米ホルテック社、インドのロシア型PWR用に使用済燃料キャスク納入へ
18 Feb 2022
ホルテック社がウクライナに納入した「HI-STAR 190」©Holtec
米国のエネルギー総合ソリューション企業であるホルテック・インターナショナル社は2月16日、同社のインド子会社であるホルテック・アジア社が、インド原子力発電公社(NPCIL)から使用済燃料の輸送用キャスク2台を受注したと発表した。
同国南端のタミルナドゥ州に立地するクダンクラム原子力発電所では、現在ロシア型PWR(VVER)設計の1、2号機(各100万kW)が稼働中。キャスクはこれらから出る使用済燃料をサイト外貯蔵するために使用される。
同社が納入する「HI-STAR 149」は、すでに世界中の原子力発電所で利用されている「HI-STAR」シリーズの一つである。使用済燃料から出る放射線を遮り熱を放散する能力、核分裂反応を制御する能力など、放射能を閉じ込める容器としては、最も頑健で優れていると同社は強調。このような性能は、同社がナノテクノロジーを用いて開発した構造材料「Metamic HT」を、キャスクの燃料バスケットに採用して実現したもので、VVERのみならず、欧米で開発された原子炉の使用済燃料にも対応できるとしている。
VVERの使用済燃料用輸送・貯蔵キャスクについては、ホルテック社はウクライナで稼働するVVER向けに、少し大型の「HI-STAR 190」を2台納入済みである。さらに追加の1台を同国に向けて出荷する準備を進めているところで、これらのキャスクの設計や安全性については、米ニュージャージー州にある同社の技術センターがウクライナにある同社の事業センター、ホルテック・アジア社と協力して分析調査を実施した。
ホルテック・アジア社はインド国内ですでに2つの事業拠点を置いており、一つはマハラシュトラ州プネにあるエンジニアリング事務所で、もう一つはグジャラート州ダヘジにある空冷復水器等の機器製造工場。今回の契約を獲得したプネのエンジニアリング事務所では、設計エンジニアリングや分析調査、サイト関係サービス等、広範囲のエンジニアリング・サービスを行っている。
キャスクの受注についてホルテック・アジア社のJ.チャタジー社長は、「当社が輸送・貯蔵用キャスクで蓄積してきたノウハウを、米国法令の範囲内でインドの製造業者と共有していく道が開けた」と評価。インドでは近年、N.モディ首相が同国を世界の製造業の中心地とするスローガンを掲げているが、同社長は「当社としてはこれに協調していく考えであり、社会的な責任に関する米国親会社の価値観を反映し、インドの事業拠点として拡大しつつある公共サービスの目標達成に強力に貢献していきたい」と述べた。
インドの原子力発電所は現時点で、出力の小さい国産加圧重水炉(PHWR)が中心であり、100万kW級の大型軽水炉としては、ロシアがクダンクラム原子力発電所に供給した1、2号機のみが稼働中。同発電所ではその後、2017年に3、4号機が着工したほか、2021年には5、6号機も着工している。
一方、米国は2008年にインドと原子力協力協定を締結。原子力供給国グループ(NSG)も米国の主張を受け入れて、核実験を実施したインドへの原子力機器禁輸を解除したが、事故時のベンダー責任など様々な理由により、欧米諸国が提案した軽水炉の新設計画は進展していない。
(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)