フィンランドのOL3、点検・修理のため営業運転開始を9月に延期
02 May 2022
OL3 ©TVO
フィンランド南西部のオルキルオト原子力発電所で、3号機(OL3)(出力172万kWの欧州加圧水型炉=EPR)を建設中のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は4月29日、同炉で7月末に予定されていた営業運転の開始スケジュールが9月に延期になったと発表した。
これは、建設工事を請け負っている仏アレバ社および独シーメンス社の企業連合からTVOに伝えられたもので、理由はOL3の冷却系で3週間程度の機器点検・修理が必要になったためと説明している。
2005年に着工したOL3は、約17年間に及んだ建設工事を経て2021年12月に臨界条件を達成し、今年3月には欧州初のフラマトム社製EPRとして送電を開始した。その際、約4か月の試運転期間に出力を定格まで徐々に上げていくとしていたが、試運転段階のこれまでの経験に基づき、さらなる試験と分析に必要な時間を追加で確保したとしている。
TVOの発表によると、OL3では試運転プログラムに沿って4月26日に計画停止する際、核分裂の連鎖反応を制御しているホウ素の注入ポンプが不意に作動した。緊急停止信号の誤作動によるものと見られているが、同炉は現在安全な状態にあるほか周辺住民や環境への影響もなく、TVOはこの現象の発生原因を詳しく調査中。自動信号システムのエラーを修理することになるが、営業運転開始スケジュールの延期とは無関係だと強調している。
OL3は世界で初めてEPR設計を採用して着工した原子炉で、運転の開始は当初、2009年に予定されていた。しかし、技術的な課題が次々と浮上したためこのスケジュールに大幅な遅れが生じ、コストもターンキー契約による固定価格の約30億ユーロ(約4,100億円)が倍以上に拡大した。2007年にはフランスで、同じくEPRを採用したフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)(165万kW)が着工されたが、FL3でもOL3と同様、様々なトラブルにより建設工事が遅延。FL3では現在、2023年の第2四半期に燃料の初装荷が予定されている。
一方、中国・広東省で2009年11月と2010年4月に着工した台山原子力発電所1、2号機(各175万kW)では、これらの先行計画における作業経験が生かされ、世界初のEPRとしてそれぞれ2018年12月と2019年9月に営業運転を開始した。また、英国・南西部サマセット州では、同じくEPRを採用したヒンクリーポイントC原子力発電所1、2号機(各172万kWのEPR)が、それぞれ2018年12月と2019年12月から建設中。同国ではさらに南東部のサフォーク州でも、サイズウェルC原子力発電所として160万~170万kWのEPRを2基建設する計画について協議が行われている。
(参照資料:TVOの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)