし、設計・工事計画認可を原子力規制委員会に申請した。〈九州電力発表資料は こちら〉蒸気タービンは、高圧タービン1基と低圧タービン3基で構成。蒸気タービンの更新時期は、3・4号機それぞれ、2027年度、2028年度となっており、九州電力は、「信頼性が向上するとともに、発電効率が向上する」と説明している。今回、蒸気タービンの更新工事は、三菱重工業が受注。高砂製作所(兵庫県高砂市)で設計・製造し、現地で取替工事を実施する。三菱重工の発表によると、納入される蒸気タービンは、国内で4例、海外で5例の実績がある自社設計開発の54インチ翼タービンを採用。三菱重工は1月にも、0.01mmオーダーの加工精度が要求される蒸気発生器で、フランス電力(EDF)から受注した3基(取替用で計9基受注)の製造を完了するなど、PWRプラントメーカーとして、国内外で高い技術力を発揮している。〈三菱重工発表資料は こちら〉現在、玄海3・4号機は、運転開始からそれぞれ30年、27年が経過。3号機については、「GX脱炭素電源法」で、2025年6月に本格施行される高経年化した原子炉に対する規制として、30年以降の運転に必要な「長期施設管理計画」の審査が行われている。
19 Dec 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京海上日動火災保険相談役)は12月17日、第7次エネルギー基本計画の原案を示した。〈配布資料は こちら〉現行の第6次エネルギー基本計画が2021年10月に策定されてから、エネルギー政策基本法に定める3年目の見直し時期が経過。現行計画の策定以降、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限導入、安全性の確保を大前提とした原子力発電所の再稼働への取組が進められ、昨年には、「GX実現に向けた基本方針」に基づき、脱炭素電源導入推進を図る新たな法整備がなされた。海外では、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、エネルギー安全保障に係る地政学的リスクも高まっている。こうしたエネルギーをめぐる国内外状況を踏まえ、同分科会では5月より、次期エネルギー基本計画の検討を重ねてきた。17日の会合では、冒頭、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が挨拶に立ち、これまで13回にわたる議論を振り返り、「様々な角度から貴重な意見をいただいた」と委員らに謝意を表明。その上で、「将来の電力需要増に見合う脱炭素電源をいかに確保できるかがわが国の経済成長のカギ」と、エネルギー政策と経済政策とが一体で進められるべきとの考えを強調。さらに、資源が乏しく国土に制約のある日本のエネルギー安全保障の脆弱性を踏まえ、「バランスの取れたエネルギー政策が必要。特定の電源や燃料源に依存しないという方向性が示された」とも述べた。前日16日には、同分科会下の発電コスト検証ワーキンググループが、2023年時点および2040年時点で、新たに発電設備を建設・運転した場合のコストを18の電源細目別に試算した「発電コスト検証」を取りまとめており、今回の会合ではまず、同WG座長の秋元圭吾氏(地球環境産業技術研究機構主席研究員)が検討結果を報告。〈既報〉続いて、資源エネルギー庁が第7次エネルギー基本計画の原案について説明した。それによると、引き続き、エネルギー政策の原点として、「福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組む」ことを第一に、「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)を基本的視点として掲げている。原子力に関しては、「優れた安定供給性、技術自給率を有し、他電源とそん色ないコスト水準で変動も少なく、一定の出力で安定的に発電可能」とのメリットを強調。立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションの深化・充実、バックエンドプロセスの加速化、再稼働の加速に官民挙げて取り組むとしている。また、これまでの「原発依存度の可能な限りの低減」の文言は削除。新増設・リプレースについては、「廃炉を決定した原子力を有する事業者の原子力発電所サイト内での、次世代革新炉への建て替えを対象として、(中略)具体化を進めていく」と記載された。次世代革新炉の開発・設置に向けては、研究開発を進めるとともに、サプライチェーン・人材の維持・強化に取り組むとしている。また、検討結果の裏付けとして、2040年のエネルギー需給見通しも合わせて提示された。発電電力量は1.1~1.2兆kWh程度、電源構成では、再生可能エネルギーが4~5割、原子力が2割程度、火力が3~4割程度となっている。次期エネルギー基本計画の取りまとめに向け、基本政策分科会では、月内に再度会合を行い、最終原案を確定。パブリックコメントも経て、地球温暖化対策計画など、関連する政策と合わせて年度内にも改定され、2040年頃の日本の産業構造も含めた国家戦略「GX2040ビジョン」に盛り込まれる見通しだ。
18 Dec 2024
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総合資源エネルギー調査会の発電コスト検証ワーキンググループ(座長=秋元圭吾・地球環境産業技術研究機構主席研究員)は12月16日、2023年時点および2040年時点で、新たに発電設備を建設・運転した場合のkWh当たりコストを電源別に試算した「発電コスト検証」の取りまとめを行った。〈配布資料は こちら〉エネルギー基本計画の見直しに向け、同WGが7月より進めてきたもので、翌17日に行われる同調査会の基本政策分科会で報告される。今回の検証は、異なる電源技術の比較・評価を機械的に行う「モデルプラント方式」を採用し、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、原子力、LNG、水素、アンモニア、石炭など、18の電源細目別に試算した。その結果、2040年時点(政策経費あり)で、原子力が12.5円~/kWh(設備利用率70%、稼働年数40年を想定)、太陽光(事業用)が7.0~8.9円/kWh、洋上風力が14.4~15.1円/kWh、LNG(専焼)が16.0~21.0円/kWh、水素(専焼)が24.6~33.0円/kWh、石炭(アンモニア20%混焼)が20.9~33.0円/kWhなどとなった。現行のエネルギー基本計画策定時に行われた「2021年の発電コスト検証」から変動がみられており、資源エネルギー庁では「昨今の物価上昇なども影響している」などと説明している。原子力については、事故対策費用が含まれるが、委員からは、技術的視点からPRA(確率論的リスク評価)を用いた炉心損傷頻度に関する言及もあった。また、太陽光や風力など、「自然変動電源」の導入を見据え、電力システム全体として追加的に生じるコストを見据えた「統合コストの一部を考慮した発電コスト」に関し、その設備容量割合4、5、6割ごと、3つのケースで検証を行っている。16日の会合では、その分析結果について、東京大学生産技術研究所の荻本和彦特任教授らが説明。「自然変動電源」に関しては、出力制御の影響の他、追従運転に伴う火力の燃料使用量増により、「原子力や火力に比べ上昇幅が顕著」などと分析した。例えば、設備容量4割想定の場合、太陽光(事業用)が15.3円/kWh、原子力では16.4円/kWhとなるのに対し、同6割想定の場合は、それぞれ、36.9 円/kWh、18.9 円/kWhと、発電量当たりのコストは逆転する。荻本特任教授らは、再エネの出力変動に追従運転し火力が効率運転する「メリットオーダー」に伴う燃料使用増の要因を指摘。委員からは立地点ごとの特異性も検討すべきとする意見もあり、座長の秋元氏は、一見して太陽光の優位性も解される中、「不確実性もあり色々な解釈の仕方がある」として、さらなる精査の必要性を示唆した。これまでのWGの議論で産業界からは「2030年では、2040年では」といった技術導入のタイムスパンに関する意見も多く出されている。今回の「発電コスト検証」について、資源エネルギー庁の畠山陽二郎次長は、「電源構成の重要な基礎材料だ。エネルギーミックスの検討に資するもの」と述べ、基本政策分科会で議論を深めていく考えを強調した。
16 Dec 2024
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日本財団は12月9日、「若者の望むエネルギーとは?」と題し、これまでに実施してきた18歳前後の若者を対象とした「18歳意識調査」の結果をベースに、エネルギー問題への関心喚起に向け、有識者とのインタビュー記事を公開した。「18歳意識調査」は、選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられたのを契機に、2018年以降、同財団が社会、政治、経済格差、環境保全、戦争など、幅広いテーマで、インターネットを通じ、これまで計66回にわたり実施。調査結果は同財団のウェブサイトで公開されている。現在、資源エネルギー庁では、次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論が佳境となっている。政府では、2040年を見据えた日本の未来像を標榜し、年内にも同計画の他、地球温暖化対策、社会保障なども含めた総合的な政策パッケージ「GX2040年ビジョン」の素案が示される運びだ。日本財団は今回、政府が現行エネルギー基本計画策定の翌年、2022年夏にGX基本方針「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革を促す」ことを打ち出したのを契機に実施した「18歳意識調査」の結果を振り返った。同財団が2022年にエネルギーをテーマとして実施した「18歳意識調査」では、日本のエネルギー政策に「非常に関心がある」、「やや関心がある」と回答した割合は合わせて54.4%と半数超。また、調査時期に先立つ2021年度冬季には、電力需給ひっ迫が懸念されたが、節電について「取り組んでいる」との回答割合は67.0%に上るなど、若者のエネルギーに係る意識の高まりがうかがえている。こうした調査結果を振り返り、今回、岩手大学理工学部教授の高木浩一氏が日本財団によるインタビューに応じ、「若者には既存のエネルギーが底をつくという危機感がある」と指摘。同氏は、電力会社やNPOとも協力し小中学校への出前授業に出向くなど、エネルギー問題に対する啓発に努めている。学校でのエネルギー教育の進展に対し、一定の評価を示した上で、将来の化石燃料枯渇に対する不安の高まりなどから、原子力発電の利用に関しては「若い世代では、エネルギー供給の手段の一つとして考える傾向が強く、特別視する抵抗感のようなものはそれほど強くない」と分析。実際、2022年の「18歳意識調査」では、現行のエネルギー基本計画が示す「総発電電力量に占める原子力発電の比率20~22%」について、「高めるべきである」との回答が17.6%、「賛成である」との回答が43.6%と、概ね理解が得られている結果が示されていた。さらに、高木氏は、過去の教科書主体の情報入手から、現在ではSNSを中心とする通信ネットワークが普及している状況を踏まえ、「学生がエネルギーについて考えるとき、情報が足りないというより、多すぎる状態だ」とも指摘。電源構成の多様化に関し、「すべてに万能なエネルギーはない」とも述べ、それぞれの長所・短所を理解した上、ディスカッションなども通じ生徒・学生らが「自分で考える」ことの重要性を強調している。「18歳意識調査」ではこれまで、恋愛・結婚、生理など、性意識をテーマとした調査を多く実施してきた。2022年のエネルギーに関する調査では、多くの設問で男女差が顕著に表れており、例えば、「日本のエネルギー自給率が低いことを知らなかった」とする回答は、男性で25.5%、女性で35.4%と、約10ポイントの認知度の差が示されている。
13 Dec 2024
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高レベル放射性廃棄物の処分問題について知識を深めるワークショップが、7日、福井市で開催された。若い世代に「自分事」として原子力問題に一層の興味を持ってもらうために、福井工業大学らが中心となって主催しているこのワークショップは、今回で14回目の開催。この日は福井県内から同大のほか、福井大学、福井県立大学、福井南高等学校から34名が参加した。また特別ゲストとしてお笑い芸人の「span!」さんの2人も参加し、グループの中に入って場を和ませながら、熱心に議論していた。はじめに講師として、日本原子力産業協会の武田精悦調査役および杉山一弥調査役がHLW処分問題について講演。なぜ地層処分方式が選ばれたのか、人間や環境への影響、先行する海外事例などを紹介すると、学生たちは真剣な様子で聞き入っていた。その後、学生たちは5つの班に分かれ、教育現場などでも用いられるデジタルゲーム、マインクラフトを通してHLWやエネルギー問題への理解・関心をさらに深める取組に挑戦。福井工業大学の学生が考案したもので、ゲーム内でエメラルドを集めていく過程で、次々とクイズが出現し、正解することでポイントを獲得していく。そのポイントの合計数を各班で競い合う仕組みだ。クイズの答えを導くためには、配布資料を読み返し、同じ班のメンバーとの意見交換が必要になるため、メンバー同士、活発な議論が生まれていた。また、アイデアバトルと呼ばれる問題が出ると、それぞれの問いを受けて話し合った結果を会場全体に発表するルールになっており、その間はゲームが一時中断される。各班、必ず1回以上、発表のタイミングがあり、さまざまな考え方や意見に触れながら、自分たちのアイデアに活かす訓練になっていた。例えば、「地層処分を生かしたまちづくりについて、話し合ってください」の問いには、「発電から放射性廃棄物の処分まで、福井県のみで実現できれば、それは一種のブランドイメージ向上になるのではないか?」といった意見が飛び出た。ただ、それに対して「経済性や公平性の観点から全国に分散することも大切で、各県に自分事としてこの問題を捉えてほしい」といった意見もあがった。また、「エネルギー自給率を向上させるために必要な政策や技術、再エネの活用方法を話し合ってください」の問いには、「各個人による省エネ家電の導入などの努力をしつつ、今ある発電施設の有効活用、新型革新炉やアンモニア発電など、さまざまな新しい技術の導入を模索していくべきだ」といった意見が出た。「あなたの住む街に処分場が来たらどうする?」といった問いには、原子力施設等への立地に伴う地域振興の例を用いて、反対する人々と積極的に意見を交換し合う、といった意見が出た。回答に応じて、獲得エメラルド数が異なるなど、ゲーム内にいくつかの仕掛けが施されており、「70分という制限時間があっという間に感じた」という声もあがっていた。他にも、「デジタルゲームを活用することで、全員に参加意識が生まれやすく、問題解決のために、複数の方法や視点を組み合わせた意見が出た」「文系や理系を問わずいろんな考えや背景を持った人と討論することで、自分の意見を相手に伝えることの難しさを感じることができた」といった声があがっていた。
13 Dec 2024
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日本経済団体連合会は12月9日、「FUTURE DESIGN 2040 『成長と分配の好循環』 ~公正・公平で持続可能な社会を目指して~」を発表した。2040年の日本の未来像を見据え「将来世代の立場も踏まえて日本の未来社会の姿を描く」ことを目指し作成された「FUTURE DESIGN 2040」は、 (1)全世代型社会保障 (2)環境・エネルギー (3)地域経済社会 (4)イノベーションを通じた新たな価値創造 (5)教育・研究/労働 (6)経済外交――の6つの施策が柱。石破内閣発足後、10月31日に行われた「GX実行会議」では、同じく2040年を見据えた「GX2040年ビジョン」、「エネルギー基本計画」、「地球温暖化対策計画」の3つの案を年内に取りまとめる方針があらためて示されており、これらの検討にも資するものとみられる。経団連の十倉雅和会長は、「FUTURE DESIGN 2040」の冒頭、今井敬・同名誉会長の言葉「経団連は国全体のことを考えて正論を主張しなければならない」に言及。2021年6月の就任後、任期最後の1年に際し、今回の提言作成に取り組んだ気概を述べた。まず、日本の2040年を展望し、「少子高齢化・人口減少」、「資源を持たない島国」の2つの制約条件を認識。さらに、柱に据えた6つの施策に関し、相互に絡み合う「入れ子構造」を成していると指摘した。その上で、産業界の立場から、政府のみならず「企業も含めたステークホルダー全体で進めることが必要」と述べ、「全体最適」の視点の重要性を強調。データを示しながら、各論の説明につなげている。環境・エネルギーの関連では、GXなどの施策の一体的進展、世界のカーボンニュートラル実現への貢献、国際的に遜色ない価格による安定的なエネルギーや資源の供給実現を、「目指すべき姿」として標榜。政府の役割として、「『S+3E』を大前提に、再生可能エネルギー・原子力といった脱炭素電源の最大限活用」を、特に原子力に関しては「国が前面に立った取組」を求めている。次期エネルギー基本計画の検討では、データセンターの進展に伴う電力需要の増加が議論されているところだが、日本の発電電力量について、近年の1兆~1.1兆kWhから、2050年度には1.35兆~1.5兆kWh、もしくはそれ以上となる可能性を示し、「電力の安定供給に向けた対応が不可欠」と指摘。カーボンニュートラル実現に向けては、脱炭素電源の確保にとどまらず、材料リサイクル、省エネの徹底、生産プロセスの変革など、産業界による多様な取組の必要性を訴えている。原子力については、「多様なエネルギー源のベストミックスの追求」の中で、 ・安全性・地元理解を大前提に既存原子力発電所の再稼働加速 ・核燃料サイクルの確立と最終処分場の確保 ・革新軽水炉の建設に向けた政府方針の早期具体化 ・高速炉・高温ガス炉の早期実用化 ・核融合開発目標の前倒し――を推進すべきとしている。先般閣議決定された総合経済対策にも関連し、全世代型社会保障については、「日本の総人口は今後も減少し続け、2100年には6,300万人に半減する」との試算(人口戦略会議・三村明夫議長)などを示した上で、企業・経済界の役割として、多様な人材の労働参加、働き方改革、仕事と家庭の両立支援に向けた環境整備やさらなる推進を述べている。
11 Dec 2024
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原子力規制委員会は12月9日、電力事業者・メーカーを招き革新軽水炉の規制に係る技術的意見交換会の初会合を開いた。〈資料は こちら〉同委では随時、電力関係の原子力部門責任者と技術面での意見交換を行うCNO会議を行っている。今春からは三菱重工業が開発を進めている革新軽水炉「SRZ-1200」を中心に、新型炉の導入に向けた規制対応が焦点となってきた。「SRZ-1200」は、「超安全」(Supreme Safety)、「地球に優しく」(Zero carbon & Sustainability)、「大規模な電気を安定供給」(Resilient light water Reactor)がコンセプト。現行規制基準の理念を踏まえ、「さらに新たな安全メカニズムを取り入れて、地震・津波の他、自然災害への対応、大型航空機衝突・受動的安全システム等の安全対策」を図ること目指し、基本設計が進んでいる。今回の意見交換では、第1ラウンドとして、このような安全対策を中心に、原子力エネルギー協議会(ATENA)の佐藤拓理事他、原子力発電所を有する各電力会社のグループリーダー・課長クラスが出席し説明。原子力規制庁の技術基盤グループらが、今後の規制対応に係る課題を指摘するなどした。佐藤理事は、PWRを有する電力事業者4社と三菱重工とで開発を進めている「SRZ-1200」について、「設計がかなり進んできたが、この先を進めるに当たっては、予見性が不明確な部分がある」と、事業者としての規制面での問題点を強調。さらに、現在検討が進められている次期エネルギー基本計画を見据え、「原子力を一定程度確保する必要があり、新しい原子炉を開発していかねばならない」とした上で、産業界として、今後の新型炉に係る規制対応を議論していく必要性を述べた。メーカー側からは、三菱重工原子力セグメントSRZ推進室長の西谷順一氏が、技術的観点から説明。シビアアクシデント対策やテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」との関連について、「合理的範囲での設計思想」を図る必要性を述べたほか、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、「これまで想定されていないような溶融炉心残存についても冷却水の注水を継続する」として、より厳しい事象に対しても安全対策の強化に努めていく姿勢を強調した。
10 Dec 2024
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は12月6日、記者会見を行い、最近の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会での発言内容、同協会が毎年取りまとめている「原子力発電に係る産業動向調査報告」の最新版について説明した。増井理事長はまず、既に理事長メッセージとして公表済みだが、11月20日に行われた原子力小委員会での発言をあらためて紹介。現在、資源エネルギー庁において検討中の次期エネルギー基本計画に関し、 1.現行のエネルギー基本計画にある「原子力の依存度の低減」の記載を削除 2.新規建設を前提とした原子力の必要容量と時間軸を明記 3.資金調達、投資回収などの事業環境整備の方針を明記――することを要望事項としてあげた上で、「民間事業者の意思決定に大きく影響する重要なものになる」との認識を示した。「原子力発電に係る産業動向調査報告」については、原産協会が定期的に発行している「看板出版物の一つ」として、継続的に実施してきた意義を強調。今回公表の2024年調査版は、国内で12基が稼働していた2023年度を対象に、原産協会会員企業318社にアンケートを行い、243社から有効回答を得て集計・分析したもの。調査結果の概況として、増井理事長は、電気事業者の支出高について、2兆510億円と、対前年度比12%増となったことをあげた。また、会員企業の人材採用・配置計画、原子力事業の位置付けについては、事業拡大もしくは現状維持との回答がそれぞれ84%、94%と、いずれも「昨年並み」との認識を示した。原子力産業界を取り巻く景況感に関しては、「良い」、「普通」、「悪い」の選択肢のうち、「良い」が9%(前年度は8%)、「普通」が48%(同44%)となり、2020年度(調査対象年次)以降、両者の回答が右肩上がりで推移。安全保障対策・気候変動対策への関心増から、「少しずつ良くなっている」との見方を示した。さらに、増井理事長は、11月11~24日にアゼルバイジャン・バクーで開催されたCOP29についても紹介。前回COP28を振り返り、「原子力の低炭素電源としての価値が公式文書に書き込まれた歴史的転換点になった」と強調。今回のCOP29では会期中、複数のサイドイベントが開催され、前回のCOPに続き現地にて出席・登壇した植竹明人常務理事は、今回の会見に同席し、記者からの質疑に応じ、「昨年の原子力推進のモメンタムが維持された」と評価するとともに、「若手の活動も非常に活発だった」と、所感を述べた。〈理事長メッセージは こちら、原子力関係活動報告は こちら〉
06 Dec 2024
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日本原子力産業協会は11月21日、柏崎市内のホールで、ユニバーサルエネルギー研究所社長の金田武司氏を招き、講演会「世界情勢から日本のエネルギー・経済問題を考える」を開催した。同協会が原子力施設の再稼働や運転開始を控えた地域に対する理解活動の一環として行ったもの。冒頭の挨拶で、原産協会の増井秀企理事長は、近年のエネルギーをめぐる価格上昇、需要増を懸念。生成AIの利用増やデータセンターの設置に伴い、日本についても「数年前は人口減少に伴い段々とエネルギー需要が減っていくと言われていたが、最近では増加していくとみられている」と指摘した。今回の講演会に際し、金田氏には「エネルギー資源に乏しい日本がたどってきた数奇な歴史を世界的な文脈で語ってもらう」よう期待。さらに、柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市での開催について、「エネルギーの一大生産地として、日本の産業および生活の発展の向上を支えてきた」と、あらためて感謝の意を述べた。金田氏は、「エネルギー問題を幅広い視点で見てみたい」と切り出し、まず、最近の世界のエネルギーをめぐる問題として、2021年2月に米国テキサス州を襲った大規模停電に言及。その中で、「一般家庭の電気料金が100倍に高騰した」要因として、記録的寒波により風力発電設備が凍結し予期せぬ大停電に至ったことから、自然ハザードに伴うエネルギー途絶や単一電源への依存の問題点を指摘した。日本の石油輸入に関しては、地政学的リスクを背景に「タンカーが狙われる」こと踏まえ、エネルギー資源を確保することの困難さを強調。同氏は、日本の風力発電に関し、「総設備容量は約500万kWだが稼働率は約2割。全部動かしても原子力発電所1基分程度にしか過ぎない」との規模感を述べた。また、近代を振り返り、ペリー来航にまつわる米国の石炭確保と捕鯨(油)の関係性、昭和に始まった日本の石油利用、オイルショックなど、エネルギーの歴史的背景を概観。あらためて「日本には自前のエネルギー源はない」として、日本が原子力発電開発を進めてきた意義を説いた。さらに、世界経済の仕組み、海外の産業事情、エネルギーと外貨相場との関連にも言及した上、「エネルギー問題は表面だけではなく、多面的に見なければいけない。」と指摘。常に「なぜでしょうか?」と問いかけながら話を進めるとともに、エネルギーに係る本質的な問題が知られていないことを懸念し、報道のあり方についても「事の重大さ、ヒストリーがわかっていないのでは」と、強く問題視した。会場には柏崎市民を中心に125名が参集。全国の原子力発電所立地地域の状況、電力消費地域を始めとする国民理解を求める声もあった。柏崎刈羽原子力発電所は現在、7号機の再稼働に向け、地元の理解が焦点となっている。なお、原産協会では、原子力立地地域への理解活動として、日本原子力発電との共催により、3月にも水戸市内で、主に親子連れを対象に「ざんねんないきもの事典」の著者である丸山貴史氏を招いたトークイベントを開催している。
05 Dec 2024
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石破茂首相は11月29日、前日28日に召集された臨時国会で所信表明演説を行った。石破首相の所信表明は、10月の首班指名後にも行われ、衆議院解散、総選挙を経て国会での演説は2回目となる。今国会の開会に際し、 (1)首脳会合を経た今後の外交・安全保障政策 (2)日本全体の活力を取り戻す (3)治安・防災の3つの重要政策課題への対応を標榜。10月の演説で、「守る」との文言で述べた諸政策があらためて整理された格好だ。外交の関連では、APEC(ペルー)、G20(ブラジル)への出席や各国首脳との会談に触れた。その中で、中国の習近平国家主席との会談に関しては、「日中間には様々な懸案、意見の相違がある」とした上で、日本産水産物の輸入解禁の早期実現など、通商関係で「かみ合った議論を行うことができた」と、成果を述べた。また、旧安倍内閣で地方創生担当相を務めた経験も踏まえ、「地方創生は日本の活力を取り戻す経済政策」と強調。宮崎県小林市の若手職員・学生アイデアによる「故郷動画」の制作、鹿児島県伊仙町の子育て支援の事例を紹介。エネルギー政策に関しても、「地方創生2.0」のビジョンの中で言及。GX推進については、「洋上風力、地熱や原子力などの脱炭素電源を目指して、工場やデータセンターの進出が進み、教育機関との連携などによって新たな地域の活力につながる動きが始まりつつある」との取組姿勢を示した上で、事業者による投資の予見性を高めるよう、温室効果ガスの排出削減を求めつつ、国として20兆円規模、官民で150兆円超の「GX投資」を実現すると述べた。なお、11月29日に経済産業省が取りまとめた2024年度補正予算案では、計5,000億円のGX関連予算が計上されている。現在検討中の次期エネルギー基本計画については、地球温暖化対策計画とともに、「2040年に向けたビジョンを年内に示す」ことをあらためて明言した。石破首相は、防災対策の充実・強化を目指し、これまでも防災・減災を一元的に所管する「防災庁」の設置を求めてきた。今回の演説でも、能登半島地震などの経験を踏まえ、災害に備えたキッチンカー、トレーラーハウス、トイレカーの供用、資機材の分散備蓄、災害ボランティアの整備に言及。東日本大震災の教訓から「災害関連死を防ぐ」として、2026年度中の「防災庁」設置に向け準備を進めるとした。石破首相の演説に対し、12月2日からは各党派による代表質問が行われている。
03 Dec 2024
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第一生命経済研究所は11月27日、現在検討中の第7次エネルギー基本計画に向け、提言を発表した。これまでのエネルギー基本計画の変遷を整理しているのがポイント。〈発表資料は こちら〉提言では、まず、「国際情勢の混迷によりエネルギー安全保障の重要性が増し、エネルギー価格の高騰や需給ひっ迫が懸念されている」と問題提起。さらに、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機を始め、昨今のデータセンター増加による電力需要増の見通しを踏まえ、化石資源に乏しく国際連系線のない日本の特性から、エネルギー政策における「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合)の重要性をあらためて強調している。現行の第6次エネルギー基本計画は、2021年に策定された。エネルギー政策基本法に基づき、3年ごとの見直しが求められていることから、現在、次期計画について、年内にも素案を示すよう、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で検討が進められている。今回の提言では2003年に策定された第1次エネルギー基本計画以降の変遷を整理。現行のエネルギー基本計画については、2021年に当時の菅義偉首相が提唱した「2050年カーボンニュートラル」、「2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)」宣言を踏まえた環境保全に係る記述に一定の評価を示す一方で、過去の計画をさかのぼり、「『S+3E』や原子力の活用スタンスは一貫していない」と指摘している。例えば、2010年策定の第3次計画については、「2030年に目指すべき姿が示されたほか、『原子力発電の推進』が計画に織り込まれていた」と考察。当時は「原子力立国計画」が標榜され、政府を挙げて、原子力の海外展開に対する機運も上昇していた時期だ。しかしながら、2011年の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故を経て、2014年に策定された第4次計画については、「原子力政策は推進から再構築という書きぶりに変化した」と述べている。こうした変遷から、提言では、原子力政策に係るエネルギー基本計画の記載に関し、「振り子のように揺れる政策変更が長期投資の予見可能性に大きな影響を与えている」との見解を示した。実際、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会では、立地自治体から「原子力政策の明確化」に関する要望が繰り返し述べられているほか、産業界から技術基盤維持や人材育成に対する影響を懸念する意見も多くあがっている。さらに、「原子力三倍化宣言」や、英国やフランスにおける新たな原子力新設計画から、「原子力利用を後押しする追い風が吹いている」と、海外の情勢を分析する一方で、日本については「世界第4位の原子力発電設備容量を有していながら半数以上が稼働していない」と、現状を懸念。資源エネルギー庁のまとめによると、既設の原子力発電所が60年間運転しても、2040年代以降に順次運転期限が到来し、設備容量が大幅に減少する見通しが示されている。次期エネルギー基本計画の検討は間もなく佳境を迎え、今後の電源構成に注目が集まりそうだ。同研究所の提言では、日本の電源構成の現状から、再生可能エネルギー変動調整のための火力発電の役割、「パリ協定」を踏まえたNDC(自国が決定する貢献)、脱炭素に係わるコストなど、エネルギーをめぐる不確定要因を列挙。さらに、「エネルギー基本計画に強制力はなく、10年後、20年後の市場の見通しを政府が示すこと自体に限界がある」との見方を述べた上、事業者が投資判断を可能とするよう、政府がリーダーシップを発揮し、原子力を二項対立の軸で考えるのではなく、柔軟性ある複数のシナリオを示していく必要性を示唆している。
29 Nov 2024
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資源エネルギー庁は11月22日、2023年度のエネルギー需給実績(速報)を発表した。〈発表資料は こちら〉再生可能エネルギーの増加、原子力発電の再稼働により、脱炭素電源比率は31.4%にまで上昇。エネルギー自給率は15.2%と、いずれも東日本大震災以降で最高となった。最終エネルギー消費は、前年度比3.0%減の11,476PJと、2年連続の減少。企業・事業者他部門が製造業の生産活動停滞により、家庭部門がテレワーク実施率の低下などにより、各々減少したことが要因とみられている。最終エネルギー消費は、1990年以降で算出方法に変更がなされているが、1980~90年代のバブル期に上昇し、2000年代初頭でピークに達した後、近年、減少傾向にあり、1970年代のオイルショック時の水準に近付きつつある。一次エネルギーの国内供給は、前年度比4.1%減。化石燃料が同7.0%減となる一方、非化石燃料は10.6%増で、水力を含む再生可能エネルギーは11年連続で増加した。そのうち、原子力は再稼働の動きに伴い、同51.2%増と躍進。最近10年では最も高い供給量となった。2023年度中は、関西電力高浜1、2号機がそれぞれ7、9月に再稼働している。発電電力量は、前年度比1.6%減の9,854億kWhとなり、2010年度以降で最小。非化石燃料のシェアは東日本大震災以降、初めて30%を越え31.4%となった。エネルギー起源のCO2排出量は、前年度比4.8%減、2013年度比25.9%減の9.2億トンとなり、1990年以降で最小を更新。企業・事業所部門では初めて5億トンを下回った。電力のCO2排出原単位は同4.1%減となる0.45kg-CO2/kWhだった。
27 Nov 2024
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原子力発電環境整備機構(NUMO)は11月22日、地層処分地の選定に向け、北海道の寿都町と神恵内村で実施してきた文献調査の報告書を、両町村および北海道に提出した。〈発表資料は こちら〉文献調査は、法律に基づく処分地選定プロセス(文献調査:2年程度、概要調査:4年程度、精密調査:14年程度、次の調査に進む場合は知事・当該市町村長の意見を聴く)のうちの第1段階。地域固有の文献・データをもとにした机上調査で、ボーリングなどの現地調査は行わない。NUMOでは、2020年10月に寿都町・神恵内村から文献調査受入れの応募を受け、同年11月に両町村における調査を開始した。2024年2月13日には、文献調査報告書(案)が示され、成案に向けて、総合資源エネルギー調査会下のワーキンググループで地質学専門家ら300名余による声明などを受け、技術的観点から評価が行われていた。このほど4年を経過しての取りまとめとなった。今回、NUMOが取りまとめた文献調査報告書では、調査の経緯、手法、結論として「概要調査に向けた考え方」を整理。続く概要調査段階では、寿都町・神恵内村ともに、活断層や火山などの広域的な現象が及ぶ範囲を、対象地層から除外することを明記している。11月22日に、北海道の鈴木直道知事を訪れ、文献調査報告書を手渡したNUMOの山口彰理事長はコメントを発表。「初の文献調査地点」として関心を集める中、調査を受入れた両町村への謝意を述べるとともに、今後、北海道各地での報告書縦覧、説明会の開催を通じ、文献調査で得られた知見について丁寧に説明していく考えを示した。今後、文献調査に関する説明会は、11月30日より、寿都町、神恵内村の他、道内、倶知安町、札幌市で順次行われる予定。なお、地層処分地の選定に向けては、原子力発電所を立地する佐賀県玄海町が文献調査に応募しており、6月に調査が開始している。NUMOでは今後も地層処分の理解促進に向け、12月19日の大阪市を皮切りに、年明け2月にかけて名古屋市、東京都、広島市と、大消費地を中心に対話型全国説明会を開催する予定を発表した。
26 Nov 2024
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は11月20日、年末を目途とする次期エネルギー基本計画の素案取りまとめに向け、これまでの議論を整理した。〈配布資料は こちら〉エネルギー基本計画の見直しについては、同調査会の基本政策分科会で5月より検討が本格化。これを受け、原子力小委員会は6月より議論を開始した。石破内閣発足後初となった10月31日の「GX実行会議」では、年内の素案提示を目指し、2040年を見据えた「GX2040ビジョン」に資するよう、新たなエネルギー基本計画および地球温暖化対策計画を取りまとめる方針があらためて示されている。今回の小委員会の冒頭、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏は、原子力をめぐる最近の動きとして、先般の東北電力女川原子力発電所2号機における発電再開に言及。特に東日本における電力安定供給を支える意義とともに、事業者他、関係者の尽力への敬意、原子力施設の立地地域によるエネルギー・原子力政策への理解・協力に謝意を述べた上で、今後、新規制基準をクリアしたプラントとして、中国電力島根原子力発電所2号機の再稼働にも期待を寄せた。原子力小委員会は、今夏からの論点整理の一項目として、「立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション」を提示。立地地域の立場から、杉本達治委員(福井県知事)は、これまでの会合で「国の原子力政策に対する方向性の明示」を一貫して求めてきた。今回の会合で、立地地域との共生に関して、小野透委員(日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行)は、「産業の発展に立地地域が果たしてきた役割を常に意識せねばならない」と、エネルギー多消費の産業界としても、あらためて電力生産地に対する理解・謝意の必要性を示唆。昨今、地層処分地の選定に向け動きがみられているが、「バックエンドプロセスの加速化」の論点に関連し、「原子力発電の恩恵を受けてきた現世代の責任」とも述べた。委員からは、現行のエネルギー基本計画に記載される「可能な限り原発依存度を低減する」ことに係わる発言も多く、「新増設は必須」、「事業環境整備は先送りできない喫緊の課題」など、既設炉の最大限活用に加え、次世代革新炉の開発・建設を視野に、具体策を求める意見があった。「サプライチェーン・人材の維持・強化」も大きな論点となった。専門委員として出席した日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、次期エネルギー基本計画の素案に向け、(1)「原子力への依存度低減」の記載を削除する、(2)新規建設を前提とした原子力の必要容量と時間軸の明記、(3)資金調達・投資回収などの事業環境整備の方針明記――を掲げた上、「民間事業者の意思決定の根拠となるような明確な指針」となるよう期待した。〈発言内容は こちら〉
22 Nov 2024
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原子力規制委員会の委員を2期10年間(2014年9月~2024年9月)務めた石渡明氏が11月18日、日本記者クラブで記者会見を行い、自然ハザードに対する同委の対応を振り返るとともに、元旦に発生した能登半島地震で得られた知見、今後の原子力規制行政に係る課題について意見を述べた。同氏は、委員在任時、地震・津波関連の審査を担当。最近、11月13日に新規制基準適合性に係る審査で「不合格」となった日本原子力発電敦賀発電所2号機の「審査書案」取りまとめや、2023年に「GX脱炭素電源法」検討の中、原子力発電所の60年超運転も視野に入れた規制制度の見直しに関して、委員の中でただ一人反論するなど、現行の原子力規制行政のあり方に対し頑なに厳しい態度を示してきた。石渡氏は、東日本大震災時、東北大学に在任。現地調査を踏まえ、「津波引き波」、「津波火災」など、津波被害対策の重要性を強調。当時の経験が、原子力規制委員会委員を引き受ける上で「大きな比重になった」という。福島第一原子力発電所は過酷事故に至ってしまったが、石渡氏は東北電力女川原子力発電所に関して、敷地高さ15mに対し、実際の津波高(13m)は「地震により1m地盤が沈降したため正にギリギリだった」と説明。活断層に関して、石渡氏は、これまでの審査から、「上載地層法」と「鉱物脈法」による判断を技術的見地から紹介。新規制基準を初めてクリアした九州電力川内原子力発電所1・2号機を例に、設置変更許可後、2016年4月に発生した熊本地震(M7.3)の経験などを踏まえ、自然ハザードへの対応に関し、「不確定さが大きい」と述べ、新たに得られた知見に対し現行の規制要求でも満足することを確認する「バックフィット」の重要性を強調した。石渡氏は、地質学、岩石学、地球化学が専門。委員在任時、会合の中で、「令和3年台風10号」が宮城県に上陸した観測史上初の台風であったことを指摘し、自然ハザードに対する議論を随所で喚起するなど、いわば「理科年表」的な存在でもあった。今回の会見の中で、同氏は、能登半島地震について、委員退任も近くなった8月の現地調査を振り返り、4mもの隆起があった地盤変動に関し、「関東大震災の隆起1mに比しても非常に大きな地殻変動。こんな状況を生きている間に目にするとは思わなかった」と強調。今後の原子力規制行政に向け、「日本は自然ハザードが起きやすい。絶えず改善していく必要がある」と述べた。
20 Nov 2024
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東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が11月15日、再稼働(発電再開)した。東日本大震災後、2013年の新規制基準が施行されてから、BWRの再稼働は初となる。今後、原子力規制委員会による総合負荷性能検査を経て、12月中にも営業運転復帰となる見通し。同機の発電再開は、2010年10月の定期検査入りから、およそ14年ぶり。2011年3月の東日本大震災時、起動作業中であったが、発災により自動停止した。女川2号機の新規制基準適合性に係る審査は2013年12月に申請。6年以上におよぶ審査期間を経て、2020年2月に原子炉設置変更許可に至り、同年11月には、宮城県知事他、立地自治体が再稼働への同意を表明。海抜29m高の防潮堤建設など、安全対策工事は、2024年5月に完了した。10月29日に原子炉起動となったが、11月3日に設備点検に伴い一旦停止。11月13日に再度、原子炉を起動し、11月15日18時に発電を再開した。東北電力では、今回の発電再開に際し、これまで自然ハザードに対処してきた経験を振り返りつつ、「発電所をゼロから立ち上げた先人たちの姿に学び、地域との絆を強め、福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わるという決意を込めて『再出発』と位置付ける」と、コメント。東日本大震災の教訓を踏まえ、原子力発電所のさらなる安全性の向上を目指し取り組んでいくとしている。これに関し、武藤容治経済産業相は、東日本の電力供給の脆弱性、電気料金の東西格差などの観点から、「大きな節目であり、重要な一歩」とした上で、エネルギー安定供給を所管する立場から、立地自治体の理解・協力に謝意を表し、引き続き安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めていくとの談話を発表した。また、電気事業連合会の林欣吾会長は、11月15日の定例記者会見で、「長期間、停止していた発電所が再稼働を果たすということは、業界としても、大変感慨深く感じている」と、女川2号機発電再開の意義を強調した上で、今後、立地地域の理解を得ながら、中国電力島根原子力発電所2号機など、電力業界を挙げて早期の再稼働に取り組んでいく姿勢を示した。〈電事連コメントは こちら〉日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、メッセージを発表し、「わが国の原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きな意義を持つもの」と強調している。〈理事長メッセージは こちら〉
19 Nov 2024
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東京電力は11月12日午後、福島第一原子力発電所2号機から試験的取り出しとして採取した燃料デブリを、日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所に輸送を完了した。翌13日には、車両への積載作業の模様を紹介した動画を公開。14日には、原子力規制委員会の事故分析検討会で、作業状況について説明を行った。〈東京電力発表資料は こちら〉福島第一原子力発電所廃止措置ロードマップで、燃料デブリ取り出しは2号機より着手することとされており、試験的取り出しのため、今夏、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、原子炉格納容器(PCV)にアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入し準備を開始。ガイドパイプの接続手違いによる作業中断も生じたが、10月30日に同装置は燃料デブリに到達し、11月7日には試験的取り出しを完了した。原子力機構に輸送された燃料デブリは今後、数か月から1年程度をかけて分析が行われ、本格的取り出しに向けて、工法、安全対策、保管方法の検討に資することとなる。燃料デブリを受入れた原子力機構では、分析に必要な設備・装置を有する照射燃料集合体試験施設(FMF)で、その性状を評価し、炉内状況推定の精度向上を図っていく。同機構廃炉環境国際共同センター(CLADS)技術主席の荻野英樹氏は12日夜、大洗原子力工学研究所で行われた記者会見の中で、「取り出された燃料デブリは0.7g程度」としながらも、今後の試料分析に際し「結晶構造がどのような温度変化をたどって、どのくらいの速さで事象が進捗し形成されたかが推測できる」と述べ、技術的立場から試験的取り出しの意義を強調した。分析が完了後、使用目的のない残りの燃料デブリについては東京電力に返却される。〈原子力機構発表資料は こちら〉今後、燃料デブリの分析・評価の中心となる大洗原子力工学研究所の構内・近隣には、走査型電子顕微鏡などの高度な分析機器を備えた日本核燃料開発、材料研究や学生の実習受入れでも実績のある東北大学金属研究所が立地している。段階的に燃料デブリの取り出しが進む中、分析・評価の成果は、将来的に廃炉人材の育成や事故耐性燃料(ATF)の開発にも活かされそうだ。
14 Nov 2024
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原子力規制委員会は11月13日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)に係る新規制基準適合性審査について、「適合するものであると認められない」とする審査結果を正式決定した。2013年に原子力発電所の新規制基準が施行されてから、試験研究炉や核燃料サイクル施設も含め、「不合格」が決定した初の事例となる。本審査については、8月28日の同委定例会合で「審査書案」が了承された後、1か月間のパブリックコメントに付せられていた。敦賀2号機における地震・津波関連の審査では、同機敷地内の「D-1破砕帯」(原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性および連続性が焦点となり、「K断層」について、「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない」、「2号機原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことを確認。今回の結論に至った。敦賀2号機の審査は、2015年11月に申請がなされており、9年越しでの結論となった。審査申請当時の委員5名中、4名が既に入れ替わっているが、今回の決定に際しては各委員の意見が一致。その中で、プラント審査担当の杉山智之委員は、「許可を与えるには、すべての基準に適合していることを一つ一つ説明する必要がある。一方で、許可しない決定には『適合しないケースを一つ示せば十分』だが、決してそのケースだけに特化した審査が行われてきたわけではない」と発言し、規制委の審査経緯や事業者の主張について、広く社会に説明していく必要性を示唆した。定例会終了後の記者会見で、山中伸介委員長は、初の事例となる今回の判断に関し、「論点を絞った審査となったが厳正に審査した」と、規制委員会としての姿勢を強調。加えて、審査の中で、申請書に係る疑義が生じたことに関し、「異常な状態だった」とも述べ、事業者に対し厳しく反省を促した。今回の審査結果を受け、日本原子力発電は「大変残念」とした上で、敦賀2号機の設置変更許可の再申請、稼働に向け、必要な追加調査の内容について、社外の専門家の意見を踏まえ具体化していく、とのコメントを発表した。
13 Nov 2024
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日本とポーランドにおける原子力分野での協力が進展している。経済産業省の竹内真二大臣政務官は11月3~9日、エネルギー関連企業など、計23社とともに、ルーマニアおよびポーランドを訪問。7日のポーランド訪問では、マジェナ・チャルネツカ産業相と会談し、原子力分野を中心に、両国間の協力可能性について議論した上で、覚書への署名がなされた。〈経産省発表は こちら〉会談には日本企業も同席。2040年までのポーランドのエネルギー政策に従い、同国におけるSMR(小型モジュール炉)を含む原子炉の開発・配備を通じて、「強固で強靭な原子力サプライチェーンを構築する」など、相互にとって有益な協力分野を開拓していく。ポーランドでは、石炭火力発電への依存度が高く、排出ガスに起因した酸性雨などの環境影響が深刻な問題だ。そのため、エネルギーセキュリティ確保と環境保全の両立に向けて、同国政府は、原子力発電の導入を目指し、2043年までに大型軽水炉を6基導入する計画。2022年11月には、大型炉の米国WE社製AP1000を3基建設することを正式決定。また、産業振興も視野にSMR導入を目指す動きもみられている。既に2024年5月、東芝エネルギーシステムズと地元企業との間で、蒸気タービンや発電機の供給協業で合意に至っており、民間企業レベルでの協力も進みつつある。今回の覚書のもと、日本とポーランドは、人材育成、理解促進、原子力安全確保の分野で、情報交換、セミナー・ワークショップ、企業間マッチングなどの活動を実施。国際的基準・勧告に沿った放射性廃棄物管理・廃炉など、バックエンド対策も含めて、原子力発電導入に向けた理解活動に取り組んでいく。なお、日本によるポーランドへの原子力・放射線分野の協力は、エネルギー分野のみにとどまらず、これまでも、IAEAによる支援のもと、電子線加速器を利用した排煙脱硫や、その副産物として肥料生産も行われるなど、環境保全・食料安全保障の分野での実績も注目される。
12 Nov 2024
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東京電力は11月7日、福島第一原子力発電所の2号機において、燃料デブリの試験的取り出しを完了した。〈東京電力発表資料は こちら〉廃止措置ロードマップで、いわば「本丸」となる燃料デブリ取り出しの初号機とされる2号機については、原子炉格納容器(PCV)の内部調査に向けて、英国との協力で開発したロボットアームの導入を予定している。今回、試験的取り出しのため、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、PCVにアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入。8月22日にガイドパイプが挿入されたが、接続の手違いにより一旦作業が中断した。9月10日に、パイプの復旧作業および現場確認が完了し作業を再開。同日、「テレスコ装置の先端治具が隔離弁を通過した」ことで、試験的取り出し作業が開始となった。その後、同装置先端部のカメラからの映像が遠隔操作室のモニターに適切に送られていないことが確認されたが、10月24日にはカメラ交換作業を完了し、28日に試験的取り出し作業を再開、30日に燃料デブリに到達することができた。試験的取り出しで採取した燃料デブリは、日本原子力研究開発機構大洗研究所などの構外分析施設に輸送し、詳細分析が行われる。同研究所に隣接する日本核燃料開発では既に電子顕微鏡などを用いた分析準備も進められており、分析結果は、今後の本格的取り出しに向けた作業計画の立案や、従事者への教育・訓練にも資することとなる。今回の燃料デブリの試験的取り出し完了を受け、武藤容治経済産業相は11月8日、閣議後の記者会見の中で、「より本格的な廃炉作業を迎える中で重要な一歩となる」と、その意義を強調。加えて、今後の分析を通じ廃炉進捗に資する情報・知見の取得を期待するとともに、東京電力に対しては、引き続き安全確保に万全を期し作業を進めていくよう求めた。
08 Nov 2024
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原子力規制委員会は11月6日、リサイクル燃料貯蔵(RFS)が青森県むつ市に立地する「リサイクル燃料備蓄センター」(むつ中間貯蔵施設)について、使用前確認証を交付。同施設は、事業開始となった。むつ中間貯蔵施設は、原子力発電に伴い発生する使用済み燃料(東京電力、日本原子力発電)を、再処理するまで、最長50年間(順次設置する施設ごと、キャスクごと)、安全に貯蔵・管理するもの。使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムをMOX燃料として加工した上で、有効利用する核燃料サイクルの推進は、わが国のエネルギー政策の基本的な方針だ。1990年代後半、使用済み燃料貯蔵対策について、長期的な貯蔵量の増大を見通し、官邸レベルでも議論されるようになり、サイト外貯蔵に関しては、「2010年までに確実に操業開始できるよう、国および電力事業者は直ちに所要の制度整備、立地点の確保等に取り組むことが必要」との報告書がまとめられた。2000年には、むつ市より東京電力に対して立地に係る技術調査の依頼があり構想が具体化。2003年には、過日逝去した同社・勝俣恒久社長(当時)に対し、立地要請がなされた。その後、施設の建設工事が進捗するも、2011年の東日本大震災発生により停滞。原子力規制委員会が発足し、新規制基準施行を踏まえ、RFSより同委に対し2014年1月に事業変更の許可申請がなされ、審査を経て2020年11月に許可となった。RFS 他事業者は2024年8月、青森県およびむつ市との間で、むつ中間貯蔵施設に係る安全協定を締結。9月26日には、東京電力柏崎刈羽原子力発電所より、使用済み燃料を入れたキャスク1基の搬入がなされた。今回の事業開始後、2025、26年度にそれぞれ2基、5基のキャスク搬入が予定されている。RFSでは、「安全最優先で事業に取り組むとともに、事業の透明性を高め、地域に根差した事業運営に努めていく」とコメント。また、東京電力も2000年からの調査に対し、立地地域による理解・協力への謝意を表した上で、「サイクル全体の運営に柔軟性を持たせ、中長期的なエネルギー安全保障に寄与する」と、施設の意義を強調し、引き続きRFSを支援していくとしている。
07 Nov 2024
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