原子力産業新聞

海外NEWS

閣僚が原子力の有用性強調 フィンランド

13 Jun 2022

リンティラ雇用経済相 ©Finnish Government

フィンランド雇用経済省のM.リンティラ経済問題担当大臣は6月7日、「欧州が原子力抜きでCO2排出量の実質ゼロ化やエネルギーの自給を達成することは難しい」と発言、原子力発電は欧州が化石燃料から段階的に撤退するための解決策を提供していると強調した。

同相によると、ウクライナにおける昨今の戦況により、フィンランドはロシア産化石燃料の輸入から脱却する方策を見つけねばならない歴史的重要局面を迎えている。「地球温暖化の防止問題などとともに途方もなく難しい課題ではあるが、これらを解決に導きエネルギー供給の途絶から回復する力を増強するには、フィンランドは原子力も含めてすべての利用可能な手段と能力を活用する必要がある」と指摘している。

これは同日から9日まで、首都ヘルシンキで開催されていたビジネス・イベント「北欧原子力フォーラム2022」の場で述べられたもの。フィンランドは5月15日、これまでの中立政策を破棄して北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を正式決定したが、これにともないロシアは、同月21日からフィンランドへの天然ガス供給を停止している。

同フォーラムでは、北欧諸国における原子力部門の最新情報や実状を知るため、世界中から原子力関係当局や機関、企業、研究者らが出席した。冒頭演説でリンティラ大臣は、「原子力はクリーンエネルギー生産の要であり、フィンランドは2035年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しているが、これは我が国が既存の原子力発電所を継続利用していく必要があることを示している」と説明。電気事業者のフォータム社が今年3月、保有するロビーサ原子力発電所の2基を2050年末まで約70年間運転するため、申請を行った事実に言及した。 

同時にリンティラ大臣は、原子力発電所が建設の計画段階から起動に至るまでに長期間を要するという点も指摘。ティオリスーデン・ボイマ社(TVO)が2005年から建設しているオルキルオト3号機が、今年3月にようやく送電開始したことについて、同相は「待っただけの価値はある」と強調した。

同相はまた、フィンランド国民の6割以上が原子力を支持していることから、「エネルギーのエンドユーザーとして、国民や社会にはエネルギー生産について発言する権利がある」と言明。「原子力開発には長期の投資が必要であり、同部門への財政支援を規制する際も、この点を考慮しなければならないと理解する必要がある」と指摘した。

リンティラ大臣によると、欧州のエネルギー問題を将来的に解決する一方策として、近年は小型モジュール炉(SMR)に関する議論が幅広く行われている。この点に関しては、「未だ商業利用に至っていないものの、そのための準備として、いつもどおり安全面や経済面、規制面で総合調整を図ることがSMRの将来に繋がる」と述べた。

同相はさらに、放射性廃棄物の管理問題も将来の原子力技術を決定づける主要要素だとし、「フィンランドでは放射性廃棄物の管理施設や廃止措置設備に、継続的かつタイムリーに予算措置を講じることが重要になる」と指摘。昨年末、放射性廃棄物の最終処分を担当するポシバ社が世界初の使用済燃料最終処分場の操業許可を雇用経済省に申請したことから、「放射線・原子力安全庁(STUK)とともに当省が審査を開始した。処分場計画をここまで進められたのは、数十年にわたる研究開発の賜物であるとともに、ポシバ社が長期的な作業を地道に実施してきたことによる」と説明した。

使用済燃料の処分場については、フィンランドに続いて隣国スウェーデンの政府も今年1月、最終処分場の建設許可を発給。リンティラ大臣は「2020年代半ばまでには我が国の最終処分場が完成する予定。スウェーデンでも同様の判断を下したことを喜ばしく思う」と述べた。

(参照資料:フィンランド政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

cooperation