フィンランドのフォータム社 原子炉の新設を検討
19 Oct 2022
フォータム社のロビーサ原子力発電所 ©Fortum
フィンランドでロビーサ原子力発電所(PWR×2基、各53.1万kW)を所有・運転する国有企業のフォータム社は10月17日、フィンランドと隣国スウェーデンにおける原子力発電所の新設に向け、実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表した。
この中でフォータム社は、従来の大型炉のみならず小型モジュール炉(SMR)の建設を含め、必要な技術面と経営面の要件、規制面や政策面の要件なども検証する。また、建設計画の策定や立地、許認可など、新設関係の手続きについても詳細に調査するとしており、フィンランドとスウェーデンの両方で政策決定者や関係省庁、原子力安全規制当局などの関係者と幅広く協議する方針を明らかにしている。
フィンランドでは今年3月、欧州で10年ぶり以上となる新規の原子炉(ティオリスーデン・ボイマ社のオルキルオト3号機、欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)が送電を開始した。フォータム社は国内でロビーサ発電所を所有する一方、スウェーデンのオスカーシャム3号機(BWR、145万kW)にも一部出資。スウェーデンでは、先月新たに誕生した中道右派政権が新規原子炉の建設方針を表明している。
このような背景から、フォータム社のS.-E.オルス発電担当上級副社長は、「社会全体が直面しているエネルギー自給や供給保証、CO2排出量の実質ゼロ化といった問題の解決は非常に難しいが、CO2を排出せず信頼性も高い原子力でこれらに対処するための要件を明らかにしていきたい」と述べた。
フォータム社の発表によると、近年はエネルギー市場の不確実性が増しているため、原子力関係事業の多くは企業連合の形で進めることになる。例としては、原子力発電事業者と地域暖房企業や産業用の熱電購入企業などがあり、今回のFSで同社は、欧州の新しいプロジェクトや産業部門の水素利用にサービスを提供する事業についても可能性を探る。
同社のFS実施担当者は、「原子炉の新設にともなう課題は良く知られているが、建設費と工期の縮減は不可欠だ」とコメント。今回のFSを通じて新たな協力関係やビジネス・モデルを構築し、SMRのように将来の世代に有望な原子力技術を実現していくと表明している。
(参照資料:フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)