オランダの原子力研究機関のNRGパラス(Nuclear Research and consultancy Group PALLAS)は3月20日、米ケイロス・パワー(Kairos Power)社と、ケイロス社が開発する小型モジュール炉(SMR)で使用される燃料と材料を評価する試験契約を締結した。ケイロス社は2024年10月、米IT企業大手Google社と、ケイロス社が開発する先進炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結している。そのため、ケイロス社は開発中の第4世代SMRであるフッ化物塩冷却高温炉 (KP-FHR、熱出力32万kW、電気出力14万kW)の商業化に向けて、オランダ・ペッテンにあるNRGの高中性子束炉(HFR)での燃料照射プログラムを通じて、燃料および材料の照射試験を行い、米原子力規制委員会(NRC)に対して、燃料の安全性を実証したい考えだ。また、ケイロス社がNRGと協力して実施する黒鉛照射試験は、KP-FHR炉心で使用される黒鉛反射体構造の高レベルの中性子曝露に対する安全限界を実証するもの。照射後特性は、NRCの許認可において重要な指標となり、原子炉技術の安全性を示すものとなる。原子炉容器と構造部材に使用されるステンレス鋼材料の照射試験も実施し、安全性と設計限界を実証することで、ケイロス社の許認可活動を支援するという。なお、NRCはケイロス社の実証炉「ヘルメス」と後継の「ヘルメス 2」の建設許可をすでに発給しており、ケイロス社は、これらヘルメス炉から学んだ教訓を基に、2030年までにGoogle社向けの商用フリートに初号機を配備、稼働させる計画である。ケイロス社のM. ハケット燃料・資材担当副社長は、「当社の原子炉技術を進歩させるために、正確で信頼性の高い照射性能データに依存している。優れた照射データの作成に長年の実績のあるNRGは、Google社や将来の他クライアントとのコストやスケジュール面でのコミットメントの達成を支援する、信頼できるパートナーである」と語った。
28 Mar 2025
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は3月11日、同社が開発する先進炉「Natrium」の部品のグローバル製造サプライチェーンの拡大に向けて、韓国のHD現代重工業と戦略的提携を発表した。テラパワー社の最先端技術と、HD現代の製造ノウハウを組み合わせ、ナトリウム冷却高速炉と統合エネルギー貯蔵システムを備えたNatrium(34.5万kWe)の大規模生産と迅速なグローバル展開を可能にする新たなサプライチェーン能力の構築が目的。この提携は2024年、米ワイオミング州に建設予定のNatrium初号機の原子炉容器供給者にHD現代重工業が選定されたことが契機となっている。HD現代重工業は、造船を専門とするHD現代の傘下企業である。テラパワー社のC. レベスクCEOは、「当社は、米国でNatrium初号機導入の後、今後10年間に米国内外で競争力のある価格で後継機の迅速な展開をしていく。Natriumは、ベースロード電力とギガワット級のエネルギー貯蔵を提供し、増大するエネルギー需要に応える、信頼性が高く、柔軟性のある電力供給が可能。世界的に高い評価の製造能力を有する、HD現代重工業との協力により、Natriumのグローバル展開に不可欠な商業規模の生産能力を確立していく」と抱負を語った。HD現代重工業のK. ウォン上級副社長は、「Natriumの部品製造において、当社の実証済みで高精度な製造ノウハウと、大規模生産が可能なサプライチェーン能力を活用し、テラパワー社の商業展開のビジョンを支援していく。本提携は、次世代原子力エネルギーソリューションの商業可能性を加速させる、画期的な協力関係の始まりとなる」と意気込みを示した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つ(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。初号機は、米ワイオミング州南西部のケンメラーで閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込む。同社は2024年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。原子力部の着工は早くて2026年、送電開始は2030年を予定している。
26 Mar 2025
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ロシアのレニングラード第Ⅱ原子力発電所4号機(PWR=VVER-1200、119.9万kW)が3月20日、着工した。昨年3月には、同型の3号機が着工している。計画では、同第Ⅱ発電所の3号機、4号機を稼働させ、1980年代初めに運開した3、4号機(軽水冷却黒鉛減速炉のRBMK-1000、100万kW級)を閉鎖する。1、2号機(RBMK-1000、100万kW級)は45年の運転期間を経て、第Ⅱ発電所1、2号機の運転開始後の2018年12月と2020年11月に閉鎖され、現在は廃止措置の準備中である。着工式典には、ベラルーシのベラルシアン原子力発電所、エジプトのエルダバ原子力発電所、バングラデシュのルプール原子力発電所の代表者らも、オンラインで参加した。これらの発電所では、ロシア国営原子力企業ロスアトムの支援を受けて建設された、または建設中のVVER-1200を採用している。VVER-1200はロシアが開発した第3世代+(プラス)炉で、動的と静的、2種類の安全系を持ち、コンクリート製の二重格納容器や、設計基準外事象の発生時に放射性物質の漏洩を防ぐコア・キャッチャーを備える。ロシアではノボボロネジ第Ⅱ原子力発電所1、2号機で先行採用・運転されている。ロスアトムのA. ペトロフ第一副総裁(原子力発電担当)は本着工に際し、「国のエネルギーミックスにおける原子力発電の割合を増やすという主要な国家目標に向けた新たな一歩、早ければ今年中には、スモレンスク原子力発電所とコラ原子力発電所でリプレース作業を開始し、ベロヤルスク原子力発電所では第4世代の高速炉(BN-1200M)の建設に向けたエンジニアリング調査を完了する予定。今後20年間で、ロスアトムはシベリア、ウラル地域、極東において新たな建設プロジェクトに取組み、国民はクリーンなエネルギーにアクセス可能になる」と展望を示した。ロスアトムは、露大統領の指示により、2045年までに総発電電力量に占める原子力シェアを25%にすることを目指している。ロスアトムのA. リハチョフ総裁は3月7日、ニジニ・ノヴゴロド州南端のサロフ市で開催された「情報Day」で、「大統領の指示により、今年は沿海地方で原子力発電所(VVER-1000×2基)の建設に取組む必要があり、早ければ2032年に送電開始する」と語った。また、今年内にはクルスク第Ⅱ発電所の1号機の営業運転を開始させるほか、海外では、トルコとバングラデシュで建設中の発電所で初併入、ウズベキスタンのSMR発電所の建設契約の実現とともに、大型炉の建設契約の獲得に努める、と語った。さらにリハチョフ総裁は、「世界市場で競争が激化し、経済的圧力と制裁下でも、技術力を活かし、グローバル市場でのリーダーシップの強化に努めなければならない」と強調。国内市場での技術とハイテク製品および輸入代替品の不足、労働市場の競争激化、厳しい経済・金融状況という困難の中、限られたリソースを活用し、効率的に活動すると明言した。具体的には、不採算事業の見直しに加え、諸手続きのデジタル化と簡素化、人工知能の活用により、あらゆる企業機能と投資およびプロジェクト活動の質と効率を向上させるとしている。また、BRICS+およびCIS諸国との協力も継続的に発展させる考えだ。2024年12月末に政府承認された、2042年までの原子力発電設備計画によると、ロシアでは既存および新規(シベリアや極東のような新たな地域を含む)の計15サイトで、大型炉、中型炉、小型モジュール炉(SMR)など計38基(約2,455万kWe)を新設する計画。一方、運転期間を満了する原子炉の閉鎖は約1,037万kWe規模である。この計画が実現すると、2042年の総発電設備容量は現在の11.7%から15.7%に拡大。総発電電力量に占める原子力シェアは、現在の18.9%から2042年に24%になると予測されている。
25 Mar 2025
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カザフスタンのK.-J. トカーエフ大統領は3月18日、大統領直属の機関として原子力庁を設立する大統領令を発令した。3月14日には、自身が議長を務める全国クルルタイ(国民会議)で演説し、今後数十年にわたる経済発展の強固な基盤となる新たなエネルギー産業の創出に向けて、原子力庁を設置することを明らかにしていた。原子力庁は、原子力産業の一層の発展と核セキュリティの強化を目的に、エネルギー省の機能及び権限を移転させ、ウラン採掘に関連する地下利用、原子力利用、住民の放射線安全の確保ならびに原子力発電所の建設及び運転の責任を負う。長官には、A. サトカリエフ・エネルギー相が就任した。(エネルギー相にはE. アッケンジェノフ次官が就任)。トカーエフ大統領は全国クルルタイでの演説の中で、ハイテクはあらゆるセクターの発展に必要な機関車であると指摘。政府は高度なデジタル化と人工知能(AI)の広範な導入に適した環境を作り出すため、エネルギーのポテンシャルを高めるとともに、電力の完全自給自足を達成するだけでなく、世界のエネルギー市場の主要な輸出国にならなければならない、と語った。そのうえで、現在のエネルギー需要だけでなく、今後数十年にわたるダイナミックな経済発展に向けて、新たなエネルギー産業の創出の戦略的重要性を説き、原子力発電所を1サイトではなく、3サイト建設する考えを示した。カザフスタンでは2024年10月、ソ連からの独立後、初となる原子力発電所の建設を問う国民投票が実施され、原子力発電所の建設に7割が賛成した。同年12月、政府はアルマティ州のジャンブール地区を建設地区に決定。今年中には、炉メーカー(またはコンソーシアム)を選定し、政府間協定および関連契約の締結を計画している。なお、省庁間委員会が2月25日に開催され、同国初となる原子力発電所の建設について、以下の提案が検討された。今後、各提案の徹底的かつ包括的なレビューを継続するという。・中国核工業集団公司(CNNC)製「華龍一号(HPR-1000)」(100万kW級PWR)・露ロスアトム製VVER-1200(120万kW級PWR)・韓国水力・原子力(KHNP)製「APR1000」「APR1400」(100万kW級/140万kW級PWR)・フランス電力(EDF)製EPR-1200(120万kW級PWR)サトカリエフ・エネルギー相(当時)や同省幹部は3月中旬、米エネルギー省(DOE)のC. ライト長官、中国核工業集団公司(CNNC)の申彦锋・総経理、仏EDFの幹部らと会談し、原子力分野における協力について協議を実施している。
24 Mar 2025
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インドネシアのPT Thorcon Power Indonesia(PT TPI)社は3月4日、インドネシア原子力規制庁(BAPETEN)に対し、米国のデベロッパーThorcon社製の先進的熔融塩炉を採用した実証プラント「Thorcon 500」(50万kWe)の建設に向けて、許認可手続きを開始したことを明らかにした。同国バンカ・ブリトゥン州のバンカ島の沖合にある、ケラサ島が同プラントのサイトとして提案されている。 シンガポールを拠点とするThorcon International社の子会社であるPT TPI社は2月13日、BAPETENに、サイト評価プログラム(PET)およびサイト評価管理システム(SMET)の承認を得るための申請書類を提出した。PT TPI社は、インドネシア史上初の原子力発電所の建設申請者。なお、インドネシアの国家エネルギー審議会(議長:大統領)が、Thorcon実証プラントを次の5か年計画に組み入れているという。 今回の申請は、約2年間にわたるBAPETENとの事前ライセンス協議に続くもの。2023年3月、両者は熔融塩炉(25万kWe)を2基搭載したThorcon 500の許認可取得に向けて3S(原子力安全、核セキュリティ、保障措置)の確保を前提に、協議を開始することで合意。プラント建設のためのマスタープラン文書のレビュー、原子炉プロトタイプおよび非核分裂性試験プラットフォーム(NTP)施設に係るロードマップに関する協議の他、許認可手続きに必要となる技術文書などの準備、および原子炉の設計承認について協議を行ってきた。PT TPI社は、審査プロセスにおいて迅速かつ徹底的な評価を確実にするために、BAPETENからのいかなるフィードバックにも全力で取組む意向を示している。 Thorcon 500は、1960年代に米エネルギー省オークリッジ国立研究所が開発した技術に基づいく。低圧下で熔融フッ化物塩を一次冷却材として使用、低濃縮ウラン燃料を用いた25万kWeの原子炉2基で構成され、交換可能な密閉「カン」(Can)に格納されている。造船所で船体に組み入れられ、浅瀬のサイトまで曳航される。8年間の運転後、原子炉モジュールは切り離され、カン交換のためにメンテナンスセンターに曳航される。熔融塩燃料は、緊急時には受動的に冷却タンクに排出され、核分裂を即座に停止。加熱のリスクを排除し、安全性を維持する運転員の介入や外部電源の必要はないという。モジュール製造向けに設計されたThorcon 500は、最高の国際安全基準に適合しており、インドネシアのエネルギー移行において重要な役割を果たすと期待されている。ケラサ島で実施された、安全性、生態学的要素、立地適性に焦点を当てた予備的なサイト調査により、同島が有力なサイト候補地とされた。PT TPI社は、2032年までにThorcon 500を稼働させ、インドネシア国営電力会社PLNに売電を計画する。すでに鉱業やIT企業から、ケラサ島でのプラントの完成後、電力購入契約の締結の打診もあるという。PT TPI社はプラントの初稼働後、Thorcon炉の国内製造・組立ラインを開発し、インドネシアの新しい産業部門の成長を促進させたい考えだ。 BAPETENは、3Sの枠組みの中で積極的に協議に参加したPT TPI社の取組みを評価し、事前協議は、許認可プロセスの継続にあたり、技術と管理両面での障壁を最小限にするものである、と指摘した。 インドネシア政府は、再生可能エネルギーや原子力など新たな無炭素電源の研究開発を促進して、CO2排出量の実質ゼロ化に移行していく方針。原子力発電所の設備容量を2035年に800万kWe、2060年には5,400万kWeへの拡大を目指している。現状、総発電電力量の約8割を火力発電(主に石炭火力)が占める。PT TPI社は、Thorcon 500プラントは「太陽光や風力などの再生可能エネルギーを補完する安定した低コストのベースロード電源となる」と語っている。
24 Mar 2025
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フランスのE. マクロン大統領は3月17日、自らが議長を務める閣僚級の「原子力政策評議会(CPN)」を招集。フランス電力(EDF)が計画する改良型欧州加圧水型炉(EPR2)6基の建設費の少なくとも半分を国が優遇融資で支援する方針を決定した。CPNは2022年より定期的に開催されており、フランスの原子力政策全般や各プロジェクトを短期的・長期的に管理・調整する役割を担っている。2022年2月のマクロン大統領による仏東部ベルフォールでの演説で示されたエネルギー政策目標に沿って、エネルギー複数年計画(PPE)に反映すべく、原子力再生に向けた戦略を協議している。同大統領はこの演説で、フランスのCO2排出量を2050年までに実質ゼロとし、国内の原子力産業を再活性化するため、フランスでEPR2を新たに6基建設し、さらに8基の建設に向けた調査を開始すると表明していた。EDFは、パンリー、グラブリーヌ、ビュジェイの各原子力発電所にEPR2を計6基建設し、2038年までに初号機の試運転を計画している。今回のCPNでは、EDFのEPR2による建設プログラムの資金調達と規制スキームの主要原則を検討。建設費用の少なくとも半分を国が優遇融資で支援し、最大100ユーロ/MWhの差金決済取引(CfD)を実施することで合意した。さらにCPNはEDFに対し、コストとスケジュールの管理強化を求め、コストと期限に関するコミットメントを今年末までに提示するよう指示。2026年のEDFによる最終投資決定(FID)を視野に、今後数週間で国とEDFの間で協議をまとめ、欧州委員会(EC)の承認取得に向けた交渉を迅速に開始する方針だ。また、世界各国で新設計画や新型炉の導入が発表される中、CPNは現在の地政学的状況におけるウラン主権の確保のため、サイクルの上流(採掘)における行動計画、特にフランスへの中長期的なウラン供給に向けて、オラノ社に対する国の支援を承認した。使用済み燃料の取扱いについては、ラ・アーグ再処理工場でオラノ社が主導するバックエンド施設の更新・投資計画の継続を確認。既存炉や新設されるEPR2の使用済み燃料を貯蔵するため、2040年までにラ・アーグ工場で新たな貯蔵プールの操業を開始する必要があるという。CPNはさらに、今世紀後半には天然ウラン輸入を必要としない、クローズド・サイクルを達成するためのガイドラインを確認し、研究再開に向けた準備作業を開始。プルトニウムと劣化ウランから燃料を製造し、高速炉で燃焼させた後の再処理には、大規模な技術開発が必要となるため、CPNは、燃料製造業者(EDF、フラマトム社、オラノ社)や仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)、および高速炉に係るすべての関係者に対し、今年末までに作業計画と産業組織の提案を国に提示するよう求めた。また、2021年10月にマクロン大統領が発表した産業投資政策「フランス2030」では、2030年までに10億ユーロを投じて、革新的な小型炉の実証をめざしている。CPNは、この開発プロジェクトの第一段階が順調に進んでいることを評価。2030年初頭に実証炉の試運転につながる可能性が最も高いプロジェクトに優先順位を付け、支援を継続する権限を投資総局に与えた。なおCEAに対しては、マルクールとカダラッシュのサイトに関連するデータを要請する企業がアクセスできるようにし、同サイトで最先端プロジェクトを実施するための協議を開始するよう求めている。
21 Mar 2025
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米ウェスチングハウス(WE)社は3月11日、欧州のデータセンター開発・運営企業であるData4社と、欧州における将来のデータセンターへの電力供給を目的に、同社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(PWR、30万 kW)の導入評価に関する了解覚書(MOU)を締結した。Data4社は、フランス・パリに本拠地を置き、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、ドイツ、ギリシャで35のデータセンターを運営している。米ゴールドマン・サックスの調査によると、生成AI関連サービスの成長に伴い、データセンターの電力需要は2030年までに23年比で165%増加すると予測されている。データセンターは、24時間365日稼働させるため、豊富で信頼性の高い、クリーンな電力が不可欠である。WE社のAP300は先進的な第3世代+炉で、既に運転実績のあるAP1000をベースとした、安全でコンパクトかつ柔軟な設計が特徴。AP1000のエンジニアリングやライセンス、コンポーネント、サプライチェーンを活用できるため、導入が容易で、2030年初めの運転開始をめざしている。同社は「エネルギー集約型の次世代コンピューティングに対して、コスト効率が高く、クリーンな電力をオンサイトで提供できる」としている。Data4社は「これまでのデータセンターは従来の電力会社のみに依存していたが、将来はオンサイト発電と従来のグリッド供給、エネルギー貯蔵を統合し、複数の電源を活用する時代に入る」と指摘。そのうえで、「AP300の導入は、キャンパスのエネルギーの自律性を高め、自給自足の持続可能なデータセンター・インフラ確立に向けた大きな一歩になる」と強調している。一方、WE社製のマイクロ炉「eVinci」について、米ペンシルバニア州立大学は2月28日、ユニバーシティパーク・キャンパスの新しい原子力研究施設への設置に向け、米原子力規制委員会(NRC)に申請プロセスの最初のステップとなる意向表明書(LOI)を提出した。この取組みは、ペンシルベニア州立大学とWE社が2022年に開始した、マイクロ炉の研究開発協力が発展したもの。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。キャンパス全体の研究施設や建物に電力を供給し、燃料補給なしに8年以上にわたり電力の安定供給が可能だ。同大学には、1955年に全米初の運転認可を取得した研究炉BNRがある。WE社のJ. ボールeVinciマイクロリアクター担当プレジデントは、「ユニバーシティパークの研究施設は、ペンシルベニア州を世界有数の原子力イノベーションハブとし、学生や研究者に原子力を活用する新たな方法を見つける機会を提供する」と重要性を強調している。
19 Mar 2025
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インドで建設中のラジャスタン原子力発電所7号機(PHWR、70万kW)が3月17日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は、2024年9月19日に初臨界を達成している。インド原子力発電公社(NPCIL)は、計16基からなる70万kW級の国産PHWR建設プロジェクトを掲げており、ラジャスタン7号機が営業運転を開始すると、同プロジェクトではカクラパー3、4号機に次いで、3基目となる。ラジャスタン8号機、ゴラクプール1、2号機が建設中で、10基が計画中。すべて2031年までに運開予定であり、インド原子力省(DAE)は同年までに原子力発電設備容量を2,248万kWに増強する計画である。インドの原子力発電開発をめぐっては、N. シタラマン大臣が2025年2月、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1億kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、民間企業がこのセクターに参入するための大きなハードルとなっていた原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えを示している。インド政府で原子力や科学技術を担当するJ. シン閣外専管大臣は、3月12日付けの下院議会への答弁書で、バーラト小型モジュール炉(BSMR)の開発状況について説明した。既存のPHWRを改良したBSMR-200(20万kWe)は、バーバ原子力研究所(BARC)とNPCILが設計・開発したもので、鉄鋼、アルミニウム、セメントなどのエネルギー集約型産業向けの自家発電用や、閉鎖予定の火力発電所の代替、送電網が未整備で接続されていない遠隔地への配置を想定している。現在、概念設計が完了し、当局の承認待ちであるという。建設期間はプロジェクト認可取得後、60~72か月を見込み、機器および部品の製造と納入はDAEが開発した国内のベンダーを通じて実施される。また、出力5.5万kWeの先行2基のツインユニットを2033年までにDAEのサイトに設置することも明らかになった。
18 Mar 2025
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韓国国会は2月27日、高レベル放射性廃棄物管理特別法案を可決した。本特別法は、高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料)の管理・処分方針を定めた韓国初の法律であり、高レベル放射性廃棄物を安全に管理するための施設整備とその操業に必要な事項を規定し、誘致地域などの支援策を具体化するもの。可決から15日以内に公布され、公布から半年後に施行される。本特別法では、高レベル放射性廃棄物を管理し、管理施設の設置サイトの調査及び選定に必要な業務を行う独立機関として、国務総理(首相)の下に「高レベル放射性廃棄物管理委員会」(委員会)を設置し、高レベル放射性廃棄物の管理事業者を韓国原子力環境公団(KORAD)とすることを定めている。同委員会は、サイト適合性調査を策定、管轄市・郡・区の申請を受けて基本調査を実施後、深地層調査の対象サイトを選定、当該サイトを対象に同調査を実施する。その結果を評価し、住民投票などを経て管理施設のサイトを最終選定することとしている。また、サイト選定前に、研究専用の地下研究所をサイト内の地下環境に建設・操業し、地質学的特性など、処分施設の安全性に係る性能を研究・実証することとなっている。なお委員会は、管理施設のサイト選定、建設及び操業などに関する許可の申請前には、安全性確保のための規制に関する事項について原子力安全委員会の意見聴取を行うことが義務化されている。同一サイト内に建設される高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設は2050年までに、処分施設は2060年までの操業開始をめざしている。現在、韓国の原子力発電所の運転に伴って発生する使用済み燃料は、すべて発電所サイト内のプールや乾式貯蔵施設に一時貯蔵されている。2024年末までに合計540,924体の使用済み燃料集合体が貯蔵されており、2031年の古里原子力発電所とハンビット(霊光)原子力発電所を皮切りに、サイト内の貯蔵施設は徐々に飽和状態になると予想されている。2021年12月、閣僚級会合である原子力振興委員会で、高レベル放射性廃棄物管理基本計画(第2次)が承認されていたが、原子力産業界は、特別法の制定により計画を明確にし、サイト選定と主要課題、日程などの手続きを拘束力のある法律に詳細に盛り込む必要性を求めていた。KORADのチョ・ソンドン会長は、「特別法が国会本会議を通過したことは、高レベル放射性廃棄物管理のための第一歩を踏み出した歴史的な出来事」とし、「KORADは国家放射性廃棄物管理専門機関として高レベル放射性廃棄物管理事業を適時に推進していく」と語った。KORADは、今回の特別法と政府の高レベル放射性廃棄物管理基本計画を基に、高レベル放射性廃棄物管理のための、①研究用の地下研究施設を活用した実証技術の適時確保、②円滑な事業推進のための人材育成、③透明で合理的なサイト選定手続きの策定、④韓国の実情に適した安全基準の策定、⑤地域住民と国民の合意形成による受容性の確保、などに尽力するとしている。
18 Mar 2025
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仏オラノ社は3月10日、欧州投資銀行(EIB)と、フランス南部のトリカスタン・サイトのジョルジュ・ベスⅡ(GB-Ⅱ)濃縮工場の拡張プロジェクトにおいて、投資の一部である4億ユーロ(約648億円)の融資契約を締結したと明らかにした。この融資は、顧客からの高まる濃縮役務への需要に対応するため、オラノ社がGB-Ⅱ工場のウラン濃縮能力を30%増強するために行っている約17億ユーロ(約2,756億円)の総投資の一部を賄うもの。EIBのエネルギー部門の融資政策および欧州委員会(EC)のREPowerEUプログラムに従い、低炭素電源への移行を加速すると同時に、欧州のエネルギー主権とエネルギー安全保障を強化する欧州戦略の一環である。この融資により、欧州の電力生産の約25%、低炭素電源のほぼ半分を占める原子力発電への支援に貢献するという。仏オラノ社は2024年10月、GB-Ⅱ工場の拡張工事の定礎式を開催した。既存の14基の遠心分離モジュールに4基を増設し、生産能力を30%以上、2,500tSWU/年規模を拡張する。オラノ社は欧州の技術を採用する設備に資金を提供し、大部分はフランスのサプライヤーを利用する。増設した遠心分離機による生産開始は2028年、フル生産は2030年の予定。GB-Ⅱ工場は2011年に遠心分離による生産を開始、2016年には7,500tSWU/年のフル生産能力に達した。なお、ジョルジュ・ベスI工場は、ガス拡散によるウラン濃縮を実施していたが、2012年に閉鎖されている。この拡張プロジェクトは、2023年9月にユーラトム条約に基づく通知の対象となり、ECは2024年10月に肯定的な意見を発表。プロジェクトが同条約を遵守しており、欧州におけるエネルギー安全保障に貢献していると強調した。EIBはREPowerEUプログラムの一環として、エネルギー移行を促進し、エネルギー安全保障と競争力のカギとなる、欧州の自律性の強化に向けたプロジェクトを積極的に支援している。2024年、EIBは欧州のエネルギー安全保障の強化に過去最高の310億ユーロ(約5兆円)の融資を行っている。これにより、再生可能エネルギー、送電網との相互接続、エネルギー効率とエネルギー貯蔵に合計1,000億ユーロ(約16.2兆円)以上の投資を動員することが可能になった。オラノ社は3月6日、ウクライナの原子力発電事業者であるエネルゴアトム社と、2040年までの濃縮役務の提供に関する長期契約を締結した。同社は、ウクライナのエネルギー自立を支援し、欧州のエネルギー安全保障に貢献するという当社のコミットメントの顕れ、としている。
17 Mar 2025
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世界原子力協会(WNA)は濃縮事業者のウレンコ社と3月12日、米テキサス州ヒューストンで開催されている「CERAWeek」において、エネルギー安全保障の提供、および多様なエネルギー集約型産業の電力供給と脱炭素化における原子力の役割に焦点を当てた、セクター横断的なパネルを共催。これに合わせ、大手IT企業を含む14社が、2050年までに世界の原子力発電設備容量を少なくとも3倍に増やすという目標を支持する誓約書に署名した。誓約書に署名したのは、Allseas、Amazon、Bureau Veritas、Carbon 3 Energy (C3E)、Clean Energy Buyers Association (CEBA)、CORE POWER、Dow、Fly Green Alliance (FGA)、Google、Lloyd's Register、Meta、Occidental、ORLEN Synthos Green Energy (OSGE)、Siemens Energyなど、いずれも世界有数の大規模な電力ユーザーだ。この誓約では、原子力が従来の送電網による電力供給を超えて拡大する潜在能力を有し、エネルギー利用者にとりコスト競争力のある事業運営を支える、豊富で持続的なエネルギー源であると言及。また電化率の向上、テクノロジー分野を含む幅広い経済活動、プロセス熱の供給においても、最も信頼性が高く、拡張可能でクリーンなエネルギー源であると指摘する。Meta社エネルギー部門責任者のウルヴィ・パレク氏は、同社が今回の声明を支持した理由について、「コストのかかる原子力発電所の建設という課題を乗り越えるためには、開発業者や電力会社、政府、そして電力ユーザーとの間で大規模な連携が必要だ」と指摘し、「今回の発表は、各国政府に対し原子力発電拡大のための規制緩和を促し、電力会社に対しては『電力を購入する顧客が確実に存在する』というシグナルを送る狙いもある」と説明した。CERAWeek(3月10日~14日)は、米金融サービス企業のS&P Global社が主催する、エネルギーの未来に向けて、政策立案者やエネルギー業界全体が洞察を行う、世界的権威のある年次総会。「2050年までに原子力発電設備容量を3倍に:データセンター、精製所、製造業などへの電力供給における原子力の潜在能力の解放」と題する上記パネルでは、信頼性が高く、クリーンで経済的な原子力を、テクノロジーから石油化学、航空産業などの多様な分野において活用し、世界のエネルギー需要の増加への対応とともに、ビジネスの将来の戦略計画を支援する可能性について議論した。WNAは、業界パートナーとともに、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に増やすという目標(現在、31か国が支持)を達成するため、原子力開発を迅速に進める政策を政府指導者に訴求している。すでに、世界140か国で原子力関連事業を手がける120社・機関も目標に向け最善を尽くすとする誓約に署名するほか、世界有数の金融機関14社がファイナンス支援の表明を行っている。脱炭素化と安定した電力供給の確保を目指す多様な業界で、原子力発電の活用への期待が高まる中、WNAは誓約への参加を呼び掛けるとともに、参加企業はさらに増えると予想している。
14 Mar 2025
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フィンランドで世界初となる使用済み燃料の深地層処分場を建設しているポシバ社は3月4日、地上の使用済み燃料の封入プラントにおける試験操業の完了を明らかにした。最後となる5本目の試験用キャニスターに封入作業を行い、地下430mの貯蔵施設への搬送を成功裡に終えた。なお、実際に使用済み燃料は使用しておらず、非放射性の試験要素を使用している。使用済み燃料は、最終処分がオルキルオトの地下岩盤に行われる前に、地上の封入プラントで鋳鉄製と銅製の二重構造の最終処分用のキャニスターに封入される。封入プラントの試験操業中に、一部の設備では改善の調整作業が必要と判断された。封入のプロセスは、高規格の放射線遮蔽機能を備えた施設で遠隔制御下にて行われ、キャニスターの損傷を想定し、キャニスター1本を封入プラントに戻す、回収試験も実施された。最終処分の試験操業は2024年8月に始まった。ポシバ社は、試験操業は最終処分プロセス全体の機能性と、実際の操業に向けた従業員の準備状況を組織的かつ技術的に検証する重要な段階と捉え、封入プラントの試験操業では、システムや手順の改善に時間を掛けると同時に、全従業員の能力強化と継続的な育成に重点を置いたという。なお、試験操業は、地下設備のすべてで個々の試験が適切に完了後、継続されることになっている。
14 Mar 2025
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英国原子力公社(UKAEA)は3月4日、日本の福島国際研究教育機構(F-REI)とロボット分野において研究開発、人材育成等の促進を目的とする協力覚書(MOC)を締結した。廃炉分野を含む災害現場等の過酷環境での作業に貢献するロボット技術及び自律システム分野での協力関係の構築を目指す。両者はMOCに基づき、共同研究の機会を強化、以下の分野で科学とイノベーションの推進を図るとしている。ロボティクスと自律システム:原子力施設の廃止措置、過酷環境での運用、高度な製造をサポート施設管理とコラボレーション:研究施設でのベストプラクティスの共有、イノベーションと商業化の経験の活用人材とスキル:人材とスキルの開発支援の推進MOCに調印したUKAEAのR. バッキンガム理事は、「UKAEAは、日本の主要組織と強固なパートナーシップを築いており、今回のMOCはそのつながりを拡大する機会。両国が共有する経験と専門知識を活用し、政府、産業界、学界全体で両国の関与を一層強化し、現実の世界に影響を与える最先端技術を推進する」と言及。F-REIの山崎理事長は、「UKAEAの生産的な研究プログラム、教育イニシアチブ、イノベーションと商業化の経路、共同研究施設の開発における豊富な経験は、F-REIのスタートアップ目標に大変有益で貴重な教訓となるもの。本協力を通じて日本の科学技術力と産業競争力を高めていきたい」と抱負を語った。MOCの調印式は、ロンドン郊外にあるUKAEAカラム・キャンパスで執り行われた。山崎理事長一行は、同キャンパスにあるRACE(過酷環境下での遠隔技術の適用に関する研究センター)を視察。この他、カンブリア地方にあるセラフィールド原子力関連施設の廃止措置の現場や、同地方のホワイトヘブンに所在するUKAEA等が参画するRAICo1(ロボット技術とAIの連携の研究組織)の研究施設も視察した。UKAEAは、原子力廃止措置機関(NDA)、セラフィールド社、マンチェスター大学とともに、ロボティクス・人工知能(AI)コラボレーション(RAICo)のメンバー。同コラボは、原子炉廃止措置や核融合工学における共通の課題解決に向けたロボティクスとAIの導入加速を目的としている。また、RACEは2014年設立の世界的なロボットセンターで、人間の介入が困難な極限の環境でのロボット工学の展開における研究開発の最前線にある。RACEの最近の成果では、NDA、戦略的政策研究機関のUKリサーチ&イノベーション(UKRI)、および東京電力が資金提供するLongOpsプロジェクトを通じ、廃止措置向けの次世代ロボット技術の開発に成功している。F-REIは、福島復興再生特別措置法に基づき、2023年4月に設立された特殊法人。福島をはじめ東北の復興を実現すべく、日本の科学技術力・産業競争力の強化、経済成長や国民生活の向上に貢献する、創造的復興の中核拠点を目指している。研究開発を行うだけでなく、研究成果の社会実装・産業化や人材育成についても主要な業務として取組んでいる。
13 Mar 2025
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独エネルギー・エンジニアリング大手のシーメンス・エナジー社は2月28日、英国で小型モジュール炉(SMR)の開発を行うロールス・ロイスSMR社とパートナーシップ契約を締結した。この契約によりシーメンス社が蒸気タービン、発電機、その他補助システムを供給することになりそうだ。最終契約は、2025年末までに締結予定。シーメンス・エナジー社は、何十年にもわたり、原子力発電所の非原子力部である、いわゆる「パワーアイランド」の機器とサービス供給の実績がある。原子力発電所向けとしては、出力2万kWから190万kWまでの蒸気タービンと発電機、および運転制御システムをラインナップする。シーメンス・エナジーの取締役会メンバーであるK. アミン氏は、「当社には数十年にわたる機器供給の実績があり、ロールス・ロイス社は必要な実装のノウハウを持っている。エネルギー供給の未来を共に形作る機会を嬉しく思う」と語った。ロールス・ロイスSMRは既存のPWRをベースとしており、電気出力が47万kWとSMRにしては大型なのが特徴。運転期間は60年以上。なお同炉は、英国の原子力発電所新設の牽引役として2023年7月に発足した政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が実施するSMRの支援対象選定コンペで、最終選考に残った4炉型の1つ。最終入札の提出への招待状が2025年2月に各炉型を開発する4社に送られ、選定プロセスは最終段階に入っている。GBNは今春に支援対象を決定する予定だという。
12 Mar 2025
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米ホルテック・インターナショナル社は2月25日、同社が開発するSMR-300(PWR、30万kW)のパリセード原子力発電所サイトへの建設プロジェクト「Mission 2030」を開始した。本プロジェクトを皮切りに、2030年以降、北米で計1,000万kWのSMRを建設するため、韓国の現代E&C(現代建設)社との協力を拡大する契約も締結した。同社は、ミシガン州にあるパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)サイトにおいてSMR-300を2基建設、2030年に初号機の営業運転開始を目指している。パリセード発電所は2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月に同発電所は所有者・運転者だったエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を運転再開する方針に転換。2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請している。一方、同社は2023年12月にパリセード・サイト内でのSMR-300建設プロジェクトを発表して以来、サイト整備等に5,000万ドル(約74億円)以上を投じ、詳細なサイトと環境調査、地下水モニタリングプログラムや土壌ボーリングを実施してきた。2026年初めにも、NRCへ建設許可を申請する予定。SMR-300のサイト準備作業と並行して、ホルテック社は地元コミュニティへの働きかけにも取組んでおり、このSMR-300構想はパリセード発電所の運転再開への支援と相まって、コミュニティリーダーや地方、州、連邦政府の関係者からの支持を得ているという。なお、今回の現代E&C社との協力拡大の契約は、2021年11月締結の契約を拡大したもの。ホルテック社は、パリセード・サイトでの初プロジェクトから得る知見に基づき、それに続くSMR-300プロジェクトの迅速な展開に期待を寄せている。「Mission 2030」の記念式典にて、ホルテック社のK. シンCEOは、「当社独自の垂直統合型供給力と、現代E&C社のアラブ首長国連邦での原子力発電所建設プロジェクトなど、数多くの複雑なプロジェクトをコスト超過なく完遂する能力により、『Mission 2030』を実現する」「長期にわたる提携先であり、SMR連合の第3の柱である三菱電機の最先端の制御システムがSMR-300に導入される」と述べ、SMRプロジェクトの成功への自信を示した。また、同社のクリーンエネルギー部門のR. スプリングマン社長は、「自社製造および建設パートナーである現代E&C社でほとんどのプロセスを管理しているため、建設プロジェクトの都度、改良と改善が可能。SMRの展開をより迅速かつ費用対効果の高いものとするカギは、建設プロジェクトで得た教訓を新たなプロジェクトに直接適用することだ」とコメントした。現代E&C社のH. リーCEOは、「当社は米法人の現代・アメリカ社を設立し、米国の電力プロジェクトとSMR-300技術に多様な投資を行ってきた。米政府や主要地元企業と緊密に協力して体系的なサプライチェーンを構築し、米国で質の高い雇用を創出、世界のSMR業界の新時代を切り拓いていく」と抱負を語った。ホルテック社によると、2011年から開発中のSMRは設計上の進化を遂げ、最新のものがSMR-300となる。2基構成のツインユニットで、所要面積はわずか0.12㎢。事故時に運転員が現場を離れても安全性が保たれる特性(walk-away safe)を持つ。
12 Mar 2025
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スウェーデンの先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社は2月26日、ノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社と、小型モジュール炉(SMR)「SEALER」(5.5万kWe)の展開に向けて協力覚書を締結した。 SEALERはブリカラ社が開発する鉛冷却高速炉。安全で効率的、出力拡張の可能なコンパクトなモジュール設計を特徴とし、2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。独エネルギー大手のユニパー社、スイス大手エンジニアリング企業のABB社、スウェーデンの原子力発電事業者OKG社、スウェーデン王立工科大学などのパートナー各社から支援を受けており、スウェーデンのエネルギー庁や欧州連合などから約5,000万ユーロ(約80億円)の資金を供与されている。 ノルウェー国内では近年、原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急激に増加。ノルスク社はSMRの建設、所有、運転を目指し、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。今回の覚書により両社は、ノルスク社が現在開発中の発電所プロジェクトにSEALERを導入し、ノルウェーでの展開にむけたサイト適性、規制対応、実行可能性の評価を行う。 両社は今後さらに、スウェーデンにおいて初号機となる実証炉SEALER-Oneの許認可手続き、資金調達、建設、運用面でも協力していく考えだ。ノルスク社はSEALER-Oneプロジェクト会社への参加可能性やブリカラ社への出資など、スウェーデン市場への進出を模索する。両社は覚書締結を契機に、原子力エネルギー開発の強化、サプライチェーン、許認可手続き、ファイナンス、研究等の分野で協力し、両国で革新的で信頼性の高い原子力の展開を加速させ、北部遠隔地への電力供給を含む、スカンジナビア地域のクリーンで安定したエネルギー安全保障を実現させたい考えだ。 ブリカラ社はこれに先立つ2月3日、重要なコンポーネントと安全システムの検証を目的に、電気式のプロトタイプ(SEALER-E)を収容した試験施設の起工式を挙行している。同施設はスウェーデンのオスカーシャム原子力発電所サイトに建設されるが、起工式には、スウェーデンのE. ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業相も出席した。建設の第1段階は6月までに完了予定であり、2025年第3四半期には試運転を開始する予定である。
11 Mar 2025
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韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2月21日、国会の電力政策審議会で採択された第11次電力需給基本計画を発表した。現在建設中または計画中の大型炉に加え、2038年までに新規大型炉2基と小型モジュール炉(SMR)1基の建設が計画されている。電力需給基本計画は、エネルギー政策に関する2年ごとの政府の青写真。今回の計画は2024年~2038年までの15年間を対象とした電力需給の長期展望、発電設備計画などが含まれる。同計画の草案は2024年5月にMOTIEの諮問委員会が公開し、同年末までに最終確定される予定だったが、最大野党の民主党が政府に対し、再生可能エネルギーを支持し、原子力発電の割合を縮小するよう要求。国会での採択は大幅に遅延した。当初140万kWの大型炉(APR1400)を3基建設する計画は2基に縮小され、そのギャップを再生可能エネルギーが埋めることとなった。本計画の大きな特徴は、人工知能(AI)や半導体などの先端産業、電化によって見込まれる電力需要の急激な拡大である。韓国の電力需要は2024年~2038年の間に年平均1.8%増加し、2038年までに1億2,930万kWに達すると予測。2023年と比較して約30%の増加となっている。内、半導体業界の電力需要は2038年までに1,540万kWに達すると予想されている。データセンターの追加需要(増分)は、第10次計画で当初140万kWと予想していたが、440万kWに修正され、電気自動車の普及や国内水素生産などの産業部門の電化による追加需要(増分)は1,100万kWに達すると予測されている。政府は、発電所建設・廃止計画および再生可能エネルギー普及見通しをすべて反映した上で、2038年までに1,030万kWの新たな発電設備が必要になると算定。原子力発電と再生可能エネルギー施設の両方を大幅に拡張する計画である。再生可能エネルギーの設備容量は、2023年の3,000万kWから、2030年には7,800万kW、2038年には1億2,190万kWに増加。原子力発電では、2038年までに3,520万kWの設備容量が必要との見通しを示している。2035年~2036年の間にSMR×1基(70万kW)の導入を計画するが、安全性確保の技術開発と標準設計認可の取得を経て、2030年代初めに建設許可の取得を前提としている。2037年~2038年の間に新規大型炉×2基(280万kW)の建設を計画する。なお2036年までに、老朽化した28基の石炭火力発電所はすべて段階的に廃止され、LNGプラントに転換される。2036年~2038年にかけて、運転期間満了となる12基の火力発電プラントが、揚水発電や水素発電、アンモニア混合などの無炭素電源にリプレース。セウル(旧・新古里)原子力発電所3、4号機と新ハヌル(旧・新蔚珍)原子力発電所3、4号機の建設プロジェクトは計画どおりに進められ、運転期間が満了となる原子炉は運転期間が延長されることになる。この計画が実現すれば、無炭素電源(原子力、再エネ、クリーン水素・アンモニア)による発電量の割合は2023年の39.1%から2030年には53.0%、2038年には70.7%に増加する。再生可能エネルギーによる発電量の割合は、2030年に18.8%、2038年に29.2%になると予測。原子力発電は2023年の1,805億kWhから、2030年に2,042億kWh、2038年には2,483億kWhに成長すると予想され、原子力シェアは、2030年までに31.8%、2038年までに35.2%に上昇する。韓国では現在26基の原子炉が稼働しており、2023年の原子力シェアは30.7%。
10 Mar 2025
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スペインで原子力事業を展開する企業が2月25日、同国の原子力発電所の長期運転を支持するマニフェストを発表した。この文書には、西EAG(Empresarios Agrupados-GHESA)社、仏フラマトム社、西GDES社、米GEベルノバ社、西IDOM社、米ウェスチングハウス(WE)社が署名し、他産業の企業からも賛同を得ている。マニフェストは、スペイン政府の原子力の段階的廃止政策による産業競争力と社会に及ぼす影響について懸念を示すとともに、国際的な潮流に沿った原子力発電所の長期運転の必要性を訴えている。スペインでは2月、議会が国内原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める非立法提案が可決されたばかり。同マニフェストで、産業界が求めている主な事項は以下のとおり。1. 2019年の原子力発電所の段階的廃止協定((政府は2019年、2035年までにスペイン国内の原子力発電所を段階的に閉鎖することで電力会社と合意。))に関する対話と再交渉現状とは大きく異なる国際情勢や社会・経済的背景等の下で結ばれた2019年の原子力発電所の段階的廃止協定について、対話と再交渉の開始を強く要請。原子力発電の代替電源を確保しないまま、2027年のアルマラス1号機(PWR,104.9万kW)の閉鎖を皮切りに段階的廃止を進めれば、産業競争力の低下を招く。2.影響を受ける地域経済と競争力に対する配慮原子力部門を支える産業は、エンジニアリングや部品製造、支援サービスなど多岐にわたり、約2万人の高スキルな安定雇用を創出している。これらのインフラを早期に閉鎖へと追い込めば、地域経済に深刻な経済的・社会的打撃を与えるだけでなく、国全体の産業競争力やエネルギー関連のサプライチェーンにも影響を与えかねない。3.エネルギー政策の見直しスペイン政府と関係当局に対し、原子力エネルギーの継続性を確保する措置を盛り込んだ国家エネルギー・気候統合計画の改定を要請する。原子力は、信頼性の高い、効率的かつ競争力がある低炭素エネルギーとして認識されるべきであり、公正な投資環境が求められる。また、技術的・経済的基準に基づくエネルギー政策の推進を求めるとともに、原子力エネルギーがエネルギー移行に不可欠とする国際的な潮流に沿った政策を採用すべき。4.持続可能な解決策としての原子力発電所の運転期間延長を国際エネルギー機関(IEA)や欧州委員会(EC)、そして現実的かつ持続可能なエネルギー戦略を採用する他の欧州諸国の勧告に倣い、原子力発電所の運転期間を延長することは、エネルギー安全保障の強化や再生可能エネルギーの拡大とともに、エネルギーシステムの持続可能性を確保することに資する。他国からの地政学的な独立性も強化される一方、その実現には、現状の原子力発電税など過度な税負担等を考慮しつつ、原子力発電所の経済性確保が不可欠。5.国内原子力発電所はバックフィット済みスペインの原子力発電所はバックフィットが施され、技術、安全性、効率性の面で世界最高水準にある。世界の原子力発電所と同様、60年、あるいは80年という長期間の運転が可能。この卓越性は、電力の安定供給を保証するだけでなく、スペインの世界的な産業的地位を高める。最後に、マニフェストは、原子力発電所の早期閉鎖が、高い環境的・経済的コストを伴い、原子力産業と関連部門において何千もの雇用を喪失すると改めて懸念を表明。さらに、技術面や人材面において深刻な損失を引き起こし、競争力のある持続可能なエネルギーインフラを維持する国力をも弱めると指摘した。また早期閉鎖は、データセンターやエネルギー集約型産業、小型モジュール炉(SMR)など、スペインの産業の再活性化に不可欠な産業部門への投資を阻害し、エネルギーインフラの脆弱な国での事業遂行を危惧した企業が国外へ流出する可能性についても言及している。
06 Mar 2025
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伊閣僚評議会は2月28日、原子力発電再開に向けた法令整備に関する権限を政府に委任する法案を承認した。法案は議会で承認される必要がある。法案の発効後、政府は12か月以内に原子力発電再開に向けた一連の政令を採択し、法令整備を目指すことになる。この法案は、G. メローニ首相およびG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相の提出によるもの。持続可能な原子力発電および核融合を組み込んだ、「イタリアのエネルギーミックス」を実現することを目的としている。2050年を視野に入れた欧州の脱炭素化政策の枠組みの中で、エネルギー供給の継続性の保証とエネルギーの自立化の促進、脱炭素化目標の達成、エネルギーコストの削減と国内産業の競争力の確保を目指す。法案では、イタリア国内ですでに廃止措置を実施中の「第一世代」または「第二世代」の原子力発電所ではなく、モジュール化や先進技術など、利用可能な最新技術の採用を示している。原子力安全を担当する独立機関の設立の検討や、原子力発電のライフサイクル全体にわたる規制設計を想定。加えて、電力市場への影響を勘案し、電力システムとの常時調整の必要性や、原子力プロジェクト実施者による建設、運転、廃止措置および原子力活動に係るリスクに対する、法的・財務的補償の実施を明言している。イタリアでは1960年初頭から4サイトで合計4基の原子力発電所が稼働していたが、チョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票によって既存の全発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定。最後に稼働していたカオルソ(BWR、88.2万kWe)とトリノ・ベルチェレッセ(PWR、27万kWe)の両発電所が1990年に閉鎖し、脱原子力を完了した。2009年になると、EU内で3番目に高い電気料金や世界最大規模の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決している。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS. ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。しかし、近年は世界的なエネルギー危機やロシアのウクライナ侵攻にともない、イタリアのエネルギー情勢も変化。2023年5月、議会下院は、国のエネルギーミックスに原子力を組み込むことを検討するよう政府に促す動議を可決。同年9月には、環境・エネルギー安全保障省が主催する「持続可能な原子力発電に向けた全国プラットフォーム(PNNS)」の第一回会合が開催され、近い将来にイタリアで原子力発電を復活させる可能性が議論された。伊政府は2024年7月、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出。文書の中で同国が原子力発電計画の再開を決定した場合の原子力発電規模のシナリオを示している。同国では、再生可能エネルギーが主導的な役割を果たすものの、2050年の気候中立目標の達成上、電力部門は電化や水素製造などで大量の電力を必要とする。そのため、天候の影響を受ける再生可能エネルギーを補完するものとして、原子力発電を含めた場合の仮説のエネルギーとコストシナリオを策定。2035年から原子力を導入(小型モジュール炉=SMR、先進モジュール炉=AMR、マイクロ炉の計40万kW)し、2050年の設備容量では核融合を初めて含む、約800万kW(原子力760万kW、核融合40万kW)を想定する。2050年には国内の総電力需要の約11%を供給し、経済を脱炭素化するコストで170億ユーロ(約2.7兆円)の節約効果を指摘。さらに最大22%(1,600万kW)に達する可能性もあると予測している。
05 Mar 2025
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フランスの小型ナトリウム冷却高速炉(SFR)を開発するヘクサナ(HEXANA)社は2月20日、ベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル(Tractebel)社と戦略的パートナーシップ契約を締結した。これにより、ヘクサナ社のSFRと蓄熱能力を組み合わせた小型モジュール炉(SMR)の、エネルギープラットフォーム開発を加速する。トラクテベル社はフランスに基盤を置く電気・ガス事業者エンジー(Engie)社の傘下企業で、原子炉の設計や建設プロジェクトにおいて、フランスの国内外で50年以上の経験を有する。今回の契約で、SMRエネルギープラットフォームの原子力部の建屋・施設の設計に加え、システムの効率性、信頼性、長寿命の確保のため、特殊コンポーネントの取扱いとメンテナンスを実施する。また、欧州の安全規制への適応を支援する。ヘクサナ社は、2023年設立の仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)からのスピンオフ企業。SMRエネルギープラットフォームは、高温熱および電力を生成するように設計された小型モジュール式の高速炉(40万kWt)を2〜6基統合し、電気出力は最大90万kWとなる。CEAが数十年にわたり開発した実証済みのPhénix、Superphénix、ASTRIDの高速炉技術に基づくという。高温の熱エネルギー貯蔵と電力を組合わせ、重工業や航空・海上輸送などのエネルギー集約型産業のニーズに適時に応えると強調する。また、英国発祥で、現在はフランスのパリに本社を置く先進炉開発企業のニュークレオ(Newcleo)社は2月20日、スウェーデンの先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社と、鉛冷却高速炉(LFR)用材料の共同研究開発に関する契約を締結した。これにより両社は、それぞれの研究開発プログラム支援のため、契約の範囲内で互いの研究施設や専門スタッフにアクセスし、材料の試験結果、関連データを交換する。但し、商業目的や本契約の範囲外での新技術の開発には使用されない。それぞれの研究開発プログラムと工業化プロセスから得られる知見を組合わせ、材料ソリューションを強化。次世代炉の信頼性と長寿命を確保し、欧州の脱炭素化に向けてLFR技術の商業化を促進したい考えだ。なおこの契約は、欧州SMR産業アライアンスの目標に沿ってサプライチェーンの最適化を支援し、各当事者の炉型の許認可手続きにおいて国境を越えた知識交換の促進にも役立つと指摘する。ニュークレオ社のS. ブオノCEOは、「我々の協力は、それぞれの開発プログラムの加速に役立つ知識の共有を目的とし、原子力セクター全体にも役立つもの。必要性が緊急で時間が限られる場合、この種の協力がカギとなる」と言及。ブリカラ社のJ. ステッドマンCEOは、「当社の耐腐食性材料に関する広範な専門知識とニュークレオ社の工業化能力を組合せ、鉛冷却炉技術の商業化を進める」と語った。ブリカラ社は、安全で効率的、出力拡張の可能なコンパクト設計の鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)を開発。2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。ニュークレオ社は自社開発の鉛冷却高速炉(LFR)である実証炉「LFR-AS-30」(3万kWe)を2030年までにフランスで建設し、2033年までに英国で商業規模に拡大した「LFR-AS-200」(20万kWe)の建設を目指している。2024年12月には英原子力規制庁(ONR)による包括的設計審査(GDA)を申請した。なお、ニュークレオ社は2月24日、アラブ首長国連邦の首長国原子力会社(ENEC)と、欧州およびMENA地域(中東、北アフリカ)でのニュークレオ社のLFRの展開に向けた戦略的協力に関する了解覚書(MOU)に調印。両社は、欧州での既存LFRプロジェクトへの共同投資と開発の機会を模索する協力を実施し、MENA地域のエネルギー需要軽減が困難な業界にLFR導入による脱炭素化を検討する。また、研究炉や運転中の施設を活用した能力開発プログラムや実地訓練での共同作業を通じ、知識移転の可能性も考慮するとしている。MOU締結はENECの新規および先進的な原子力エネルギー技術への投資と展開における成長計画に沿ったものであり、ENECのバラカ原子力発電所の運転実績とノウハウ、ニュークレオ社の先進技術の組合せが大きな価値を生み出すと期待を寄せる。
04 Mar 2025
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米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は2月28日、テキサス州北西部のハスケル郡に30基のマイクロ炉を建設し、同州内のデータセンター顧客向けに電力供給する計画を発表した。同社は、取得した200エーカー(約0.8㎢)の用地にマイクロ炉を建設し、私設電線と送電網を組合わせて電力を供給する。同社はすでにデータセンターの需要増大に応え、テキサス州の独立系統運用者であるERCOTに送電網への接続を申請しており、米原子力規制委員会(NRC)に事前サイト許可(ESP)を申請する準備を進めている。テキサス州のG. アボット知事は、「テキサスは米国のエネルギーの中心地であり、先進的な原子力発電でNo.1を目指している」「ハスケル郡におけるラスト・エナジー社のマイクロ炉プロジェクトは、州の増大するデータセンター需要に応えるもの」と指摘。ラスト・エナジー社創設者兼CEOは、「当社のマイクロ炉『PWR-20』(2万kWe)は、ユーザーの需要に合わせて出力を拡張できる上に、発電所モジュールはオフサイトで大量製造、簡単に組立てが可能。設置場所の柔軟性を考慮して設計されており、迅速に需要を満たす最善の方法」と強調した。同社は、テキサス州全体での原子力展開の加速を目指す、テキサス原子力アライアンスの創設メンバーでもある。ラスト・エナジー社の既存の商業契約では、欧州全域に80基以上のマイクロ炉の納入を計画するが、そのうち半分はデータセンター向けだという。テキサス州には現在、340を超えるデータセンターがあり、約800万kWの電力を消費し、テキサス州の全電力需要の9%を占める。さらに、2029年までに同州のダラス・フォートワース地域だけでも、主にデータセンターによる4,300万kWの需要増が予測されている。同社はテキサス州でのサイトの開発に加えて、ユタ州でのプロジェクトを模索している。なおラスト・エナジー社は2月17日、英原子力規制庁(ONR)が同社の英国の南ウェールズにおけるマイクロ炉4基建設プロジェクトの原子力サイト許可(NSL)の正式手続き入りしたことを確認したと明らかにした。同社は2024年5月以降、ONRとの許認可申請前活動を行っていた。同社は2024年10月、1951年から1977年まで稼働していた南ウェールズのスリンビ(Llynfi)石炭火力発電所の跡地に、マイクロ炉4基の建設計画を発表。2027年に初号機の建設完了を目指している。同年12月、米輸出入銀行(US EXIM)はラスト・エナジー社による南ウェールズでの建設プロジェクト向けに、1.037億ドル(約156億円)を融資する意向表明書(LOI)を発行した。NSLの正式手続き入りは、2月6日にK. スターマー首相が原子力計画の合理化、導入加速のために導入した、一連の画期的な規制緩和の方針を反映している。これにより、マイクロ炉が計画規則に含まれるようになり、立地適格性が劇的に拡大、「イングランドとウェールズのどこでも」導入が可能となった。本プロジェクトにおけるNSLの取得は、1978年のスコットランドのトーネス原子力発電所以来となる。それ以来、英国ではすべて既存または過去に原子力発電所があった場所、またはそれに隣接した場所に設置されていた。
03 Mar 2025
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インドの天然資源会社大手のヴェダンタ(Vedanta)社は2月20日、合計出力500万kWeの原子力発電所の設計、建設、運転に関し、グローバル企業からの関心表明(EOI)の募集を開始した。ヴェダンタ社は、原子力発電を使用して自社プラントのエネルギー需要を満たす考えだ。エンドツーエンドのターンキープロジェクトを提供する確かな実績を持つ、世界的に認められた企業を探していると表明している。関心のある企業は、募集開始から30日以内にEOIを提出する必要がある。なお同社が、原子力発電所のサイト、インフラ支援、規制当局の承認を手配するという。同社の事業は原油生産からアルミニウム、亜鉛生産まで多岐にわたり、インド全土に工場がある。また、発電事業も手掛けており、既存の900万kWeの火力発電プラントの他、400万kWeの再エネプラントが建設中である。インドのN. シタラマン財務大臣は2月1日、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1億kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、民間企業がこのセクターに参入するための大きなハードルとなっていた原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えを示している。最近では、インドのコングロマリットの「ナヴィーン・ジンダル・グループ(Naveen Jindal Group)」が、原子力企業のジンダル・ニュークリア・パワー(Jindal Nuclear Power)社を設立し、今後20年間で1.8兆ルピー(約3.2兆円)を投じて、バーラト小型原子炉(BSR)を含む先進技術を活用し、1,800万kWの原子力発電所を建設・所有・運転する計画を発表。インド有数の電力会社であるタタ・パワー(Tata Power)社も政府の原子力拡大方針に伴い、小型モジュール炉(SMR)の開発機会を模索すると表明するなど、民間企業による原子力分野への参入が目立ってきている。
03 Mar 2025
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米トランプ大統領は2月14日の大統領令により、大統領府内に、エネルギー政策の司令塔となる、国家エネルギードミナンス(支配)評議会を設立した。D. バーガム内務長官が議長を務め、C. ライト・エネルギー省(DOE)長官が副議長を務める。他メンバーには、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、農務長官、商務長官、運輸長官、環境保護庁の管理者、経済政策や国家安全保障問題担当の大統領補佐官らを含む。同評議会は、最終的には国内のエネルギー生産を増やすことによって「エネルギー支配を達成する」ための戦略について大統領に助言することを目的としている。評議会は、大統領から、100日以内に提言と既存の権限下で可能な行動の両方を含む計画の提出を要請されている。同大統領令では、この計画によって「信頼性の高いエネルギーの緊急性など、エネルギー支配に関連する事項について国民的な意識を高める」と指摘。「インフレを押し下げ、経済を成長させ、高賃金の雇用を創出、製造業における米国のリーダーシップを再確立し、人工知能(AI)で世界をリードする。世界中の戦争を終わらせるために商業的および外交的な手段を振るい、力によって平和を回復する。そのためには、信頼性が高く手頃な価格のあらゆる形態のエネルギー生産を拡大しなければならない」と強調する。アメリカのエネルギー支配を政策の基軸に据え、原油、天然ガス、ウラン、石炭、バイオ燃料、地熱など、潤沢な国内資源を活用し、外国からの重要鉱物の輸入依存を減らし、経済を成長させる方針を示している。同協議会は、許認可、生産、発電、流通、規制、輸送、輸出を含むエネルギー産業を取り巻くプロセスを改善するための戦略について大統領に助言する。また、官僚的な形式主義や不必要な規制を廃し、民間部門の投資の拡大、イノベーションの促進など、エネルギー支配を達成するための長期目標を含む、より多くのエネルギー生産を可能にするための国家エネルギー支配戦略を大統領に提出する役目も担う。エネルギー生産の増大という政策目標を実現させる行動の例として、発電設備容量の急速かつ大幅な増加、エネルギーインフラの迅速な承認に加え、閉鎖された発電所の運転再開へ向けた取組みの促進や、小型モジュール炉(SMR)の早期運開を挙げている。
28 Feb 2025
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オランダ議会(下院)で2月11日、S. ヘルマンス気候・グリーン成長相(副首相)は、新規原子力発電所の建設遅延に関する議員からの質問に対し、新しい原子力発電所の実現までには、さまざまな作業や手続が山積しており、当初計画通りに2035年までに運開させることは難しいと、書面で回答した。2021年3月にオランダで発足した前・連立政権は、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月、連立合意文書に国内唯一の原子力発電設備であるボルセラ発電所の運転期間を長期にわたって延長するとともに、政府の財政支援により新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を明記。翌2022年12月には、新設サイトとしてボルセラ・サイトが最適と発表している。計画では、2035年までに少なくとも、第3世代+(プラス)の原子炉、出力100万~165万kW×2基を新設し、オランダの総発電量の9~13%を供給するとしていた。オランダでは、1973年から稼働中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)で総発電電力量の約3%を供給中。同炉は運転開始から40年目の2013年に運転期間が20年延長され、現在の運転認可は2033年まで有効である。経済・気候政策省(当時)は、2基新設に向けた立地選定手続きの第一歩として、企業、団体、地方自治体などから、サイト等に関する提案募集を2024年2月に開始。提案が条件を満たしている場合、建設候補地として潜在的に適しているかどうかを調査するとしていた。当初、新しい原子力発電所に適した場所と考えられていたのは、ゼーランド州のボルセラ・サイト、およびロッテルダム港のマースブラクテIだけであったが、同年9月以降、ゼーラント州のテルネーゼン、フローニンゲン州のエームスハヴェン、ロッテルダム港のマースブラクテⅡが候補地に追加された。これら候補地に対して、立地選定に向けた調査を実施することが法的に義務付けられているという。同相は、候補地の選定決定の遅れを認め、許可、入札、建設において、まだ多くのステップを踏む必要があるとし、前内閣が言及した2035年の新設の期限は「非常に野心的」であり、これまで考えられていたよりも多くの原子力発電所の候補地を調査する予定であるため、年内の立地選定は不可能である、と指摘している。なお2024年には、韓国水力・原子力、米ウェスチングハウス社、フランス電力がボルセラ・サイトにおける2基の新規建設の技術的可能性、安全性、環境影響、コストと時間の詳細な見積りを含む、実行可能性調査(F/S)を実施、完了しており、これらの結論は現在、独立機関によって検討されているという。
28 Feb 2025
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