BWXT社 マイクロ原子炉用TRISO燃料を製造開始
12 Dec 2022
TRISO燃料 ©BWXT
米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社は12月7日、国防総省(DOD)が軍事作戦用に建設を計画している米国初の可搬式マイクロ原子炉の燃料として、HALEU燃料[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランを3重に被覆した燃料粒子(TRISO)の製造をバージニア州リンチバーグの施設で開始したと発表した。
BWXT社は、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が2015年に分社化した原子力機器・燃料サービスの企業で、米国政府の原子力事業にも対応。同社が開発した第4世代の先進的高温ガス炉(HTGR)は今年6月、DODのマイクロ原子炉の実証計画である「プロジェクトPele」で建設する電気出力0.1万~0.5万kWの原型炉として複数候補の中から選定され、2024年までにエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)内に設置される予定。
「プロジェクトPele」のマイクロ原子炉では、標準サイズのコンテナで輸送可能であること、防御力の低い化石燃料輸送の削減などを目指しており、災害への対応/復旧や遠隔地域における発電等で電力を供給することを想定している。同プロジェクトの非営利性に鑑み、DODの戦略的能力室(SCO)はマイクロ原子炉の建設や実証実験ではエネルギー省と連携し、その権限下でプロジェクトを進める方針。同プロジェクトでBWXT社は、同社とSCOの契約を実行・管理するINLから3,700万ドルの交付を受け、「プロジェクトPele」の原型炉やTRISO燃料を製造する。
BWXT社はまた、その他の先進的原子炉や、米航空宇宙局(NASA)が火星の有人探査で使用する先進的原子炉にも、特別な被覆を施した燃料を提供する予定である。同社のTRISO燃料製造施設は現時点で唯一、HEUの保有と処理を許可された民間施設だが、同社は2020年7月、DODとNASAで今後必要になるTRISO燃料の供給に向けて、既存のTRISO燃料製造ラインの改造契約と、製造能力を拡大するための契約をINLから獲得。今年1月にはその修正契約に基づいて、DODの「運用エネルギー性能向上基金(OECIF:Operational Energy Capability Improvement Fund)」とNASAから支援金を受領、TRISO燃料の製造能力を拡大していた。
DOEはTRISO燃料について「地球上で最も耐久性に優れた燃料」と評価、エネルギー密度の高い同燃料の粒子は高温に耐え、先進的小型原子炉の運転を可能にすると指摘した。計画では、米国政府が保有する高濃縮ウラン(HEU)を希釈してHALEU燃料に変え、BWXT社のリンチバーグ施設でTRISO燃料を製造する。
DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「次世代原子炉の燃料としてTRISO燃料は理想的であり、米国がクリーンエネルギーへの移行を成し遂げるにも不可欠だ」と表明。DOEが数十年にわたって投資してきた同燃料が、この10年以内に建設される先進的原子炉の生産エネルギーとなり、安全面で優れたパフォーマンスを発揮することを期待すると述べた。
BWXT社のR.ゲベデン社長兼CEOは、「優れた性能を持つ先進的な原子燃料によって、次世代原子炉の実現が可能になる」と強調。DODの「プロジェクトPele」およびNASAの宇宙探査用に、本格的なTRISO燃料およびその他の被覆燃料の製造が開始できたことは栄誉であると述べた。
(参照資料:BWXT社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
脚注
↑1 | U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン |
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