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ルーマニアのSMRプロジェクト企業 鉄鋼メーカーと協力覚書

21 Nov 2022

両社の覚書調印 © SN Nuclearelectrica SA

ルーマニア初の小型モジュール炉(SMR)建設を計画している国営原子力発電会社(SNN)は11月15日、そのプロジェクト企業として設立したロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社が、国内鉄鋼メーカーのドナラム(Donalam)社と協力覚書を交わしたと発表した。

ドナラム社は、欧州の鉄鋼産業界で100年以上の実績を持つイタリアの大手企業AFVベルトラム・グループ(AFV Beltrame Group )の傘下。この覚書を通じて、同社はルーマニア初のSMR建設に向けた協力と投資の機会をロパワー社とともに模索し、温室効果ガスの発生量が極めて少ない方法を用いた「グリーン・スチール」を通じて、電力集約型産業である鉄鋼業の課題解決を目指している。

一方のSNN社は、国連環境計画(UNEP)の「(2022年版)CO2排出ギャップ報告書」にも示された通り、既存の温暖化防止対策ではパリ協定の目標達成に不十分と認識しており、CO2排出量を効果的かつ持続的に削減していくには原子力が不可欠と考えている。SNN社はドナラム社との協力により、SMRや太陽光が生み出すクリーンエネルギーで最初の「グリーン・スチール製造施設」の構築を支援し、業界内で同様の協力を促進していく考えだ。

SNN社はルーマニア南部ドゥンボビツァ県のドイチェシュテイ(Doicesti)にある閉鎖済み石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのSMRを6基備えた米ニュースケール・パワー社製のSMR発電所「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設することを計画。今年9月には、この計画を進めるため、建設サイトのオーナーである民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁でロパワー社を設立した。

今回の覚書への調印は、エジプトで開催されていた国連気候変動枠組条約・第27回締約国会議(COP27)の、国際原子力機関(IAEA)のパビリオンで映像中継の形で行われた。この調印と同時に、SNN社とドナラム社は国連の「24/7カーボンフリー電力同盟(CEC)」に参加する意思を表明。CECでは、一日24時間365日間、クリーンエネルギーを100%活用して、地球温暖化の影響を緩和できるような電力供給システムの構築促進を原則としている。

この件についてロパワー社の社長を務めるSNN社のC.ギタCEOは、「後の世代に持続可能な未来を残すことは当社の使命であり、CECの原則とも完全に一致している」と説明。大小両方の規模で原子力発電所を国内で建設することでエネルギーの供給を保証し、CECが求める電力供給システムの脱炭素化を進めていく考えを強調した。

SNN社によると、ルーマニアのSMR建設は大型原子炉や再生可能エネルギーと互いに補い合う役割を担っており、SMRのエネルギー生産施設に太陽光設備を加えることも念頭に置かれている。原子力と再エネを統合することにより、出力を自在に変えられる発電能力を確保するねらいだ。

ルーマニアにおける原子力発電開発については、現在米国が協力の度合いを深めており、SNN社は国内でのSMR建設に向けて、2019年3月に米ニュースケール・パワー社と最初の協力覚書を締結した。翌2020年10月には、ルーマニア国内で建設工事が停止中のチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画と、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化に向けて、ルーマニアと米国の両政府が原子力分野における政府間協力協定(IGA)に調印している。

2021年1月になると、ルーマニア国内でのSMR建設サイト選定に向けて予備的評価作業を行うため、米貿易開発庁(USTDA)が約128万ドルの技術支援金をSNN社に交付。今月9日には、チェルナボーダ3、4号機の完成計画に米国側からプロジェクト準備等のサービスを提供する契約について、米輸出入銀行(US EXIM)が最大で30億5,000万ドルの融資をSNN社に提案している。

(参照資料:SNN社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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