経済産業省の「使用済燃料対策推進協議会」が4月17日、1年3か月ぶりに開かれた。同協議会は、核燃料サイクル事業の推進について、事業者と話し合う場として、2015年以来、行われている。今回は、武藤容治経済産業相他、資源エネルギー庁幹部、電力11社および日本原燃の各社社長が出席。〈配布資料は こちら〉今回の同協議会開催は、2月の「第7次エネルギー基本計画」閣議決定後、初めてとなる。新たなエネルギー基本計画では、 (1)使用済み燃料対策の一層の強化 (2)再処理等の推進 (3)プルトニウムの適切な管理と利用 (4)高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化 (5)立地自治体等との信頼関係の構築――に基づき、バックエンドプロセスの加速化を図ることとされている。前回の協議会開催以降、核燃料サイクルをめぐる動きとしては、六ヶ所再処理工場およびMOX燃料工場のしゅん工目標について、日本原燃は2024年8月29日、審査に時間を要していることから、それぞれ「2026年度中」、「2027年度中」と、見直すことを発表。また、リサイクル燃料備蓄センター(むつ市)では、2024年9月26日に柏崎刈羽原子力発電所から使用済み燃料を入れたキャスク1基の搬入を完了し、同年11月6日に事業を開始している。また、最終処分については、北海道の寿都町と神恵内村に続き、佐賀県玄海町で2024年6月10日より文献調査が開始されている。武藤経産相は、事業者より、使用済み燃料対策の進捗について報告を受け、六ヶ所再処理工場のしゅん工目標達成に向けた支援、使用済み燃料対策強化に向けた連携強化とともに、高レベル放射性廃棄物最終処分の取組強化、国・原子力発電環境整備機構の協力について要請。具体的には、 (1)六ヶ所再処理工場のしゅん工目標達成に向けた日本原燃への支援 (2)使用済み燃料対策 (3)事業者間の連携を通じたプルトニウム利用のさらなる促進 (4)最終処分およびガラス固化体の搬出期限遵守 (5)地域振興――の5項目をあげた上、六ヶ所再処理工場のしゅん工に向けては、人材確保、サプライチェーンや技術維持の必要性を指摘。使用済み燃料対策としては、再稼働が進む関西電力による「使用済み燃料対策ロードマップ」の確実な実行や地元への丁寧な説明などをあげている。
18 Apr 2025
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原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2024年度の国内原子力発電所の平均設備利用率は32.3%、総発電電力量は934億8,290万kWhで、それぞれ対前年度比3.4ポイント増、同11.2%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2024年度中は、東北電力女川2号機(2024年11月15日発電再開、同年12月26日営業運転再開)がBWRとして初めて新規制基準をクリアし再稼働したのに続き、中国電力島根2号機(2024年12月23日発電再開、2025年1月10日営業運転再開)も再稼働。これら2基のBWRを合わせ、再稼働した原子力発電所は、東北電力女川2号機、関西電力美浜3号機、同高浜1~4号機、同大飯3、4号機、中国電力島根2号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3、4号機、同川内1、2号機の計14基・1,325.3万kWとなった。再稼働していないものも含めた国内の原子力発電プラントは、いずれも前年度と同じく計33基・3,308万kWとなっている。因みに再稼働した14基のみでの設備利用率は80.5%となる(女川2号機と島根2号機は年度当初を期首として算出)。国内の長期運転プラントは、関西電力美浜3号機、同高浜1、2号機に加え、新規制基準をクリアし再稼働の先陣を切った九州電力川内1号機が2024年7月4日に、関西電力高浜3号機が2025年1月17日に40年超運転入りとなった。2024年度は、11月14日に高浜1号機が国内初の50年超運転入りしたことも特筆される。2025年度中には、同2号機もこれに続き運転開始から50年に入る見込みだ。原子力発電所の高経年化対策に関しては、2023年5月31日に成立した「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)に基づき、2025年6月6日に高経年化した原子炉に対する新たな規制が施行される。同法により、30年超運転のプラントについて、10年以内ごとに「長期施設管理計画」の認可を受けることが義務付けられた。現在再稼働している計14基のうち、12基が施行日時点で、同計画を認可されている必要があり、事業者からの申請を受けて、現在、原子力規制委員会で審査が進められている状況だ。*2024年度の各プラントの稼働状況は こちら をご覧ください。
17 Apr 2025
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大会2日目のセッション4「新規建設に向けて:学生と描く原子力産業の未来」では、前半に、原子力発電所の新規建設に関わる企業4社から開発状況と展望に関する講演があり、後半では4名の学生が加わってのパネルディスカッションが行われた。企業からの登壇者は、遠藤慶太氏(日立GEニュークリア・エナジー)、佐藤隆司氏(東芝エネルギーシステムズ)、平松晃佑氏(三菱重工業)、ユセフ・ファルガニ氏(フラマトム社)の4名。学生パネリストとして、岡田ひなた氏(福井工業高等専門学校)、黒木裕介氏(名古屋大学大学院)、加藤巧人氏(東京都市大学)、川谷千晶氏(芝浦工業大学)が登壇し、原子力産業に対するイメージとそれぞれが見出している未来像について語った。山路哲史氏(早稲田大学教授)がモデレーターを務め、日本で原子炉の新設を迎えるにあたり、未来を見据えた議論を促した。冒頭、モデレーターを務めた早稲田大学教授の山路哲史氏は、原子力発電が直面する課題を概説し、福島第一原発事故後の状況を踏まえ、既存炉の廃炉、新型炉の開発など幅広い取り組みの必要性を指摘。「原子力技術は相互に関連し合い、安全性の向上に役立つ研究が多く存在する」として、次世代炉開発の重要性を強調した。続いて各企業からの講演があり、各社が取り組む次世代原子炉について紹介された。日立GEニュークリア・エナジーの遠藤慶太氏は、同社が開発する革新軽水炉「HI-ABWR」、小型軽水炉「BWRX-300」、軽水冷却高速炉「RBWR」、小型液体金属冷却高速炉「PRISM」の開発状況を説明。デジタル技術やロボット技術が原子力分野にも積極的に活用されていることを強調し、学生に対して「皆さんが描きたい将来は何か、その将来をどう切り拓きたいか」と問いかけると同時に、多様な学問領域が集まり、国内外のエンジニアとの共創を通じて新しい分野、未知の分野に挑めると述べた。東芝エネルギーシステムズの佐藤隆司氏は、同社が開発を進める革新軽水炉「iBR」の技術的特徴や、安全性を向上させるための受動的安全システム、機械学習を活用したAI技術やロボットによる点検技術の応用例のほか、重粒子線治療装置なども紹介。「原子力業界は多彩な専門性を持つ人々が活躍できる領域が広がっている」と述べ、職種や年齢を超えた幅広い人材の参画を求めた。三菱重工業の平松晃佑氏は、同社が開発を進める革新軽水炉「SRZ-1200」について、設計の概要や特徴的な安全対策を詳説。自然災害への対応やテロ対策、再生可能エネルギーとの共存を目指す点に触れつつ、自身が取り組む炉心監視装置の開発に関しても紹介。国内プラントで初導入となる技術であることや、海外ベンダーとの技術交流の必要性についても語り、技術的挑戦の面白さと社会的な意義を融合させることの重要性を訴えた。フラマトム社のユセフ・ファルガニ氏は、低炭素エネルギーとしての原子力発電の重要性を指摘。特に欧州でのEPR(欧州加圧水型炉)建設プロジェクトに関わった実務経験を通じ、原子力発電所の新規建設は、単に電力確保だけでなく、今後50年にわたって低炭素エネルギーを維持するための取り組みであり、若い世代にとって大きなインパクトを生み出せる場になると強調した。後半のパネルディスカッションでは、原子力産業の未来と新技術の開発、グローバルな視点での若手が参画することの魅力などについて意見が交わされた。岡田氏は、福井工業高等専門学校 専攻科 環境システム工学専攻2年生で、専門は材料科学。光硬化性樹脂を用いた接着剤を研究する。地元の敦賀市には原子力関連施設があり、身近に感じていたことから原子力に対するマイナスのイメージはなかった。軽水炉の動向を知り、原子力発電所の新設が、近い将来まで迫っていることを実感する。原子力業界は、様々な分野の人との関わりがあり、新しい知識を吸収できる環境だと岡田氏の目には映る。新設は全国的なニュースになるだけではなく、議論を呼ぶことで学生の進路選択にも大きな影響を与える可能性があるという考えを述べた。黒木氏は、名古屋大学 大学院 工学研究科 総合エネルギー工学専攻 修士1年生。研究するのは、次世代革新炉の中でも炉心溶融を起こさず高温の熱源としても利用できる高温ガス炉。2023年2月に閣議決定されたGX実現に向けた基本方針において、実証炉の運転が2030年代後半に目標とされている。黒木氏は、研究を通して日本だけではなく世界のエネルギー情勢をより良くしたいと考える。原子力産業には幅広いキャリアパスや挑戦できる機会が多くあり、研究開発から、デジタル技術の活用や国際的なプロジェクトに参加するなど活躍できる分野が多いと期待を寄せた。加藤氏は、東京都市大学 理工学部 機械システム工学科4年生で、専門をロボット研究とし、幅広い分野に興味を持つ。大学進学後は産業技術総合研究所の半導体製造技術や名古屋大学で開発されるマイクロ流体チップなど様々な研究現場を訪問し学んだ。現在取り組むロボット研究については、「分野横断的な面白さ」と「単純にロボットが好き」という動機を挙げている。自身の研究と原子力分野との共通点を「技術の幅広い応用可能性」だと述べた。川谷氏は、芝浦工業大学 理工学研究科 社会基盤学専攻 修士1年生で、コンクリート材料を研究する。コンクリート製造時に大量の二酸化炭素が排出されるという課題に対し、副産物を使用したセメントの開発など、カーボンニュートラルの実現に向けた研究に取り組む。高校生の時に道路やトンネルなどの構造物に興味を持ち、土木工学を専攻。社会基盤を支える重要な材料であるコンクリートを学ぶことが、土木工学を広く学ぶことに繋がると考える。原子力についても関心があり、大規模なプロジェクトに携わり、社会基盤を支える仕事にやりがいを感じる、と述べた。山路氏からは、企業登壇者に対し、前半での講演を深堀する形で新規建設が新技術のショーケースになるか、そして、イチ推しの技術について尋ねたほか、学生時代に原子力産業を進路に選んだ背景についても話題を広げた。原子力産業は、新たな研究開発に様々な技術が活かされ、技術者や科学者、スタッフなど多くの人がそれぞれの立場で関わる。山路氏は、これだけダイバーシティに富む分野はそうたくさんないのではないかと述べつつ、環境やエネルギーの革新を通じて人々の暮らしを良くしたいという共通の認識が共有される分野でもあるという見解を示し、学生を含め若手世代の積極的な参加を促し、議論を締め括った。
16 Apr 2025
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東芝エネルギーシステムズ(東芝 ESS)は4月15日、アラブ首長国連邦(UAE)のクリーブランドクリニックアブダビから、重粒子線治療装置を受注したと発表した。中東地域では初の重粒子線治療装置の導入になる。今回同社が受注した装置は、回転ガントリー式の治療室と固定ポート式の治療室を1室ずつ備えている。先進的な高速スキャニング照射技術と超伝導電磁石を採用した小型の回転ガントリーが特徴。また、治療に用いるイオン源は炭素だが、マルチイオン源などの拡張性を考慮した仕様となっており、患者のがん病巣の位置、大きさ、形状に合わせたきめ細かい治療が可能になる。クリーブランドクリニックアブダビは、アブダビ政府の投資会社であるムバダラ・ディベロプメント・カンパニーと米国のクリーブランドクリニックが共同で設立した病院で、2023年に中東最大のヘルスケア企業であるM42グループの傘下に入った。UAE政府は医療水準の高度化を推進しており、がん治療においては、患者の負担が少ない重粒子線治療が注目されている。東芝ESSは、量子科学技術研究開発機構(QST)とともに重粒子線治療装置を開発し、2016年にはQST放射線医学研究所(千葉市)の新治療棟に、世界で初めて超伝導電磁石を採用することで小型化・軽量化に成功した重粒子線回転ガントリーを納入した。その後、山形大学向けにさらに小型化を進めた山形モデルの回転ガントリーが完成し、韓国の延世大学校医療院でも治療が開始されている。つい先日も、韓国のアサンメディカルセンターから重粒子線治療装置を受注したばかり。東芝ESSは今後、重粒子線治療装置の普及を目指して、国内外での積極的な受注活動を展開し、質の高いがん治療の実現に貢献していくとしている。
15 Apr 2025
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「第58回原産年次大会」では2日目の4月9日、セッション3(福島セッション)「福島第一廃炉進捗と地元復興への取り組み」が行われた。同セッションではまず、東京電力ホールディングス福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏が講演。福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水・処理水対策の現状と課題について説明した。本セッションテーマの関連で言えば、廃炉は「地域の皆様や環境への放射性物質によるリスクを低減するための作業」だ。主な取組状況は、 (1)使用済み燃料プール内の燃料取り出し (2)燃料デブリの取り出し (3)汚染水対策 (4)ALPS処理水の処分 (5)廃棄物の処理・処分および原子炉施設の解体等――に大別される。その中で、小野氏は、最近の動きとして、2024年11月の2号機におけるテレスコ式装置(釣り竿を引き伸ばすイメージ)を用いた燃料デブリの試験的取り出し完了に触れ、「わずか0.7gではあるが大きな一歩だった」と振り返った上で、今後のロボットアームによる本格的取り出しに向けて、さらなる分析・技術開発を図っていく姿勢を示した。また、ALPS処理水の海洋放出については、2024年度末までに累計11回の放出が「計画通り安全にできている」と説明。引き続き、2025年度は計7回で放出量約54,600㎥が計画されている。小野氏は、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況につき、毎年、原産年次大会で報告の場が設けられていることに対し謝意を述べるとともに、引き続き「着実に進めていく」と明言した。これに続くパネルディスカッションは、開沼博氏(東京大学大学院情報学環学際情報府准教授)がモデレーターを務め、廣野宗康氏(信和工業社長)、辺見珠美氏(富岡町議会議員)、エミリー・ブケ氏(あまの川農園園主)が登壇。廣野氏は、1979年に富岡町に創業し原子力発電所の電気設備のメンテナンスに携わってきた信和工業の経緯を紹介した。その中で、2007年の中越沖地震に伴う柏崎刈羽原子力発電所被災を振り返り、「日々行ってきた電気・計装設備のメンテナンスによって、機器が正常に機能。日本の原子力発電所は世界一安全」との信念を強調。2011年3月の東日本大震災発生時、同氏は富岡町の自社事務所で大地震に遭遇。福島第一1、3号機の水素爆発のニュースから「今までにない恐怖を覚えた」と回想した。一方で、「新たな挑戦」と意欲を燃やし、放射線測定器など、既製品の販売にとどまらず、「長い現場経験を活かし、廃炉に必要な新開発の提案を行っていきたい。事故を教訓として以前より進化した原子力を利用できる姿にたどり着けるはず」と強調。2024年3月から富岡町議会議員を務める辺見氏は東京都大田区の生まれ。武蔵工業大学(現在の東京都市大学)で原子力・放射線関連を学んでいた時期に東日本大震災が発災したのを契機に、復興への想いから2012年より川内村、いわき市、富岡町と、福島県の浜通り地域に13年間暮らしてきた。同氏は、原子力災害に伴う避難指示が未だ解除されていない地域があるという課題をあらためて強調。昨今、避難指示解除に伴い、地元小中学校の入学式が復活する一方で、震災による行方不明者の捜索が続く状況を憂慮。さらに、2045年3月までに福島県外への搬出が求められる除染に伴う除去土壌の最終処分に関して問題提起した。フランス生まれのブケ氏は、大熊町で「自然のまま」の農業を営んでいる。首都圏に住んでいた同氏は、フランス語の教師をする中で、福島市出身の学生に出会ったのが福島に関心を持つきっかけとなった。2021年より会津地方に移住し、農業に取り組み始めたという。ディスカションでは、今後のインフラ整備など、現在の浜通りの復興状況について、課題や展望が示され、「教育移住」に関する指摘もあった。パネリストからは、「浜通りに存在し続け、仕事を続けることが使命との気持ち」、「互いを知り立場の違いを尊重し、手を取り合うことが大事」、「足を運んで現地の人たちと触れ合ってもらいたい」などと意見が寄せられ、原子力業界に対する有意義なメッセージともなった。
15 Apr 2025
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原産年次大会へ参加するために来日した海外の若手原子力専門家らが4月11日、大阪府内の大学研究施設を訪問し、日本における原子力教育・研究の現場を体感した。見学先は、近畿大学原子力研究所と大阪大学核物理研究センター(RCNP)の2サイトで、いずれも放射線やラジオアイソトープに関する先端的な教育・研究活動を展開している。午前中に訪れた近畿大学では原子力研究所教授の山田崇裕氏より、同大学が保有する出力1ワットの教育用研究炉「UTR-KINKI」について解説を受けた。UTR-KINKIは同大学が米国から購入した軽水減速、黒鉛反射、非均質型熱中性子炉で、1961年に初臨界を達成。国内大学として初の研究炉である。山田氏はUTR-KINKIの設計概要、運用の歴史、教育現場での活用事例について詳しく説明。参加者たちは制御室や原子炉建屋内部を見学しながら、学生実習や研究における具体的な利用実態を学んだ。見学中には、制御盤での手動停止操作・スクラム表示や、炉内の照射装置・検出器の構造、放射線計測器の取り扱いなどについても質疑が交わされた。現在UTR-KINKIは、3年に及んだ新規制基準への対応を終え、再稼働を果たしており、学生向けの運転訓練や放射線測定実習などに活用されている。「安全性の高い低出力炉だからこそ、教育現場での実践的な運用が可能になっている」と語る山田氏の言葉に、参加者からは「自国の研究炉と比べてもユニークな設計」「学生がリアルな装置に触れられる点は非常に重要」といった感想が寄せられた。またUTR-KINKIは、日本国内に8基残る数少ない研究炉のうちの1基であり、大学レベルでの実習機会を提供できる貴重な施設でもある。年間を通じて他大学の学生や教員の受け入れも行っており、高校教員向けの放射線教育セミナーなども定期的に開催されている。こうした活動は、次世代の原子力人材育成や科学リテラシー向上にも多大に貢献している。一行は午後、大阪大学核物理研究センター(RCNP)を訪問。同センター講師の神田浩樹氏の案内により、加速器を中心とする核物理実験設備の概要や、施設が担う研究・医療応用についての説明が行われた。RCNPは、1971年の設立以来、陽子やヘリウムイオンなどの荷電粒子を加速・照射し、原子核構造や基本相互作用の研究を行ってきた国内有数の核物理研究拠点である。同センターには、50年以上にわたり稼働しているAVFサイクロトロンと、1991年に建設されたリングサイクロトロンの2基の加速器があり、実験ホールでは核共鳴現象や荷電粒子の散乱実験、半導体照射試験などが行われている。施設やビームの利用は、純粋な核物理の探求のみならず、宇宙線による半導体障害の評価や研究用短寿命放射性同位体の製造など、多様な応用分野に展開されている。とりわけ注目を集めたのは、来年度の稼働を予定している新たな加速器施設である。この新施設は、α線を放出する放射性核種「アスタチン211」の製造を念頭に設計されており、がんの標的α線治療(TAT: Targeted Alpha Therapy)分野の活性化が期待されている。アスタチン211は半減期が7時間と短く、遠方からの輸送には限界があることから、国内での安定的な製造体制の確立が求められている。RCNPの新施設では、ビーム電流を従来の10倍に高め、短時間で高収率な製造を可能にする設計が採用されており、将来的には臨床試験用の供給体制の中核を担うことが見込まれている。加速器の照射ターゲットや搬送ライン、冷却・遮蔽設備などについても、施設内部で実際に見学しながら詳しい解説がなされた。高出力ビームによる熱負荷を分散するためのビームスポット拡散機構や、照射前後の標的を照射室と標的準備室の間で迅速に移動するための搬送システムについても説明があり、現場密着型の設計に、海外参加者からは「極めて現実的かつ洗練された構想」と称賛の声が上がった。大阪大学ではそのほか、同大学が福島県浜通り地域で展開している教育・復興支援プログラム「浜通り環境放射線研修」について、同大放射線科学基盤機構から能町正治教授と藤原智子助教が説明。同研修は、放射線リスクに対する科学的理解と社会的文脈の両面からのアプローチを重視し、参加者が放射線測定の実習、被災地でのフィールドワーク、地域住民との意見交換などを通じて「放射線を適切に怖がる」感覚を養うことを目的としている。参加者は、放射線教育が実験や数値だけでなく、現実の暮らしや価値観と結びつけられている点に共感を示し、「サイエンスとしての原子力と社会をつなぐ教育モデルであり、非常に示唆に富んでいる」と賛辞を送った。なお同研修は2022年度より、国際原子力機関(IAEA)との協力のもと海外からの参加者も加えて英語で実施されており、今年は7月に「Hamadohri Environmental Radiation Measurements International School 2025」と題して、世界各国から参加者を受け入れる予定である 。今回の施設見学は、原子力業界に身を置く海外の若手専門家が、日本の大学における研究炉や加速器の運用、そこから生まれる応用研究、教育・人材育成への展開、そして社会との接点という一連のサイクルを具体的に目にする貴重な機会となった。参加者からは「自身が原子力の未来を担う次世代の、国際的人材ネットワークの一助となれれば」との声も多く聞かれた。また、ある参加者は「それぞれの大学が限られたリソースの中で、教育・研究・社会貢献を三位一体で進めている姿に感銘を受けた」と話していた。
14 Apr 2025
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大会2日目に開催されたFireside Chatでは、「学生へのメッセージ」をテーマに、国際的に活躍する若手エンジニアが原子力業界で培った経験やその魅力を語り合った。登壇したのは、北米原子力若手連絡会(NAYGN)アンバサダーのオサマ・ベイク氏と、東京科学大学准教授の中瀬正彦氏。オサマ氏はカナダ唯一の原子力工学専攻(オンタリオ工科大学)を卒業後、CANDU炉改修プロジェクトや廃止措置計画、ビジネス開発、戦略立案など、幅広い分野で実務経験を積んだ。さらにIAEA(国際原子力機関)での業務にも携わり、グローバルな視野とコミュニケーション能力を養ったという。また、自身が運営するYouTubeチャンネルを通じて、原子力施設を訪問した映像コンテンツを発信し、業界内外の教育・啓発活動に大きく貢献している。一方、中瀬准教授は学生時代からエネルギーやロボティクスに関心を持ち、化学工学や核燃料サイクル、さらには福島第一原子力発電所事故後の廃棄物処分など、多岐にわたる研究を経験。海外留学や国際的な研究活動を通じて、分野横断的な視点を身につけた。自身の経験から、「原子力は分野横断的で、多面的な研究や実務を経験できる魅力的な領域」と強調した。また両氏は、原子力業界の魅力と可能性について次のように述べた。オサマ氏は、原子力業界が多様な専門分野を融合した領域であり、技術的・科学的知識に加えてビジネス視点や戦略的な思考、コミュニケーション能力が求められることを指摘。若い世代が新たなテクノロジーやイノベーティブなビジネスモデルを持ち込み、業界全体を活性化させる可能性があることを強調した。中瀬准教授も、原子力分野の分野横断的な性質を挙げ、多様な専門分野が交差することで、新しい研究やプロジェクトが生まれる可能性が大きいことを紹介。特に、内向きになりがちな日本の原子力業界にあって、国際的な視野を持つことが新しいアイデアやイノベーションをもたらすカギになると述べ、若い世代がこの魅力を感じ取り、積極的に参画してほしいと呼びかけた。両氏は学生たちに、情報発信の重要性についても強調。オサマ氏は、これまで原子力業界が伝統的に保守的だったことから、原子力に関するわかりやすく親しみやすい情報が不足していたと指摘。自身の動画制作活動が業界内の教育や研修教材として幅広く活用されるようになったことで、一般社会への原子力理解が促進されている事例を紹介した。中瀬准教授は、研究者や専門家が自らの研究成果を社会に分かりやすく伝えることで、原子力に関する社会的理解を深めることができると語った。さらに、このような活動は研究者自身のモチベーションを向上させ、社会との繋がりを強化する効果もあると強調し、積極的なコミュニケーションの重要性を訴えた。最後に学生への具体的なアドバイスとして、オサマ氏は「この年次大会の場のように、学生時代に積極的に業界のプロフェッショナルたちと交流し、好奇心を持ち続け、自分の限界を超えて挑戦し続けてほしい」とエールを送った。中瀬准教授は、「なぜその研究や仕事を行うのか、その意義を常に意識するとともに、日本に閉じこもらず、国際的な視野をもって多様な経験を積んでほしい」と語りかけた。
09 Apr 2025
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第58回原産年次大会・セッション2「新規建設に向けて:海外事例に学ぶサプライチェーンの課題」では、既設炉の運転再開の遅れや長期に亘る新設の中断により、厳しい状況にある国内サプライチェーンの課題と対応について、海外の良好事例や教訓から、新設プロジェクトを円滑に進めるための方策を探った。モデレーターの伊原一郎氏(電気事業連合会)は冒頭で、日本のサプライチェーン確保と強化に向けた取組みを紹介。第7次エネルギー基本計画で原子力の最大限活用と次世代革新炉へのリプレースの必要性が示されたが、新規建設が長らく途絶え、震災後は定期点検やOJT機会の減少により、電気事業者、メーカー、サプライヤーは、プラントを実際に触りながら学ぶ機会を喪失。有能な技能者が45%減となるなど、技術力の継承・維持の面で影響が顕在化し、取替え部品の供給途絶や、サプライチェーンの劣化に直面していると指摘。一方で、建設には一定のリードタイムが必要であることを考慮すると、今すぐに新設に着手する必要があるため、海外の経験や良好事例を学び、日本の原子力産業界が活力を維持できるような、政策を考えていきたいと語った。続いて、米原子力エネルギー協会(NEI)のジョン・コーテック氏は、米国での原子力への関心の高まりの背景に、原子力が脱炭素電源であることに加え、電化だけでなく、AI関連の需要増により、2029年までの5年間の電力需要成長予測がこの2年で5倍増になったと紹介。この急激な需要増に原子力は対応可能であり、新設には連邦や州政府レベルでの税額控除や融資保証などの各種支援も原子力への追い風になっていると説明した。また、A.W.ボーグル原子力発電所(3、4号機、各AP1000)建設でのオーバーラン(工期遅れ、予算超過)の経験を踏まえ、設備・機器によっては、海外での調達も選択肢にあると述べた。フランス原子力産業協会(GIFEN)のアガット・マルティノティ氏は、同協会CEOのオリビエ・バード氏のビデオ・メッセージによるフランスの原子力開発の最新状況の報告に続けて、人材の訓練、採用、産業支援の取組みとして、フランスの原子力プログラムの復活に関連するニーズを定量化し、原子力プログラムのギャップ分析を行うため、約100社と協力してMATCHプログラムを開発したと紹介。今後10年間で必要となるフルタイムの労働力の定量化評価の結果、年25%の増強が必要であると判り、これを20の分野と約100の主要な専門職に細分化、原子力専門職大学で特に重視されているスキルが優先的に身につくように計画を立てる、と説明した。韓国原子力産業協会(KAIF)のノ・ベクシク氏は、韓国の最新の原子力開発状況や計画を紹介。なお、韓国では原子力発電が始まって以来、約1. 8年に1基のペースで継続的に建設・運転しており、現在、1,100を超える企業が原子力産業全体のサプライチェーンに参加していると言及。サプライチェーンの安定確保には、一貫性と予見可能性のあるエネルギー政策が重要であるとの見解を示した。有能な人材確保や投資環境の整備、許認可プロセスの合理化も不可欠であると同時に、サプライチェーンは一国だけの資産ではなく、原子力産業の促進のための世界共通の資産と捉えるべきであると強調した。日立製作所の稲田康徳氏は、日本電機工業会の原子力政策委員会の前委員長を務めた立場から、撤退・縮小を表明するサプライヤーが顕在化する状況を俯瞰するとともに、日立製作所の取組み事例を紹介。自社内での活動として、一般産業用工業品採用(CGD)、サプライヤーが撤退した製品の内製化、GE日立のSMR建設プロジェクトの機会を活用した国内製造の機会創出の取組みのほか、パートナーサプライヤーとコミュニケーション強化を図り、予備品や製造中止製品のデータの共有、経済産業省の支援事業の活用などを説明した。サプライチェーンの維持には、既設炉のメンテナンスやリプレースが必要であり、その事業予見性を高めるため、政府による支援事業の適用拡大に期待を寄せた。後半のパネル討論は、日本のサプライチェーンの立て直しのため、海外事例から具体的に学ぶ機会となった。打開策を問われたコーテック氏は、米国での多くの建設プロジェクトの機会を活用して、パートナーシップの構築、さらには投資に繋げていくことへの期待を示した。マルティノティ氏は、プロジェクトオーナーと早期段階から対話を開始し、作業量やリソースの計画をたて、リスク軽減と準備の度合いを高めることが重要であると述べた。ノ氏は、韓国の経験上、企業は投資リスクが低く、ビジネス機会を条件にサプライチェーンに参加するため、新規建設や運転再開の計画を明確に示すことが重要であると指摘した。また、韓国内では受注機会が少なく、海外市場を開発したことがサプライチェーンの強化に繋がっていると述べた。海外サプライヤーとの国際協力への対応については、コーテック氏は、米国では、非安全系で量産系の機器については北米だけでなく世界全体を対象にCGDを実施しており、今後それが加速するとの見通しを示した。マルティノティ氏は、フランスでは、サプライヤーの資格認定の標準化を図ろうとしており、専門家同士によるベストプラクティスの共有を提案。ノ氏は、韓国水力・原子力会社(KHNP)にサプライヤー登録制度があり、いったん登録されれば、国内外の原子力発電所に機器を納入でき、国際的に認められた規格基準に則り、海外市場にも参画しやすくなると説明した。人材育成について、コーテック氏は、原子力業界に入ればこの先何十年と良い生活が保障されているとアピールし、人材を惹きつけるNEIの取組みについて紹介した。加えて、大学を含め、徒弟制度のような教育制度を採用する機関に対して、原子力業界に入ってもらえるようなプログラム作りの支援の実施や、コミュニティでデジタルツールを駆使した求人募集活動を行い、実際、原子力業界に応募する人が増えたという実績を紹介した。マルティノティ氏は、現場での必要なトレーニングから逆算して、早い段階からプログラムを作り、適材適所なスキルを持った人材を適切なタイミングで確保することに尽きると強調。ノ氏は、韓国では運転保守は問題ないが、特に中小のメーカーがその採用段階から苦労している現状を踏まえ、政府による支援プログラムのほか、KAIFも中小企業対象向けに、経験者採用にあたって補助金を支給する支援プログラムや、トレーニングプログラムを独自で実施していると紹介した。プロジェクトマネジメントについてコーテック氏は、既設炉の運転コストを2012年比で30%以上下げたNEIの取組みを紹介。平均の定検期間は2000年代初めに44日であったが、現在は31日に短縮化されたという。米国では定検期間中、かなりの人数の応援部隊がサイトを巡回するが、教訓を共有する文化が重要だと語った。マルティノティ氏は、時間が経っても設計が安定していることが重要であり、プロジェクト管理も一貫性を持たせて効率アップを図るとともに、手戻りが生じないように品質管理を重視する必要性を訴えた。ノ氏は、KHNPが国内、海外プロジェクト向けに、プロジェクト管理組織を持ち、建設会社やメーカー、設計会社を含めて、総括的な管理・調整を実施し、うまく機能してきたと紹介した。最後にモデレーターの伊原氏は、日本の原子力産業界にとり非常に多くの有益な助言をいただいたと述べ、これを活かして次の世代に繋げる産業基盤を作っていかなくてはならない、とセッションを締め括った。
09 Apr 2025
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大会初日の午前中に開催されたFireside Chatでは、午後のセッション1、2で議論する原子力発電所の新設に向けた資金調達やサプライチェーン上の課題について、問題提起と欧州の事例に基づく課題共有が行われた。Fireside Chatとは、暖炉脇での会話を想起させるリラックスした雰囲気で行われる対話形式のトークイベント。原産年次大会では初めての試みであり、その後のセッションへの橋渡しとして実施された。初日の登壇者は、フラマトムジャパン株式会社のピエール・イヴ コルディエ代表取締役社長と日本原子力産業協会の増井秀企理事長。増井理事長は冒頭、日本の原子力産業の現状に触れ、2025年2月18日に策定された「第7次エネルギー基本計画」に関し、特に日本の原子力産業界が注目する重要な変化として、「原子力依存度の低減」から「原子力の最大限の活用」へと表現が改められ、既設炉の活用に加え、「新規建設」にも明確に言及されたことを挙げた。コルディエ氏は、欧州における原子力の現状について解説。欧州では130基以上の原子炉が稼働しており、世界全体の約3分の1に相当する規模を有している。近年では原子力への関心が再び高まり、新規導入や既存炉の運転期間延長が広く検討されていると述べ、欧州全体で原子力活用のモメンタムが拡大していると指摘した。コルディエ氏は、在英フランス大使館勤務時に関わった英国ヒンクリーポイントCやフィンランドのオルキルオト3号機のプロジェクトを例に挙げ、欧州の原子力プロジェクトがEUの政策動向に大きく左右される点を指摘した。特に環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準 である「EUタクソノミー基準」をめぐっては、原子力を推進する国々と、反対する国々の間で激しい議論があったが、最終的に原子力は2023年1月1日付でEUタクソノミーに含まれ、グリーンファイナンスの活用が可能となったことを紹介。休眠中のプロジェクト再活性化への期待を示した。日本における資金調達課題について増井理事長は、⽇本では原子力産業が民間事業であり、電力市場自由化が進んでいることから、新たな長期的投資回収が難しくなり、金融機関からの融資を受けることが困難である現状を説明。かつて存在した「レート・オブ・リターン(総括原価方式)」の仕組みがなくなったことで、原子力プロジェクトの資金調達環境が厳しくなっていると述べた。コルディエ氏は、欧州で採用されている多様な資金調達スキームの事例として、ヒンクリーポイントCで導入された「差金決済取引(CfD)」、英サイズウェルCに適用予定の「規制資産ベース(RAB)モデル」、フランスの改良型欧州加圧水型炉(EPR2)6基の建設プロジェクトにおける低利の政府融資とCfDの組み合わせを紹介した。また、欧州のプロジェクトで課題となった建設遅延やコスト超過についても触れ、その主要因としてサプライチェーンと人材の準備不足を指摘。こうした課題に対応するため、フランス電力(EDF)とフラマトムは2020年から2023年にかけて、プロジェクト管理やサプライチェーン標準化などを推進する「エクセル・プラン」を実施し、これにより改善が見られたと評価した。さらに、原子力産業が若年層に対して魅力あるキャリアとして欧州で再評価されていることを紹介。英国ヒンクリーポイントCでは、約8,000人の若者がスキル訓練を受け、地域の若年人口が大きく増加。また、フランスでは、高度な技能を持つ人材を育成するため、エクセル・プランの一環として、溶接訓練機関や原子力のための大学University for Nuclear Professionsが設立され、着実に成果を上げていると述べた。最後に増井理事長は、原子力の新設プロジェクト成功のカギとして「ファイナンス」「人材」「サプライチェーン」の3点を挙げ、欧州の経験から学ぶべき多くの教訓があると総括。コルディエ氏もこれに同意し、適切な制度設計と体制整備が整えば、日本においても”On Time, On Budget”での原子力新設が実現可能であると展望を語った。
09 Apr 2025
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第58回原産年次大会・セッション1「新規建設に向けて:資金調達と投資回収」では、新規原子力プロジェクトを推進するための資金調達・投資回収スキームに関する課題や方向性が議論された。モデレーターの樋野智也氏(有限責任監査法人トーマツ)は冒頭で、第7次エネルギー基本計画において原子力発電所の新規建設推進が明記されたことを受け、その実現のためには事業リスクを官民で明確に分担し、事業環境の予見性を高める必要性があると強調した。また、長期脱炭素電源オークション制度の課題として、建設期間中の想定外コスト(設計変更、部品調達問題)や廃炉費用の不確実性、資本コストの上昇リスク、市場収益の約9割を還付するルールに伴う未回収リスク、供給力提供開始期限(17年)超過による収入減少などを具体的に指摘した。ファイナンス面では、東日本大震災以降の電力会社の信用力低下やGX投資負担増大が、資金調達リスクを高めていることを説明し、コスト回収面の施策と合わせて債務保証、低利融資、官民のリスク分担、資金調達多様化、建設期間中の資金回収を可能とする仕組みの整備などの制度措置が必要と提言した。続いて、ハントン・アンドリュース・カースのジョージ・ボロバス氏は、米国の事例を中心に、原子力プロジェクトの資金調達方法を紹介。特にA.W.ボーグル原子力発電所の建設費が320億ドルに達した例を挙げ、プロジェクトマネジメント能力の重要性に触れながら、シリーズ建設を提案。民間の投資を活用し、政府が積極的な支援策を提供することが重要だとした。また、米国政府による政権を超えた原子力支援策や、小型モジュール炉(SMR)に対するGoogle社やAmazon社など大手IT企業からの投資が活発化している現状を紹介し、民間企業の参加は既存発電所の再稼働プロジェクトの成功にも大きく寄与すると指摘した。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省のマーク・ヘイスティ-オールドランド氏は、英国の原子力政策について説明。英国政府は2050年までに原子力発電容量を2,400万kWに拡大する目標を掲げ、SMRを含めた原子力発電の開発を「Great British Nuclear(GBN)」を通じて推進していることを示した。特に「規制資産ベース(RAB)」モデルを採用するまでの歩みを説明しながら、建設期間中から投資回収を可能にする制度的メリットを強調した。また、核燃料サイクルの安全保障確立や、ロシア・中国依存を低減する取り組みが英国の原子力政策の重要な柱であると述べた。日本経済団体連合会の小野透氏は、産業界の視点から原子力の重要性を指摘。特に地域間の電気料金差(北海道と九州の差が月間10億円規模)が、企業の国内投資判断に大きく影響していると具体的な数字を示した。また、経団連が行ったアンケート結果(再稼働支持率9割、新増設支持率7割)を紹介し、第7次エネルギー基本計画により支持がさらに拡大する可能性を示唆した。さらに、原子力損害賠償における無限責任制度の見直しも提案した。みずほ銀行の田村多恵氏は、銀行や社債市場を通じた電力会社の資金調達について資金供給者の視点を示し、金融機関がファイナンスの対応意義、事業の継続性、キャッシュフローの安定性等を重視していることを説明した。また、継続的に原子力建設プロジェクトを実施することが、コストの上振れリスクの軽減につながると述べ、金融機関が資金供給できる事業環境整備の重要性を主張した。最後に経済産業省資源エネルギー庁の吉瀬周作氏は、国内の電力需要が今後も増加傾向にあり、脱炭素電源(原子力含む)の増強が不可欠だと具体的な数値を示して説明した。そして、2040年における原子力シェアを約2割とする方針を再確認し、海外の事例を参考に、日本の投資回収予見性を高める制度整備が必要だと強調した。後半のパネル討論では、こうした課題を踏まえた具体的な解決策や政策的対応が議論された。樋野氏はまず、米国における原子力プロジェクトの将来展望や、自由化市場における原子力発電の資金調達リスクについてボロバス氏に質問。ボロバス氏は、自由化市場で原子力プロジェクトを成功させるためには、長期的な収益予測可能性を高めることが重要であり、特に政府が支援の仕組みを作ることが必要になると強調した。一方、英国のRABモデルの詳細についてオールドランド氏は、英国では運転終了後の廃炉費用をあらかじめ計画に組み込み、投資回収を安全かつ透明に行う仕組みを導入していると指摘。これが金融機関や投資家のバックエンドに関する懸念を和らげ、安定的な資金調達を可能にしていると述べた。日本の制度設計に関連し、原子力産業におけるサプライチェーン維持の重要性と国のリーダーシップの必要性について問われた小野氏は、明確な原子力政策の提示がサプライチェーンの維持・強化に不可欠であり、特に最終処分場の選定などバックエンド問題に関し、国の積極的な関与を求めた。田村氏はファイナンス支援の必要性について問われ、公的信用補完に触れながら、個別プロジェクトの投資回収予見性だけではなく、事業者が継続的に投資できる環境が必要であり、それを支えるファイナンス側も継続的に資金提供できるような制度支援が必要だと強調した。リスク分担や投資回収の予見性をどのように制度設計に反映させるか問われた吉瀬氏は、初号機だけでなくシリーズ建設していくという考え方が参考になったとし、モラルハザードを防ぎ、コストダウンのインセンティブを取り入れながら、社会全体でリスクとコストをどう分担するか、これらのバランスを慎重に検討していることを明らかにした。セッション1では質疑応答を通じ、海外の先進事例を参照しつつも、日本固有の事情を踏まえた制度設計が求められることが明確となった。また、原子力への国民理解促進に向けた情報発信の重要性についても意見が交わされ、「情報を取りに来る層への情報発信は充実しているが、情報を取りに来ない層に対する発信が課題」とし、産業界、政府、金融機関の連携が強調された。最後にモデレーターの樋野氏は、原子力発電が安定供給とエネルギー安全保障、脱炭素社会の実現に不可欠であることを再確認した上で、制度設計の遅れは産業界に大きな損失をもたらすため、迅速な対応が必要だと指摘した。また、米英の先進事例を日本の実状に適切に修正・適用しつつ、単発のプロジェクトに終わるのではなく、継続性をもった長期的な取り組みの重要性を強調した。さらに、国民理解を促進するためには丁寧なコミュニケーションが必要であり、産業界、政府、金融機関が一体となって取り組みを進めていくことが求められると結論付けた。
08 Apr 2025
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「第58回原産年次大会」が4月8日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。国内外より約740名が参集し(オンライン参加を含む)、9日までの2日間、「原子力利用のさらなる加速 -新規建設の実現に向けて-」を基調テーマに議論する。開会セッションの冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長はまず、前回年次大会以降の1年間を振り返り、「世界では原子力活用のモメンタムがますます拡大している」と、原子力利用に向けた世界的趨勢を強調。海外の動きとしては、ブリュッセルにおける史上初の「原子力に特化した首脳会議」(2024年3月)の開催や、COP28で発表された「原子力三倍化宣言」(2023年12月)の署名国が、2024年11月のCOP29で新たに6か国が加わり、計31か国に上ったことなどをあげた。さらに、世界有数の金融機関によるファイナンス支援表明、大手IT企業による同宣言を支持する動きにも言及。今回大会の議論に先鞭をつけた。国内の動きとして、三村会長はまず、国内初の使用済み燃料中間貯蔵施設となる「リサイクル燃料備蓄センター」の事業開始(2024年11月)をあげ、「原子力発電事業に柔軟性をもたらすものであり、大きな意義を持つもの」と、原子力利用におけるバックエンド対策の重要性を示唆。再稼働に関しては、東北電力の女川2号機(2024年11月)、中国電力の島根2号機(2024年12月)の発電再開により、「再稼働したプラントは合計14基となり、待望のBWR2基の再稼働が実現したことは、大きな前進」と強調した。エネルギー政策の関連では、2月18日の「第7次エネルギー基本計画」閣議決定をあげ、「これまでの『原子力依存度低減』に代わり、『原子力の最大限活用』が謳われたことは、私たち原子力産業界にとって極めて重要な前進」と、その意義を認識。また、今回のエネルギー基本計画での特筆事項として、「次世代革新炉の開発・設置に取り組むとして、新規建設の方針も示された。資金調達・投資回収の予見性を高める事業環境の整備や、サプライチェーンや人材の維持・強化を進めることも明記されている」ことについて、「産業界にとって大変意義深いこと」と強調した。その上で、今大会の開催について、「新規建設の早期実現に向けた実効性ある事業環境の整備を念頭に、国内外産業界の取り組みと課題解決の方向性について議論を進める」と宣言。「新たなエネルギー基本計画のもと、原子力を持続的に最大限活用していく鍵は『新規建設』だ」と、議論に先鞭をつけた。続く来賓挨拶では、あべ俊子文部科学大臣と竹内真二経済産業大臣政務官が登壇。それぞれ原子力分野における人づくり・教育、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえたエネルギー政策の推進について、各行政庁としての姿勢を述べた。竹内政務官は、「特に若者に対する情報発信は不可欠だ」と強調。先に原子力産業協会と共催したサプライチェーンシンポジウムへの来場も振り返り、「サプライチェーンの課題解決に向けた取組をさらに進めていく必要がある」として、あらためて参集した原子力産業界に対し理解を求めた。基調講演では、十倉雅和・日本経済団体連合会会長が「国民生活・経済成長を支えるエネルギー政策」と題し発表。同氏は、資本主義の弊害として「格差の拡大、固定化、再生産」、「生態系の崩壊」をあげたほか、地球の歴史から、過去10万年の気温変動を振り返り、わずか1万年の「完新世」で人類が繁栄を築きあげてきたことを説いた。同氏は、こうした科学的見地から、「地球が悲鳴を上げている。GXは最重要課題」との姿勢を示し、経団連としての提言発信など、諸活動について述べ、議論に先鞭をつけた。この後、「バトン・スピーチ」として、グレース・スタンケ氏(コンステレーション社燃料設計エンジニア・クリーンエネルギー推進担当)、アーチー・マノハラン氏(マイクロソフト社原子力技術部長)が発表を行った。
08 Apr 2025
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は4月4日、記者会見を行い、「世界の原子力発電開発の動向2025年版」の刊行を発表。世界で発電可能な原子力発電所の合計設備容量が、約4億1,600万kWと、過去最高を更新したことを明らかにした。同書は、原産協会が毎年発行している出版物だが、今回より、見せ方の工夫として、インフォグラフィックを採用し、情報・データをビジュアル化している。増井理事長は、このインフォグラフィックをもとに説明。現在、世界の原子力発電所は、32か国で436基・4億1,698万kWが運転中、17か国で75基が建設中だ。今回の調査結果として、「エネルギー安全保障と脱炭素化、電力需要増を背景に、原子力への期待が高まっている」と概括した。世界の原子力発電利用国の設備容量は、上位順に、米国、フランス、中国、日本、ロシアで、基数の観点では中国が世界第2位だ。また、総発電電力量に占める原子力の割合が高い国はフランスがトップで64.8%となっている。増井理事長は、2024年の動きとして、営業運転を開始したプラントの総発電設備容量が706万kW、閉鎖になったプラントは同306万kWで、差し引きすると400万kW程度増えていると説明。さらに、新たに原子力発電所を着工した国・基数について、中国、ロシア、エジプト、トルコをあげる一方、「過去5年間に着工した42基は、全て中国とロシア製のプラント。西側諸国と体制の異なる2か国が原子力の新規建設を席巻している状態」と、中国とロシアの躍進ぶりを示した。この他、SMR(小型モジュール炉)については、カナダのダーリントン・サイトにおけるGE日立ニュクリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」の開発状況にも言及。産油国であるUAEによる原子力開発について記者から質問があったのに対し、増井理事長は「昨今の脱炭素化に向けた動きも要因では」などと応えた。また、国際エネルギー機関(IEA)がまとめたデータセンター・AIなどに伴う世界の電力需要推移から、高予測と低予測のいずれについても将来的に「増加する」との見通しを示し、海外のIT企業が原子力に注目する背景を説いた。「世界の原子力発電開発の動向2025」は、4月25日に刊行予定。〈ご購入は こちら〉この他、増井理事長は、来る4月8、9日に開催される「第58回原産年次大会」について紹介。今回は「新規建設の実現に向けて」をテーマとし、新規建設に向けた資金調達・投資回収等を議論することになっている。*「世界の原子力発電開発の動向2025年版」のWebコンテンツは、 こちら よりご覧ください。
07 Apr 2025
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東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は4月7日、韓国のアサンメディカルセンターから重粒子線治療装置を受注した。韓国国内の重粒子線治療装置は、すべて東芝ESSが供給することとなり、韓国市場でのシェア100%を達成した。今回受注した治療装置は、固定ポート式の治療室が1室と回転ガントリー式の治療室が2室で構成される。先進的な高速スキャニング照射技術と超伝導電磁石を採用した小型の回転ガントリーが備わっており、治療開始は2031年頃の予定だ。重粒子線治療は、炭素イオンを光速の約70%まで加速して「重粒子線」とし、がん細胞に対して高精度で照射する先進的な放射線治療法。重粒子線は体内で広がりにくく、がん細胞にピンポイントで集中させることが出来る。正常組織への影響を最小限に抑えつつ、効率的にがん細胞を破壊することが可能で、治療回数の削減にも寄与する。東芝ESSでは、量子科学技術研究開発機構(QST)とともに重粒子線治療装置を開発し、2016年にはQST放射線医学研究所(千葉市)の新治療棟に、世界で初めて超伝導電磁石を採用することで小型化・軽量化に成功した重粒子線回転ガントリーを納入した。東芝ESSはこれまでに韓国で、延世大学医療院(2018年受注) とソウル大学病院(2020年受注) に重粒子線治療装置を供給しており、今回のアサンメディカルセンターからの受注は3例目となる。アサンメディカルセンターは、アサン財団が1989年にソウルに設立。総床数2432床を有する韓国最大級の医療機関で、国内外から年間約2万人の患者を受け入れている。 東芝ESSは今後、重粒子線治療装置の普及を目指して、国内外での積極的な受注活動を展開し、質の高いがん治療の実現に貢献していくとしている。
07 Apr 2025
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日本原子力発電は3月31日、敦賀発電所2号機(PWR、116万kWe)の新規制基準に係る適合性審査の再申請に向けた追加調査計画について、調査内容に万全を期すため、さらに検討を継続することとし、「まとまり次第、地域、関係者に知らせる」と発表した。当初、2025年3月末を目途に取りまとめる予定となっていた。 同日、原電が発表した2025年度「経営の基本計画」においても、「既設発電所の最大限の活用」との項目の中で、敦賀2号機について「設置変更許可の再申請、稼働に向けた対応を進めていく」ことが明記されている。 同機の審査に関しては、2024年11月13日に、原子力規制委員会が「適合するものであるとは認められない」とする審査結果を決定。これを受け、同社では、審査の再申請に向け、必要な追加調査の内容について、社外の専門家の意見も踏まえながら具体化していくとしていた。 原電は2015年11月に敦賀2号機の新規制基準に係る適合性審査を規制委に申請。地震・津波関連の審査で、同機敷地内の「D-1破砕帯」(原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」について、「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない」、「2号機原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことが確認され、結論に至った。審査期間は1年2か月の中断を挟み9年間に及んだ。 敦賀2号機は2011年5月以来、停止中。一部報道によると、追加調査の期間は2年以上を要するほか、再申請を行う時期も未定となっており、再稼働まで、今後の審査期間を考慮すると停止期間は十数年に及ぶこととなりそうだ。 原電では、審査途上の2013~14年、旧原子力安全・保安院より引き継がれた敦賀発電所における敷地内破砕帯調査に関し、リスクマネジメントや地質学の専門家からなる2つの国際チームによるピアレビューも実施し、同社の調査について「正当な科学的基盤」があることを主張してきた。同時期、地球物理学分野で権威のある「米国地球物理学連合」も、専門家チームによる論文掲載を通じ、科学的知見に基づき、規制側と事業者側が十分に議論する必要性を指摘している。
03 Apr 2025
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原子力規制委員会は3月26日の定例会合で、関西電力高浜発電所と東北電力女川原子力発電所の使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置に関し、原子炉等規制法で規定する許可の基準に「適合が認められる」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会および経済産業相への意見照会とともに、パブリックコメントを経て、正式決定となる運び。 使用済み燃料の乾式貯蔵施設については、東日本大震災発生時、福島第一原子力発電所において、その頑健性が維持されていたことから、規制委員会でも原子力発電所への設置を推奨している。 関西電力では2024年2月、美浜発電所、高浜発電所、大飯発電所の各々構内における使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画について、地元の福井県、美浜町、高浜町、おおい町に対し、安全協定に基づく事前了解願を提出。その中で、高浜発電所に関しては、同年3月15日、第1期工事分(2025~27年頃)について規制委員会に申請した。1~4号機共用で、輸送・貯蔵兼用キャスク最大22基(使用済み燃料約240トン分)を貯蔵するもの。これに続き、同年7月には、美浜発電所、大飯発電所についても、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画に係る申請を同委に対し行っている。 一方、東北電力では2024年2月、2号機における使用済み燃料乾式貯蔵施設設置に係る原子炉設置変更について規制委員会に申請。1棟目、2棟目に分かれており、それぞれ貯蔵容器は最大で8基、12基、工事着工は2026年5月、2030年8月、運用開始は2028年3月、2032年6月が見込まれている。 両発電所とも、型式証明を受けた特定兼用キャスクとして、初めてのケースとなることから、各委員とも、審査書案の正式決定に向けて、パブリックコメントを行うことで一致した。
02 Apr 2025
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日本原子力文化財団はこのほど、2024年の10月に実施した「原子力に関する世論調査」の調査結果を発表した。18回目となるこの調査は、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握することを目的として実施している。なお、同財団のウェブサイトでは、2010年度以降の報告書データを全て公開している。今回の調査で、「原子力発電を増やしていくべきだ」または「東日本大震災以前の原子力発電の状況を維持していくべきだ」と回答した割合は合わせて18.3%となった。一方、「しばらく利用するが、徐々に廃止していくべきだ」との回答が39.8%となり、両者を合わせると原子力の利用に肯定的な意見は過半数(58.1%)を超えた。このことから、現状においては、原子力発電が利用すべき発電方法と認識されていることが確認できる。一方、「わからない」と回答した割合が過去最大の33.1%に達し、10年前から12.5ポイントも増加していることが明らかになった。「わからない」と回答した理由を問うたところ、「どの情報を信じてよいかわからない」が33.5%、「情報が多すぎるので決められない」が27.0%、「情報が足りないので決められない」が25.9%、「考えるのが難しい、面倒くさい、考えたくない」が20.9%となっている。この「わからない」と回答した割合はすべての年代で増加しているが、特に若年世代(24歳以下)の間で増加傾向が高かった。また、同調査は、「原子力やエネルギー、放射線に関する情報源」についても分析を行っている。その結果、若年世代(24歳以下)は、「小・中・高等学校の教員」(27.2%)を主な情報源として挙げており、また、SNSを通じて情報を得る割合が、他の年代と比較して高いことがわかった。原文財団では、若年世代には、学校での情報提供とともに、SNS・インターネット経由で情報を得るための情報体系の整備が重要だと分析している。また、テレビニュースは年代を問わず、日頃の情報源として定着しているが、高齢世代(65歳以上)においても、ここ数年でインターネット関連の回答が増加している。「原子力という言葉を聞いたときに、どのようなイメージを思い浮かべるか」との問いには、「必要」(26.8%)、「役に立つ」(24.8%)との回答が2018年度から安定的に推移している。「今後利用すべきエネルギー」については、2011年以降、再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱)が上位を占めているものの、原子力発電利用の意見は高水準だった2022年の割合を今も維持していることがわかった。再稼働については、「電力の安定供給」「地球温暖化対策」「日本経済への影響」「新規制基準への適合」などの観点から、肯定的な意見が優勢だった。しかし、再稼働推進への国民理解という観点では否定的な意見が多く、再稼働を進めるためには理解促進に向けた取り組みが必要であることが浮き彫りとなった。また、高レベル放射性廃棄物の処分についての認知は全体的に低く、「どの項目も聞いたことがない」と回答した割合が51.9%に上った。4年前と比較しても、多くの項目で認知が低下傾向にあり、原文財団では、国民全体でこの問題を考えていくためにも、同情報をいかに全国へ届けるかが重要だと分析している。
28 Mar 2025
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日本原子力研究開発機構と筑波大学は3月21日、液体が大量の液滴に分裂する現象を3次元で可視化する手法を開発したと発表した。原子炉の事故時に燃料デブリが形成される過程の理解を深め、福島第一原子力発電所の廃炉への貢献や原子炉の安全性向上につながるもの。〈原子力機構他発表資料は こちら〉今回の研究では、原子炉の過酷事故時、炉内の燃料が溶けて下部の冷却材プールに落下した際、大量の細かな液滴に分裂して広がるという現象に着目。溶融燃料や液滴が冷え固まると燃料デブリとなるのだが、特に、プールが浅い場合、溶融燃料がプール床に衝突しながら液滴に分裂するため、非常に複雑な状況で燃料デブリが形成される。つまり、燃料デブリ形成過程の解明は非常に困難となる。原子力機構と筑波大の研究グループは、溶融燃料が液滴へ分裂する現象を研究対象とし、実験や詳細数値シミュレーション手法の開発を推進。溶融燃料と冷却材を模擬した2つの液体を使用し、大量の微小液滴が発生する現象を実験室レベルで再現することに成功した。しかしながら、液滴の量や一つ一つの大きさを計測することまでは実現できていなかった。今回、研究グループでは、レーザー光の制御が可能な「ガルバノスキャナー」と呼ばれる反射鏡を用いた3次元可視化手法「3D-LIF法」を開発。溶融燃料を模擬した液体の3次元形状データを取得し、コンピューター処理することで、液滴一つ一つの大きさや広がる速さを高精度に計測することが可能となった。「3D-LIF法」をプールに適用し実験を行ったところ、液滴は目視では理解できないほど複雑な広がりを見せたが、他の手法も併用することで、異なる2つの液体の速度差や遠心力による「サーフィンパターン」と、重力による「液膜破断パターン」で発生することが明らかとなった。研究グループでは、「3D-LIF法」が微粒子の動き解明につながることから、内燃機関や製薬など、幅広い分野で適用されるよう期待している。
25 Mar 2025
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経済同友会の新浪剛史代表幹事らは3月22日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を訪問し、中央制御室、7号機オペレーティングフロア、防潮堤などの安全設備を視察した。〈東京電力発表資料は こちら〉視察後、新浪代表幹事は、「福島第一原子力発電所で発生した問題を、いかにすべて起こらないようにするかの対応がしっかり打たれている。想定される問題について、あらゆる対応がなされていることに、驚きとともに敬意を表したい」と強調。さらに、現場で働く人の意識に関して、「『ワンチームであろう』という努力も相当なものと感じた。そういった意味で、安全面で大変努力し、非常に高いレベルであると感じた」と述べた。経済同友会は2023年12月、「『活・原子力』-私たちの未来のために、原子力活用のあり方を提起する-」を公表。既存炉の再稼働にとどまらず、「中長期的なリプレース・新増設については、安全性の高い革新炉の導入を前提として、既成概念にとらわれずに、新たな規制の整備や立地の選定を行うことが望ましい」との考え方を示している。同会は東日本大震災後、「縮・原発」を提唱。「活・原発」では、2050年カーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障の重要性などから、原子力を「活用していく」表現として、見直したものとなっている。新浪代表幹事は、2024年7月の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所により首都圏が受ける電力供給の恩恵に言及。経済団体として、「きちんと『ありがたい』と思う首都圏にしていかなくてはならない」と述べている。原子力規制委員会による審査をクリアした柏崎刈羽6・7号機の再稼働に関しては現在、地元判断が焦点となっている。
25 Mar 2025
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原子力サプライチェーンの維持・強化策について議論する「原子力サプライチェーンシンポジウム」(第3回)が3月10日、都内ホールで開催された。経済産業省資源エネルギー庁が主催し、日本原子力産業協会が共催した。武藤容治経産相の開会挨拶(ビデオメッセージ)、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官の基調講演などに続き、「サプライチェーン強化に向けた取組」と題しパネルセッション(ファシリテータ=近藤寛子氏〈マトリクスK代表〉)が行われた。パネルセッションの前半では、三菱重工業、東芝エネルギーシステムズが、革新型軽水炉として、それぞれ取り組む「SRZ-1200」、「iBR」の開発状況を紹介。サプライチェーンとしては、岡野バルブ製造が自社の取組について発表。同社は、高温高圧バルブを90年以上製造している実績を活かし、2023年より次世代革新炉向けのバルブ開発に取り組んでいるという。パネルセッションの後半では、三菱総合研究所と日本製鋼所M&E、日立GEと四国電力がペアとなって発表し議論。それぞれ、次世代炉建設に必要な人材維持に向けた「技能者育成講座」、原子力発電所におけるAI活用の取組について紹介した。これを受け、原産協会の増井秀企理事長は、ものづくりにおける人材確保の重要性をあらためて強調。原産協会が行う就活イベント「原子力産業セミナー」など、学生・次世代層への働きかけを通じ、「多様な人材確保につながれば」と期待した上で、「情報に触れて自分の頭で考える機会を与える」ことの意義も述べた。また、「サプライチェーンの課題を解決するためには、産官学の緊密な連携が必要」とも指摘。引き続き広報・情報発信に努めていく姿勢を示した。増井理事長は、プレゼンの中でリクルートワークス社による労働需給シミュレーションを紹介し、「2040年に1,100万人の働き手不足が生じる」と危惧し、将来的に「人口減・仕事増の矛盾解消策、総合的な対策が必要」と指摘。同シミュレーションによると、2040年の労働人口不足率は、地域別に、東京都はマイナス8.8%と供給過剰の見通しだが、原子力発電所の立地道府県では、新潟県が34.4%と全国的に最も厳しく、女性の就業率が高いとされる島根県では0.9%と、地域間のギャップが顕著となっている。同シンポジウムの初開催(2023年3月)に合わせ設立された「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の会員企業は現在、約200社に上っている。パネルセッションの前半と後半の合間に、NSCP参画企業約20社によるポスターセッションが行われた。パネルセッションの締めくくりに際し、行政の立場から、文部科学省原子力課長の有林浩二氏がコメント。業種の枠を越え交流が図られたポスターセッションについては「いかに企業が若い人材を確保することが大変か」との見方を示した上、北海道大学で制作・公開が始まっている誰もが利用可能なオンライン型「オープン教材」の企業内教育における活用などを提案。また、資源エネルギー庁原子力政策課長の吉瀬周作氏は、国際展開の見通しにも言及し「若者に未来を示すことが出発点」、「しっかりと次世代にバトンをつないでいくことが必要」、「新たなチャレンジを」と所感を述べ、産官学のさらなる連携強化の必要性を示唆した。なお、電気業連合会の林欣吾会長は、3月14日の定例記者会見で、今回のシンポジウムに関し、先に決定されたエネルギー基本計画にも鑑み「サプライチェーンの維持には、事業予見性の向上はもとより、技術・人材を維持する観点から、国が具体的な開発・建設目標量を掲げることが重要だと考えている」とコメント。さらに、「将来にわたり持続的に原子力を活用していくには、いずれ新増設も必要になると考えている」とも述べている。
24 Mar 2025
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)が3月24日、第7次エネルギー基本計画の閣議決定(2月18日)後、初めて開かれた。〈配布資料は こちら〉冒頭、資源エネルギー庁の久米孝・電力・ガス事業部長が挨拶。前回、2024年11月の小委員会以降の国内原子力発電をめぐる動きとして、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機の再稼働をあげた。これに続き、原子力政策課が最近の原子力に関する動向を説明。新たなエネルギー基本計画の概要についてもあらためて整理した。今回は、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)に基づく原子力発電の運転期間(電気事業法)に関し議論。同法では、「運転期間は最長で60年に制限する」という従前の枠組みは維持した上で、事業者が予見し難い事由による停止期間に限り、運転期間のカウントから除外する、いわゆる「時計を止める」ことが規定されている。同規定は6月6日に施行となるが、認可要件に係る審査基準の考え方が、資源エネルギー庁より示され、「事業者自らの行為の結果として停止期間が生じたことが客観的に明らかな場合」については、カウント除外の対象には含めないとされた。事例として、柏崎刈羽原子力発電所での核燃料物質移動禁止命令、敦賀発電所2号機の審査における地質調査疑義に伴う停止期間をあげている。委員からは、杉本達治委員(福井県知事)が、立地地域の立場から、原子力政策の明確化を引き続き要望。六ヶ所再処理工場の竣工時期変更に鑑み、核燃料サイクル事業に関し国が責任を持って取り組むよう、具体的枠組みを早急に検討すべきとした。運転期間延長認可について、遠藤典子委員(早稲田大学研究院教授)は、「現在の最大60年という規定は科学的根拠が乏しい」と述べ、主要国における長期運転の動向も見据え、中長期的視点からの制度整備検討を要望。長期運転に関し、同小委員会の革新炉ワーキンググループ座長を務める斉藤拓巳委員(東京大学大学院工学系研究科教授)は、プラントの劣化管理におけるリスク情報の活用などを、小林容子委員(Win-Japan理事)は、規制の観点から、国内では原子炉圧力容器の中性子脆化を調査する監視試験片の数が十分でないことを指摘し、原子力規制委員会の国際アドバイザーの活用を提案。原子力技術に詳しい竹下健二委員長代理(東京科学大学名誉教授)は、学協会の活用、国際組織によるレビューに言及した。新たなエネルギー基本計画に関する意見では、次世代革新炉の開発・設置に取り組む方針が明記されたことに対する評価は概ね良好。一方で、長期的見通しの深掘りなど、不十分な部分を指摘する発言もあった。専門委員として出席した日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、サプライチェーン・技術継承・人材確保の重要性を強調したほか、次世代革新炉の開発に関する事業環境整備の必要性を指摘した。〈発言内容は こちら〉運転期間延長認可の要件に係る審査基準については、今後パブリックコメントに付せられ、成案決定となる運び。
24 Mar 2025
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関西電力は3月14日、大飯発電所1・2号機から発生したクリアランス金属を加工し製作したリサイクルベンチを美浜町の公共施設、発電所のPR施設に設置したと発表した。同社の原子力発電所で発生したクリアランス金属の再利用製品が一般供用の施設に設置されるのは初めてのこと。〈関西電力発表資料は こちら〉大飯1・2号機は、いずれも1979年に運開した100万kW級のPWRだが、新規制基準への適合が困難なことなどから、2017年12月に廃炉が決定。現在、廃止措置が進められている。このほど、リサイクルベンチが設置されたのは、美浜町の公共施設「道の駅若狭美浜」と大飯発電所のPR施設「エルガイアおおい」だ。リサイクルベンチの素材はステンレス製で、寸法は幅約150cm、高さ約40cm、奥行き約45cmで、総重量約230kg中、約188kgのクリアランス金属が使用されている。ベンチの座面は木材で、クリアランス金属の使用箇所はベンチの部分となる。関西電力では、原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物の低減に向けて取り組むとともに、クリアランス制度を活用し循環型社会の形成に貢献していくとしている。
19 Mar 2025
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量子科学技術研究開発機構(QST)と日本電信電話(NTT)は3月17日、核融合エネルギーの実用化に向けて重要なプラズマ閉じ込めに適用するAI予測手法の確立を発表した。QSTとNTTは2020年に連携協力協定を締結。核融合エネルギー開発に関して、QSTは国際プロジェクトとなるITER計画を始め、それを補完する日欧協力「幅広いアプローチ」活動の一つとして、トカマク型実験装置「JT-60SA」(QST那珂研究所)の開発を進めてきた。NTTも総合資源エネルギー調査会に参画し、通信ネットワーク産業の立場から、革新的原子力技術の重要性を訴えてきた。核融合エネルギーの実用化に向けて、プラズマ閉じ込めが重要な技術課題の一つとなっている。今回の発表においても、両者は「計算量の大きな複雑な方程式を解く操作を段階的に行わなくてはならない」と、制御が困難なプラズマ閉じ込めに係る背景として、演算手法を確立することの重要性を強調。こうした背景から「混合専門家モデル」と呼ばれる複雑な状態を評価する新たな手法を開発した。同手法を「JT-60SA」に適用し、プラズマ閉じ込め磁場を評価した結果、従来手法では不可能だった「プラズマの不安定性を回避するために重要となるプラズマ内部の電流や圧力の分布まで、複数の制御量をリアルタイムに制御できる見通し」が得られたという。核融合エネルギーの実現に向けては、ITER計画に続き、発電実証を目指す原型炉開発の検討が文部科学省のワーキンググループで進められているほか、内閣府でも核融合の安全確保の考え方に関しパブリックコメントが行われた。ベンチャー企業を含む産業界の関心も高まりつつある。QSTは、NTTの通信ネットワーク構想「IOWN」を始めとし、先進技術を核融合研究開発に適用しながら、早期実用化に向け取り組んでいくとしている。
18 Mar 2025
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は3月13日、資源の有効利用や脱炭素化への貢献が期待される「ウラン蓄電池」を開発したことを明らかにした。〈JAEA発表資料は こちら〉軽水炉(通常の原子力発電所)の燃料となるウランは、核分裂を起こしやすいウラン235が約0.7%、核分裂を起こしにくいウラン238が約99.3%含まれており、燃料集合体に加工して原子炉に装荷する際、核分裂の連鎖反応を持続させるため、ウラン235の割合を3~5%まで濃縮する必要がある。今回の研究開発では、濃縮の工程で発生するウラン235含有率が天然ウランより低い「劣化ウラン」に着目。「劣化ウラン」は、軽水炉の燃料には使用できないため、「燃えないウラン」とも呼ばれる。今回、JAEAは、ウランの化学的特性を利用し資源化を図ることで、再生可能エネルギーの変動調整にも活用できる「ウラン蓄電池」を開発した。原子力化学の技術で資源・エネルギー利用における相乗効果の発揮を目指す考えだ。「劣化ウラン」保管量は日本国内で約16,000トン、世界全体では約160万トンにも上っており、JAEA原子力科学研究所「NXR開発センター」は、資源利用としての潜在的な可能性を展望し、研究開発に本格着手。電池はイオン化傾向の異なる物質が電子をやり取りする酸化還元反応を利用し、電気エネルギーを取り出すのが原理。その電子数(酸化数)が3価から6価までと、幅広く変化する化学的特性を持つウランについては、充電・放電を可能とする物質として有望視され、2000年代初頭「ウラン蓄電池」の概念が提唱されてはいたものの、性能を実証する報告例はなかった。同研究で開発した「ウラン蓄電池」では、負極にウランを、正極に鉄を、いずれも酸化数の変化によって充電・放電を可能とする「活物質」として採用。つまり、蓄電池の充電・放電には、ウランイオンと鉄イオン、それぞれの酸化数の変化を利用するのが特徴。今回、試作した「ウラン蓄電池」の起電力は1.3ボルトで、一般的なアルカリ乾電池1本(1.5ボルト)とそん色なく、実際に、充電後の蓄電池をLEDにつなぐと点灯を確認。電池の分極は電圧降下を来す化学現象だが、試作した蓄電池では、充電・放電を10回繰り返しても性能はほとんど変化しなかったほか、両極とも電解液中に析出物が見られず、安定して充電・放電を繰り返せる可能性が示された。原子力発電に必要なウラン燃料製造に伴い発生したこれまで利用できなかった物質が、別のエネルギー源の効率化につながる「副産物」として活かせる可能性が示されたこととなる。「NXR開発センター」は、「新たな価値を創造し社会に提供する」ことを標榜し、2024年4月に開設された新組織。同センターは3月13日、オリジナルサイトを開設し、研究成果の発信に努めている。
17 Mar 2025
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政府の原子力災害対策本部は3月7日、飯舘村・葛尾村に設定された帰還困難区域の一部を、3月31日午前9時に解除することを決定した。原子力災害に伴う避難指示の解除は、富岡町の一部地域における2023年11月以来のこと。帰還困難区域について、線量の低下状況も踏まえ避難指示を解除し居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」が6町村に設定されていた。 「特定復興再生拠点区域」の避難指示解除が完了したのに続き、今回の飯舘村・葛尾村における解除は、原子力災害対策本部が2020年12月に決定した「特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除」に基づくもの。帰還・居住に向けた避難指示解除とは異なり、住民が日常生活を営むことが想定されない事業用の土地活用が主目的。飯舘村については堆肥製造施設用地および周辺農地(イイタテバイオテック社)、葛尾村については葛尾風力・阿武隈風力発電事業用地(葛尾風力社・福島復興風力社)の用地がそれぞれ対象。飯舘村の施設では、脱水汚泥や畜糞などを乾燥させ堆肥原料を製造。乾燥のための燃料として、重油に加え、資源作物とされるソルガムを栽培し活用する。葛尾風力発電所では村内に3,200kWの発電機を5基、阿武隈風力発電所では4自治体を跨いで同規模の発電機を46基設置。風力発電機は、良好な風を受ける阿武隈山地の稜線に設置し、観光拠点として展望エリアも整備する計画だ。
13 Mar 2025
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