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英NDA 閉鎖済みサイトでのSMR建設に向け覚書

12 Oct 2022

1991年まで約26年間稼働したトロースフィニッド原子力発電所 ©Magnox, Ltd.

英国で原子力関係施設の廃止措置や放射性廃棄物の管理を担当する原子力廃止措置機構(NDA)は10月11日、ウェールズ北部にある閉鎖済みのトロースフィニッド原子力発電所で小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているエギノ社(Cwmni Egino)を支援するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。

NDAは英国内で閉鎖された旧式のガス冷却炉(GCR、通称マグノックス炉)サイトなど、原子力発電所の立地用に指定されている17サイト、950ヘクタールの土地をすべて所有している。一方のエギノ社は、ウェールズ政府がトロースフィニッド・サイトの再開発と周辺地域における社会経済の再活性化を目指して、2021年に設立した開発企業である。

今回の覚書で、NDAは同サイトの特性に関する情報や専門的知見をエギノ社と共有し、子会社のマグノックス社が実施している廃止措置作業を新規のSMR建設計画と調整。このプロジェクトから影響を受ける利害関係者との協議や社会経済開発計画の策定についても、エギノ社をサポートする。エギノ社は現在、2027年にSMRの建設工事を開始できるよう、事業提案を作成中だ。採用炉型は未定。

英国ではビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が今年4月、英国のエネルギー自給を長期的に改善していくという新しい「エネルギー供給保証戦略」を公表。CO2の排出量を実質ゼロ化する観点から、2050年までに安全でクリーン、低価格な原子力で現在の約3倍に相当する最大2,400万kWの発電設備を確保し、国内電力需要の最大25%を賄う方針を明らかにした。NDAとエギノ社は翌5月、この戦略の実行を支援する活動の一環として、新規原子炉の建設計画を提案するため、協力協定の締結に向けた作業を開始すると表明。今回の覚書締結はこれに続くものとなる。

NDAのD.ピーティ最高経営責任者は、「我々が所有するサイトの有効利用に向けて、現在複数の関係者と協議している」とコメント。「エギノ社への支援提供が正式なものになったことは重要な一歩であり、このプロジェクトが成功すれば、ウェールズ北部に社会的利益をもたらすだろう」と述べた。

ウェールズ政府のV.ゲッチング経済相も、エギノ社を設立した理由について「トロースフィニッド・サイトのポテンシャルを最大限に活用することにより、地元コミュニティのみならずウェールズ北部の幅広い地域に雇用やスキルの習得機会を与えるなど、経済的利益を提供することにある」と説明している。

英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、「ウェールズではかつて2サイトで原子力発電所が稼働しており、そのうちの一つであるトロースフィニッド発電所サイトは今後もクリーンな電力の生産で大きな役割を果たし天然ガスの利用量を削減、英国のエネルギー供給保証を強化していくだろう」と述べた。

(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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