アルゼンチン、国内4基目に「華龍一号」を採用
04 Feb 2022
©NA-SA
アルゼンチン政府は2月1日、同国で4基目の商業炉となるアトーチャ原子力発電所3号機の建設計画について、同国の国営原子力発電会社(NA-SA)と中国核工業集団公司(CNNC)が「EPC(設計・調達・建設)契約を締結したと発表した。両社が昨年から再開した協議の結果、同炉では中国の「華龍一号」設計を採用することが決定している。
「華龍一号」は、中国の2つの原子力企業がそれぞれ開発した第3世代のPWR設計を統合したもので、出力120万kW、耐用年数は60年である。アルゼンチン政府によると、アトーチャ3号機は1981年以来初めて建設する商業炉で、NA-SAが昨年6月に採択したアクション計画の一部。同社は今年の年末にも着工する考えで、総工費は約83億ドル。国内サプライヤーの約40%が関与し、7千名以上の直接雇用が創出される見通しだ。83億ドルのほとんどは中国からの融資と見られている。
今回の合意について、アルゼンチン政府は「原子力発電分野における両国の協力関係が一層強化されるだけでなく、クリーンエネルギーによって国内産業が発展する」と評価。「燃料の製造技術については技術移転も受ける計画で、我が国の技術力が一層強化される」と強調した。
NA-SAの発表によると、アトーチャ3号機の建設プロジェクトは2014年7月に両社間で調印した「包括的な戦略提携」と「経済協力と投資に関する枠組み合意」の一部でもあり、両国政府は翌2015年2月、「アルゼンチンのPWR建設プロジェクトに関する政府間協力協定」を締結している。この当時のアルゼンチンの計画では、国内4基目のアトーチャ3号機には既存の商業炉3基と同じ加圧重水炉(PHWR)を採用、5基目の商業炉に「華龍一号」などの軽水炉を国内で初めて採用することになっており、NA-SAとCNNCは2015年11月、4基目の技術・商業契約と5基目の協力に関する枠組み協定を締結。投資額の85%は、中国工商銀行などを通じて中国側が支援する予定だった。
しかし、アルゼンチンではその直後の2015年12月、大統領がM.マクリ氏に交代。同大統領は建設プロジェクトの見直しを行った上で、関係するすべての作業を停止した。アトーチャ発電所が立地するブエノスアイレス州のA.キチヨフ知事によると、この計画にはその後大きな進展がなく、現在のA.フェルナンデス政権が登場するまで約4年の歳月が無駄に経過した。
今回の両社の合意と契約締結はテレビ会議を通じて行われており、これには両社の上級幹部のみならず、両国の政府高官や両国に駐在するそれぞれの外交代表、アトーチャ発電所の地元自治体などが参加した。NA-SAは「両国の協力関係が新たな段階に移行し、原子力の平和利用や関係する科学技術と産業の発展に向けて強いきずなが結ばれた」と指摘。EPC契約の締結後は、双方の関係官庁による関連事項の具体化の調整が進められ、建設プロジェクトの実行に必要な条件を整えていく方針だ。
また、テレビ会議に出席した経済省のF.バスアルド電力担当次官によると、「政府は改めて原子力部門の統合と成長に向けた政策を執ることを確認し、アトーチャ3号機の建設を通じて電源の多様化を進め、これにより国内の産業・技術をさらに発展させていく」としている。
(参照資料:アルゼンチン政府(スペイン語)、NA-SAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)