国際エネルギー機関(IEA)は1月16日、報告書「原子力エネルギーの新時代への道(The Path to a New Era for Nuclear Energy)」を発表した。報告書は、世界的な電力需要の急増を背景に、政策支援や投資、小型モジュール炉(SMR)の技術開発などが原子力発電の成長を後押しする一方、コスト超過、プロジェクトの遅延リスク、資金調達などの課題に対処する必要があると指摘している。IEAは原子力について、24時間供給可能で大規模展開できる、クリーンで実証済みの電源・熱源であると評価、再生可能エネルギーを補完するとともに、エネルギー・セキュリティや排出量削減に寄与するエネルギー源であるとしている。<原子力発電の現況>2023年現在、原子力発電は世界の総発電電力量の約9%を占め、30か国以上で410基以上が運転中。水力発電に次ぐ第2位のシェアを誇る低排出電源である。IEAによると、現在、原子力3倍化に向けた取組みなど、40か国以上で原子力発電の利用拡大に向けた支援が行われており、原子力への関心は、1970年代の石油危機以来最高水準に達している。現在建設中の原子炉は63基、発電設備容量は7,000万kWを超え、1990年以降で最高水準の一つとなっている。また、ここ数年では、新規建設や既存発電所の運転期間延長の取組みも活発化しており、2025年には原子力発電量が過去最高を記録する見通しである。さらに、新規建設と既存発電所の運転期間延長の両方を合わせた、原子力への投資額は、2023年には約650億ドル(約10兆1,000億円)に上昇し、10年前のほぼ2倍の水準となった。一方で、IEAは、現在運転中の原子力発電所の70%以上が先進国に集中しているものの、平均運転年数が36年以上と比較的古く、原子力シェアも減少傾向にあると指摘。世界の原子力市場の勢力図が、中国をはじめとする新興国へと変化しつつあり、2017年以降に建設が開始された原子炉52基のうち、48基が中国(25基)またはロシア(23基)の設計であると分析した。また、現在建設中のプロジェクトの大半が中国で行われており、中国が2030年までに原子力発電設備容量で米国と欧州を上回るとの見通しを示している。IEAはまた、燃料供給に関するリスクにも言及しており、特にウラン濃縮については、世界の濃縮能力の40%をロシアが占めている現状を問題視。将来へのリスク要因であるとし、燃料分野におけるサプライチェーンの多様性を高める必要性を強調した。また、近年の米国やフランスなどでの大型炉建設における大幅な遅延やコスト超過などの課題も克服すべきとした。<原子力投資の見通し>IEAは、世界の原子力投資は今後増加すると予測しており、大型炉が主要な投資対象となる一方で、SMRが急成長する可能性に言及している。現行のエネルギー政策に基づく「公表政策シナリオ」(STEPS)では、SMRの発電設備容量が、2050年に4,000万kWに拡大すると予測。また、各国政府による誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ」(APS)では、政府の支援強化により、2050年までに1,000基以上のSMRが導入され、総発電設備容量は1億2,000万kWに達するとの見通しを示した。これに伴い、SMRへの投資額も大幅な伸びが予想され、現在の50億ドル(約7,800億円)から2030年には250億ドル(約3兆9,000億円)を超え、2050年までに累計投資額は6,700億ドル(約104兆円)に達する見通し。IEAは、データセンター(DC)の拡大等を背景に、安定的で低排出な電源としてのSMRへの関心が高まっていると分析している。現在、DC向け電力供給として合計最大2,500万kWのSMR建設計画が進行中であるという。また、近年では10%未満にとどまっていた先進国の設計を採用する大型原子力プロジェクトの割合が、欧州や米国、日本での新規着工により、APSでは2030年までに40%に増加、その後は半数を超えると予測した。さらに、SMRの広範な導入により、2050年までに新規建設の60%以上が、米国または欧州の設計が採用されるとの見方を示した。但し、IEAは、SMRの成功と導入のスピードは、2040年までにコストを大規模水力や洋上風力と同水準にまで引き下げられるかどうかにかかっているとも指摘している。<原子力プロジェクトへのファイナンス>IEAは、APSでは、2030年までに原子力への年間投資額が1,200億ドル(約18兆7,000億円)にのぼると見ており、この投資の規模を考えると、公的資金に依存するだけでは不十分であり、民間投資の促進が不可欠であるとの見方を示している。一方で、原子力プロジェクトは、その規模の大きさや資本集約性、長い建設期間、技術的複雑さから資金調達が難しく、コスト超過や工期遅延が頻発しており、投資家にとって大きなリスク要因となっている。こうしたなか、IEAは、政府の支援が商業銀行による資金提供を後押しするカギと強調。予測可能なキャッシュフローの保証や建設リスクの政府負担が、プロジェクトの資金調達を容易にするとした。また、長期の電力購入契約や差金決済取引(CfD)、規制資産ベース(RAB)モデルといったリスク軽減策が、安定した資金調達を支える仕組みとして重要性が増しているとした。さらに、IEAは、新規の大型原子炉建設プロジェクトは、建設段階での資金調達が難しいとされる一方、既存発電所の運転期間延長プロジェクトは、運転中の資産を対象とするため、銀行からの資金提供を受けやすいと指摘。また、SMRについては、その規模の小ささから建設期間が短く、投資回収期間が従来型プロジェクトの半分程度に短縮される可能性があることから、投資コスト全体の大幅削減につながる可能性があるとした。また、昨今のグリーンボンドなどの環境金融商品が、新たな資金源として注目を集めており、原子力への資金調達の幅を広げる可能性も併せて指摘している。
22 Jan 2025
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米商務省の産業安全保障局は1月15日、インド原子力省(DAE)傘下の3研究開発機関・公営企業を貿易取引制限リストから削除した。エネルギー安全保障のニーズと目標を共有する両国間の共同研究開発や科学技術協力などの先進エネルギー協力への障壁を減らし、原子力の平和利用協力および関連する研究開発の推進がねらい。同リストから削除されたのは、DAE傘下のインディラ・ガンジー原子力研究所(IGCAR)、バーバ原子力研究所(BARC)およびインド希土類公社。米国のJ. サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は1月6日、インド工科大学デリー校で講演。インドの主要な原子力機関と米国企業との間の民生用原子力協力を実質妨げてきた長年の貿易規制を撤廃するための必要な手続きが最終段階に入っていることを明らかにしていた。サリバン大統領補佐官は、「J. ブッシュ前大統領とM. シン前首相は20年前に民生用原子力協力のビジョンを打ち出したものの、我々はまだそれを完全に実現できていない」「平和的原子力協力への取組みを共有する戦略的パートナーとして、これまでの協力の歩みを継続していく」と述べ、貿易規制撤廃による両国間の民生用原子力協力促進への期待を示した。貿易規制の背景にはインドによる1974年の核実験の実施がある。核実験実施を契機にそれまで初期のBWRやCANDU炉の導入に協力してきた米国やカナダなどが原子力協力を停止。さらに国際的な輸出規制のための原子力供給国グループ(NSG)が設置されたため、インドは原子力関係の資機材や技術の輸入ができなくなり、ウラン燃料、重水、原子炉関係機器などの調達から、建設・運転・保守の技術に至るまで国産で賄わざるを得なくなった。その後、インドが核実験モラトリアムの継続をはじめ、核不拡散に協力する姿勢を見せたため、米国は大規模な原子力開発計画を持つインドでの商機を狙い、2005年に対印原子力政策を転換。2008年8月には国際原子力機関(IAEA)理事会が保障措置協定案を承認、同9月にNSGは核不拡散条約(NPT)未加入のインドに対する民生用原子力協力を容認(インド例外措置)し、翌10月に米印間で原子力協力協定(通称123協定)が締結され、原子力協力が進められてきた。なお、インドの原子力損害賠償制度は、海外の原子炉ベンダーにも一定の賠償責任を盛り込んでおり、技術協力の障害となっていたが、インドは2016年2月に原子力の損害賠償の補完的補償に関する条約(CSC)を批准し、海外ベンダーのインド進出が容易になった。同年5月、インドはNSGへの加盟を申請。米国はインドのNSG加盟を支援している。これらの動きを受け、インド東海岸のアンドラ・ブラデシュ州のコヴァダが米ウェスチングハウス社(WE)製のAP1000×6基の建設サイトに選定され、現在、サイトの準備作業とWE社との建設計画の協議が進行中である。
21 Jan 2025
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ロシアのM. ミシュスチン首相によるベトナム・ハノイの公式訪問に同行した、ロシア国営原子力企業ロスアトムのA. リハチョフ総裁は1月13日、ベトナムのファム・ミン・チン首相と会談した。双方は原子力発電開発だけでなく、原子力科学技術分野においても協力と支援を継続し、ベトナムの社会経済の発展に貢献することで合意した。ファム・ミン・チン首相は会談の中で、原子力発電分野の科学者や専門家の育成、ダラット原子力研究所における研究炉の設計と運用、がんの診断と治療のための放射性医薬品の供給など、ロシアのベトナムへの長年の協力と支援を高く評価。ロスアトムに対し、ベトナムの原子力技術部門の人材育成と技術移転を支援するよう要請した。リハチョフ総裁は、ロスアトムは、原子力発電所の建設、近代的な原子力科学技術センター(CNST)の設立、技術移転、ローカライゼーション、原子力科学と産業の発展の実現に向けて、長期的にベトナムに協力と支援を行う用意があると述べ、ベトナム側の期待に応えた。翌14日には、ベトナムとロシア両首相の立会いの下、ベトナム商工省傘下のベトナム電力公社(EVN)とロスアトム傘下のロスアトム・エネルギー・プロジェクト社(REP)との間で原子力発電分野における協力に関する了解覚書が調印された。REP社は大型炉からマイクロ炉までロスアトム製の原子炉を扱っており、世界市場での商業展開を目的に設立されている。2024年11月25日、ベトナム共産党中央委員会(CPV)は、国家エネルギー安全保障の確保のため、ニントゥアン原子力発電プロジェクトを再開する政府提案に合意。11月30日、第15期第8回国会でニントゥアン原子力発電プロジェクトを再開するという政府提案が承認された。2016年11月、国会は、国の経済状況を理由にニントゥアン原子力発電プロジェクトの中止を決定していた。ベトナム政府は1月10日、原子力発電所建設プロジェクトの運営委員会を設立。同委員会委員長を首相、副委員長を副首相兼外相と商工相が務める。委員会は、ニントゥアン原子力発電プロジェクトの実施に責任を負い、原子力開発に関する法制面、原子力発電プログラムの研究と策定を指揮する。なおEVNは、政府から同プロジェクトの投資家に任命されている。委員会の初会合が1月15日に開催され、首相はニントゥアン原子力発電所の建設を5年以内に完成させるという目標を提示。党創立100周年にあたる2030年までに原子力発電所を建設するための各年のロードマップと作業を決定したという。
21 Jan 2025
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米ウェスチングハウス(WE)社は1月16日、韓国電力公社(KEPCO)ならびに韓国水力・原子力(KHNP)との間で、知的財産権に関する紛争の終結で合意したことを明らかにした。併せて、WE社は韓国の両社と協力して、現在係争中の訴訟をすべて取り下げる予定であると表明。なお、和解の条件については、当事者間の合意により機密事項となっている。WE社のP. フラグマンCEO(今年3月末にCEOを退任予定)は、「世界的にベースロード電源の需要が高まる中、この合意は両社による新たな原子力プロジェクトを推進するための協力関係の基盤となる」と述べた。一方、KHNPのJ. ファンCEOは、「今回の合意は、両社のより一層緊密な協力関係を構築する契機となる」とし、世界市場での協力体制と競争力を強化する方針だ。この和解を受け1月16日、米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官は声明を発表、「民生用原子力部門で数十万人の雇用創出を維持し、数千億ドルの協力プロジェクトを進める道を開く可能性のある大きな成果。私はこれら関係企業とリーダーたちの献身、決意、忍耐力に感謝している」と述べた。WE社は、韓国のAPR1000やAPR1400が同社の技術を組み込んでおり、KHNPはWE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有しておらず、米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけであると主張。知的財産権と輸出管理をめぐり、2022年以降、KEPCOならびにKHNPと係争を繰り広げてきた。国際仲裁ならびに米国での訴訟が進行しており、WE社は仲裁が2025年後半までに決着する可能性は低いとみていた。こうしたなか1月8日、米DOEと韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2024年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印。両政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性が指摘されていた。
20 Jan 2025
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フランス電力(EDF)の子会社であるNUWARD社は1月6日、同社製小型モジュール炉(SMR)である「NUWARD」の再設計作業を開始したことを明らかにした。EDFとNUWARD社は2024年6月、プロジェクトの遅延や予算超過を避けるためにNUWARD SMRの設計を見直し、既存の実証済みの技術を利用し、設計を最適化する計画を決定。その後まもなく、英国の原子力発電所の新設計画を牽引する政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMR支援対象選定コンペから撤退した。NUWARD社は、「ここ数か月に実施された研究は極めて重要であり、当社は電力会社と産業界の期待に完全に応えるべくSMR戦略を見直してきた。NUWARD SMRは、電気出力40万kW、熱出力約10万kWのコジェネのオプションを提供する。市場のニーズに適合した安全な製品を提供するため、原子力部門でよく知られ、完全に習得された実績ある技術コンポーネントのみから構成される設計に見直す」と説明。「NUWARD SMRの付加価値は、競争力と建設時間の最適化を目的とした、シンプルさとモジュール工法にある」と強調した。同社は現在、2026年半ばまでに概念設計を完成させ、2030年代に市場投入し、国内に初号機の建設を計画している。2019年9月、EDFは仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)などと協力して、欧州主導のSMR「NUWARD」(電気出力17万kWの小型PWR×2基)の開発を発表。2基の独立した原子炉圧力容器(RPV)を鋼製格納容器内に収納、格納容器は水中設置を特徴とし、基本設計段階に進んでいた。
17 Jan 2025
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カザフスタンの国営原子力企業カザトムプロム社は1月6日、東カザフスタン州ウスチカメノゴルスクにある燃料集合体(FA)製造工場「ウルバ-FA」の年間製造能力が2024年12月末までに設計容量の200トンに達したことを明らかにした。同工場は、2021年11月に操業開始。3年以内に設計上の生産能力到達を目指すスケジュールで、計画的に増産してきた。同工場を操業するウルバ-FA 社には、カザトムプロム社傘下のウスチカメノゴルスクにあるウルバ冶金工場(UMP)が51%、中国広核集団有限公司(CGN)傘下のウラン資源開発企業である中広核鈾業発展有限公司(CGNPC URC)が49%出資しており、同工場は実質的に中国の原子力発電所専用のFA製造施設となる。200トンは、原子炉6基の再装荷に必要な燃料量に相当。同工場は中央アジアで唯一の原子力発電所用燃料製造施設でもある。同工場が製造したFAはカザトムプロム社とCGNが結んだ協力契約に基づき、CGNPC URC 向けに全量(年間200トン)を20年にわたり供給することとなっている。なお中国向け初出荷は2022年12月に実施されており、2023年以降も出荷されている。同工場のFA製造技術は仏フラマトム社から移転されたもので、フラマトム社は「AFA 3G型燃料集合体」の製造ライセンスとともに、主要な製造機器やエンジニアリング文書、関連人材等を提供。一方、FAの構成要素である燃料ペレットは、カザフスタン産のウランを原料にUMPで製造している。カザフスタンは世界最大のウラン生産国で、旧ソ連時代からウラン原料の輸出だけでなく燃料加工が重要な産業となっている。燃料ペレットは、ソ連時代よりUMPで主にロシア向けに製造・出荷されていたが、ソ連崩壊後、核燃料サイクル産業の高度化に必要な燃料集合体の製造技術の習得を志向していた。
16 Jan 2025
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インド原子力発電公社(NPCIL)は12月31日、22万kWeのバーラト小型炉(BSR、バーラトはヒンディ語で「インド」の意味)の建設に向け、民間部門からの提案依頼書(RFP)募集を開始した。提案締切りは2025年3月31日。BSRは、自家発電用に設計された国産の加圧重水炉(PHWR)。鉄鋼、アルミニウム、銅、セメントなどのエネルギー集約型産業における石炭火力発電所の代替を目指している。インドにおけるPHWRは22万kWから54万kW、70万kWと進化し、すべての出力サイズで順調に稼働している。これらのPHWRに必要なコンポーネントや機器を供給する国内サプライ・チェーンも成熟している。BSRは工場での部品製造、現地組立てによって建設時間を短縮。堅牢な安全性と効率性を実証済みであり、費用対効果に優れ、脱炭素化が困難な分野において安定したクリーンな電力供給源として期待されている。NPCILは、BSRは経済的利点、特に炭素排出税に関連するコストの削減によってインドの産業の国際競争力が強化されるとの考えだ。2024年7月、N. シタラマン財務相は2024~25年度の連邦予算で民間部門と提携し、BSRの展開やバーラト小型モジュール炉(BSMR)の研究開発等を支援する方針を発表。今回のRFPの実施は、現行の法的枠組みと合意されたビジネスモデルに基づき、初の民間部門の参入を認める原子力開発計画の一環である。1962年制定の原子力法により、原子力部門は中央政府に独占的権限が与えられ、民生用原子力発電所の設置と運転を許可されているのは、原子力省(DAE)傘下のNPCILとバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI、高速増殖原型炉PFBRの建設と運転主体)のみ。2015年の原子力法改正によりインド国営火力発電会社(NTPC)のような政府系公社だけがNPCILと提携が可能となった。民間部門の原子力発電への関与はエンジニアリング/調達/建設(EPC)の役割に限定され、原子力インフラ開発の補助的役割を担ってきた。原子力安全や放射性廃棄物管理の問題、核拡散リスクの面から、民間部門の参入は依然として制限事項が多いものの、今回、民間部門との提携が認められたことで、新規原子力発電所の資金調達に新たな道が開かれた意義は大きい。NPCILは、BSRの設計、品質保証、運転と保守、廃止措置までを実施。原子力発電所の立地、建設、試運転、および運転と廃止措置の認可は、NPCILが原子力規制委員会(AERB)から取得。選定された民間事業者は、NPCILの監督・監督下で資金調達と土地取得の上で2基のBSRを建設する。建設完了後、BSRはNPCILに移管され、長期にわたる運転・保守管理(O&M)契約の下で運営される。発電した電力は事業者が使用でき、DAEが承認した価格での売電も可能。なお事業者は、プロジェクトの開始から、損害発生時の復旧作業および廃止措置を含むライフサイクル全体に必要なコスト(税および保険費用込み)をすべて負担する。燃料や使用済み燃料、重水の所有権はDAEが有する。インドは、2070年までにネットゼロの実現を掲げている。エネルギーミックスにおける原子力シェアの拡大に向けて、DAEは原子力発電設備容量を現在の818万kWから2031年までに2,248万kWの約3倍に、2047年までに1億kWに増強するという野心的な目標の達成を目指しており、民間部門の原子力参入は重要な一歩となる。
16 Jan 2025
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チェコ政府は2024年12月20日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。2033年までに電力や熱生産における石炭利用を全廃し、再生可能エネルギーとともに、原子力発電を拡大する方針を明示。原子力を、対外エネルギー依存の低減や脱炭素化戦略の重要な柱と位置付けた。NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再エネなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。今回チェコ政府は、再エネの総発電電力量に占める割合を現在の約12%から2030年には31%、2050年には52%まで引き上げるとともに、原子力は、現在の約40%から2040年には68%にまでシェアを拡大させる方針を表明した。原子力の増分は、大型炉と中小型炉(SMR)の導入により賄うとしているが、まずは、既存原子力サイトのドコバニ(VVER-440、51.0万kWe×4基)とテメリン(VVER-1000、108.6万kW×2基)での増設を優先させる。チェコ電力(ČEZ)は2024年7月、最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者として、韓国水力・原子力(KHNP)を選定、今年3月末にも正式契約が調印されると見られている。現在、同プロジェクトの入札手続きについては、WE社が、韓国のAPR1000やAPR1400は同社の技術を組み込んでいると主張し、知的財産権と輸出管理をめぐってKHNPと係争中だ。こうしたなか、2025年1月9日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、昨年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印した。今回、両国政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性を指摘する向きもある。NECPはまた、石炭火力全廃後の、特に2035年以降のSMRの役割を強調、石炭火力をSMRに順次リプレースすることにより、地域暖房を含めたSMRの活用方針を打ち出した。既にČEZは、SMR初号機の建設サイトとして、テメリン・サイト南西部を選定済みで、地質調査など建設準備作業が進められている。2024年9月には、チェコ政府とČEZがSMR供給者7社の中から入札によって、英ロールス・ロイスSMR社をSMRの建設プロジェクトの優先サプライヤーに選定。SMR初号機の運転開始は2030年代半ばを予定しているが、大型原子炉の建設状況次第では、最大300万kW導入する可能性もあるという。そのほか、ČEZは、国内2基目、3基目のSMR建設候補サイトとして、チェコ北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定している。両地点とも、ČEZの石炭火力サイトである。
15 Jan 2025
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中国・福建省で昨年11月から試運転中だった、中国核工業集団公司(CNNC)の漳州(Zhangzhou)1号機(PWR、112.6万kWe)が2025年1月1日、営業運転を開始した。炉型は、中国開発のPWRである華龍一号(HPR1000)。同機は2019年10月に着工、国内の商業炉としては57基目となり、基数では世界第2位のフランス(56基)を抜いた。華龍一号としては国内5基目となる。漳州サイト内では、今回運開した1号機のほか、計3基が建設中。2号機が2020年9月に着工し、漳州第Ⅱ発電所1、2号機は、2024年2月と9月にそれぞれ着工した。さらに、CNNCは、華龍一号を2基採用した漳州第Ⅲ発電所を計画中である。総投資額1,000億人民元(約2兆1,500億円)超の漳州プロジェクトは、CNNC(51%)と中国国電公司(49%)の合弁企業である国電漳州エナジー社が運営している。華龍一号は、中国が知的財産権を有する第三世代の原子炉。設計上の運転期間が60年で、運転サイクル期間は18か月。安全系に動的と静的両方のシステムを装備し、格納容器は二重構造となるなど、中国は最高の国際安全基準を満たす原子炉と誇っている。また、中国の主力輸出炉としても位置付けられ、海外への輸出実績もある。既にパキスタンのカラチ原子力発電所で2021年5月に2号機が、2022年4月に3号機がそれぞれ営業運転を開始している。昨年末には、同じくパキスタンで、華龍一号を採用したチャシュマ5号機が着工したばかり。そのほか、2022年2月には、アルゼンチンの国営原子力発電会社(NA-SA)とCNNCが、アルゼンチンへの華龍一号の建設に向けてEPC(設計・調達・建設)契約を締結したほか、トルコなどへのプラント輸出の動きもある。
10 Jan 2025
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ロシア国営原子力企業ロスアトムは12月25日、鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」の燃料加工/再加工モジュール施設の試験操業を開始したことを明らかにした。同施設は、BREST-OD-300と再処理モジュールと並んで、パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)を構成する3施設のうちの1つ。PDECは、ロスアトムが進める戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の一環として、西シベリアのトムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(ロスアトム燃料部門の企業)のサイト内で建設が進められている。BREST-OD-300は冷却材に鉛を使用、ウラン濃縮の副産物である劣化ウランと使用済み燃料から抽出したプルトニウムを利用した、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。燃料加工/再加工モジュールでMNUP燃料を製造。併設される再処理モジュールでBREST-OD-300の使用済み燃料のリサイクルを繰り返すことで、ウラン濃縮工程で生じた劣化ウランの蓄積分を処分し、放射性廃棄物の発生量と放射能レベルを低減する。濃縮工場に貯蔵されている劣化ウランを除けば、単一のサイト内でクローズド・サイクルが完成する。MNUP燃料は、二酸化ウランベースの従来の原子燃料とは異なり、標準的技術と設備では製造できない。非標準的な燃料組成に加え、使用済み燃料から抽出したプルトニウムからの高線量被曝を防ぐため、燃料製造工程は可能な限り自動化される。MNUPの製造にはウランとプルトニウムの混合窒化物の炭素熱合成ライン、燃料ペレットの製造ライン、燃料棒の組立ライン、燃料集合体の製造ラインの4つのラインがある。施設のスタッフは250人。燃料製造施設では2024年4月、ロシアの産業・原子力規制当局であるロステフナゾルからの許認可を得て、劣化ウラン窒化物燃料を用いたBREST-OD-300向けモックアップ燃料集合体を初製造するなど、製造技術の習得に取組んでいる。ロステフナゾルがプルトニウムの取扱いを承認後、MNUP燃料の生産を開始、200体のMNUP燃料集合体を製造する計画だ。すでにMNUP燃料を使用した試験用集合体は、ディミトロフグラードの原子炉科学研究所にある高速実験炉BOR-60とベロヤルスク原子力発電所3号機(高速炉BN-600)に装荷され、燃料の燃焼度合いなど、BREST-OD-300の初期炉心装荷の妥当性を確認済みである。なお、PDECでの燃料製造支援に向け、特にBREST-OD-300初期炉心装荷やモックアップの燃料集合体の金属部品の生産拠点として、ロスアトムの燃料部門の企業群である、グラゾフのチェペツク機械工場(ウドムルト共和国)、エレクトロスタリのエレマシュ機械製造工場(モスクワ州)、ノボシビルスクの化学濃縮プラント(西シベリア)が協力している。
08 Jan 2025
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パキスタンのチャシュマ5号機が12月30日に着工した。同機は、中国核工業集団公司(CNNC)製の「華龍一号」(PWR=HPR-1000、110万kWe)を採用。パキスタンではカラチ2、3号機もCNNC製の華龍一号を採用しており、それぞれ2021年5月、2022年4月に運転を開始している。なお、カラチ2号機は、中国国産の華龍一号の初輸出プロジェクトである。チャシュマ5号機の着工を受け、パキスタンのS. シャリフ首相は、パキスタンと中国の戦略的協力における新たなマイルストーンであると自身のソーシャルメディアで表明。初コンクリート打設の式典に出席した、A. チョードリー計画・開発・特命相は、両国の持続可能な開発とエネルギー安全保障への取り組みを再確認するものだと強調した。同式典には、パキスタン原子力委員会(PAEC)のA. アリ委員長、姜再冬・駐パキスタン中国大使、CNNC張凱副総経理らも出席した。PAECとCNNCは2017年11月、チャシュマ5号機の建設協力に係る協定を締結。2023年6月には、PAECとCNCCは総額48億ドル(約7,570億円)の建設契約を締結した。翌7月、シャリフ首相の指揮の下、起工式が挙行されている。PAECは2024年4月、パキスタン原子力規制庁(PNRA)に建設許可を申請、PNRAは関連する国内および国際基準に準拠した規制要件に照らし徹底的な審査評価を行い、12月26日に建設許可を発給した。建設ピーク時には直接ならびに間接的に4万人の雇用創出が見込まれている。華龍一号は、中国が知的財産権を有し、国内外展開を目指す第三世代炉。設計上の運転期間が60年、運転サイクル期間は18か月、安全系に動的と静的両方のシステムを組み合わせ、格納容器は二重構造。CNNCは、国際的に最も厳しい安全基準をクリアしているとうたっている。パキスタンでは現在6基の原子力発電所が運転中で、総発電電力量に占める原子力シェアは17%。政府の「原子力ビジョン2050」に基づいて、2050年までに合計約4,000万kWの原子力発電所建設を目指している。しかし、カシミール地域の帰属問題を巡って長年インドと対立しており、インドと同じく核不拡散条約(NPT)に加盟していない。欧米の原子力先進国から技術面、資金面の支援が得られないなか、中国はこれらの両面でパキスタンに支援を提供しており、すでにチャシュマ発電所の1~4号機ではCNNCの協力により、30万kW級PWR(CNP300)が運転中である。カラチ発電所1号機(CAUDU炉、13万kWe)はカラチ2号機の運転開始後、2021年8月に閉鎖された。
07 Jan 2025
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ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は12月19日、同社が運転するチェルナボーダ原子力発電所の1号機(CANDU、70.6万kWe)の30年間の運転期間延長に向けた改修工事に係る、エンジニアリング、建設、調達(EPC)契約を、カナダ、イタリア、韓国企業のコンソーシアムと締結した。契約額は19億ユーロ(約3,109億円)。SNNと、カナダのアトキンス・リアリス社、イタリアのアンサルド・ヌクレアーレ社、カナダ商業公団(CCC)、韓国水力・原子力(KHNP)の4社からなるコンソーシアムとの契約。EPC契約の主な内容は、具体的な設計・施工内容の策定、設備・資材の調達、改修工事の実施、および改修工事に必要なインフラの構築である。CANDU炉の技術管理者であるアトキンス・リアリス社が原子炉システムを担当し、アンサルド・ヌクレアーレ社がタービン発電機システムの設計と機器調達、KHNPは主要設備の交換や放射性廃棄物貯蔵施設などの主要インフラ施設の建設を担当する。1号機の運転期間は30年間延長した2061年までを想定。1号機の運転停止は2027年に予定されており、改修プロジェクトの完了は2030年の見込み。ルーマニアで唯一稼働するチェルナボーダ原子力発電所では、1996年と2007年にそれぞれ1、2号機(カナダ製CANDU-6炉、各70万kWe級)が運転を開始した。ルーマニアの総発電電力量に占める原子力シェアは約20%(2023年実績)。同発電所の3、4号機(CAUDU-6、各70万kWe級)は1984年~1985年にかけて着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊によって建設工事は中断し、現在は保全状態におかれている。SNNは同3、4号機建設の再開に向けて、今年11月に米・加・伊の企業から構成される合弁事業会社とエンジニアリング・調達・建設・管理(EPCM)に係る契約を締結している。ルーマニアはCANDU炉のほか、同国南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、米ニュースケール・パワー社製SMRである出力7.7万kWeの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kWe)の建設を計画している。プロジェクトは、SNNと民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社のとの合弁企業であるロパワー・ニュークリア社を中心に進められており、米フルアー社、韓サムスンC&T社、米サージェント&ランディ社も参画している。
25 Dec 2024
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米国で先進炉開発を進めているオクロ社は12月18日、データセンター・キャンパスの設計、建設、運営会社であるスイッチ(Switch)社へ2044年まで電力を供給するため、計1,200万kWの先進炉を導入することで合意した。本合意は、AI(人工知能)により増大する電力需要をクリーンで持続可能な電力で満たす協力体制の枠組みを確立するもの。プロジェクトの進捗に応じて、個別に拘束力のある電力購入契約(PPA)を締結し、米国全土のスイッチ社のデータセンターにオクロ社の開発するマイクロ炉「オーロラ」発電所を建設・運転し、電力を供給する。オクロ社のJ. デウィット共同創設者兼CEOは、「今後20年間に、先進炉の導入規模の拡大に向けた財務およびインフラモデルを開発し、開発から展開、規模拡張まで、スイッチ社とともに取り組んでいく。スイッチ社との提携により、初期のオーロラ発電所の開発が加速されるだけでなく、今後数十年にわたる顧客需要が加速的に拡大していく」と指摘した。オクロ社は、生成AIを用いたテキスト生成サービスである「Chat GPT」を開発した、米オープンAI社のS. アルトマンCEOが会長を務め、取締役には米国のトランプ次期大統領にエネルギー省(DOE)長官に指名されたC. ライト氏が名を連ねる。オクロ社はオーロラ発電所による発電電力の供給取引について、既にエクイニクス社の他、米国内の複数のデータセンター関連企業と基本合意書(LOI)を締結している。オーロラはHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万~5万kWeの範囲で調整が可能。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。米エネルギー省(DOE)は2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、アイダホ国立研究所(INL)敷地内でオーロラ発電所の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)にオーロラ初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は2025年にもCOLの再申請をする準備を進めている。
25 Dec 2024
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は12月18日、同社が開発する先進炉「Natrium」の主要機器の製造契約を締結したと発表した。製造されるコンポーネントと契約先は以下のとおり。原子炉ヘッド:スペイン・Equipos Nucleares(ENSA)炉心バレル、原子炉容器ガードベッセル、炉内構造物:韓国・斗山エナビリティ(旧斗山重工業)原子炉容器:韓国・HD現代重工業回転プラグ:カナダ・Marmenテラパワー社のC. レベスクCEOは、「Natriumはゲームチェンジャーな先進炉。初号機の建設に向けた適切なベンダーチームの結成により、この先進炉を商業化し、世界的なエネルギー需要の高まりに応えていきたい」と抱負を語った。Natriumは34.5万kWeのナトリウム冷却小型高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、負荷追従運転が可能。ピーク時には電気出力を50万kWまで上昇させ5.5時間以上稼働する。初号機は、電気事業者パシフィコープ社がワイオミング州南西部のケンメラーに所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込んでいる。同社は今年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。原子力部の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。
24 Dec 2024
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フランス電力(EDF)のフラマンビル3号機(欧州加圧水型炉=EPR、165万kWe)が12月21日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は、今年9月3日に初臨界を達成。その後、一連の試験と検査を実施しながら、原子炉の出力を徐々に上げ、25%出力に達した時点で、送電網に接続された。EDFのL. レモント会長兼CEOは、「フラマンビル3号機の送電開始は、原子力業界全体にとって歴史的な瞬間である。このプロジェクトで直面した課題に粘り強く取り組み、安全性に妥協することなく取組んできたすべてのチームに敬意を表したい」と述べた。同機は2007年12月に着工。フランス国内で初のEPR建設だったこともあり、土木エンジニアリング作業の見直しのほか、福島第一原子力発電所事故にともなう包括的安全評価の実施、原子炉容器の鋼材組成の異常(炭素偏析)、2次系配管溶接部の品質上の欠陥等により、完成が当初予定の2012年から大幅に遅れた。建設コストも当初予定の4倍になるなど大幅超過した。同機は今後数か月間にわたり、100%の出力に達するまで、仏原子力安全規制当局(ASN)の監督の下、試験および送電網への接続・切断を繰り返す。EPRはフランス国外ではすでに営業運転を開始している。中国の台山発電所では1、2号機がそれぞれ2018年12月、2019年9月に運転を開始。続いて欧州では、フィンランドのオルキルオト発電所3号機が2023年5月に運転を開始した。英国ではヒンクリー・ポイントC発電所の1、2号機が建設中だ。2022年2月には、フランスのE. マクロン大統領が、同国のCO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという目標の達成に向け、フランス国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設、さらに8基の建設に向けて調査を開始すると発表している。
23 Dec 2024
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米国貿易開発庁(USTDA)は12月13日、ブルガリアの2件の原子力プロジェクトに対する助成支援について、ブルガリアの関係機関との合意書に調印した。1件目は、ブルガリアの原子力発電所から発生する使用済み燃料の地下処分に向けた、米ディープ・アイソレーション社との実行可能性調査(FS)の実施。2件目は、小型モジュール炉(SMR)の導入に係る、ブルガリア国営のブルガリア・エナジー会社(BEH)への技術支援を対象にしている。USTDAは、インフラプロジェクトに対する技術支援やFS、実証実験の支援等を活用し、新興国等の経済開発と米国製品・サービスの輸出の促進を通じて米国外交政策の推進を支援する米国の政府機関。ディープ・アイソレーション社は、USTDAの助成支援を得て、既存および将来の原子力発電所からの発生する使用済み燃料を地下1 km以上の深地層に処分するためのFSの実施に協力する。USTDAのE. エボン長官とブルガリアの国家放射性廃棄物取扱企業(DPRAO)のS. ツォチェフ理事長が合意書に調印した。エボン長官は、「米国の最先端技術を利用して、使用済み燃料の安全な長期処分オプションを作ることで、さらなる発電所建設への扉を開くことにもなる」と述べた。ツォチェフ理事長は、「ディープ・アイソレーション社との提携は、最先端技術を活用し、放射性廃棄物の安全な管理のために革新的で持続可能なアプローチを探求するという我々の長期的なビジョンの一歩となる」と今回の支援合意を評価した。もう一方の技術支援では、ブルガリアが計画する1基以上のSMRの原子力発電所の導入に対し、米国製のSMRの詳細な技術的分析をBEHに提供する。これに加え、BEHが計画しているSMR発電所の建設候補地の調査や、資金調達方法など実施までのロードマップの策定も行うという。BEHは米ウェスチンングハウス社のAP1000×2基の新規建設が計画されているコズロドイ原子力発電所も含め、ブルガリアの主要な発電所を所有している。ブルガリアのV. マリーノフ・エネルギー相は、「今回の助成支援の合意は、国民の繁栄とブルガリア経済の競争力を確保するために、予測可能で安価なエネルギーを供給するという我が国の政策を成功へ導き、最先端技術の導入を可能にするもの」と、USTDAとの合意の意義を強調した。USTDAはこれら支援を、2024年2月に締結されブルガリアの民間原子力発電プログラム開発における協力関係を定めた「米-ブルガリア政府間協定」を推進させるものと位置付けている。
23 Dec 2024
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ポーランド産業省のW. ヴロースナ次官兼戦略エネルギー・インフラ担当全権代表は12月11日、ワルシャワで記者会見を行い、ポーランドの第1原子力発電所の運転開始について、当初の予定より3年遅れ、初号機が2036年の営業運転開始を想定していることを明らかにした。同会見には、同省のP. ガイダ原子力局長も同席。2023年12月の政権交代を機に、これまで気候・環境省の所掌にあった原子力政策・開発分野が産業省に移管された。会見でヴロースナ次官は、2020年に閣議決定された原子力発電プログラム(PPEJ)の更新作業が最終段階にあり、更新版では、ポーランド初の原子力発電所の初号機の運転開始は2036年、2号機、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を想定していると述べた。また、第2原子力発電所の建設計画は継続しており、競争入札によってパートナーを選定すると強調した。また、数週間以内に、欧州委員会(EC)による第1原子力発電所への国家補助の承認手続きが開始されるだろうと指摘。ポーランドは今年9月、ECに対し、第1原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)のPEJを支援する計画を通知していた。これに対してECは12月18日、ポーランドの計画がEUの国家補助規制に沿っているかどうかを評価するための詳細な調査の開始を明らかにした。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。ガイダ原子力局長は、第2原子力発電所の計画について、現在、旧石炭火力発電所の4サイトを建設候補地として検討していることを明らかにした。システム要件に合致し、閉鎖後の投資も呼び込みやすいため、だという。同原子力局長はまた、今年11月に産業省の委託により実施された原子力に対する国民の世論調査の結果について、回答者の92.5%がポーランドでの原子力発電所の建設を支持し、回答者の79.6%が原子力発電所が自分の居住地の近くに建設されることに同意していると言及。これは、2012年より毎年実施されている世論調査の中でも最高の数値を記録したという。現行のPPEJでは、総発電設備容量600万~900万kWeの、2サイトでの原子力発電所の建設を想定している。前政権は、第1原子力発電所のパートナーとして米国のウェスチングハウス(WE)社とベクテル社によるコンソーシアムを入札を経ずに指名した。第1原子力発電所(WE社製AP1000×3基、合計出力375万kWe)は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設が計画されている。第1原子力発電所の建設プロジェクトの総投資額は約450億ユーロ(1,920億ズロチ、約7.3兆円)と見積もられている。ポーランド政府はプロジェクト費用の30%をカバーする約140億ユーロ(600億ズロチ、約2.3兆円)をPEJに出資。この他、投資プロジェクトの資金調達のためにPEJが負った債務の100%をカバーする国家保証や、60年間の発電所の運転期間にわたり収益の安定性を確保する差金決済契約(CfD)により、プロジェクトを支援するとしている。PEJによると今年12月に入ってから、第1原子力発電所のプロジェクト支援に向けて、カナダ輸出開発公社から最大14.5億米ドル(約60億ズロチ、約2,294億円)の融資可能性の意向書を受け取り、フランスの輸出信用機関のBpifranceや公共開発銀行であるSfilからも37.5億米ドル(約150億ズロチ、約5,736億円)もの融資への関心が示されたという。今年11月には、40億ズロチ(約1,530億円)規模の融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印。米輸出入銀行(US EXIM)も約700億ズロチ(約2.7兆円)相当の融資支援を実施することになっており、これまでにPEJが海外の融資機関から資金拠出の意向表明を受けた総額はおよそ950億ズロチ(約3.6兆円)になる。PEJは、機器供給国を中心とする、輸出ファシリテーターである各国の輸出信用機関と緊密な協力関係を築き、資金調達の構造における輸出信用機関のシェアを最大限に高めたい考えだ。
20 Dec 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社とBWXTカナダ社は12月12日、カナダ国内外における原子力発電の新規建設プロジェクトを支援する覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。WE社は、新規建設プロジェクト遂行のため、カナダにおけるサプライチェーンの構築を進めている。今回のMOUは、BWXTカナダ社による、WE社製AP1000と小型モジュール炉(SMR)であるAP300の原子炉容器、蒸気発生器、熱交換器などの主要コンポーネントの製造を想定している。加オンタリオ州ケンブリッジに拠点を置くBWXTカナダ社は、PWR向け蒸気発生器、核燃料および燃料関連機器、重要プラント機器・部品など、原子力発電設備の設計、製造、試運転、関連サービスにおいて60年以上の経験とノウハウを有している。本社は米国にあるBWXテクノロジーズ社で、米国、カナダ、英国に事業所を置く。WE社は、カナダには西側諸国で最強の一つとされる原子力サプライチェーンがあり、米国のサプライチェーンと組合わせることで、新規建設を迅速に行う強力なプラットフォームになると考えている。WE社はカナダのオンタリオ州において、AP1000を4基建設するプロジェクトを計画しており、早ければ2035年までに完成するとしている。経済効果は建設段階で287億加ドル(約3.1兆円)、運転中に年間81億加ドル(約8,717億円)のGDP増となると試算している。なお、カナダ国外での建設ではカナダのサプライチェーンを通じて、1基あたり約10億加ドル(約1,076億円)のGDP増を見込んでいる。また、カナダ国内に12,000人の高賃金のフルタイム雇用が創出されるという。
19 Dec 2024
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米ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社は12月12日、同社の小型モジュール(SMR)導入プロジェクトの実施に向けて、加のアトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社をオーナーズ・エンジニアに選定したことを明らかにした。エナジー・ノースウェスト社は、太平洋岸北西部で唯一稼働する原子力発電施設のコロンビア発電所(BWR、121.1万kWe)を所有・運転するほか、水力発電、風力発電、太陽光発電、蓄電池の事業を行っている。同社は今年10月、大手IT企業のAmazon社ならびに先進炉開発企業のX-エナジー社と、X-エナジー社製SMR「Xe-100」(ぺブルベッド型高温ガス炉、8万kWe)を4基(最大12基)建設するプロジェクトへの出資契約を締結した。エナジー・ノースウェスト社はAmazon社と複数年にわたる実行可能性調査の実施で合意したばかりであり、調査では環境、安全、許認可、リスク面に焦点を当てつつ総合的な分析を行う。プロジェクトが承認されれば、建設許可申請を行う計画だ。アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)はCANDU 炉の技術管理者であり、原子力産業において70年以上の経験を有するエンジニアリングサービス企業。今回のオーナーズ・エンジニアリング契約に基づき、SMRプロジェクトの設計、許認可手続き、建設、試運転を支援する。作業は、ワシントン州リッチランドに最近開設されたおよそ3,000㎡のアトキンス社の最先端のエンジニアリング・技術センターで実施される。エナジー・ノースウェスト社は、アトキンス・リアリス社との協業により、AI(人工知能)革命をサポートするSMRの開発支援だけでなく、雇用創出、経済成長、クリーンで安定した電力供給によって、地域に長期的な利益をもたらしたいとしている。
19 Dec 2024
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米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は12月10日、「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米国における新たなウラン生産能力の拡大にインセンティブを与えるため、低濃縮ウラン (LEU) の調達契約を締結する6社を選定した。燃料分野において、ロシアの影響を受けない強靭なサプライチェーンを構築しつつ、全米の消費者が安価で信頼できる電力と高賃金のクリーンエネルギー関連の雇用を保証する、米政権の肝入りの施策である。DOE原子力局のM. ゴフ首席次官補代理は、「今回の調達契約は、米国におけるウラン濃縮能力の安全かつ責任ある構築を促進するもの。米国のエネルギー安全保障を強靭にするため、米国内における濃縮ウランの生産能力を向上させなければならない」として、今回の契約締結の意義を強調した。DOEが調達契約を締結したのは以下の6社。LEU供給で競争原理を生み出し、強力な投資の促進をねらう。American Centrifuge Operating, LLC(セントラス・エナジー傘下)General Matter, IncGlobal Laser Enrichment, LLCルイジアナ・エナジー・サービシーズ社(ウレンコ傘下)Laser Isotope Separation Technologies, IncOrano Federal Services, LLCDOEはLEUの新たな国内生産能力を掘り起こし、米国の既存の原子力発電所のほか、将来の先進炉の国内外での展開に必要な燃料供給を確保したい考えだ。DOEはこれらの契約を通じ、濃縮施設の新設、または既存の濃縮施設の拡張により生産されるLEUを購入する。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約3.0億円)を支払う。DOEは今年6月、米国内産のLEU購入に関する提案依頼書(RFP)を発行。「米国への投資」アジェンダから27億ドル(約4,148億円)を支援することとしている。米国において、原子力は総発電電力量のほぼ2割を供給しており、急速に増加する電力需要を満たし、CO2削減が困難な産業プロセスと運輸部門の脱炭素化に貢献する最大のクリーンエネルギー源。米国のクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たすと考えられている。米国は2023年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという公約を共同で主導した。この公約の達成には、米国は追加の原子力発電容量を配備する必要があるが、これには大型炉のほか、小型モジュール炉(SMR)、マイクロ炉など、あらゆる規模の新しい原子炉が含まれる。さらに既設炉の運転期間延長、出力向上や、閉鎖炉の運転再開を想定。これら設備容量拡大には、安定した燃料供給源が必要となる。ロシアは現在、世界のウラン濃縮能力の約44%シェアを保有。米国が輸入する燃料の約35%をロシア産が占める。J. バイデン大統領は今年5月、ロシアからのLEU輸入禁止法案に署名し、8月に発効した。一方で、米国の既存の原子力発電所が運転を中断することのないようDOEは、DOE長官が国務長官および商務長官と協議の上、特定の状況下で特定量のロシア産LEUに免除を与えるプロセスを発表。この規定に基づく免除は、2028年1月1日までに終了する。ロシアは11月、対抗措置として、ロシア産濃縮ウランの米国への一時的な輸出制限を決議した。脱炭素化やロシア産原子燃料への依存の回避、エネルギーセキュリティの強化を要因とする、世界的な原子力発電への評価の高まりを受け、世界的に濃縮役務の需要が増加している。英国に本拠地を置く、グローバルな濃縮事業者であるウレンコ社は、米国における濃縮ウランの需要増に応えるため、同社(ウレンコUSA)がニューメキシコ州ユーニスで操業する、米国で唯一の商業用濃縮プラントを拡張し、生産能力の拡大を目指している。同プラントは現在、米国の電力会社の濃縮ウラン需要の約1/3をカバーしている。なお、米原子力規制委員会(NRC)は12月11日、ウレンコUSAに対し、ウラン濃縮レベルを最大10%に引き上げるライセンス修正を承認した。NRCの承認により、既存の原子力発電所の燃料交換期間の短縮や、一部の先進炉への燃料供給が可能となる。
18 Dec 2024
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米国のエンジニアリング企業であるアメンタム社(Amentum)とノルウェーのコンサルティング企業であるマルチコンサルト・ノルゲ社(Multiconsult Norge AS)は12月11日、ハルデン・シャーナクラフト社(Halden Kjernekraft AS)から、小型モジュール炉(SMR)建設の実行可能性調査を受注した。建設候補サイトは、かつて研究炉が運転していたノルウェー南部ハルデン市。具体的には、SMRを建設する際のノルウェー国内外の機器・サービスに関するサプライヤーの候補企業を調査するほか、採用炉型、環境影響なども評価する予定。ハルデン社は、ハルデン市とノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社、およびエストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社の3者が、同市でのSMR建設の実現可能性を探るため、昨年11月に共同で設立した企業。アメンタム社のA.ホワイト上席副社長は「マルチコンサルト社と協力し、SMRとサプライチェーンに関する豊富な知識を活用して、客観的で事実に基づいた評価を提供し、原子力が将来のエネルギー問題の解決に貢献できるか、ハルデン市が十分な情報に基づいた決定を下せるよう支援したい」と意気込みを示した。ハルデン社を設立した3者によると、ノルウェーでは、オスロ特別市やハルデン市など18の自治体を含むエストフォル県で既に160億kWhの電力不足が発生しており、電力の需給ギャップが問題となっている。ノルウェー国内では、ハルデン市のみならず、さまざまな自治体でSMRの導入検討や建設可能性の調査が行われている。なお、ハルデン市では、エネルギー技術研究所(IFE)のハルデン研究炉(BWR、2.5万kWt)が1950年代から運転されていたが、2018年6月に閉鎖されている。
18 Dec 2024
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英国の原子力規制庁(ONR)、環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)は12月12日、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」(BWR、30万kWe)が、包括的設計審査(GDA)のステップ2に進んだことを明らかにした。GDAとは英国で初めて建設される炉型に対して行われる設計認証審査で、原子力規制庁(ONR)が設計の安全性とセキュリティの観点から、環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)が環境影響の観点から、英国の基準を満たしているかを、規制プロセスの早い段階から、立地サイト特定後の建設申請とは別に評価する。ステップ1において各機関は、GDAのステップ2(実質的な技術評価段階)を開始するために必要な取決め、プロセス、提出書類を確認し、BWRX-300の技術評価の範囲とスケジュールで合意に達した。ステップ2では、BWRX-300の基本的な設計の妥当性を評価し、英国で安全、安心かつ環境を保護しながら建設、運転、廃止措置が可能かどうかを確認する。ステップ2は、2025年12月に完了する予定だ。ONRのR. エクセレイ・BWRX-300担当の規制責任者は、「ONRは、米原子力規制委員会(NRC)と加原子力安全委員会(CNSC)双方との協力関係の構築に努めており、国ごとの設計変更を最小限に抑えて標準的な原子炉設計を維持するというGEH社の姿勢を全面的に支持する」「英国の規制当局は基本的に同じ設計を並行して審査する。GEH社が可能な限り共通の設計を維持できるよう、より効率的な規制の共有に尽力していく」とコメントした。今回のGDAの実施にあたり、GEH社はBWRX-300に関するGDAのウェブサイトを新たに立上げ、設計に関する詳細情報とパブリックコメントのプロセスを公開している。パブリックコメントのプロセスでは、誰でも同炉型に関するコメントや質問を提出して回答を得ることができる。規制当局はこれらの質問と回答を確認し、必要に応じて、残りのGDAプロセスにおいて評価に役立てることとしている。GEH社は2022年12月、現在のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の前身であるビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に、BWRX-300を対象とした2ステップのGDA申請書を提出した。BEIS/DESNZは規制当局の審査に先立ち、GEH社が提出したGDA申請書を事前に精査し、BWRX-300がGDA開始前の評価基準をクリアしていることを確認。これを受け、2024年1月、ONR、EA、NRWがGDAのステップ1を開始した。同月、GEH社はDESNZの「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」からBWRX-300の設計開発を支援する補助金を獲得。補助金はGDA申請やSMRの商業展開にむけた準備活動に充てられる。これとは別にGEH社は、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMR支援対象選定コンペに参加しており、最終選考に残った4社のうちの1社である。
17 Dec 2024
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スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設を計画するシャーンフル・ネキスト(KNXT)社は、12月5日に韓国・ソウルで開催されたスウェーデン・韓国戦略産業サミットにおいて、韓国の建設大手のサムスンC&T社(サムスン物産)と協力覚書(MOU)を締結した。KNXT社はこのパートナーシップを、脱炭素エネルギー源の拡大を目的に、スウェーデン南部で実施する小型モジュール炉(SMR)開発を加速・強化する「Re:Firm South SMR」プログラムの一環に位置づけている。韓国のサムスンC&T社は、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所の建設プロジェクトに参画。また、2023年6月にルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)と同国南部ドゥンボビツァ県のドイチェシュテイ(Doicesti)におけるSMR建設を目指して、建設プロジェクトの基本設計(Front-End Engineering Design:FEED)に共同参画している。KNXT社は、サムスンC&T社の最新の建設工法や設計、ライセンス、資金調達に関するノウハウを自社プロジェクトへ活用させたい考えだ。KNXT社は、スウェーデン南東部のバルデマーシュビークとニュヒェーピングの両自治体を建設候補地として予備的な実行可能性調査(FS)を実施している。両社は、今回のMOU締結により、炉型選定、環境影響評価など、SMR発電所建設へ向けた作業に直ちに着手する予定だ。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向けて大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。最近では、米国のMicrosoft社やAmazon社などの大手IT企業がスウェーデンにデータセンターを増設するという計画を発表。スウェーデン政府はSMRをはじめとする原子力発電所を建設し、データセンターに必要な電力供給を計画している。KNXT社とサムスンC&T社はこの機を捉え、2032年までにSMR発電所を建設、電力購入契約(PPA)を通じて、信頼性の高いクリーンな電力をデータセンターなどのエネルギー集約型施設に直接供給する事業モデルを検討している。今後も多数の発電所を建設し、同時にデータセンターの持続的な誘致を構想する。サムスンC&T社は今回のスウェーデン市場での協業を通じて、欧州市場でのSMR事業の一層の拡大をねらっている。
17 Dec 2024
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スイスの電力会社であるAxpo社は12月5日、同社が所有・運転するベツナウ原子力発電所1、2号機(PWR、各38万kWe)をそれぞれ2033年、2032年まで運転する方針を明らかにした。運転期間は60年を超えるが、それ以降の運転延長はせずに閉鎖する予定。ベツナウ発電所はスイス最古の原子力発電所。1号機は1969年、2号機は1972年にそれぞれ営業運転を開始した。年間60億kWhを発電し、地域暖房向けの熱供給も行っている。Axpo社はこれまで、ベツナウ発電所の運転開始以降、バックフィットに25億スイスフラン(約4,315億円)以上を投資してきたが、今後の運転継続のために3.5億スイスフラン(約604億円)を投じる計画だ。Axpo社は本決定をするにあたり、当初の予定を上回る60年間の運転が可能かどうか、主要コンポーネント(原子炉圧力容器など)の健全性や、人材、サプライヤー、燃料の確保など、包括的な調査を実施。外部の専門家やサプライヤーにも相談し、スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)とも協議した。なお、スイスの原子力発電所には運転期間の制限はなく、安全性が保証されることを条件に運転者は発電所の運転期間について自由に決定できるが、規制活動の枠組みの中で常に検討されている。ENSIが全体的な安全性評価のために定期安全レビュー(PSR)を10年ごとに実施。40年間の運転後には長期運転のための安全評価も実施する。次のPSRは、2027年末までにベツナウ発電所がENSIに提出する必要がある。スイスでは、ベツナウ発電所の2基のほか、2サイト(ゲスゲン、ライプシュタット)と合わせて、計4基が運転中。1基(ミューレベルク)が廃止措置を実施している。スイスの総発電電力量の約3割を原子力発電が、約6割を水力発電が占める。
16 Dec 2024
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