スウェーデン、鉛冷却SMRの実証計画に9,900万クローナ助成
17 Feb 2022
「SEALER」の構造図 ©LeadCold Reactors
スウェーデン政府のエネルギー庁は2月15日、「スウェーデン・モジュール原子炉会社(Swedish Modular Reactors AB)」が進めている鉛冷却小型モジュール炉(SMR)「SEALER」の開発を支援するため、オスカーシャムにおける「SEALER」プロトタイプ装置の設計・建設費用として9,900万クローナ(約12億3,000万円)を助成すると発表した。
鉛冷却SMRは経済的な上、CO2を排出しないベースロード電源になると期待されている第4世代の原子炉技術で、水素を高効率で製造することも可能である。スウェーデン・モジュール原子炉会社の計画では、2024年までに1/56スケールの電気加熱式プロトタイプ装置の運転を開始した後、同国の王立工科大学(KTH)が主導する学術プロジェクトとも協力し2030年までに同じオスカーシャムで実証炉を建設。2030年代には次の段階の原子炉を建設して、同技術の商業化を目指すとしている。
「SEALER」の概念はスウェーデンのレドコールド(LeadCold Reactors)社が開発したもので、同社は国内で鉛冷却原子炉の研究開発を中心的に行っているKTHのスピンオフ企業として、2013年に創設されている。レドコールド社は2021年、オスカーシャム原子力発電所の大株主であるドイツのUniper社と合弁で、スウェーデン・モジュール原子炉会社を設立。同社はオスカーシャム発電所の敷地内で、KTHと共同で「SEALER」のプロトタイプ装置を設計・建設していくことになった。
エネルギー庁は1980年代にスウェーデン産業省内に設置された機関で、新エネルギーなど、革新的なエネルギー技術の研究開発の促進で、助成金を大学等の研究機関や産業界のために提供している。
今回の発表によると、同庁は、持続可能な社会の実現に向けた様々な動きが、この2年間ほどで生活の多くの局面で電化という形で具体化していることに注目してきたが、化石燃料を使わずに生産する「無炭素電力」への投資意欲は今や大きく高まっている。無炭素な電力はスウェーデンがクリーンエネルギー社会に移行する上で必要というだけでなく、地球温暖化の対応策を輸出する機会にもつながるとした。
鉛冷却原子炉については、同庁はスウェーデンが化石燃料と無縁な社会へ移行するのにともない「電化の促進」に寄与すると評価。電力需要が発電量を上回った時に備えて、効率的に製造した水素を蓄えておくことも可能だと指摘している。これらのことから、「スウェーデンの電力システムに一層の柔軟性と安定性をもたらす技術だ」と強調している。
(参照資料:スウェーデン・エネルギー庁(スウェーデン語)、スウェーデン王立工科大学(スウェーデン語)、レドコールド社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)