仏マクロン大統領が原子炉新設を再開と表明
11 Nov 2021
マクロン大統領©The Elysee Palace
フランス大統領府のウェブサイトによると、同国のE.マクロン大統領は今月9日のテレビ演説で、数10年ぶりに国内で新規の原子炉建設を再開する考えを明らかにした。英国グラスゴーにおける第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の閉幕を12日に控え、同大統領は「これはフランスからの強いメッセージである」としている。
演説の中で、同大統領はフランスのエネルギー自給に触れ、「天然ガスの価格や電気料金の上昇により仏国民の生活は大きな影響を受けている。こうした事態には緊急に対処する必要があり、政府は天然ガスの価格を固定化する措置を取った」とした。しかし、「国民がもしも、適切なレベルのエネルギー料金を支払い、外国から輸入するエネルギーへの依存を下げたいのであれば、我々は省エネを続けるだけでなく、国内で低炭素エネルギー源の建設に向けた投資を行わねばならない」と指摘。その上で、「フランスのエネルギー自給を保証するとともに国内の電力供給を確保し、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するため、国内での原子炉建設を再開し再生可能エネルギーの開発を継続する」と明言した。
フランスでは2015年7月、約8か月間に及んだ全国的な討論の結果、「緑の成長に向けたエネルギー移行法」が成立した。これにより、F.オランド前大統領が約束していた「2025年までに原子力発電シェアを現在の75%から50%に削減する」ことや、「原子力発電設備を現状レベルの6,320万kWに制限する」ことが決定。これにともない、国内で最も古いフェッセンハイム原子力発電所の2基が2020年6月までに永久閉鎖されている。
しかし、マクロン大統領は2018年11月、発電シェアの削減公約を「現実的で制御可能、経済的かつ社会的にも実行可能な条件下で達成するため、実施期限を2035年まで10年先送りする」と決定した。今年10月には、新たな産業政策「フランス2030」の中で、「2030年までに10億ユーロ(約1,307億円)を投じて、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉の技術を実証し、放射性廃棄物のより良い管理で世界市場への参入を目指す」と表明。同大統領は、原子力はフランスの基幹製造技術であるため今後も必要な技術であり、その再編成は政策目標の第一番目に位置付けられ、継続的に開発していくことは非常に重要との認識を示している。
今回の演説で、マクロン大統領は原子炉の建設再開に向けた具体策を一切示していない。また、来年4月には大統領選挙が控えていることから、この方針が正式決定するのは選挙後になるとの見方がある。
一方、ロイター通信は今月10日、「フランス政府は今後数週間以内に、国内で大型PWRを新たに6基建設する計画を公表する模様だ」と報道している。フランス政府はこれまで、北西部のシェルブール近郊で建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(163万kWの欧州加圧水型炉=EPR)が完成するまで、新たなEPRを建設しないとしてきた。しかし、欧州では10月の天然ガス価格の高騰など、国民生活の光熱費が連鎖的に増加している。ロイター通信では、フランス政府がこれらのことに配慮し、EPR新設の判断を早めたと伝えている。
(参照資料:仏大統領府(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)