原子力産業新聞

海外NEWS

フィンランドのフォータム社 SMR建設に向け地元企業との協力を模索

28 Nov 2022

©Fortum

フィンランドのフォータム社は11月25日、同社が検討中の小型モジュール炉(SMR)の建設計画について、首都ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社との協力可能性調査を開始すると発表した。

国有企業のフォータム社は国内でロビーサ原子力発電所を所有・運転しているが、先月17日に同国および隣国スウェーデンでの原子力発電所新設に向けて、2年計画で実行可能性調査(FS)を実施すると発表。その際、従来の大型炉のみならずSMRを建設する可能性についても、必要な技術面や経営面、規制面、政策面の要件を検証するとしたほか、近年のエネルギー市場における不確実性の増大から、企業連合の形で新設計画を進める可能性を示唆していた。

今回の発表によると、両社はともにCO2排出量抑制の観点からSMRへの関心を以前から表明しており、エネルギー部門の脱炭素化を継続的に進める重要性を指摘する一方、このエネルギー移行を果たすには新しい発電技術や協力形態が必要になると説明。建設期間が短く、コストを抑えながら大容量のエネルギー生産も可能なSMRは、その他の選択肢と比較して競争力のあるエネルギー生産方式だと強調した。また、フィンランドには原子力発電と使用済燃料の処分について、専門的知見が豊富に蓄積されていると指摘した。

協力可能性調査では両社が結成した調査グループが、協力の相乗効果によりどのような利益が得られるかなどを洗い出す。手始めとして、新たな原子炉建設に必要な条件を幅広く特定するが、両社の協力形態については現時点でいかなる形態も排除しない方針だと強調している。

55万人以上の顧客を持つヘレン社は現在、ヘルシンキ市内の様々なプラントで熱や電力を生産している。同社は無炭素な熱や電力を同市に供給できるSMRは注目に値するエネルギーの生産方式だと述べており、フィンランド最大の地域熱供給システムの開発などでノウハウを有する同社が、原子力発電の能力を持つフォータム社と力を合わせることで生産的な協力活動が展開され、フィンランドのエネルギー自給率を上げることにもつながると述べた。

SMRはまた、建設に向けた動きが世界中で急速に進展していることから、ヘレン社は欧州連合(EU)域内でその安全要件を調和させることが合理的だと指摘。両社が実施する共同調査では、SMR設計の選定や敷地の活用計画、許認可手続きなどの点で効率的な対応策を導き出す狙いがあるとした。また同国では現在、SMR関係の法令手続きが進められているため、複数の立地候補地点について調査中であるという。

共同調査チームのフォータム社側代表者は、「世界のエネルギー市場が不透明な状況になるなか、新たなプロジェクトを原子力部門で進めることは、様々な協力準備活動の中で最も実現の可能性が高い」とコメント。原子力発電所の建設を可能にする協力の必須条件調査は、建設プロジェクトやパートナー企業の位置付けという点においても重要な出発点になるとの認識を示している。

(参照資料:フォータム社ヘレン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation