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韓国新政権、2030年に原子力シェア30%

06 Jul 2022

ユン大統領
©Office of the President (South Korea)

今年5月に発足した韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の産業通商資源部(MOTIE)は7月5日、同政権による初のエネルギー政策が同日の国務会議で決定したと発表した。

ムン・ジェイン(文在寅)前政権が定めた脱原子力政策を正式に撤回し、総発電量における原子力発電のシェアを上方修正すると表明。2030年に原子力で少なくとも総発電量の30%を賄う方針であることや、白紙撤回された新ハヌル3、4号機(各PWR、140万kW)建設計画の再開方針などを明確に示している。

新しいエネルギー政策の背景として、ユン政権はCO2排出量の実質ゼロ化に向けた傾向が世界中で加速するなか、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻等によりエネルギー・サプライチェーンへの不安が高まっていると指摘。気候中立とエネルギー供給保証という2つの目標の達成において、エネルギー政策が担う役割はこれまで以上に重要になってきていると強調。国内外の状況変化に対応し、原子力の比重拡大など気候中立関係の課題を克服するには、新しいエネルギー政策の目標と方向性を設定する必要があるとした。

その主な柱として、ユン政権は①地球温暖化への対応、②エネルギー供給保証の強化、③エネルギー関係の新たな産業創出により堅固なエネルギーシステム実現、を明示。具体的な項目として、2021年に27.4%だった原子力発電シェアを2030年に30%、あるいはそれ以上とするほか、化石燃料の輸入依存度を削減、革新的なエネルギー技術を持つベンチャー企業の育成を挙げている。

原子力に関しては、2017年の「エネルギー転換(脱原子力)ロードマップ」と2019年の「エネルギー基本計画」に明記された原子力発電所の段階的削減政策を撤回。これに代わって、新ハヌル3、4号機建設計画の再開を確定しており、これらの早期実施に向けて、年内にも両炉で停止している設計作業の再開に120億ウォン(約12億円)を提供するとした。

原子力発電シェアの拡大は、建設中の原子炉が正常に稼働すること、および既存の原子炉についても安全性の確保を条件に支障なく運転継続すると仮定して算定したもの。また、高レベル放射性廃棄物の処分も、特別法の制定などを通じて実施する方針で、首相が司令塔となって処分実施の専門機関を設置する。

ユン政権はさらに、2030年までに10基の原子炉を輸出するとともに、韓国独自の小型モジュール炉(SMR)開発を促進するため4,000億ウォン(約414億円)を投入すると表明。これらの作業スケジュールを早期に策定することで、韓国原子力産業界の再活性化を目指すとしている。

このほかユン政権は、世界でも一流の水素産業を国内で育成するとともに、太陽光や風力などの再生可能エネルギー分野でも、タンデム太陽電池や超大型風力タービンといった次世代技術を早期に商品化する方針である。これらのエネルギーや原子力を調和させることで、化石燃料の輸入依存度は2021年の81.8%が2030年には60%に削減され、輸入量では2021年比で約4,000万トン(石油換算)の減少になると予想。技術革新を担うベンチャー企業の総数も、エネルギー関係の新産業創出とその輸出産業化によって、2020年の2,500社が2030年には約5,000社に倍増するとしている。

(参照資料:MOTIE(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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