カナダのNWMO、処分場建設候補地の1つと約束事項で覚書
20 Jun 2022
NWMOの専門家が実施した岩盤コアの調査 ©NWMO
カナダで使用済燃料の深地層最終処分場・建設候補地を選定している核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は6月15日、立地点として最終決定した場合にNWMOが約束する事項について、候補に残っている2地点のうち、オンタリオ州南部のサウスブルース地域の自治体と了解覚書を締結したと発表した。
同覚書は、最終的に処分場の受け入れ合意書(案文)を作成する際、叩き台になるとNWMOは説明。同自治体が実施を求める優先事項にNWMOが重点的に取り組めるほか、今後さらなる合意文書を結ぶための下準備にもなるとしている。
カナダでは、原子力発電所の使用済燃料を再処理せずに直接処分する方針であり、NWMOはそのための処分場建設に向け、2010年からサイト選定プロセスを開始した。処分場の受け入れに関心を表明した22地点は、これまでにサウスブルース地域、および同じオンタリオ州の北西部イグナス地域の2地点に絞り込まれており、NWMOは周辺の住民や環境の安全が確保されるだけでなく地元コミュニティには利益がもたらされることを確認した上で、協力的で好ましい1地点を2023年までに最終決定する方針である。
サウスブルース地域の自治体はすでに、コミュニティとして優先したい事項や希望項目を「指針となる36の原則」に取りまとめており、NWMOはこれに応えて、同自治体が建設サイトとなった場合に次の事項を実行すると約束。すなわち、同地域を科学技術に関する世界的な中核拠点とし、地元コミュニティの役に立つ様々な機会を通じて協力関係を結ぶほか、地上施設の設置面積を抑えるなど可能な限り現在の地形を維持して地元の資産価値を保全。NWMOはまた、処分するのはカナダの原子力発電所から出る使用済燃料のみで他国の廃棄物を対象としないこと、処分場にNWMOから継続的に資金を提供する、などとしている。
NWMOはこのほか、これらの両地点について「最終処分場建設の要件を満たすことが可能であり、建設に適している」とする報告書を16日付けで公表した。
両地点で数年にわたり、NWMOが注意深く実施した研究やフィールド調査の結果を地点別にまとめたもので、両地点はともに、使用済燃料を周辺住民や環境から安全に隔離し閉じ込められる地質学的特徴を備えているとNWMOは指摘。具体的には、地震活動が少ない安定した地点であり、使用済燃料の処分に必要な深さや幅、容積を持った岩石層を備えている。また、この岩石層には鉱物資源や塩など経済的利益が見込めるような成分が含まれていないため、将来的に人が立ち入るリスクも少ないとした。
建設サイトに決定した地点については後日、処分場設計との適合性や長期的な安全性の保証に関する規制審査が追加で行われるとしている。
NWMOのL.スワミ理事長兼CEOは、「安全性の確保がこのプロジェクトの最優先事項であり、我々が実施する設計・エンジニアリングや環境調査、地元コミュニティとの協力等に至るまで、すべてこの原則に貫かれている」と説明。これら2つの報告書は、NWMOが10年以上前に開始したサイト選定プロセスにおける重要な成果だと強調した。
(参照資料: NWMOの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)