ベルギー政府、原子炉2基の運転期間延長に向けエンジー社と原則合意
26 Jul 2022
ドール原子力発電所 ©Electrabel
ベルギーのA.デクロー首相は7月22日、T.バンデアストラッテン・エネルギー相との共同声明を発表。国内で稼働する商業炉7基のうち、最も新しい2基の運転期間を2035年まで10年延長するという決定の実施に向け、事業者であるエレクトラベル社の親会社であるエンジー社と原則合意したことを明らかにした。
エンジー社はフランスに拠点を置き、グローバルな電力・ガス・サービスを提供する総合エネルギー企業。同首相は今回の合意について、同社とベルギー連邦政府の信頼関係の表れであり、ベルギーにおけるエネルギーの供給保証の面で極めて重要と強調している。
ベルギーでは2003年に制定された脱原子力法により、すべての商業炉を2025年までに全廃する予定だが、欧州では近年、地政学的な状況が大きく変化している。このため連邦政府は今年3月、脱原子力の達成時期を延期し、ドール4号機とチアンジュ3号機(各PWR、100万kW)の運転を2035年まで継続する判断を下した。状況変化の具体例として、連邦政府はロシアによるウクライナへの軍事侵攻、およびこの侵攻が近隣諸国への天然ガス供給に及ぼした影響を挙げたほか、フランスの複数の原子力発電所が不慮の事態により利用できなくなる可能性などを指摘、これらはすべてベルギーの電力供給に大きな影響を及ぼすとしている。
連邦政府がこの判断を下した際、エンジー社は運転期間の延長条件や実行可能性などを分析した上で、この判断を実行に移せるよう連邦政府に前向きに協力すると表明。両者はその後具体的な協議を開始しており、今回はその実施体制について以下の項目で合意に達している。
- ドール4号機とチアンジュ3号機の運転期間延長により、ベルギーの原子力発電設備容量は200万kWとなる。連邦政府はこれらの運転事業者ではないが、エンジー社と連邦政府は原子力規制当局の承認を得た上で、これら2基を(2025年に一旦停止し)2026年11月に再稼働させる条件等について協議し、合意する予定。
- (これらの原子炉を管理するとともに、将来の債務リスクやコストを軽減するための)合弁企業を連邦政府とエンジー社が新たに設置し、安定した持続可能な電力供給構造を構築、この供給構造の中で連邦政府とエンジー社はリスクとメリットを共有する。
- 原子力発電所の廃止措置、および放射性物質と廃棄物の管理にともなう経費は運転事業者が負担する。廃棄物と使用済燃料の管理コストは、今後の調査や協議を経て決定される。
連邦政府とエンジー社は今後も協議を前向きに継続する方針で、専門家による作業グループの設置方針なども含め、年末までに法的拘束力を持った最終合意に到達、その後はこの実施計画を欧州委員会に提出する考えである。
(参照資料:ベルギー首相府の発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)