米イリノイ州の法整備にともない、エクセロン社が原子力に3億ドル投資
06 Oct 2021
ドレスデン原子力発電所©Exelon Generation
米イリノイ州で、州内の原子力発電所に経済的支援を提供する法案が成立したのを受け、同国最大の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は9月28日、州内2つの原子力発電所の運転長期化に向けて、今後5年間に約650人分の雇用を創出し、合計3億ドル以上の投資を行う計画を明らかにした。
同州では、電力市場の自由化にともない経営の悪化したバイロンとドレスデンの両原子力発電所を、事業者のエクセロン社が今年9月と11月にそれぞれ早期閉鎖する予定だった。しかし、州議会では9月13日、「CO2の影響緩和クレジット」を通じて原子力発電所に補助金を交付するという法案が成立。同州のJ.B.プリツカー知事は、9月15日付けでこの法案に署名した。これにより、バイロン原子力発電所(120万kW級のPWR×2基)では、永久閉鎖に向けて燃料の取り出し判断を下す最終締め切り日に、一転してこれまで通り安全かつ信頼性の高い運転を継続することが可能になった。
州知事による法案への署名後、エクセロン社は同発電所1号機で直ちに燃料の交換作業を開始。同社によれば、イリノイ州が地球温暖化の防止目標や経済目標を達成する上で、今回の法案は非常に大きな影響を及ぼす。州内2つの原子力発電所を維持することで、同州で生産されるクリーンエネルギーの3分の2を失わずに済むほか、CO2排出量が70%増加するのを回避できる。また、間接雇用も含めて2万8千人分の雇用が守られ、顧客が年間に支払うエネルギー料金では、4億8千万ドル分の価格上昇が避けられるとしている。
バイロン原子力発電所に関して、エクセロン社は今後5年間で約1億4千万ドルの投資を計画中である。具体的にはプラントの主発電機で分解整備を行うほか、大型変圧器の取り替えを実施。ファイバー光学制御システムでは機能の改善を行い、様々な種類のバルブやモーター、配管等を取り替える。これらの作業の多くは来年の燃料交換停止時に始める予定で、イリノイ州全土から1,500人以上の電気技師や配管工、溶接工、大工らがバイロン発電所に集結することになる。
同社はまた、ドレスデン原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)でも今後5年間に約1億7千万ドルの投資を行う。2号機の燃料交換は11月に実施するとしており、そのための停止期間中に、給水熱交換容器6台の機能向上と主発電機の大規模改修、電気機器の分解整備、循環冷却水配管の取り替え、核計装回路機器の改修を予定している。
エクセロン社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO) は「画期的な法案が発効したことから、当社は保有する原子力発電所を年中無休で稼働させるため、これらのすべてで早急な燃料交換と新たな従業員の配置を進めている」と表明。「1千万以上の顧客や世帯に低炭素なベースロード電力を供給するこれらの発電所は、クリーンエネルギーの供給という点で重要であり、イリノイ州のGDPに毎年16億ドル以上貢献する巨大な経済原動力でもある」と強調した。
(参照資料:エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)