米USNC社、同社製MMRの建設に向けたFSでアラスカ州の電力共同組合と協力
09 Feb 2022
MMRの構造図 ©USNC
米国で第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を開発しているウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびアラスカ州の電力共同組合「コッパー・バレー電気協会(CVEA)」は2月8日、同州内でのMMR建設に向け、両者が予備的実行可能性調査(FS)で協力中であると発表した。
このFSでは、CVEAの本拠地であるアラスカ州南東部のグレンナレンで、電気出力1万kWのMMRを中心とする先進的エネルギー・システムを構築する技術的な可能性を探るとともに、立地に適した地点や社会的受容性、建設コスト等の経済性についても調査。今年の夏までに完了させる計画で、両者は「結果が良好であれば、MMRはアラスカ州で建設される最初の民生用マイクロ原子炉になる」としている。
CVEAは州内における共同運営の電気事業者で、現在グレナレン周辺の東西約160km、南北約260kmの区域に電力と熱を供給中。ディーゼル発電所や水力発電所など合計約4万kWの発電設備を保有・運転しているが、燃料は高額で価格が変動し易い液体化石燃料に依存している。CVEAの理事会が昨年承認した戦略計画では、このような燃料への依存を軽減し、一層クリーンで経済的な電力供給に転換することが目標に掲げられた。
USNCのMMRは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWで、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料に用いる小型モジュール式HTGR。20年の運転期間中に燃料を交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても、物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。
カナダのエネルギー・プロジェクト企業のグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに2019年3月、パートナー企業であるUSNC社のMMRをオンタリオ州チョークリバー・サイトで建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。また、米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)は2021年6月、USNC社製MMRを将来学内で建設するため、原子力規制委員会(NRC)に「意向表明書(LOI)」を提出している。
CVEAのT.ミリオンCEOは今回のFSについて、「当協会の電源ミックスの脱炭素化や効率性の向上等で、MMR技術が採用可能か最優先に調査している。また、MMRを通じて発電コストの上昇を抑え、水力発電が使えない冬季にディーゼル発電への依存が高まる点なども是正していく」と説明。同CEOの認識では、従来の大型原子力発電所と比べてMMRはほとんど水を使わず、放射性廃棄物の発生量も少ない。放射性生成物が漏れ出たり、メルトダウンが発生しないよう特別な設計になっている。
同CEOはまた、「今後はUSNCとともに地元コミュニティとの交流を図り、MMR建設プロジェクトの全段階を通じてコミュニティの利益が確保されるよう、彼らの意見を聞き支援を得たい」と表明。FSが完了するまでの期間、地元住民を中心とするこのような協議によって、同プロジェクトに対するCVEAメンバーや州民の理解を一層深める方針である。
なお、今回の発表に先立つ2月1日、アラスカ州のM.ダンリービー知事は、州内全域におけるエネルギーの自給やエネルギー・コストの長期的な引き下げ等を促進するため、州内でマイクロ原子炉の建設を促す法案を議会に提出した。この技術を導入することで、同州にはクリーンで安全なエネルギーがもたらされると州知事は強調。CVEAがMMRの建設に向けたFSをすでに実施中であることにも触れており、この計画によって同知事のエネルギー政策が後押しされ、アラスカ州ではマイクロ原子炉の許認可手続の簡素化が進むと指摘している。
(参照資料:コッパー・バレー電気協会、アラスカ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)