独エネルギー・エンジニアリング大手のシーメンス・エナジー社は2月28日、英国で小型モジュール炉(SMR)の開発を行うロールス・ロイスSMR社とパートナーシップ契約を締結した。この契約によりシーメンス社が蒸気タービン、発電機、その他補助システムを供給することになりそうだ。最終契約は、2025年末までに締結予定。シーメンス・エナジー社は、何十年にもわたり、原子力発電所の非原子力部である、いわゆる「パワーアイランド」の機器とサービス供給の実績がある。原子力発電所向けとしては、出力2万kWから190万kWまでの蒸気タービンと発電機、および運転制御システムをラインナップする。シーメンス・エナジーの取締役会メンバーであるK. アミン氏は、「当社には数十年にわたる機器供給の実績があり、ロールス・ロイス社は必要な実装のノウハウを持っている。エネルギー供給の未来を共に形作る機会を嬉しく思う」と語った。ロールス・ロイスSMRは既存のPWRをベースとしており、電気出力が47万kWとSMRにしては大型なのが特徴。運転期間は60年以上。なお同炉は、英国の原子力発電所新設の牽引役として2023年7月に発足した政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が実施するSMRの支援対象選定コンペで、最終選考に残った4炉型の1つ。最終入札の提出への招待状が2025年2月に各炉型を開発する4社に送られ、選定プロセスは最終段階に入っている。GBNは今春に支援対象を決定する予定だという。
12 Mar 2025
207
米ホルテック・インターナショナル社は2月25日、同社が開発するSMR-300(PWR、30万kW)のパリセード原子力発電所サイトへの建設プロジェクト「Mission 2030」を開始した。本プロジェクトを皮切りに、2030年以降、北米で計1,000万kWのSMRを建設するため、韓国の現代E&C(現代建設)社との協力を拡大する契約も締結した。同社は、ミシガン州にあるパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)サイトにおいてSMR-300を2基建設、2030年に初号機の営業運転開始を目指している。パリセード発電所は2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月に同発電所は所有者・運転者だったエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を運転再開する方針に転換。2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請している。一方、同社は2023年12月にパリセード・サイト内でのSMR-300建設プロジェクトを発表して以来、サイト整備等に5,000万ドル(約74億円)以上を投じ、詳細なサイトと環境調査、地下水モニタリングプログラムや土壌ボーリングを実施してきた。2026年初めにも、NRCへ建設許可を申請する予定。SMR-300のサイト準備作業と並行して、ホルテック社は地元コミュニティへの働きかけにも取組んでおり、このSMR-300構想はパリセード発電所の運転再開への支援と相まって、コミュニティリーダーや地方、州、連邦政府の関係者からの支持を得ているという。なお、今回の現代E&C社との協力拡大の契約は、2021年11月締結の契約を拡大したもの。ホルテック社は、パリセード・サイトでの初プロジェクトから得る知見に基づき、それに続くSMR-300プロジェクトの迅速な展開に期待を寄せている。「Mission 2030」の記念式典にて、ホルテック社のK. シンCEOは、「当社独自の垂直統合型供給力と、現代E&C社のアラブ首長国連邦での原子力発電所建設プロジェクトなど、数多くの複雑なプロジェクトをコスト超過なく完遂する能力により、『Mission 2030』を実現する」「長期にわたる提携先であり、SMR連合の第3の柱である三菱電機の最先端の制御システムがSMR-300に導入される」と述べ、SMRプロジェクトの成功への自信を示した。また、同社のクリーンエネルギー部門のR. スプリングマン社長は、「自社製造および建設パートナーである現代E&C社でほとんどのプロセスを管理しているため、建設プロジェクトの都度、改良と改善が可能。SMRの展開をより迅速かつ費用対効果の高いものとするカギは、建設プロジェクトで得た教訓を新たなプロジェクトに直接適用することだ」とコメントした。現代E&C社のH. リーCEOは、「当社は米法人の現代・アメリカ社を設立し、米国の電力プロジェクトとSMR-300技術に多様な投資を行ってきた。米政府や主要地元企業と緊密に協力して体系的なサプライチェーンを構築し、米国で質の高い雇用を創出、世界のSMR業界の新時代を切り拓いていく」と抱負を語った。ホルテック社によると、2011年から開発中のSMRは設計上の進化を遂げ、最新のものがSMR-300となる。2基構成のツインユニットで、所要面積はわずか0.12㎢。事故時に運転員が現場を離れても安全性が保たれる特性(walk-away safe)を持つ。
12 Mar 2025
160
スウェーデンの先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社は2月26日、ノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社と、小型モジュール炉(SMR)「SEALER」(5.5万kWe)の展開に向けて協力覚書を締結した。 SEALERはブリカラ社が開発する鉛冷却高速炉。安全で効率的、出力拡張の可能なコンパクトなモジュール設計を特徴とし、2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。独エネルギー大手のユニパー社、スイス大手エンジニアリング企業のABB社、スウェーデンの原子力発電事業者OKG社、スウェーデン王立工科大学などのパートナー各社から支援を受けており、スウェーデンのエネルギー庁や欧州連合などから約5,000万ユーロ(約80億円)の資金を供与されている。 ノルウェー国内では近年、原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急激に増加。ノルスク社はSMRの建設、所有、運転を目指し、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。今回の覚書により両社は、ノルスク社が現在開発中の発電所プロジェクトにSEALERを導入し、ノルウェーでの展開にむけたサイト適性、規制対応、実行可能性の評価を行う。 両社は今後さらに、スウェーデンにおいて初号機となる実証炉SEALER-Oneの許認可手続き、資金調達、建設、運用面でも協力していく考えだ。ノルスク社はSEALER-Oneプロジェクト会社への参加可能性やブリカラ社への出資など、スウェーデン市場への進出を模索する。両社は覚書締結を契機に、原子力エネルギー開発の強化、サプライチェーン、許認可手続き、ファイナンス、研究等の分野で協力し、両国で革新的で信頼性の高い原子力の展開を加速させ、北部遠隔地への電力供給を含む、スカンジナビア地域のクリーンで安定したエネルギー安全保障を実現させたい考えだ。 ブリカラ社はこれに先立つ2月3日、重要なコンポーネントと安全システムの検証を目的に、電気式のプロトタイプ(SEALER-E)を収容した試験施設の起工式を挙行している。同施設はスウェーデンのオスカーシャム原子力発電所サイトに建設されるが、起工式には、スウェーデンのE. ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業相も出席した。建設の第1段階は6月までに完了予定であり、2025年第3四半期には試運転を開始する予定である。
11 Mar 2025
515
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2月21日、国会の電力政策審議会で採択された第11次電力需給基本計画を発表した。現在建設中または計画中の大型炉に加え、2038年までに新規大型炉2基と小型モジュール炉(SMR)1基の建設が計画されている。電力需給基本計画は、エネルギー政策に関する2年ごとの政府の青写真。今回の計画は2024年~2038年までの15年間を対象とした電力需給の長期展望、発電設備計画などが含まれる。同計画の草案は2024年5月にMOTIEの諮問委員会が公開し、同年末までに最終確定される予定だったが、最大野党の民主党が政府に対し、再生可能エネルギーを支持し、原子力発電の割合を縮小するよう要求。国会での採択は大幅に遅延した。当初140万kWの大型炉(APR1400)を3基建設する計画は2基に縮小され、そのギャップを再生可能エネルギーが埋めることとなった。本計画の大きな特徴は、人工知能(AI)や半導体などの先端産業、電化によって見込まれる電力需要の急激な拡大である。韓国の電力需要は2024年~2038年の間に年平均1.8%増加し、2038年までに1億2,930万kWに達すると予測。2023年と比較して約30%の増加となっている。内、半導体業界の電力需要は2038年までに1,540万kWに達すると予想されている。データセンターの追加需要(増分)は、第10次計画で当初140万kWと予想していたが、440万kWに修正され、電気自動車の普及や国内水素生産などの産業部門の電化による追加需要(増分)は1,100万kWに達すると予測されている。政府は、発電所建設・廃止計画および再生可能エネルギー普及見通しをすべて反映した上で、2038年までに1,030万kWの新たな発電設備が必要になると算定。原子力発電と再生可能エネルギー施設の両方を大幅に拡張する計画である。再生可能エネルギーの設備容量は、2023年の3,000万kWから、2030年には7,800万kW、2038年には1億2,190万kWに増加。原子力発電では、2038年までに3,520万kWの設備容量が必要との見通しを示している。2035年~2036年の間にSMR×1基(70万kW)の導入を計画するが、安全性確保の技術開発と標準設計認可の取得を経て、2030年代初めに建設許可の取得を前提としている。2037年~2038年の間に新規大型炉×2基(280万kW)の建設を計画する。なお2036年までに、老朽化した28基の石炭火力発電所はすべて段階的に廃止され、LNGプラントに転換される。2036年~2038年にかけて、運転期間満了となる12基の火力発電プラントが、揚水発電や水素発電、アンモニア混合などの無炭素電源にリプレース。セウル(旧・新古里)原子力発電所3、4号機と新ハヌル(旧・新蔚珍)原子力発電所3、4号機の建設プロジェクトは計画どおりに進められ、運転期間が満了となる原子炉は運転期間が延長されることになる。この計画が実現すれば、無炭素電源(原子力、再エネ、クリーン水素・アンモニア)による発電量の割合は2023年の39.1%から2030年には53.0%、2038年には70.7%に増加する。再生可能エネルギーによる発電量の割合は、2030年に18.8%、2038年に29.2%になると予測。原子力発電は2023年の1,805億kWhから、2030年に2,042億kWh、2038年には2,483億kWhに成長すると予想され、原子力シェアは、2030年までに31.8%、2038年までに35.2%に上昇する。韓国では現在26基の原子炉が稼働しており、2023年の原子力シェアは30.7%。
10 Mar 2025
1237
スペインで原子力事業を展開する企業が2月25日、同国の原子力発電所の長期運転を支持するマニフェストを発表した。この文書には、西EAG(Empresarios Agrupados-GHESA)社、仏フラマトム社、西GDES社、米GEベルノバ社、西IDOM社、米ウェスチングハウス(WE)社が署名し、他産業の企業からも賛同を得ている。マニフェストは、スペイン政府の原子力の段階的廃止政策による産業競争力と社会に及ぼす影響について懸念を示すとともに、国際的な潮流に沿った原子力発電所の長期運転の必要性を訴えている。スペインでは2月、議会が国内原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める非立法提案が可決されたばかり。同マニフェストで、産業界が求めている主な事項は以下のとおり。1. 2019年の原子力発電所の段階的廃止協定((政府は2019年、2035年までにスペイン国内の原子力発電所を段階的に閉鎖することで電力会社と合意。))に関する対話と再交渉現状とは大きく異なる国際情勢や社会・経済的背景等の下で結ばれた2019年の原子力発電所の段階的廃止協定について、対話と再交渉の開始を強く要請。原子力発電の代替電源を確保しないまま、2027年のアルマラス1号機(PWR,104.9万kW)の閉鎖を皮切りに段階的廃止を進めれば、産業競争力の低下を招く。2.影響を受ける地域経済と競争力に対する配慮原子力部門を支える産業は、エンジニアリングや部品製造、支援サービスなど多岐にわたり、約2万人の高スキルな安定雇用を創出している。これらのインフラを早期に閉鎖へと追い込めば、地域経済に深刻な経済的・社会的打撃を与えるだけでなく、国全体の産業競争力やエネルギー関連のサプライチェーンにも影響を与えかねない。3.エネルギー政策の見直しスペイン政府と関係当局に対し、原子力エネルギーの継続性を確保する措置を盛り込んだ国家エネルギー・気候統合計画の改定を要請する。原子力は、信頼性の高い、効率的かつ競争力がある低炭素エネルギーとして認識されるべきであり、公正な投資環境が求められる。また、技術的・経済的基準に基づくエネルギー政策の推進を求めるとともに、原子力エネルギーがエネルギー移行に不可欠とする国際的な潮流に沿った政策を採用すべき。4.持続可能な解決策としての原子力発電所の運転期間延長を国際エネルギー機関(IEA)や欧州委員会(EC)、そして現実的かつ持続可能なエネルギー戦略を採用する他の欧州諸国の勧告に倣い、原子力発電所の運転期間を延長することは、エネルギー安全保障の強化や再生可能エネルギーの拡大とともに、エネルギーシステムの持続可能性を確保することに資する。他国からの地政学的な独立性も強化される一方、その実現には、現状の原子力発電税など過度な税負担等を考慮しつつ、原子力発電所の経済性確保が不可欠。5.国内原子力発電所はバックフィット済みスペインの原子力発電所はバックフィットが施され、技術、安全性、効率性の面で世界最高水準にある。世界の原子力発電所と同様、60年、あるいは80年という長期間の運転が可能。この卓越性は、電力の安定供給を保証するだけでなく、スペインの世界的な産業的地位を高める。最後に、マニフェストは、原子力発電所の早期閉鎖が、高い環境的・経済的コストを伴い、原子力産業と関連部門において何千もの雇用を喪失すると改めて懸念を表明。さらに、技術面や人材面において深刻な損失を引き起こし、競争力のある持続可能なエネルギーインフラを維持する国力をも弱めると指摘した。また早期閉鎖は、データセンターやエネルギー集約型産業、小型モジュール炉(SMR)など、スペインの産業の再活性化に不可欠な産業部門への投資を阻害し、エネルギーインフラの脆弱な国での事業遂行を危惧した企業が国外へ流出する可能性についても言及している。
06 Mar 2025
509
伊閣僚評議会は2月28日、原子力発電再開に向けた法令整備に関する権限を政府に委任する法案を承認した。法案は議会で承認される必要がある。法案の発効後、政府は12か月以内に原子力発電再開に向けた一連の政令を採択し、法令整備を目指すことになる。この法案は、G. メローニ首相およびG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相の提出によるもの。持続可能な原子力発電および核融合を組み込んだ、「イタリアのエネルギーミックス」を実現することを目的としている。2050年を視野に入れた欧州の脱炭素化政策の枠組みの中で、エネルギー供給の継続性の保証とエネルギーの自立化の促進、脱炭素化目標の達成、エネルギーコストの削減と国内産業の競争力の確保を目指す。法案では、イタリア国内ですでに廃止措置を実施中の「第一世代」または「第二世代」の原子力発電所ではなく、モジュール化や先進技術など、利用可能な最新技術の採用を示している。原子力安全を担当する独立機関の設立の検討や、原子力発電のライフサイクル全体にわたる規制設計を想定。加えて、電力市場への影響を勘案し、電力システムとの常時調整の必要性や、原子力プロジェクト実施者による建設、運転、廃止措置および原子力活動に係るリスクに対する、法的・財務的補償の実施を明言している。イタリアでは1960年初頭から4サイトで合計4基の原子力発電所が稼働していたが、チョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票によって既存の全発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定。最後に稼働していたカオルソ(BWR、88.2万kWe)とトリノ・ベルチェレッセ(PWR、27万kWe)の両発電所が1990年に閉鎖し、脱原子力を完了した。2009年になると、EU内で3番目に高い電気料金や世界最大規模の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決している。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS. ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。しかし、近年は世界的なエネルギー危機やロシアのウクライナ侵攻にともない、イタリアのエネルギー情勢も変化。2023年5月、議会下院は、国のエネルギーミックスに原子力を組み込むことを検討するよう政府に促す動議を可決。同年9月には、環境・エネルギー安全保障省が主催する「持続可能な原子力発電に向けた全国プラットフォーム(PNNS)」の第一回会合が開催され、近い将来にイタリアで原子力発電を復活させる可能性が議論された。伊政府は2024年7月、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出。文書の中で同国が原子力発電計画の再開を決定した場合の原子力発電規模のシナリオを示している。同国では、再生可能エネルギーが主導的な役割を果たすものの、2050年の気候中立目標の達成上、電力部門は電化や水素製造などで大量の電力を必要とする。そのため、天候の影響を受ける再生可能エネルギーを補完するものとして、原子力発電を含めた場合の仮説のエネルギーとコストシナリオを策定。2035年から原子力を導入(小型モジュール炉=SMR、先進モジュール炉=AMR、マイクロ炉の計40万kW)し、2050年の設備容量では核融合を初めて含む、約800万kW(原子力760万kW、核融合40万kW)を想定する。2050年には国内の総電力需要の約11%を供給し、経済を脱炭素化するコストで170億ユーロ(約2.7兆円)の節約効果を指摘。さらに最大22%(1,600万kW)に達する可能性もあると予測している。
05 Mar 2025
677
フランスの小型ナトリウム冷却高速炉(SFR)を開発するヘクサナ(HEXANA)社は2月20日、ベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル(Tractebel)社と戦略的パートナーシップ契約を締結した。これにより、ヘクサナ社のSFRと蓄熱能力を組み合わせた小型モジュール炉(SMR)の、エネルギープラットフォーム開発を加速する。トラクテベル社はフランスに基盤を置く電気・ガス事業者エンジー(Engie)社の傘下企業で、原子炉の設計や建設プロジェクトにおいて、フランスの国内外で50年以上の経験を有する。今回の契約で、SMRエネルギープラットフォームの原子力部の建屋・施設の設計に加え、システムの効率性、信頼性、長寿命の確保のため、特殊コンポーネントの取扱いとメンテナンスを実施する。また、欧州の安全規制への適応を支援する。ヘクサナ社は、2023年設立の仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)からのスピンオフ企業。SMRエネルギープラットフォームは、高温熱および電力を生成するように設計された小型モジュール式の高速炉(40万kWt)を2〜6基統合し、電気出力は最大90万kWとなる。CEAが数十年にわたり開発した実証済みのPhénix、Superphénix、ASTRIDの高速炉技術に基づくという。高温の熱エネルギー貯蔵と電力を組合わせ、重工業や航空・海上輸送などのエネルギー集約型産業のニーズに適時に応えると強調する。また、英国発祥で、現在はフランスのパリに本社を置く先進炉開発企業のニュークレオ(Newcleo)社は2月20日、スウェーデンの先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社と、鉛冷却高速炉(LFR)用材料の共同研究開発に関する契約を締結した。これにより両社は、それぞれの研究開発プログラム支援のため、契約の範囲内で互いの研究施設や専門スタッフにアクセスし、材料の試験結果、関連データを交換する。但し、商業目的や本契約の範囲外での新技術の開発には使用されない。それぞれの研究開発プログラムと工業化プロセスから得られる知見を組合わせ、材料ソリューションを強化。次世代炉の信頼性と長寿命を確保し、欧州の脱炭素化に向けてLFR技術の商業化を促進したい考えだ。なおこの契約は、欧州SMR産業アライアンスの目標に沿ってサプライチェーンの最適化を支援し、各当事者の炉型の許認可手続きにおいて国境を越えた知識交換の促進にも役立つと指摘する。ニュークレオ社のS. ブオノCEOは、「我々の協力は、それぞれの開発プログラムの加速に役立つ知識の共有を目的とし、原子力セクター全体にも役立つもの。必要性が緊急で時間が限られる場合、この種の協力がカギとなる」と言及。ブリカラ社のJ. ステッドマンCEOは、「当社の耐腐食性材料に関する広範な専門知識とニュークレオ社の工業化能力を組合せ、鉛冷却炉技術の商業化を進める」と語った。ブリカラ社は、安全で効率的、出力拡張の可能なコンパクト設計の鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)を開発。2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。ニュークレオ社は自社開発の鉛冷却高速炉(LFR)である実証炉「LFR-AS-30」(3万kWe)を2030年までにフランスで建設し、2033年までに英国で商業規模に拡大した「LFR-AS-200」(20万kWe)の建設を目指している。2024年12月には英原子力規制庁(ONR)による包括的設計審査(GDA)を申請した。なお、ニュークレオ社は2月24日、アラブ首長国連邦の首長国原子力会社(ENEC)と、欧州およびMENA地域(中東、北アフリカ)でのニュークレオ社のLFRの展開に向けた戦略的協力に関する了解覚書(MOU)に調印。両社は、欧州での既存LFRプロジェクトへの共同投資と開発の機会を模索する協力を実施し、MENA地域のエネルギー需要軽減が困難な業界にLFR導入による脱炭素化を検討する。また、研究炉や運転中の施設を活用した能力開発プログラムや実地訓練での共同作業を通じ、知識移転の可能性も考慮するとしている。MOU締結はENECの新規および先進的な原子力エネルギー技術への投資と展開における成長計画に沿ったものであり、ENECのバラカ原子力発電所の運転実績とノウハウ、ニュークレオ社の先進技術の組合せが大きな価値を生み出すと期待を寄せる。
04 Mar 2025
827
米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は2月28日、テキサス州北西部のハスケル郡に30基のマイクロ炉を建設し、同州内のデータセンター顧客向けに電力供給する計画を発表した。同社は、取得した200エーカー(約0.8㎢)の用地にマイクロ炉を建設し、私設電線と送電網を組合わせて電力を供給する。同社はすでにデータセンターの需要増大に応え、テキサス州の独立系統運用者であるERCOTに送電網への接続を申請しており、米原子力規制委員会(NRC)に事前サイト許可(ESP)を申請する準備を進めている。テキサス州のG. アボット知事は、「テキサスは米国のエネルギーの中心地であり、先進的な原子力発電でNo.1を目指している」「ハスケル郡におけるラスト・エナジー社のマイクロ炉プロジェクトは、州の増大するデータセンター需要に応えるもの」と指摘。ラスト・エナジー社創設者兼CEOは、「当社のマイクロ炉『PWR-20』(2万kWe)は、ユーザーの需要に合わせて出力を拡張できる上に、発電所モジュールはオフサイトで大量製造、簡単に組立てが可能。設置場所の柔軟性を考慮して設計されており、迅速に需要を満たす最善の方法」と強調した。同社は、テキサス州全体での原子力展開の加速を目指す、テキサス原子力アライアンスの創設メンバーでもある。ラスト・エナジー社の既存の商業契約では、欧州全域に80基以上のマイクロ炉の納入を計画するが、そのうち半分はデータセンター向けだという。テキサス州には現在、340を超えるデータセンターがあり、約800万kWの電力を消費し、テキサス州の全電力需要の9%を占める。さらに、2029年までに同州のダラス・フォートワース地域だけでも、主にデータセンターによる4,300万kWの需要増が予測されている。同社はテキサス州でのサイトの開発に加えて、ユタ州でのプロジェクトを模索している。なおラスト・エナジー社は2月17日、英原子力規制庁(ONR)が同社の英国の南ウェールズにおけるマイクロ炉4基建設プロジェクトの原子力サイト許可(NSL)の正式手続き入りしたことを確認したと明らかにした。同社は2024年5月以降、ONRとの許認可申請前活動を行っていた。同社は2024年10月、1951年から1977年まで稼働していた南ウェールズのスリンビ(Llynfi)石炭火力発電所の跡地に、マイクロ炉4基の建設計画を発表。2027年に初号機の建設完了を目指している。同年12月、米輸出入銀行(US EXIM)はラスト・エナジー社による南ウェールズでの建設プロジェクト向けに、1.037億ドル(約156億円)を融資する意向表明書(LOI)を発行した。NSLの正式手続き入りは、2月6日にK. スターマー首相が原子力計画の合理化、導入加速のために導入した、一連の画期的な規制緩和の方針を反映している。これにより、マイクロ炉が計画規則に含まれるようになり、立地適格性が劇的に拡大、「イングランドとウェールズのどこでも」導入が可能となった。本プロジェクトにおけるNSLの取得は、1978年のスコットランドのトーネス原子力発電所以来となる。それ以来、英国ではすべて既存または過去に原子力発電所があった場所、またはそれに隣接した場所に設置されていた。
03 Mar 2025
1052
インドの天然資源会社大手のヴェダンタ(Vedanta)社は2月20日、合計出力500万kWeの原子力発電所の設計、建設、運転に関し、グローバル企業からの関心表明(EOI)の募集を開始した。ヴェダンタ社は、原子力発電を使用して自社プラントのエネルギー需要を満たす考えだ。エンドツーエンドのターンキープロジェクトを提供する確かな実績を持つ、世界的に認められた企業を探していると表明している。関心のある企業は、募集開始から30日以内にEOIを提出する必要がある。なお同社が、原子力発電所のサイト、インフラ支援、規制当局の承認を手配するという。同社の事業は原油生産からアルミニウム、亜鉛生産まで多岐にわたり、インド全土に工場がある。また、発電事業も手掛けており、既存の900万kWeの火力発電プラントの他、400万kWeの再エネプラントが建設中である。インドのN. シタラマン財務大臣は2月1日、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1億kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、民間企業がこのセクターに参入するための大きなハードルとなっていた原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えを示している。最近では、インドのコングロマリットの「ナヴィーン・ジンダル・グループ(Naveen Jindal Group)」が、原子力企業のジンダル・ニュークリア・パワー(Jindal Nuclear Power)社を設立し、今後20年間で1.8兆ルピー(約3.2兆円)を投じて、バーラト小型原子炉(BSR)を含む先進技術を活用し、1,800万kWの原子力発電所を建設・所有・運転する計画を発表。インド有数の電力会社であるタタ・パワー(Tata Power)社も政府の原子力拡大方針に伴い、小型モジュール炉(SMR)の開発機会を模索すると表明するなど、民間企業による原子力分野への参入が目立ってきている。
03 Mar 2025
615
米トランプ大統領は2月14日の大統領令により、大統領府内に、エネルギー政策の司令塔となる、国家エネルギードミナンス(支配)評議会を設立した。D. バーガム内務長官が議長を務め、C. ライト・エネルギー省(DOE)長官が副議長を務める。他メンバーには、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、農務長官、商務長官、運輸長官、環境保護庁の管理者、経済政策や国家安全保障問題担当の大統領補佐官らを含む。同評議会は、最終的には国内のエネルギー生産を増やすことによって「エネルギー支配を達成する」ための戦略について大統領に助言することを目的としている。評議会は、大統領から、100日以内に提言と既存の権限下で可能な行動の両方を含む計画の提出を要請されている。同大統領令では、この計画によって「信頼性の高いエネルギーの緊急性など、エネルギー支配に関連する事項について国民的な意識を高める」と指摘。「インフレを押し下げ、経済を成長させ、高賃金の雇用を創出、製造業における米国のリーダーシップを再確立し、人工知能(AI)で世界をリードする。世界中の戦争を終わらせるために商業的および外交的な手段を振るい、力によって平和を回復する。そのためには、信頼性が高く手頃な価格のあらゆる形態のエネルギー生産を拡大しなければならない」と強調する。アメリカのエネルギー支配を政策の基軸に据え、原油、天然ガス、ウラン、石炭、バイオ燃料、地熱など、潤沢な国内資源を活用し、外国からの重要鉱物の輸入依存を減らし、経済を成長させる方針を示している。同協議会は、許認可、生産、発電、流通、規制、輸送、輸出を含むエネルギー産業を取り巻くプロセスを改善するための戦略について大統領に助言する。また、官僚的な形式主義や不必要な規制を廃し、民間部門の投資の拡大、イノベーションの促進など、エネルギー支配を達成するための長期目標を含む、より多くのエネルギー生産を可能にするための国家エネルギー支配戦略を大統領に提出する役目も担う。エネルギー生産の増大という政策目標を実現させる行動の例として、発電設備容量の急速かつ大幅な増加、エネルギーインフラの迅速な承認に加え、閉鎖された発電所の運転再開へ向けた取組みの促進や、小型モジュール炉(SMR)の早期運開を挙げている。
28 Feb 2025
652
オランダ議会(下院)で2月11日、S. ヘルマンス気候・グリーン成長相(副首相)は、新規原子力発電所の建設遅延に関する議員からの質問に対し、新しい原子力発電所の実現までには、さまざまな作業や手続が山積しており、当初計画通りに2035年までに運開させることは難しいと、書面で回答した。2021年3月にオランダで発足した前・連立政権は、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月、連立合意文書に国内唯一の原子力発電設備であるボルセラ発電所の運転期間を長期にわたって延長するとともに、政府の財政支援により新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を明記。翌2022年12月には、新設サイトとしてボルセラ・サイトが最適と発表している。計画では、2035年までに少なくとも、第3世代+(プラス)の原子炉、出力100万~165万kW×2基を新設し、オランダの総発電量の9~13%を供給するとしていた。オランダでは、1973年から稼働中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)で総発電電力量の約3%を供給中。同炉は運転開始から40年目の2013年に運転期間が20年延長され、現在の運転認可は2033年まで有効である。経済・気候政策省(当時)は、2基新設に向けた立地選定手続きの第一歩として、企業、団体、地方自治体などから、サイト等に関する提案募集を2024年2月に開始。提案が条件を満たしている場合、建設候補地として潜在的に適しているかどうかを調査するとしていた。当初、新しい原子力発電所に適した場所と考えられていたのは、ゼーランド州のボルセラ・サイト、およびロッテルダム港のマースブラクテIだけであったが、同年9月以降、ゼーラント州のテルネーゼン、フローニンゲン州のエームスハヴェン、ロッテルダム港のマースブラクテⅡが候補地に追加された。これら候補地に対して、立地選定に向けた調査を実施することが法的に義務付けられているという。同相は、候補地の選定決定の遅れを認め、許可、入札、建設において、まだ多くのステップを踏む必要があるとし、前内閣が言及した2035年の新設の期限は「非常に野心的」であり、これまで考えられていたよりも多くの原子力発電所の候補地を調査する予定であるため、年内の立地選定は不可能である、と指摘している。なお2024年には、韓国水力・原子力、米ウェスチングハウス社、フランス電力がボルセラ・サイトにおける2基の新規建設の技術的可能性、安全性、環境影響、コストと時間の詳細な見積りを含む、実行可能性調査(F/S)を実施、完了しており、これらの結論は現在、独立機関によって検討されているという。
28 Feb 2025
667
ベルギーで最古のドール原子力発電所1号機(PWR、46.5万kWe)が2月14日、永久閉鎖した。運転事業者であるエレクトラベル社が発表した。2003年1月の原子力発電の段階的廃止に関する連邦法による。同機は1975年2月15日に営業運転を開始し、50年間稼働した。ドール1号機と2号機はツインユニットであり、共通の制御室と機械室に加え、多数の安全システムを共有している。これらはすべて、2025年11月30日に予定されているドール2号機の閉鎖日まで稼働する。ドール1号機と2号機は当初、2003年の連邦法により運転期間が40年となる2015年に閉鎖される予定であったが、エネルギーの安定供給やCO2排出抑制の観点から、2015年6月の法律の一部改正により、さらに10年間の運転を継続することとなった。1号機の閉鎖により、ベルギーでは現在、ドール発電所で2基、チアンジュ発電所で2基、2サイトで原子炉が稼働中。いずれもPWRを採用し、計4基の合計出力は365.3万kWeとなった。なお、連邦法によりドール3号機は2022年9月に、チアンジュ2号機は2023年1月に閉鎖されており、閉鎖は3基目となる。チアンジュ1号機も年内に閉鎖予定。ベルギーで2月上旬に発足した新連立政権は、ドール4号機とチアンジュ3号機の原子炉の運転を、すでに合意されている10年間の延長に加えてさらに10年間継続する計画をするほか、新規建設も視野に入れ、原子力の段階的廃止政策の撤廃を表明した。今回、運転期間延長の対象となる、ドール4号機とチアンジュ3号機については、両機とも1985年に運転を開始。40年目となる2025年に閉鎖が予定されていたが、エネルギーの安定供給に懸念が生じたため、政府は2022年3月にこれら2基の運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定。運転事業者であるエレクトラベル社の親会社である仏エンジー社と2023年7月、運転期間の延長の最終合意に向けて交渉していくことで枠組み合意し、同年12月には、2035年11月まで運転期間を10年延長する計画の諸条件について最終合意に達していた。
26 Feb 2025
758
インドのN. モディ首相は2月13日、米ワシントンでD. トランプ大統領と2期目就任後初となる首脳会談を実施した。会談後の共同声明で両首脳は、石油、ガス、原子力を含む米印エネルギー安全保障パートナーシップを再確認した。特に原子力については、大規模な現地化と可能な技術移転を通じて、米国の設計による大型炉や小型モジュール炉(SMR)をインドに共同で建設する計画を前進させ、米印原子力協定を完全に実現すると表明。また印政府による、原子力法及び原子炉に対する民事責任法(Civil Liability for Nuclear Damage Act: CLINDA)の改正に関する2月1日の発表を受け、民事責任の問題に対処し、原子炉の製造及び展開における両国の産業界の協力促進のため、CLINDAに準拠した二国間取決めの確立に合意した。モディー首相は訪米に先立つ2月12日、フランス・パリでE. マクロン大統領と会談。会談後の共同声明では、両者は原子力がエネルギー安全保障を強化し、低炭素経済に移行するためのエネルギーミックスの不可欠な部分であるとの共通認識を強調。両国の民生用原子力分野における協力、特にジャイタプール原子力発電所プロジェクト関連での取組みを確認した。また、民生用原子力協力に関する特別タスクフォースの第1回会合が1月に開催されたことを歓迎したほか、SMR及び先進型モジュール炉(AMR)のパートナシップ確立に関する基本合意書に署名。さらに、印原子力省(DAE)と仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)間で、印・原子力エネルギー・パートナーシップ国際センター(GCNEP)と仏・国立原子力科学技術研究所(INSTN)を通じた原子力専門家の訓練及び教育における協力に合意した。なお、モディー首相はマクロン大統領とともに、2月10日~11日にパリで開催されたAIアクションサミットの共同議長を務めている。
26 Feb 2025
613
中国広東省で2月24日、中国広核集団(CGN)の陸豊(Lufeng)1号機(PWR=CAP1000、125万kWe)が着工した。陸豊原子力発電所では、6基のPWR建設が計画されており、うち4基がすでに国務院常務会議で承認されている。同発電所の5号機と6号機は、「華龍一号」(HPR1000、各120万kWe)を採用しており、すでにそれぞれ2022年9月、2023年8月に着工。同1号機と2号機は、2024年8月に承認されており、採用されるCAP1000は、米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000の中国版標準炉モデルで、設計運転寿命は60年。全6基が稼働すると、年間の発電電力量は約520億kWhとなり、CO2排出量を約4,270万トン削減できるという。
25 Feb 2025
882
海洋分野の原子力利用プロジェクトを進める英国のコアパワー社は2月12日、2030年代半ばまでに浮揚式原子力発電所(FNPP)を市場に投入する米国主導の海事民生用原子力プログラム「リバティ(Liberty)」を初公表した。コアパワー社が2月12日にテキサス州ヒューストンで開催した “New Nuclear for Maritime Houston Summit”で、同社のM. ボーCEOが発表したもの。リバティの由来は、第二次世界大戦中に米国で迅速かつ大規模に量産され、連合国による大西洋の戦いの勝利を可能にしたリバティ船にあるという。同プログラムは米国を拠点にFNPP用の最初の製造プラントを建設し、米国の原子力規制の枠組みを活用して、FNPPや原子力船の世界的な運用を目指している。具体的には、先進炉を世界展開するために必要な規制およびサプライチェーンの枠組みを構築する。ボーCEOは、「リバティ・プログラムは、2.6兆ドル(約390兆円)規模の浮揚式原子力発電市場を開拓する。FNPPの建設は予定通りに予算内で完了するだろう」「経済活動の65%が沿岸地域で行われていることを考えると、原子力発電は新たな市場開拓が可能」と語った。同プログラムの第1段階では、FNPPの大量生産するという。その後、FNPPの大規模展開で得たノウハウを、プログラムの第2段階である原子力船の開発に活かしたい考えだ。FNPPは、確立された造船プロセスを活用し、熟練した労働力と、造船所のモジュール生産ラインによって製造され、港湾や沿岸地域に停泊できるバージとなるほか、より沖合に停泊する大容量の発電所にもなるという。FNPPシリーズは、複雑なサイト準備を必要とせずに顧客の所在地まで曳航することが可能であり、造船所では、試運転、メンテナンス、燃料補給、廃棄物管理を実施する。従来の原子力技術とは異なり、溶融塩炉などの先進技術を採用。次世代炉は本質的に受動的な安全性を備え、大気圧に近い圧力で稼働するため、広大な緊急避難区域を設ける必要がなく、FNPPや原子力商業船の保険適応性が大幅に改善されるという。また、先進炉を搭載する船舶は設計寿命全体にわたって、わずか1回の燃料補給で済み、同時に廃棄物の発生量も最小限に抑えられる。原子力船は速度、効率、貨物積載能力の面で大幅な改善が見込まれている。コアパワー社は現在、多様な先進炉開発企業と提携し、海上利用に最適化された原子炉の開発に取組んでいる。リバティ・プログラムでは、2028年にFNPPの受注を開始し、2030年代半ばまでに完全な商業化の実現を想定している。2030年までのロードマップの第1段階では、設計に加えて、ライセンス、保険、輸出管理に必要な枠組みの構築、第2段階では、サプライチェーンと労働力の開発、第3段階では、事業運営モデルの開発と製造拠点の構築にあたるという。加えて、国際海事機関(IMO)や国際原子力機関(IAEA)などと協力し、原子力船の民事責任条約の策定に取組み、国際的な安全およびセキュリティ基準の策定を支援するとしている。ボーCEOは、「当社のリバティ・プログラムは、重工業ならびに海上輸送分野に強靭なエネルギー安全保障をもたらし、世界貿易を変革する」と語った。
25 Feb 2025
631
韓国のHD現代グループの韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社は2月12日、米国ヒューストンで開催された“New Nuclear for Maritime Houston Summit”にて、小型モジュール炉(SMR)駆動によるコンテナ船の設計モデルを初公開した。KSOE社はこれまでに、SMRを適用した15,000 TEU((TEU(twenty-foot equivalent unit、20フィートコンテナ換算)。コンテナ船の積載能力やコンテナターミナルの貨物取扱数などを示すために使われる、貨物の容量のおおよそを表す単位。))級コンテナ船モデルについて、米国船級協会(ABS)の基本設計承認(AIP)を取得。今回公開した設計モデルは、実際の設備や安全設計の考え方を取入れ、経済性と安全性を向上させたものだ。原子力船は従来の船舶と異なり、エンジン排気装置や燃料タンクを必要としない。KSOE社は、これまで大型のエンジンルーム設備が占めていたスペースを最適化し、追加のコンテナを収容できるようにして経済性を向上させた。また、安全性を確保するために、ステンレス鋼と軽水による二重タンク方式の海上放射線遮蔽システムを採用し、堅牢な安全基準を確保している。さらにKSOE社は、世界的なエネルギー技術企業である米ベーカー・ヒューズ社と協力して、超臨界二酸化炭素ベースの推進システムを採用し、既存の蒸気ベースの推進システムと比較して熱効率を約5%向上させた。この技術の導入により、原子力船の経済性と環境上の利点がさらに向上する。KSOE社は、韓国北西部の京畿道龍仁市にある未来技術試験センターに海上原子力実証施設を設立し、安全性設計の検証と試験を行う予定だ。ABSのP. ライアン最高技術責任者は、「原子力船は、カーボンニュートラルが台頭しつつある現在の造船市場においてゲームチェンジャーになり得る。ABSとKSOE社は、世界の造船市場における海上原子力技術の商業化の加速に貢献する」と語った。海事業界では、炭素排出量を削減し、持続可能性の目標を達成するため、海事用途の原子力技術への関心と投資が高まっている。KSOEグリーンエネルギー研究所のS. パク所長は、「原子力船の商業化に必要な国際的な規制を確立するため、主要な船級協会だけでなく、国際的な規制機関との協力を強化している」「陸上のSMR製造プロジェクトをはじめとし、2030年までに海洋原子力ビジネスモデルの開発を目指す」との展望を示した。KSOE社は2024年2月から米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社と次世代SMRの共同研究を行い、関連技術の開発を加速している。同年12月には、米国ワイオミング州に建設中のテラパワー社の先進炉「Natrium」の主要機器の製造を受注した。
21 Feb 2025
1048
ウクライナ最高会議は2月11日、フメルニツキー原子力発電所の未完の3、4号機の完成に向けて、ブルガリアで建設が中止されたベレネ原子力発電所の設備購入に関する法案を承認した。賛成269票、反対40票であった。ウクライナの原子力発電事業者エネルゴアトム社は同日、ウクライナ議会の議員による承認を歓迎し、「この決定は、ウクライナのエネルギーの自立とエネルギー安全保障を強化し、原子力産業のさらなる発展に貢献するものである」と表明。エネルギー省は、「同3、4号機の完成は、原子力発電所をゼロから建設するよりも数倍安価で迅速である」と指摘し、この議会の承認を受け、詳細なプロジェクト見積の更新作業を加速するようエネルゴアトム社に要請した。フメルニツキー発電所の3、4号機は1990年に建設工事を中断してから未完成のままである。いずれも出力100万kW級のロシア製PWRであるVVER-1000を採用しており、3号機の建設進捗率は75%、4号機は20%である。エネルゴアトム社は3号機の完成を2028年に予定する。ブルガリアでは、ベレネ原子力発電所(VVER-1000×2基)の建設計画があったが、2023年10月に中止となっており、ロシアから購入した炉設備等が建設サイトに保管されている。エネルゴアトム社は、この未使用の機器を購入して、フメルニツキー発電所の3、4号機に利用する計画だ。エネルゴアトム社は、両機が完成すると発電量が年間150億kWh以上増加し、電力輸入への依存が減少、建設と運転の段階で、数千人の雇用を創出する他、中小企業の成長、コミュニティ収入の増加、投資誘致など、経済成長に貢献すると評価している。また、2030年以降に運転期限を迎える原子炉とリプレースすることにより、安定した信頼性の高いエネルギー供給を確保できるという。IAEAのR. グロッシー事務局長は2月初旬にウクライナを訪問。フメルニツキー発電所の3、4号機の建設プロジェクトへの原子力安全に関する助言と技術支援を約束した。ウクライナは原子力部門におけるロシア系サプライヤーとの協力を完全に断っていることから、米ウェスチングハウス(WE)社からの燃料、またはWE社の技術を採用してウクライナで生産した燃料のみで運転される。WE社は現在、同3、4号機をAP1000を採用する5、6号機の最先端の技術レベルに引き上げるため、安全性分析を実施中である。ウクライナには15基の原子力発電所があり、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャ発電所の6基(合計出力600万kWe)を含め、原子力は総発電電力量のおよそ半分を供給している。フメルニツキー1号機(VVER-1000)は1987年に送電網に接続されたが、他の3基の建設は1990年に中断。2号機(VVER-1000)の建設のみ再開され、2004年に送電網に接続された。WE社製AP1000を採用する5、6号機を含む、全6基が稼働を開始すると、その供給する電力は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える。
21 Feb 2025
611
国際エネルギー機関(IEA)は2月14日、「Electricity 2025」の最新版を公表。原子力や再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー源により、今後3年間に世界で増加する電力需要分をすべてカバーできるとの見通しを示した。同報告書によると、世界の電力消費量は近年で最も速いペースで増加し、2027年まで毎年4%近く増加することが見込まれている。この需要の伸びは、今後3年間で毎年、日本の年間電力消費量を上回る量が追加されることに相当し、主に工業生産や空調、運輸部門が牽引する電化の加速、およびデータセンターの急速な拡大によるものと分析している。また、追加需要の85%は新興国と開発途上国が占め、とりわけ中国では、2020年以降、電力需要が経済成長を上回る速いペースで増加、電力消費は2027年まで平均約6%の成長が見込まれている。一方、先進諸国も2009年以降、電力需要は鈍化していたものの、再び経済成長とともに、電力需要も大幅に増加し始めると予想されている。米国では、今後3年間でカリフォルニア州の現在の電力消費量に匹敵する電力が追加される。欧州連合(EU)では、近年の景気減速から回復しつつあるとしながらも、電力需要の伸びはより緩やかに推移し、2027年までに2021年の水準に戻る程度と予測されている。いずれにせよ、世界全体では、再エネと原子力の発電電力量が電力需要の増加分をすべて賄うのに十分な速さで拡大していくと予想され、増分がカバーされる見込みだ。これら予測の結果、世界の発電によるCO2排出量は、2024年に約1%増加した後、今後数年間はほぼ横ばいに推移する見込み。また、原子力発電について、報告書は「力強い復活を遂げつつある」とし、2025年以降の発電電力量は毎年過去最高を更新すると予測。向こう3年間で、年平均2.3%の成長を見込んでいる。この成長の要因として、保守作業が終了したフランスの原子力発電所の戦列復帰や日本の再稼働のほか、中国、インド、韓国等における新規原子炉の運転開始を挙げた。さらに、報告書は、原子力発電の成長傾向について、政策関係者がその重要性を再認識したことが大きな要因と指摘。それにより、より多くの国々が低排出エネルギーシステムの安定した基盤として、原子力を位置付ける動きが強まっていると分析した。
21 Feb 2025
796
米テネシー州のB. リー知事は2月10日、州議会において2019年の知事就任から7回目となる一般教書演説を行い、2026会計年度(2025年7月~2026年6月)の予算案について明らかにした。原子力関係予算では7,000万ドル(約105億円)を計上している。リー州知事は、「テネシー州が原子力イノベーションをリードし、アメリカの未来を保障する」と語った。知事自身の提案により2023年、州政府が5,000万ドル(約75億円)を投じて、原子力関連企業の同州への拠点移転支援や同州の大学・研究機関における原子力教育の発展を目的とする原子力基金が創設されている。知事はこの基金の創設を契機に、テネシー州が米国の最先端のエネルギー企業から注目を集めていると指摘。米新興企業のケイロス・パワー社やX-エナジー社のほか、仏オラノ社の米国法人オラノUS社がテネシー州に拠点を置いている現状に言及し、先進的な原子力企業の一層の誘致を目指し、同基金への1,000万ドル(約15億円)の追加投資を予算案に含めていると説明した。ケイロス・パワー社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」にてフッ化物塩冷却高温炉の「ヘルメス」実証プラントの建設工事を開始している。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフト市の製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。また、オラノUS社が遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地に同州オークリッジ市を選定している。また知事は、同州のテネシー峡谷開発公社(TVA)がSMR建設用地として事前サイト許可を有する、クリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)開発支援に向けた基金を創設。5,000万ドル(約75億円)を拠出し、テネシー州を次世代原子力のリーダーとして位置づけると表明した。TVAは今年1月、SMRの建設を検討している主要な公益事業会社や開発者、サプライヤー、建設パートナーと共同で、クリンチリバー・サイトにおける、GE日立製のSMR「BWRX-300」の建設を加速するために、DOEの第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,202億円)の助成金を申請している。このほか、原子力関係の予算案には以下を含む。原子力諮問委員会の勧告に従い、原子力関係従業者の教育支援のため、職業教育投資(Governor’s Investment in Vocational Education: GIVE)に1,000万ドル(約15億円)の追加投資。商業用核融合発電のための米国初の規制枠組みの策定に260万ドル(約3.9億円)。さらに知事は、米国全土および世界中から、米南東部への移転を検討している多くの企業関係者と会うが、その決断は、エネルギー、労働者の有無に左右される、と言及。原子力が労働者階級の家庭にとって重要なのは、エネルギーがなければ、経済発展も雇用創出も無くなるからだ、と強調した。知事は、新興企業、新技術、研究開発を戦略的に支援し、経済の多様化、雇用の促進を図るほか、職業訓練、技術教育を拡大し、テネシー州の若者たちに雇用を確保し、テネシー州が米国最大のイノベーターたちの新たなフロンティアになることを目指す、との決意を表明した。
20 Feb 2025
900
英国の原子力廃止措置機関(NDA)傘下で、放射性廃棄物の地層処分の実施主体である原子力廃棄物サービス(NWS)社は1月30日、英国の高レベル放射性廃棄物を処分する深地層処分施設(GDF)の設置に適した場所と、設置意思のあるコミュニティを探すために、3か所の重点エリア(Areas of Focus)を特定したことを明らかにした。重点エリアは、サイト選定プロセスのうち、調査エリア(Search Area)に設定されている、イングランド北西端にある旧カンブリア州カンバーランド市の、①ミッドコープランドと、②サウスコープランド、イングランド東部にあるリンカンシャー州イーストリンジー市の、③テッドルソープの3か所のエリア内に特定された。なお、NWSが2023年6月から実施していたサイト評価の結果を受け、旧カンブリア州の旧アラデール市の調査エリアでは、同年9月に選定プロセスは終了している。英国では2008年から2009年にかけて、カンブリア州の2つの自治体がGDF受け入れに関心を表明したものの、州政府の反対を受けて建設サイトの選定プロセスは2013年に白紙に戻った。英政府は2018年12月に策定した新たな政策に基づき、新しいGDFサイト選定プロセスを開始した。そのプロセスは、地元コミュニティとの合意ベースであることに特徴がある。まずGDFの受け入れに関心をもつ個人や団体、企業がNWSとともに作業グループ(WG)を立ち上げ、NWSとの初期協議を開始、GDF建設の潜在的適性があると思われる、調査エリアを特定する。この検討段階では地元自治体がWGに参加する必要性はないが、調査エリアでサイト評価を進めるには、同エリアに関係する地方自治体が少なくとも1つ参加する「コミュニティ・パートナーシップ」の設立が必須。調査エリアのある、上記3か所の調査エリアでは、すでに同パートナーシップが設立され、同組織がNWSとの対話や地元住民の理解促進活動を行っている。なお、英政府は同パートナーシップを構成するコミュニティに対して、経済振興や福祉の向上を目的としたプロジェクトに限り年間最大100万ポンド(約1.9億円)を提供するほか、サイト選定プロセスが深地層のボーリング調査段階まで進んだ場合には、年間最大250万ポンド(約4.8億円)を交付する奨励策を打ち出している。NWSによると、今回、重点エリアを特定し、調査エリアを絞り込んだことで、NWSの専門家が詳細な現地調査や机上調査、土地所有者との協議を含むサイト評価のほか、その後に続く、GDFを安全かつ確実に設置できる適切な場所を検討するサイト特性調査に重点的に取組めるようになるという。重点エリアは、地質データ、環境保護地域や市街地の検討など、さまざまな情報を用いて特定されている。NWSは、GDFに適した場所を探すために必要な3つの重要な要素として、適切な深地層の地質環境、適切な地表面の位置、地表施設と地下施設を結ぶ地下坑道の設置可能性を挙げる。現在特定されている、上記①~③の3か所の重点エリアでは、地下施設の設置エリアは共通して、領海内(沿岸から約22km)の海底下で検討されており、①と②の沖合における地下施設の設置エリアは同一である。また、①では地表面の重点エリアが2か所あるが、サイト特性調査の開始(2030年頃を予想)前には1か所とする計画である。なおNWSは、重点エリアの特定がこれらのエリアにGDFが設置されることを意味するものではない、と強調する。建設は、適切な場所が特定され、ホストコミュニティの施設設置の意思を確認し、必要なすべての同意と許可が得られた場合にのみ開始される。重点エリアのサイト評価後、NWSは国家の重要インフラ開発に必要な開発合意書(DCO)ならびに環境許可の申請を行う。これら許可の取得後、ボーリング調査を含む、潜在的なGDFの設計とセーフティケースの作成のために必要となる、サイト特性調査をおよそ10年をかけて実施する。2030年代後半には、地元コミュニティのGDF受入れの最終意思を確認した上で、設置サイトを最終選定し、政府に通知。2040年代初めには原子力サイト許可を含む、あらゆる同意と認可を取得、着工を計画する。2050年代には中レベル放射性廃棄物、2075年からは高レベル放射性廃棄物と使用済み燃料の搬入をしたい考えだ。GDFの建設、操業、閉鎖まで150年間を要すると見込んでいる。
20 Feb 2025
723
英国を拠点とするAI(人工知能)クラウドプラットフォームのフルードスタック(Fluidstack)社は2月10日、原子力を活用した世界最大級のAIスーパーコンピューターを構築するため、フランス政府と提携に関する覚書を締結した。2028年までに100万kW超の電力を供給するAIコンピューターの構築を目指している。この提携は、パリで開催されたAIアクションサミットの場で発表され、フランスのE. マクロン大統領のリーダーシップの下、E. ロンバール経済・財務・産業・デジタル主権相、M. フェラッチ産業・エネルギー相、フルードスタック社のS. マクラリー共同創業者兼社長が調印した。フランスは、このスーパーコンピューターに豊富な無炭素電源である原子力エネルギーを活用し、次世代AIモデルに比類のない計算能力を提供することを目指している。これにより、AIインフラ、エネルギーセキュリティ、デジタル主権の面で、フランスのリーダーシップを強化したい考えだ。フランスの原子力資産、送電網を管理する国営企業RTEの高速グリッドインフラ、AI人材、最先端のコンピューティング技術がバックアップする。マクロン大統領は、フルードスタック社との提携にあたり、「フランスは2017年以来、人工知能の分野で、人材を訓練し、研究を発展させ、ヘルスケア、宇宙、防衛、大規模言語モデルにおいてキープレーヤーを育成・強化しており、欧州をリードしている。原子力エネルギーは制御可能で安全かつ安定、脱炭素化されたエネルギー源であり、AIコンピューター能力の拡大に最適。フルードスタック社との100億ユーロ(約1.6兆円)の契約は、私の野心を具現化したもの。世界は加速し、イノベーションのための戦いが起きている。我々は減速してはならない」と語った。このプロジェクトは既に、金融業界から強い関心を集めており、プロジェクトのフェーズ1ではフルードスタック社が100億ユーロの初期投資を実施、2026年にAIスーパーコンピューターの稼働開始を予定している。フェーズ1では、最終的に50万個近くの次世代AIチップが搭載され、AIインフラ、AI研究、高性能コンピューティング分野において数千もの雇用創出が見込まれている。なお、AIアクションサミットの開催を機に、フランス電力(EDF)は2月10日、フランスで新たにデータセンターを開発するデジタル企業向けに、EDFのサイトアクセスへの関心表明の呼びかけを近日中に開始すると発表した。この取組みは、潜在的な投資障壁を取り除き、電化プロジェクトの開発を促進することが目的。EDFは関心のあるデジタル企業に、電力網に接続済みの使用可能な土地スペースを提供する計画で、これにより開発期間を数年間短縮できるという。EDFは既に、自社サイトで4つの工業用地を特定しており、利用可能な総設備容量として200万kWeを想定。2026年までにさらに2サイトで用地を確保予定である。
19 Feb 2025
1528
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2月10日、中小原子力事業者を対象に設備や運転資金を低利で融資する「原子力発電エコシステム(サプライチェーン)融資支援事業」の対象事業者を募集すると発表した。融資総額は1,500億ウォン(約157億円)。本事業に採択された企業は、8つの商業銀行を通じて、設備資金100億ウォン(約10.5億円)、運転資金10億ウォン(約1億円)を含む最大110億ウォン(約11.5億円)の融資を年1~2%の低金利で受けることができる。融資期間は最大10年(設備資金10年、運転資金2年)。昨今、生成AI(人工知能)による電力需要が高まる中、カーボンフリー電源である原子力発電の役割が注目されている。MOTIEは、大規模な政策資金の提供により、国内企業の競争力強化や原子力産業の持続的な成長を支えたい考えだ。今年は、新ハヌル3、4号機(PWR=APR1400、140.0万kW×2基)の建設加速や、エジプトやルーマニアなど海外からの受注拡大による企業の投資需要の増加などを考慮し、2025年度政府予算における中小融資支援事業の予算は前年比500億ウォン増の1,500億ウォンに増額された。MOTIEによると、同支援事業は2024年に開始されて以来、計69社・約1,000億ウォンの融資実績がある。韓国の原子力産業実態調査によると、原子力発電産業の売上高(単位:兆ウォン)は、21.6(2021年)、25.4(2022年)、32.1(2023年)と増加基調で推移している。
18 Feb 2025
702
スペイン国会(下院)の本会議で2月12日、中道右派の国民党(PP)が提出した、スペインの原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める非立法提案が、賛成171票、反対164票、棄権14票の僅差により、原案のまま可決された。スペインでは2018年6月の中道左派の社会労働党(PSOE)への政権交代を機に、原子力発電所を段階的に閉鎖・廃止する方針へと転換。現状の政策では、2027~2035年までに運転期限を迎える原子力発電所は順次閉鎖される予定となっており、スペインの原子力発電設備容量は2030年末までに約210万kWに縮小し(現在運転中の7基中5基が閉鎖)、2035年にはゼロとなる予定である。今回議会が承認した提案文書は、原子力発電の段階的廃止という国の決定を覆す一連の措置を実施するよう促すものであり、政府に以下の8項目を要望している。スペイン国内の既存の原子力発電所の運転期間を、技術的および経済的な観点から、欧州の規制、スペインの原子力安全委員会(CSN)の指針、および原子力発電事業者と協議して延長する。エネルギー移行における原子力の重要な役割を認識し、安全で安定した電力供給を保証し、電力市場価格の低下と温室効果ガス排出量の削減に貢献する原子力発電所の経済的持続可能性を確保する。スペインで運転中の7基の原子炉の閉鎖計画により影響を受ける自治体、地方自治体、地元当局、および産業界と対話する。国家市場競争委員会(CNMC)および電力系統運用者(REE)に対し、改訂された国家エネルギー・気候計画(NECP)に盛り込まれた新たな予測を考慮に入れつつ、予定されている原子炉の閉鎖が経済に与える影響、およびエネルギー安全保障への影響を評価する報告書の作成を要請する。スペインの原子力産業が、EUのネットゼロ産業法がもたらす課題に貢献し、機会を捉えることができるよう対策を講じる。気候変動とエネルギー移行に関する法律7/2021(2021年5月発効)の第10条を廃止する立法イニシアチブを導入する(この条項は、スペイン国内でのウランなどの放射性鉱物の探査、採掘、加工、および、これらの物質を取扱う核燃料サイクル施設に対する新規認可申請を禁止している)。原子力発電事業者との協議を通じ、第7次放射性廃棄物総合計画、統合国家エネルギー・気候計画(NECP)2023-2030、承認済みの原子力発電所の閉鎖手順を見直す。これらの検討事項を国家エネルギー安全保障専門委員会に提示し、同委員会がスペインのエネルギー安全保障戦略を上記の要点に沿って修正するよう要請する。スペインでは、PWR×6基、BWR×1基の計7基、合計出力739.7万kWeが運転中。1980年代前半~後半にかけて運転を開始し、現在、総発電電力量の約2割を原子力が占める。残りの約3割を火力発電(石炭、石油、大半がガス)、約5割を再生可能エネルギーで賄う。なお、最新のNECPでは、2030年には総発電電力量の81%を再生可能エネルギーで賄うことを想定している。スペインは日本と同様、国内のエネルギー資源が乏しく、1950年代から原子力開発を開始。当初は米国やフランスから技術を導入し、1970年代のオイルショックを契機に開発を加速、これまでに10基を開発してきた原子力先進国の一つである。
17 Feb 2025
1506
米アリゾナ州のアリゾナ・パブリック・サービス(APS)社は2月5日、同州にある他電力会社2社と、州内において原子力発電の追加導入を検討すると発表した。APS社はアリゾナ州最大の電力会社。石炭火力発電所の他、州都フェニックス市の西に位置するパロベルデ原子力発電所(PWR×3基、各141.4万kWe)を1986年から運転している。同州のソルト・リバー・プロジェクト(SRP)社、ツーソン電力(TEP)社とともに、同州の増大するエネルギー需要に対応するため、先進的な原子炉の導入可能性評価に共通の関心を持っている。APS社はSRP社およびTEP社と協力して、原子力発電所の新規建設を検討し、閉鎖予定の石炭火力発電所を含む、幅広い候補地を評価する取組みを主導する。3社は、原子力は信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギーであり、経済成長に貢献する、多様なエネルギーミックスの重要な構成要素であるとの認識で一致している。APS社のT. ゲイスラー社長は、「アリゾナ州のエネルギー需要が急激に増大する中、原子力発電所の新規建設には10年以上かかる。エネルギー源の選択肢の検討を今すぐ始めなければならない。他のエネルギー源とともに新たな原子力発電の実現可能性を評価していく」と語った。3社は追加の原子力発電所として、小型モジュール炉(SMR)と、可能であれば大型炉の設置を検討している。アリゾナ州で建設候補地の予備調査を開始するにあたり、すでに米エネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー実証局(OCED)および原子力エネルギー局(NE)による第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラム下の助成金を申請している。助成が承認されれば、3年間のサイト選定プロセスと、米原子力規制委員会(NRC)への事前サイト許可(ESP)申請に向けた準備が加速されることになる。3社は共同作業により、早ければ2020年代遅くにサイトを選定、2040年代初めには追加の原子力発電所の運転開始を計画している。
17 Feb 2025
1003