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フィンランドのOL3、営業運転開始が今年12月に延期

17 Jun 2022

OL3 ©TVO

フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は6月15日、オルキルオト原子力発電所で今年3月から試運転中の3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)について、9月に予定していた営業運転の開始が12月に延期になったと発表した。

同炉の建設を担当した仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合の説明では、同炉では先月、タービンの蒸気再加熱器の蒸気誘導プレートから異物が剥離し、その点検・修理作業が7月末までかかると見込まれる。修理の完了後も、同炉では出力60%で外部送電網から切り離して実施する系統単独運転試験や、出力を25%と65%の間で変動させるランプ試験、およびこれらの解析作業等が予定されている点を、営業運転の延期理由として挙げている。

OL3の建設プロジェクトは2005年、世界で初めてEPR設計を採用して開始され、運転開始は当時2009年に予定されていた。しかし、技術的な課題が次々と浮上したためこのスケジュールに大幅な遅れが生じ、コストもターンキー契約による固定価格の約30億ユーロ(約4,100億円)が倍以上に拡大した。

約17年間に及んだ建設工事を経て、同炉は2021年12月に臨界条件を達成し、今年3月に欧州初のEPRとして送電を開始した。その際、TVOは約4か月の試運転期間中に出力を定格まで徐々に上げていき、7月末の営業運転開始を予定していたが、今年4月に冷却系で追加の機器点検・修理が必要になったことから、9月への延期を発表。このスケジュールが今回さらに3か月延期されたもので、TVOは現在その影響等を評価中である。

OL3建設プロジェクトの遅れについては、TVOと企業連合が2018年3月に超過コストと損害賠償に関する包括的和解契約(GSA)を締結。企業連合側が分割払いで、総額4億5,000万ユーロ(約632億円)をTVOに支払うことになった。両者はまた、建設プロジェクト完了の条件事項について、2021年5月に合意。OL3ではこの年の3月に燃料の初装荷が開始されていたため、この時点で営業運転の開始は2022年2月に設定されていた。

その際に両者が合意した完了条件としては、「2018年のGSA締結時にアレバ社が設置した専用の信託に、企業連合側から新たに約6億ユーロ(約843億円)を補充しOL3の完成費用に充てる」、「2022年2月末までにプロジェクトが完了しなかった場合、企業連合側が実際の完了日に応じて、遅れにともなう追加の補償金をTVOに支払う」、などが決まっている。

(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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