COP27:「フェアな移行こそアメリカの流儀」米DOEグランホルム長官が産業界に呼び掛け
17 Nov 2022
グランホルム長官(左)とレベスクCEO
COP会場内の特設会議場で11月16日、米原子力エネルギー協会(NEI)、カナダ原子力協会(CNA)、世界原子力協会(WNA)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、日本原子力産業協会など原子力産業界6団体主催のセッションが開催された。セッションに先立ち、米エネルギー省(DOE)のジェニファー・グランホルム長官がサプライズで登場。米テラパワー社のクリス・レベスクCEOが聞き手となり、約20分の対談セッションが開催された。
長官は、インフレ抑制法を通じてDOEは原子力を対象に
- 長期運転:既存炉の早期閉鎖を防止するため、閉鎖予定の発電所を対象に計60億ドルの「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」の実施
- 次世代炉:次世代炉の国内外への展開を見据え、実証プログラムに25億ドルを投資
- 新規建設:投資税額と生産税額を控除し、新設プロジェクトに価格競争力を供与
──の3つのインセンティブを付与してきたとし、既存炉同様に新規炉に対しても厳しい規制要件を適用し、「高いハードルを乗り越えたプラントであれば生き残ることが出来る」との考えを示した。
また最近発表されたポーランドへの米ウェスチングハウス社製原子炉「AP1000」の輸出について言及し、 400 億ドル規模のプロジェクトだと指摘。「ポーランドに雇用とエネルギーセキュリティをもたらすだけでなく、米国内にも莫大な雇用を生む、Win-Winのパートナーシップ」と強調した。そしてサプライチェーンの再構築が課題とし、「HALEU燃料[1]U235の濃縮度が5-20%の低濃縮ウランのように国内での開発体制を強化する」だけでなく、グローバルなサプライチェーンと信頼できるパートナー関係を築きたいとの強い意欲を示した。そしてウクライナへの侵攻でロシアが信頼できるパートナーではないことが明らかになった現在、新規原子力導入国については123協定および国際原子力機関(IAEA)による査察下に置くことで、核不拡散体制を担保していくと明言した。
一方で、12日に米国のジョン・ケリー特使が「プロジェクト・フェニックス」と呼ばれる新しいイニシアチブを発表した件にも言及。これは、欧州での石炭火力発電所から SMR への移行を加速させると同時に、労働力の再訓練を通じて地元の雇用を維持する計画で、米国務省によると、中・東欧諸国のエネルギーセキュリティを支援するために、石炭から SMR への移行可能性調査などを米国が直接支援するものとされている。グランホルム長官は、「石炭から(原子力へ)フェアに移行すること。導入した国の人々が良い収入を得られる施設できちんと雇用されること。これこそが私たちが最も大切にしていることで、アメリカの歴史を支えてきた手法」だと強調。そして原子力産業界6団体へのメッセージとして、「DOEがインセンティブを用意しました。ぜひ一緒にやりましょう!(So let’s just do it!)」と力強く呼び掛けた。
脚注
↑1 | U235の濃縮度が5-20%の低濃縮ウラン |
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