UAEで建設中のバラカ3号機、初臨界達成
26 Sep 2022
バラカ3号機 ©KEPCO
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を主導する首長国原子力会社(ENEC)は9月22日、バラカ原子力発電所で建設中の3号機(韓国製PWR、140万kW)が初めて臨界条件を達成したと発表した。
同機は今後、数週間以内にUAE送電網に接続され、段階的な出力上昇試験や性能保証試験などを経て、2023年上半期にも営業運転を開始する予定である。
UAE初の原子力発電所であるバラカ発電所は、2012年7月からUAE北部のアブダビ首長国で建設工事が本格的に始まり、1、2号機はすでにそれぞれ2021年4月と2022年3月から営業運転中である。2014年9月に本格着工した3号機は2021年11月までに建設工事が完了し、冷態機能試験と温態機能試験、構造性能確認試験(ILRT)や総合漏洩率試験などを終えている。同発電所の運転管理担当会社であるNAWAHエナジー社(ENECと建設プロジェクトの主契約者である韓国電力の合弁企業)は今年6月に同炉の運転許可を規制当局から取得、その後は燃料の装荷を行っていた。
3号機が起動したことについてENECは、巨大プロジェクトの管理能力がUAEにあることを示したもので、UAEの発電部門はこれにより脱炭素化が加速。2050年までのCO2排出量実質ゼロ化に向け、UAEは先陣を切ることになると評価した。特に、世界中で多くの国がエネルギー供給不足への対応を迫られるなかでの起動は、UAEが2008年4月にクリーンで信頼性の高いベースロード用電源として、原子力をUAEのエネルギー・ミックスに含める判断を下した成果だと強調。同炉が営業運転を開始すれば、新たに140万kWの無炭素電源が送電網に加えられ、UAEはエネルギーの供給保証を大幅に強化、地球温暖化への取り組みでも大きな一歩を刻むことになると述べた。
同炉の安全性についてENECは、起動に先立ち連邦原子力規制庁(FANR)による監督の下で包括的な試験を実施したこと、世界原子力発電事業者協会(WANO)が起動前レビュー(PSUR)を実施した点に言及。3号機では、原子力産業界の国際的な良好事例が取り入れられていると指摘した。
バラカ原子力発電所ではこのほか、2015年7月に着工した4号機の建設工事が起動に向けた最終段階に入っており、NAWAHエナジー社はこれら4基を完成させてUAEの総電力需要の25%まで賄う計画である。
ENECとしては、同発電所を通じて小型モジュール炉(SMR)や次世代原子炉など、革新的技術を採用したクリーン・エネルギーへの移行を進め、水素等のクリーン燃料の開発にもつなげる方針。同社の説明では、バラカ発電所はUAEの発展とエネルギーの安定供給を支えるだけでなく、価値の高い雇用を生み出して地域産業の成長にも貢献する。60年以上稼働することによってエネルギー部門の急速な脱炭素化を促し、年間2,240万トンのCO2排出を抑えるなど環境面の利点も非常に大きいと強調している。
(参照資料:ENEC、KEPCO(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)