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ウクライナ、年末から来年にかけWH社製AP1000の建設を開始

22 Oct 2021

フメルニツキ原子力発電所©Energoatom

ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は10月20日、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000技術を使った最初の原子炉建設を年末、あるいは来年の年始に開始するとの見通しを明らかにした。

エネルゴアトム社は今年8月、国内で複数のAP1000を建設していくため、WH社と独占契約を締結している。同社が今回、AP1000設計の「試験ユニット」と表現したこの原子炉は、「フメルニツキ原子力発電所内で建設」としていることから、建設工事が28%で停止中の4号機(K4)(100万kWのロシア型PWR=VVER)の完成工事になると見られている。

この工事について、ウクライナは近いうちに、政府間協定も含め複数の関係協定を米国と結ぶ予定。この計画ではまた、米国で2017年に建設計画が頓挫したV.C.サマー2、3号機(各110万kWのPWR)用の機器・設備を活用する可能性があると、エネルゴアトム社は今年9月に発表している。

WH社と独占契約を締結した際、エネルゴアトム社はK4に加えて、さらに4基のAP1000を建設すると表明しており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見方を示した。資金は主に米輸出入銀行(US EXIM)からの借り入れで調達するが、機器類の約60%は国内企業から購入する方針である。

今回明らかにされたK4建設の見通しは、同社が今月20日から22日にかけて開催中の「第1回・ウクライナ天然ガス投資会議(UGIC)」で、同社のP.コティン総裁代理が「ウクライナにおける原子力産業の開発戦略」として述べたもの。この会議は、ウクライナのエネルギー部門に諸外国からの投資を呼び込み、ウクライナ経済のさらなる発展を促すことが目的である。

コティン総裁代理はまず、「我々のエネルギー部門には幅広い開発ポテンシャルがあり、低炭素な発電に関しては特にポテンシャルが大きい」とした。同総裁代理によると、世界では①2050年までにエネルギー消費量が1.5~2倍に増加、②温室効果ガスの排出量削減のため大規模な脱炭素化が必要――という傾向が見られることから、ウクライナでは輸送や産業部門の全面的な「電化」を計画している。エネルゴアトム社はウクライナで唯一の原子力発電事業者であるため、明確な戦略に従って原子力発電設備を開発し、旧ソ連時代に着工したVVERを刷新していく方針。WH社との戦略的な契約の締結も、この流れに沿ったものであるとの認識を示唆している。

エネルゴアトム社はまた、原子力発電所を使った水素製造も検討中である。コティン総裁代理は、「原子力発電所ではベースロード運転が行われているが、電力需要が下がれば原子力発電所の電力で水素を製造できるし、需要が戻った時点で電気分解を止めればいい」と指摘した。このようなアプローチの下で、エネルゴアトム社は収益源の多様化を図るとともに、原子力発電所で柔軟性の高い運転を行い、その余剰電力を有効に活用。電気分解による水素製造はクリーンエネルギーへの移行を後押しするだけでなく、欧州連合(EU)が2020年7月に発表した(脱炭素化に貢献する)「欧州水素戦略」を実行することにもなるとしている。

(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料(ウクライナ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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