原子力産業新聞

海外NEWS

英政府 SZC建設計画に50%出資を決定

30 Nov 2022

SZCサイトを訪問したBEISのシャップス大臣 (中央)©EDF Energy

ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.シャップス大臣は11月29日、EDFエナジー社がイングランド南東部のサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)の建設プロジェクトに、6億7,900万ポンド(約1,124億円)の直接投資を行うと発表した。

1987年にサイズウェルB原子力発電所建設計画への投資を承認して以来、約30年ぶりのことであり、英国政府はこれにより、EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とともにSZC建設プロジェクトを50%ずつ保有することになる。英国政府は今後、プロジェクト企業である同社傘下のNNB Generation(SZC)社と協力して、SZC発電所の建設・運転プロジェクトに出資する第三者を募る方針。同計画では2015年10月の合意に基づき、中国広核集団有限公司(CGN)がEDFエナジー社に20%の出資を約束していたが、英国政府が出資することで、所有権の買取や税金なども含めてCGNの撤退を促すことができるとした。また、一部の報道によると、CGNはSZC計画からすでに撤退したと伝えられている。

BEISの発表によると、同省のシャップス大臣は今週、「規制資産ベース(RAB)モデル」を通じて資金調達を行う最初の原子力発電所建設計画としてSZC計画を指定した。RABモデルでは資金調達コストなどが軽減されるため、現在建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWのEPR×2基)計画に適用された差金決済取引(CfD)と比較して、大型原子力発電所一件あたりの運転寿命期間中に顧客(消費者)が負担する電気料金が、累計で300億ポンド(約5兆円)削減できるとしている。

SZC計画ではNNB Generation社が2020年5月、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトで取得が義務付けられている「開発合意書(DCO)」の申請書を計画審査庁(PI)に提出。BEISのK.クワルテング大臣(当時)は今年7月、PIによる審査結果等に基づき、同計画へのDCO発給を決定した。

BEISのシャップス大臣は今回、SZC計画に出資することで国内の約600万世帯に50年以上にわたってクリーンで信頼性の高い電力が供給され、地元サフォーク州や英国全体で最大1万人規模の雇用が新たに創出されると指摘。このほかにも、英国がエネルギー自給を確立するための方策を複数提示しており、安価でクリーンな国産エネルギーの長期的確保に向けて、エネルギー法案を議会に提出する予定だと表明した。エネルギー関係の主要立法としては2013年以来のことになるが、これにより国内のエネルギー産業を改革してその成長を促進、エネルギー関係の民間投資も喚起する。具体的には、水素産業やCO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)など、国産の低炭素エネルギー技術の開発に集中的に取り組み、電気料金の削減やクリーンエネルギー関係の雇用創出につなげたいとしている。

シャップス大臣はまた、英国の長期的なエネルギー供給保証で、SZC発電所以降も新たな原子力発電所を継続的に建設していくため、今年4月の「エネルギー供給保証戦略」で設立を約束していた政府の新機関「大英原子力(Great British Nuclear)」を来年初頭にも立ち上げると表明した。同機関では明確な費用対効果が見込まれることを確認しつつ、開発プロセスの各段階で事業者に支援を提供。これにより、世界中のエネルギー市場における化石燃料価格の高騰から将来世代の国民を守り、クリーンで安全な電力を今後数十年にわたって供給すると強調している。

同大臣によると、天然ガス価格が記録的な高値になったのはロシアのV.プーチン大統領がウクライナで始めた不法な軍事侵攻が原因であり、英国政府は国民のために国産の安価なクリーンエネルギーを確保しなければならない。このことから、「本日の歴史的な政府決定は、英国におけるエネルギー自給の強化と世界市場における不安定なエネルギー価格というリスクの回避という点で非常に重要だ」と指摘した。

EDFエナジー社のS.ロッシCEOは今回の決定について、「英国政府が当社のパートナーとしてプロジェクトの準備を進めることになり、SZC計画の継続に大きな自信が付いた」と表明。HPC計画と同じ設計を採用したSZC計画はHPC計画の実績に基づいて実施されるため、一層確実なスケジュール管理やコスト見積もりが可能だと強調している。

(参照資料:英国政府EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation