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オランダ 既存のボルセラ・サイトに2基新設の可能性も

13 Dec 2022

ボルセラ原子力発電所 ©EPZ

オランダの原子力規制当局である原子力安全・放射線防護庁(ANVS)は12月9日、同国で新たに建設する原子炉2基のサイトとして、政府が閣僚会議で既存のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)の立地自治体を指定したと発表した。

ANVSによると、これは気候・エネルギー省のR.イエッテン大臣が明らかにしたもの。ボルセラ発電所には既存の原子力インフラがすでに存在するほか、物理的スペースも十分あることから新設に最適と判断したと説明。数年後に閉鎖が予定されているボルセラ発電所の運転継続についても、実行可能性を調査すべきだとしている

2021年3月に同国で発足した連立政権の4党は、2040年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月に4党が合意した2025年までの政策方針のなかでは、国内唯一の原子力発電設備であるボルセラ発電所の運転を長期に継続するとともに、政府の財政支援により新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を提示。原子力発電所の新設にともなう予算措置として、2025年までに合計5億ユーロ(約726億円)を計上するほか、2030年までの累計予算として50億ユーロ(約7,260億円)を確保する考えを表明していた。

政府による今回の決定案は、気候・エネルギー相が議会の下院議長に提出した書簡の内容に基づいており、最終決定するまでには時間を要する見通し。同書簡によると、新設する2基は第3世代+(プラス)の原子炉となる予定で、出力は各100万~165万kW。2基合計で300万kW程度を想定しており、設備利用率90%で運転した場合の発電量が240億kWhになることから、2035年までに完成すれば、現在約3%の原子力発電シェアを9~13%に増大することができる。

同相は第4世代の原子炉設計も検討したものの、本格的に市場に出るのが2040年以降にしか見込まれず、初号機特有の課題に直面する可能性があると指摘。国内の電力供給システムで多様化と安定化を図り、CO2排出量のゼロ化を目指すには、ほかの国ですでに建設されている第3世代+の原子炉を建設するのが最短の道であり、スケジュールやコストを見積もる上でも現実的だと表明している。

オランダで原子炉を新設するには、その建設と起動で別個に許認可を取得する必要があり、いずれの場合もANVSが申請書を審査し、この計画が原子力法と技術的な安全要件すべてに適合しているか確認する。また、国民が許認可プロセスに参加する機会も設けられており、ANVSの暫定認可に対して環境影響面等について懸念表明することが可能である。

ボルセラ発電所の運転期間延長

一方、1973年に運転開始したボルセラ発電所の現行の運転認可は2033年末まで有効だが、それ以上運転を継続するには原子力法の改正が必要になる。また、運転事業者のEPZ社は、長期運転にともなう国際的な基準や国内の技術的要件すべてを同炉が満たしていることを実証し、現在の運転認可の変更をANVSに申請しなければならない。

気候・エネルギー相は今回の書簡の中で、「ボルセラ発電所の運転を2033年以降も継続した場合、CO2排出量の大幅な削減が期待できる」と述べており、少なくとも新設炉が完成するまでのつなぎとして維持することは重要だと指摘。運転継続に向けた協議を行うため、EPZ社を始めとする関係者と基本合意書を交わしたことを明らかにしており、実行可能性調査の実施経費を支援する用意があることも明記したとしている。

EPZ社は同日、オランダ政府が新たな原子炉建設に向けて動き出したことを歓迎すると表明しており、既存の原子力発電所の運転期間延長と同様に、クリーンエネルギーに移行する上で重要だと指摘。原子力は地球温暖化の防止目標を達成しつつ、拡大する電力需要を満たし、化石燃料への依存を減らす上でも大きく貢献すると強調している。

(参照資料:気候・エネルギー相の議会宛て書簡、ANVSの発表資料(オランダ語)、EPZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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