中国の小型モジュール式HTR、ツインユニットの2基目が臨界条件達成
16 Nov 2021
HTR-PMの中央制御室 ©華能集団公司
中国核工業集団公司(CNNC)は11月12日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式高温ガス炉(HTR-PM)」の実証炉(ツインタイプで合計電気出力21.1万kW)で、11日にモジュールユニットの2基目が臨界条件を達成したと発表した。
中国のHTR-PMでは、電気出力が約10万kWのモジュールユニット2基で1つの発電機を共有しており、今年9月に最初の1基が臨界条件を達成した。本格着工したのは2012年12月のことで、それ以降このサイトでは、今年3月までに冷態機能試験や温態機能試験が完了、国家核安全局(NNSA)は8月に運転許可を発給した。これにともない燃料の初装荷作業が行われており、建設工事を進める「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」は、年内にも送電網への接続を目指している。今後は、1基目のユニットで完了したゼロ出力の物理試験など、様々な試験を2基目でも実施する計画である。
この建設計画はHTR技術の実証を目的としたもので、中国は電熱併給が可能で固有の安全性を有する第4世代のHTR開発を「国家重大特別プロジェクト」の1つに選定。CNNCはHTR技術の商業化を進めることにより、習近平国家主席が提唱する「三新一高」(科学技術の新しい成果や新興技術を応用し、新たな開発コンセプトの産業モデルを高品質で構築する)へのすべての関係組織の真摯な取り組みが示されると意義を強調した。HTRの技術革新を通じて、中国が目標に掲げる「CO2排出量を頭打ちにする(ピークアウト)こと」と「実質ゼロ化」を進め、高品質の原子力産業界を築いていく考えだ。
中国のHTRで技術研究開発の中心的役割を担っているのは北京の清華大学で、同大の研究院は熱出力11万kWの実験炉「HTR-10」を2003年から運転中である。実証炉となる「HTR-PM」の建設工事はSHSNPCが進めており、同大はSHSNPCに対して20%出資。このほか、同大と協力関係にあるCNNC傘下の中国核工業建設集団公司(CNEC)が32.5%を、5大発電集団の一つである華能集団公司が47.5%を出資している。また、清華大学の子会社の「清華控股有限公司」とCNECの合弁企業である「中核能源科技有限公司(チナジー社)」は、同建設工事の設計・資材調達・建設(EPC)契約を請け負っている。
HTRは発電だけでなく地域熱供給や海水の淡水化、水素製造にも利用できるため、日本ではすでに日本原子力研究開発機構が1999年以降、大洗の高温工学試験研究炉(HTTR)で研究開発を実施中。国外ではポーランドも大型炉の建設計画と並行して、HTR導入の実行可能性を模索している。
(参照資料:CNNC、華能集団公司の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)