フィンランドのフォータム社、ロビーサ原子力発電所を2050年まで稼働へ
10 Mar 2022
©Fortum
フィンランドのフォータム社は3月3日、同国南部で保有・運転しているロビーサ原子力発電所(53.1万kWのロシア型PWR=VVER×2基)の運転期間を再度延長し、現行認可が2027年と2030年に満了予定の1、2号機を2050年末まで運転継続するための申請を行うと発表した。
3月末までに申請書を経済雇用省に提出する予定で、同省はその後、政府審査としてフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)を含む様々な専門家等から意見を聴取。約一年をかけ政府としての最終判断を示す見通しである。
申請が認められれば、1977年2月と1980年11月にそれぞれ送電開始した1、2号機の運転期間は、73年間と70年間となり、これらが発電する無炭素電力は最大で1,700億kWhに達すると同社は予測。フィンランドと欧州連合が目標とするCO2排出量の実質ゼロ化に貢献するとともに、競争力と信頼性があり、かつ持続可能なエネルギー供給システムを構築する道が拓けると強調している。
ロビーサ1、2号機は旧ソ連邦時代に建設されたVVERで、原子炉および主要機器のいくつかは旧ソ連製。ただし、両炉の安全系や制御系、自動化システムなどは、西側諸国の厳しい安全基準を満たせるよう西側の技術を用いて改造されている。また、安全性や操作性を向上させるため、同社は設備の近代化プロジェクトを継続的に実施しており、2018年には英ロールス・ロイス社の協力により、同発電所としては過去最大規模の近代化プロジェクトで自動化システムを全面的に更新している。
同発電所が国内電力需要の約10%を賄っていることから、フィンランド政府は1号機の運転開始後30年が経過した2007年、STUKの助言を受けて両炉の運転期間をそれぞれ、2027年と2030年まで延長することを承認した。フォータム社に対しては、この期間中に両炉で2回ずつ、大掛かりな安全評価の実施を義務付けている。
その後同社は、1、2号機で2回目の運転期間延長を行った場合と、現行の運転認可が満了する2027年と2030年に廃止措置を取った場合の両方について、2020年8月から周辺の環境や住民の健康と安全、および近隣コミュニティの経済に及ぶ影響等を評価してきた。2021年9月には環境影響評価(EIA)の報告書を経済雇用省に提出、同省はこれに関する関係省庁や機関の意見を聞くとともに、一般市民や地元コミュニティを交えた公開ヒアリングを実施していた。
今回の決定について同社のM.ラウラモ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社の無炭素電源の中でも原子力は主要な柱であり、ロビーサ発電所の運転継続はフィンランド国内におけるクリーンエネルギー供給保証への投資を意味している。原子力は安定した電力供給が可能であるため、風力のように間欠性のある電源を補い設置拡大を支援することにも貢献する」とした。
同社はこれまで、ロビーサ原子力発電所の運転期間延長に資金を投入しており、その額は過去5年間の合計で約3億2,500万ユーロ(約417億円)。この投資が経済や雇用の促進にもたらす効果は非常に大きいという側面もあり、運転期間が満了する2050年までの総投資額は、約10億ユーロ(約1,283億円)に達するとの見通しを明らかにした。
なお、同発電所の運転期間延長にともない、フォータム社は同じエリア内の低・中レベル放射性廃棄物処分場についても、2090年末まで操業継続するための認可申請を行う方針である。使用済燃料の最終処分場については、ティオリスーデン・ボイマ社(TVO)と共同で設立したポシバ社が現在、南部のユーラヨキ地方にあるオルキルオト原子力発電所の近郊で建設中。2020年代半ばには、世界で初の最終処分場として操業開始が見込まれている。
(参照資料:フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)