原子力産業新聞

海外NEWS

ドイツ内閣 原子炉3基の一時的存続で原子力法修正案を承認

21 Oct 2022

BMUVのレムケ大臣(右)とBMWKのハーベック大臣による記者会見 ©BMUV

ドイツ連邦政府の環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)は10月19日、国内に残存する商業用の原子炉3基を最長で2023年4月15日まで運転可能な状態を維持するため、内閣が原子力法の修正案を承認したと発表した。

エネルギー供給リスクが増大する今年の冬季を乗り切るための重要措置となるが、この修正はO.ショルツ首相の決定指令に基づいて実行されることから、各州政府の意見を反映させる目的で連邦議会に設置されている参議院(上院)の承認を必要としない。

2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同国では今年末までにすべての原子力発電所を閉鎖し、脱原子力を達成することになっていた。しかし、今回の内閣決定により、南部のイザール原子力発電所2号機(PWR、148.5万kW)とネッカー原子力発電所2号機(PWR、140万kW)、および北部に立地するエムスラント原子力発電所(PWR、140.6万kW)は、現在装荷されている燃料を使って3か月半に限り運転期間を延長。新たな燃料の装荷を許可しない一方、この期間に現行のモニタリングに追加して定期安全審査が行われることはない。

また、この決定を実行するにあたり、連邦政府は直前まで運転期間の延長対象としていなかったエムスラント発電所について、所有者のRWE社から早急に合意を取り付けることになる。

連邦政府は今回のような措置を必要とする理由として、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長引き、天然ガスの供給量が低下していることや、干ばつの影響で河川の水位が低下し水力発電量が減っていること、フランスの原子力発電所の約半数が点検等により停止中である点を指摘している。

連邦政府の経済・気候保護省(BMWK)は今年の3月から5月、および7月半ばから9月初旬にかけて、今期の冬季をカバーする送電網のストレス・テストを2回実施しており、電力供給の不足リスクを避けるには、これらの対策すべてが必要になると表明。9月5日の段階で、イザール2号機を運転するプロイセンエレクトラ社の親会社のE.ON社、およびネッカー2号機を運転するEnBW社に対し、これら2基を来年4月半ばまで維持する方針を提案、同月27日にはこの方針の実施に向けてこれら2社と基本合意に達していた。この時点では、北部のエムスラント発電所については原子力よりリスクの少ない石油火力で代替し、予定どおり年末で閉鎖することになっていた。

BMWKのR.ハーベック大臣は今回の記者会見で、「来年の4月15日以降、これら3基に新たな燃料が装荷されることはないし、運転もそこで終了する」と表明。「その次の冬季には、ガスの輸入量を大幅に増加できると考えており、エネルギーの供給状況は今期より良くなるはずだ」と述べ、再生可能エネルギーを中心に国内発電設備を増強する考えを明らかにした。

BMUVのS.レムケ大臣も、「原子力の段階的廃止政策はこれまで通り存続しており、それは4月15日に達成される」と強調。「それ以降、新たな高レベル放射性廃棄物は発生せず、原子力法を修正する目的は冬季の短い期間だけ原子炉の運転を延長して、送電網を安定させることにある」と指摘した。同大臣はまた、「このようなエネルギー危機の状況下でも、我々は原子力発電のリスク部分に目を光らせねばならない」としている。

(参照資料:独連邦政府BMUVの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation