韓国の現代建設がWH社のAP1000建設に協力
30 May 2022
世界初のAP1000が稼働する中国の三門原子力発電所 ©CNNC
米国のウェスチングハウス(WH)社は5月24日、同社製の第3世代+(プラス)設計「AP1000」を世界中で建設する機会を共同で獲得していくため、韓国の現代建設(HDEC)と戦略的協力協定を締結したと発表した。協定への調印は、韓国のソウルにあるHDEC本社で行われた。
この協定に基づき、HDECは保有するEPC(設計・調達・建設)契約企業としての能力を、WH社が進めるAP1000建設プロジェクトで実践するとともに、グリーンエネルギー部門における同社のプレゼンスを高めていく。一方のWH社側は、確証済みの技術を用いたAP1000の安全性と操作性の高さを強調した上で、建設国におけるエネルギー供給保証と脱炭素化をHDEC社と共同で支援していく考えを表明している。
韓国では今月10日にユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が誕生しており、同大統領がこれから実施するという「国政ビジョン」の中に脱原子力政策の破棄が明記された模様。同月20日に米国のJ.バイデン大統領が訪韓した際も、ユン大統領はバイデン大統領との共同声明でCO2を出さずに信頼性の高い電力を生みだす原子力の重要性を認めており、原子力はクリーンエネルギー経済の確立とエネルギーの供給保証を世界規模で加速する観点から重要な構成要素だと指摘した。
共同声明によると、米韓両国は今後原子力分野の協力を一層強化し、世界中で先進的原子炉や小型モジュール炉(SMR)の開発・建設を加速する。これに向けた具体策として、今よりも盤石なサプライチェーンを構築するとともに、それぞれの機器製造能力の増強や輸出促進に資するツールを共同で活用すると説明。双方が賢い投資を行いつつ戦略的連携関係を深めていけるよう、「原子力技術の移転と輸出協力に関する米韓の了解覚書」に基づき、米韓およびその他の原子力市場における協力基盤を確実に築くとした。
また、両国間のハイレベル委員会を通じて、使用済燃料管理に関する協力や原子力輸出の促進と原子燃料の確保等に関する協力を進めていくと表明。米国側はこのほか、国務省(DOS)が2021年4月に開始した「SMR技術の責任ある利用のための基盤(FIRST)」プログラムに、韓国側が今回参加を決めたことを歓迎するとしている。
WH社の発表によると、AP1000は原子力産業界でも随一の操作性を備えており、燃料交換期間の短さや時間稼働率の高さでは多くの記録を達成。これに加えて、受動的安全対策を全面的に採用するなど、世界で最も安全な原子炉設計の一つだとしている。
世界初のAP1000は、中国浙江省の三門原子力発電所と山東省の海陽原子力発電所で2009年から2010年にかけて2基ずつ着工されたAP1000が、2018年から2019年にかけて相次いで営業運転を開始した。また、米ジョージア州のボーグル原子力発電所では、同設計を米国で初めて採用した3、4号機が2013年から建設中である。中国の国務院はさらに今年4月の常務委員会で、三門と海陽の両原子力発電所で大型炉を新たに2基ずつ建設する計画を承認。WH社はその際、「当社製AP1000の建設が中国で新たに4基決まったことを歓迎する」とコメントしている。
(参照資料:WH社、米大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)