米ニュースケール社、プロディジー社の海洋原子力発電所建設に向け協力覚書
19 Nov 2021
©Prodigy Clean Energy
米国のニュースケール・パワー社は11月17日、カナダのプロディジー(Prodigy)・クリーン・エナジー社が開発している「海洋原子力発電所(MPS)」の建設と商業化を支援するため、規制インフラの構築に向けた提案などでカナダのキネクトリックス(Kinectrics)社とともに同社に協力する覚書を3社間で締結したと発表した。
プロディジー社のMPSには、ニュースケール社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」が最大で12モジュール組み込まれる予定。MPSは海岸に設置したタービン等の発電構造物に原子炉を統合する発電所で、造船所で製造後に海上輸送され、海岸線の防水仕様の係留地点に据付けられて、そこから海岸の送電網に接続され送電する。短い工期で建設が可能な上、低炭素なエネルギーをベースロード・モードで供給できることから、ニュースケール社はMPSが世界的規模で化石燃料発電に取って替わっていくと強調している。
今回締結された協力覚書は、ニュースケール社とプロディジー社が2018年に締結した既存のパートナーシップに基づいており、SMR技術の商業化に向けた重要なステップとなる。同覚書を通じて3社はMPSの潜在的な顧客や、許認可体制など規制インフラに関する当局者との協議に備え、技術仕様書や規制関係文書を作成する。
ニュースケール社によると、SMR建設にプロディジー社のMPSシステムを活用する利点は、従来の大型発電所と比べて建設コストを大幅に削減できることと、環境への影響や建設工期が縮減されることにある。このため同社は今回、電力産業界に許認可関係や環境分析、海辺の送電インフラに関するサービスを提供しているキネトリックス社とも協力。再生可能エネルギー源と連結したMPSをプロディジー社が一つだけ建設した場合や、MPSを水素燃料などのクリーンエネルギー製造に活用した場合について、経済性や商業規模などを評価する方針だ。
ニュースケール社のNPMを動力源とするMPSは、沿岸部の都市やコミュニティ、臨海工業地帯のみならず、島国に対してもクリーンで持続可能なエネルギーを確実に提供することが可能。ベースロード用電源としてだけでなく負荷追従運転にも対応し、高度に合理化された廉価なクリーンエネルギーの供給手段になるとニュースケール社は強調している。
プロディジー社は現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)とMPSに関する協議を始めたところで、許認可手続きの開始に先立ち実施すべき諸活動などを提案中。同社のM.トロジャーCEOはMPSの規制について、「北米での規制案件としては最初のものとなるが、カナダでは連邦政府がSMR開発に意欲的な方針を堅持しているほか、原子力規制当局の経験が豊富。国内の原子力発電所の収益性も高く、安全運転の実施では世界をリードするなど、当社のMPS開発を成功に導く環境は整っている」とした。その上で、「カナダの政策や規制体制に助けられて当社のMPSがスタート地点に立ち、将来的な輸出にも道が開かれることを期待している」と述べた。
(参照資料:ニュースケール社、キネクトリックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)