米空軍省、マイクロ原子炉の試験的運転プログラムに向け提案募集
05 Oct 2022
© SAF/IE
米国空軍省(DAF)の民間事務所である「エネルギーと施設および環境問題担当・空軍次官局(SAF/IE)」は9月26日、アラスカ州のアイルソン空軍基地でマイクロ原子炉を試験的に運転するプログラムの実施に向け、国防兵站局と共同で「提案を依頼する文書(RFP)」を発出した。
この試験プログラムについては、2020年9月にDAFが「関係する情報の提供依頼書(RFI)」を発出しており、翌2021年10月にはマイクロ原子炉の設置地点としてアイルソン空軍基地を選定した。DAFはその後、RFPの案文を作成していたもので、今回RFPを発出した後は2023年にマイクロ原子炉のベンダーを選定し、原子力規制委員会(NRC)を交えた許認可関係の活動を開始する。2025年には建設工事を始めるなど試験段階に移行する計画で、2026年に運転開始前試験、2027年までに試験運転を終えた後は商業運転に入るとしている。
DAFは空軍としてのミッションを成功裏に遂行するため、所有施設におけるエネルギーシステムのリスク対応能力の増強を進めており、次世代技術であるマイクロ原子炉で安全・確実かつ信頼性の高いクリーンエネルギーをアイルソン空軍基地に導入し、その技術を実証。十分利用可能であることを決定付けるなど、国防インフラ施設に確実にエネルギーを供給する今後のイニシアチブに、新たな知見をもたらしていく考えだ。
折しも、国防総省(DOD)が同様に、気候変動にともなうリスクの緩和や耐久性があるクリーンエネルギー源の模索で、積極的な活動を展開中。この目標の達成に向けて、エネルギー省(DOE)が「国防権限法2019」に基づき、認可されたマイクロ原子炉を2027年末までに少なくとも1基、建設・運転するための商業契約を締結し、DOD施設にリスク対応能力を持たせるための試験プログラムを実施することになった。
マイクロ原子炉の定義としてDAFは、「電力と熱エネルギーを生産できる出力0.1万kW~2万kWのシンプルでコンパクトな原子炉設計」と述べており、使用する燃料で定義されるわけではないと説明。アップグレードが容易なモジュール式の機器を備える一方、冷却材として必ずしも水を使用せず、排出する放射性廃棄物の量も限られているとした。
マイクロ原子炉はまた、炉心が過熱するのを防ぐため、変化する条件や需要に応じて自動的な調整能力を備えるなど、固有の安全性がある。送電網から切り放された場所でも発電が可能なほか、CO2の排出量も削減できることから、DAFは国防インフラ施設の中でも、国内遠隔地域の重要な軍事施設にエネルギー供給するのに有望だとしている。
DAFで環境と安全性およびインフラ問題を担当するN.バルカス次官補代理は、「地球温暖化や国防上の脅威にさらされながらDAFが確実かつ持続的に使命を果たすには、このプログラムが非常に重要になる」とコメント。いかなる地点においても、空軍施設に安全で信頼性の高いエネルギーの供給が可能であることを実証していくと強調している。
(参照資料:米空軍省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)