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EC、最終版のEUタクソノミー基準に一定条件下で原子力を追加

03 Feb 2022

今回の発表を担当したECのM.マクギネス金融サービス・金融安定・資本市場同盟担当委員©EC

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2月2日、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準「EUタクソノミー」において、持続可能とみなす技術的精査基準を規定した「地球温暖化の影響を緩和する(補完的な)委任法令(Delegated Act: DA)」に、一定条件下で原子力関係の活動を含めることを原則的に承認したと発表した。

ECは昨年の12月末、原子力と天然ガスの関係活動を含める内容のDA案を「持続可能な資金提供に関する加盟国の専門家グループ」、および諮問機関である「持続可能な資金提供プラットフォーム(PSF)」に提示した。これらの機関からの見解に基づいて、ECの委員達で構成される欧州委員協議会が同DA案の文言について協議した結果、今回政治的合意に達したとしている。

同DAはEU加盟国すべての使用言語に翻訳され次第、正式に採択される予定で、その後は、欧州議会と欧州連合理事会が4か月にわたって同DAを精査。精査期間の終了時に両機関がともに異議を唱えなければ、同DAの原子力や天然ガスに関連する規定の部分は、2023年1月1日付で発効し適用が開始される。

ECによると、EUが2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには多額の民間投資が欠かせず、この目標の達成に必要な活動への民間投資をEUタクソノミーで誘導する方針である。同タクソノミーで加盟各国のエネルギーミックスを特定のエネルギー技術に決定付けるのではなく、CO2排出量の実質ゼロ化に資するすべての方策を自由に活用させることで、CO2排出量の実質ゼロ化への移行を促す考え。近年の科学技術の進歩を考慮すると、原子力と天然ガスへの民間投資はこの移行を促進する役割を担っており、石炭火力のように大気を汚染する発電技術からのシフトを加速するとECは指摘している。

これらのことから、ECはタクソノミー規制の下で今年の1月1日から施行されている現行のDAに、原子力と天然ガスに関する明確かつ厳しい条件を設定し、これらに関する経済活動を過渡期の暫定的な活動として加えたもの。これら2つの電源に共通する条件のほかに、原子力については環境上の安全要件を満たすよう求めており、具体的には、放射性廃棄物の長期貯蔵や最終処分によって生じるリスクが、その他の環境保全目標を大幅に損なうことがないようにするべきと明記。事故耐性燃料の活用要件を技術的精査基準の中に設定することや、高レベル廃棄物の排出量が最小限になる第4世代原子炉の将来の活用に向けた要件を同基準に盛り込むこと、新規原子力発電設備のリードタイムの長さを考慮して、既存原子炉の運転期間延長に向けた設備の安全性改善等を同基準の要件にすることを求めている。

ECはまた、投資家が投資を行う際、他の電源で提案されたプロジェクトよりも原子力や天然ガスの方が好ましい場合にはその選択もできるよう関係市場の透明化を推進すると表明。情報の開示要件をDAに新たに設定したことを明らかにしている。

ECの今回の発表について、欧州の原子力企業約3,000社を代表する欧州原子力産業協会(フォーラトム)のY.デバゼイユ事務局長は、「原子力がEUタクソノミーに加えられたことを歓迎する」とコメントした。ただし、原子力が引き続き「過渡期の技術」として扱われていることは残念だと表明。「我々は原子力が地球温暖化の影響緩和に貢献し、EUタクソノミーにすでに含まれている発電技術ほどの害を及ぼさないと確信している」と述べた。

同事務局長によると、今回ECが採用した提案では、原子力は以下のような厳しい条件を満たしている限りEUタクソノミーに適合していると認識される。すなわち、

①原子力発電を利用している加盟国では、極低レベルと低レベル、および中レベル廃棄物用の最終処分場を操業していなくてはならない。

②原子力発電の利用国は高レベル廃棄物最終処分場の建設計画を策定しておかねばならない。

③2025年時点で既存の原子力発電所と新規の原子力発電所建設計画を有する国では、規制当局が認証済みの事故耐性燃料を使用しなくてはならない。

(参照資料:ECフォーラトムの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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