韓国で3基目の「APR1400」、新ハヌル1号機が初臨界達成
24 May 2022
新ハンウル原子力発電所 ©Korea Hydro & Nuclear Power
韓国水力・原子力会社(KHNP)は5月22日、慶尚北道蔚珍郡の北部で2012年6月から建設中だった新ハヌル原子力発電所1号機(PWR、140万kW)が、同日に初めて臨界条件を達成したと発表した。
同炉については、韓国原子力安全委員会(NSSC)が2021年7月に条件付きで運転許可を発給した後に燃料を装荷。温態機能試験などを経て臨界に達したもので、今後はタービン系統などの性能試験を実施し6月初めから発電を開始する。定格出力まで各段階の出力で試験を行った後は、今年の後半にも同国で25基目の商業炉として営業運転を開始する予定である。
同炉では、1990年代に米コンバッション・エンジニアリング(CE)社(当時)が開発した130万kW級PWR設計「システム80+」をベースに、韓国電力公社(KEPCO)の主導で開発した第3世代の140万kW級PWR設計「改良型加圧水型炉(APR1400)」を採用。KHNP社の発表によると、新ハヌル1号機では原子炉冷却材ポンプや計測制御システムなどが国産化されており、同炉によって韓国は原子力技術の自立を成し遂げたと強調している。
また、同設計を欧州向けに修正した「EU-APR」は2017年10月、欧州の電力企業16社が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」の審査をパス。2018年9月には、米原子力規制委員会(NRC)が同委スタッフによる承認として同設計に「標準設計承認(SDA)」を発給したほか、翌2019年8月にはNRCの安全・規制要件をすべて満たした設計として、「設計認証(DC)」を発給している。
韓国ではすでに、同設計を採用した新古里3、4号機がそれぞれ2016年12月と2019年8月に営業運転を開始しており、新ハヌル1号機は国内で3基目の「APR1400」となった。また、後続の「APR1400」として、新ハヌル2号機、および新古里5、6号機も建設中である。国外では、アラブ首長国連邦(UAE)で建設中のバラカ原子力発電所(「APR1400」×4基)で同設計が採用されており、2021年4月に1号機、今年3月に2号機が営業運転を開始した。これに続く輸出案件とするため、KHNP社は今年4月、ポーランドに6基の「APR1400」建設を提案している。
なお、韓国では今月10日にユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が誕生しており、これに先立ち大統領職の引き継ぎ委員会が発表した「国政ビジョン」では、脱原子力政策の破棄が明記された模様。今後各省庁における追加の議論を経て正式に確定する。ムン・ジェイン(文在寅)前大統領が始めた脱原子力政策では、2017年の「エネルギー転換(脱原子力)ロードマップ」と「第8次電力需給基本計画」に基づき、新ハヌル3、4号機と天地1、2号機、およびサイトと呼称が未定だった2基の建設計画が全面的に白紙化されている。
(参照資料:KHNP社の発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)