フィンランド政府、SMR対応など現状に合わせ原子力法改正へ
13 Dec 2021
フォータム社のロビーサ原子力発電所©Fortum
フィンランドの経済雇用省は12月8日、小型モジュール炉(SMR)など新しい原子力技術に対応した許認可体制の確立を主な目的に、原子力法の包括的な改正に向けた準備作業を開始したと発表した。
同国で稼働する4基の商業炉は総発電量の約34%を賄う重要電源であり、CO2排出量の実質ゼロ化を目指すフィンランドでは、地球温暖化の防止対策としても今後数10年にわたって重要な役割を担う。安全面や経済面で実用性の高い原子力発電を今後も引き続き活用していくため、同省は近年の状況に合わせた適切かつ最新の法整備が必要だと説明。2024年にも改正版の原子力法の案文をパブリック・コメントに付して、政府案を議会に提示、2028年にも正式に発効させる方針である。
同省の発表によると、原子力関係施設の許認可体制は時間をかけて徐々に基盤が確立されてきたもので、原子力関係施設の建設プロジェクトにおいては、あらゆる段階で社会的利益を反映してきた。しかし、原子力関係施設の運転環境も同様に変化しつつあることから、許認可体制を始めとする原子力規制の枠組みも、これまでの経験や今後の技術開発状況等を踏まえた改革が必要である。
このような背景から、同省は近年の原子力産業界でSMRのような新しい技術や運転モデルが浮上してきた事実に言及。CO2の排出量を実質ゼロ化するには、CO2を排出せずに熱や電力を供給できる原子力発電の活用拡大は解決策の一つであると強調した。
そのための原子力法改正にあたり、経済雇用省は「効果的でリスク評価に基づいた管理が原子力発電所の安全確保では重要だ」と改めて指摘した。新しい原子力技術を採用し、これを複数建設していくのであれば法令準拠状況も審査しなければならない。そのため、今回の法改正ではフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に十分な管理権限を様々な部分で与え、既存の大型原子力発電所における安全運転とSMRの活用可能性を確実なものにする必要がある。原子力利用に付随する権利と義務については一層明確な基準を定めるが、重要な点は運転上のリスクにタイムリーに対応できるよう、要件を具体的なものに改善することだと述べた。
これらに加えて同省は、将来の原子力利用で最も大きな課題となるのは採算性だと指摘した。SMRを活用する際も、放射性廃棄物の管理など安全・セキュリティの確保は切り離せない問題だが、例えばSMRを地域暖房に活用する場合、居住地域に非常に近い地点に建設する必要があるため、世界各国は差し当たり、コスト面の競争力が高いSMRの実用化を待っている。
このほかにも同省は、SMRに関する重要課題として安全性を評価する方法の改善や規制当局同士の国際協力などがあると表明。新たな許認可体制で安全性の評価方法が十分機能しなかった場合は、モジュール式であることの利点が失われ、SMRを建設する毎に安全性を個別に評価することになると警告している。
(参照資料:フィンランド政府(フィンランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)