米バージニア州のエネ計画、原子力イノベーションのハブを目指す
06 Oct 2022
©Governor of Virginia
米バージニア州のG.ヨンキン知事は10月3日、最新の「2022年版エネルギー計画」を公表し、州内で増加するエネルギー需要を満たすには、原子力や天然ガス、再生可能エネルギー、新しいエネルギー源など、利用可能なエネルギー技術をすべて活用するという「全方位的アプローチ」を取るべきだと表明した。この中でも、原子力利用を拡大し同州を原子力技術革新の主要なハブとする考えを明らかにしている。
同州では、ドミニオン・エナジー社がサリー(87.5万kWのPWR×2基)とノースアナ(約100万kWのPWR×2基)の両原子力発電所を運転しており、サリー発電所については原子力規制委員会(NRC)が2021年5月に、運転期間の延長に向けた同社の2回目の申請を承認。これら2基はそれぞれ2050年代まで、80年間運転を継続できることになった。また、ノースアナ発電所についても、NRCは同社が2020年9月に提出した2回目の運転期間延長申請を審査中である。
バージニア州のエネルギー省はこの計画を策定するにあたり、州政府はエネルギー需要を満たすのみならず既存のエネルギー供給源をクリーンエネルギー源に移行させるため、あらゆるオプションを検討。今後新たに浮上するクリーンエネルギー技術をすべて採用することにより、柔軟に移行を進めることができると指摘している。
新しいエネルギー計画ではまず、同州におけるエネルギー経済の現状を分析、その上で今後の政策決定の基盤となる実用的なアプローチや様々な勧告を、州議会や州内の産業界が直ちに採用できる形で提示。同計画が提唱する全方位的アプローチは、エネルギー供給における信頼性や価格、技術革新、競争、環境影響等に関する同州の基本理念に基づき、同州のエネルギー需要量拡大に対応する柔軟性の高い道筋を示しているとした。
このエネルギー計画では具体的な勧告事項として、州内のエネルギー需給の現状や進展状況を把握できるよう、同州のエネルギー構成を定期的に再評価すべきだとした。また、責任を持ってエネルギーの移行を進めるには、将来のエネルギー需要量の予測とそれを踏まえての対策立案で、実行者に真摯な謙虚さが求められると指摘している。
さらに、同州内で将来的にクリーンエネルギーを豊富に確保するため、同州は革新的な技術に戦略的な投資を行うべきだとしており、具体的には水素製造やCO2の回収・貯留、有効利用(CCSU)、小型モジュール炉(SMR)を挙げた。商業用SMRを同州南西部で10年以内に建設するという目標の設定に向け、財政支援の必要性を支持するとしている。
州内の原子力事業に関しては、同エネルギー計画は米BWXT社と仏フラマトム社が同州のリンチバーグに拠点の一つを置いている事実に言及。ノーフォークの海軍基地では、軍事造船企業のハンティントン・インガルス社が原子力潜水艦や空母のメンテナンスとアップグレードを受け持っており、これらの「バージニア原子力企業連合」が、同州や米国の原子力産業に参加する82社の関係プログラムや資源を州内で調整しているとした。
バージニア州はまた、全米の大学に設置されている30ほどの原子力工学科のうち2つが存在するなど、原子力関係の人的資源についても米国のリーダー的地位にある。州内にある複数のコミュニティカレッジでは原子力関係の労働者を支援するコースが設けられており、同州の「エネルギー関係労働力企業連合」は次世代のエネルギー専門家を育成中である。
こうした原子力研究開発の最先端に位置する立場を生かし、バージニア州はSMRの技術開発でも米国を牽引すべきだと今回のエネルギー計画は表明。州の南西部で米国初の商業用SMRを建設し、使用済燃料のリサイクル技術を開発すべきだと提唱しており、それによってCO2を排出せず、使用済燃料の量も最小限というエネルギーシステムを確立することを訴えている。
(参照資料:バージニア州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)