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英カンブリア州の新興企業 ロールス・ロイス社のSMRを選択

16 Nov 2022

コープランド市のハリソン市議が主催した発表イベント ©Rolls-Royce SMR

英ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は11月11日、イングランド北西部カンブリア州の新興デベロッパー「ソルウェイ・コミュニティ電力会社(Solway Community Power Company)」が同社製SMRを選定したと発表した。

ソルウェイ社は今年9月に同州で設立されたばかりの非公開有限責任会社で、最高責任者は、英国最大の原子力複合施設セラフィールド・サイトの管理運営を担うセラフィールド社のCEOを2000年まで務めたP.フォスター氏。ロールス・ロイス社はこの数日前の11月9日、同社製SMRの建設候補地点として、セラフィールド・サイトの近隣区域を含む4地点を選定しており、2030年代初頭にも英国でSMR発電所の最初の一群を稼働させたいと述べていた。

ソルウェイ社の建設計画は、セラフィールド・サイトが立地する同州コープランド市のT.ハリソン市議の主催イベントで公表された。同市議は、「当市には敷地のほかに労働者のスキルと経験、独自のサプライチェーンもすでに備わっており、クリーンで信頼性が高く実証済みの技術を用いた原子力発電所の立地点としては、おそらく世界でも最も適している」と強調した。

ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは今回、「原子力廃止措置機構(NDA)がカンブリア州西部で所有する敷地を活用して2030年にも新しい原子力発電所を稼働させ、業界でも最強の地位を確保する」と表明。同州内で新たな原子力発電所の建設計画を推進するデベロッパーが設立され、同社のSMRが採用設計に選定されたことを歓迎した。

ソルウェイ社のフォスター最高責任者は、原子力について「当社のアイデンティティの中心であるとともに西カンブリアに受け継がれた遺産でもある」と説明。ロールス・ロイス社のSMRを建設・操業することで、コープランド市には新しい雇用とサプライチェーンを生み出す大きなビジネス・チャンスがもたらされるだけでなく、新たな産業や投資も呼び込まれると期待を表明した。

ロールス・ロイスSMR社によると、同社製SMRは既存のPWR技術を採用した設計で電気出力は47万kW。少なくとも60年間ベースロード電源として稼働が可能で、再生可能エネルギー源の間欠性を補えることから、その設置拡大を支援することにもつながる。今年4月からは英国原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同設計について「包括的設計審査(GDA)」を開始した。ロールス・ロイスSMR社に対しては、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約350 億円)を提供すると約束している。

(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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