米ThorCon社 インドネシアで溶融塩炉搭載バージの建設検討へ
15 Dec 2022
「ThorCon」の構造図 ©ThorCon
フランスの検査認証企業であるビューロー・ベリタス(Bureau Veritas)社の12月14日付発表によると、同社と米国の原子力技術デベロッパーであるThorCon社は、インドネシアでThorCon社製溶融塩炉「ThorCon」(電気出力25万kWのモジュール×2基)を搭載したバージ(はしけ)の実証・建設に向けて協力することになった。
具体的にビューロー・ベリタス社は、同炉に適用される安全基準やコードなどを特定し、その適用にともなうリスクの評価と取り組み方法等についてThorCon社を支援。少なくとも約3年をかけて、技術の認定プロセスを完了する。その後は実際に建設する可能性を探るため、さらに2年間で産業利用に関する実行可能性を評価するとしている。
ThorCon社はこのバージの実証を行い最終的に設置する地点について、すでにインドネシアの国営電力(PLN)と原子力規制庁(BAPETEN)、およびスマトラ島の東方沖に位置するバンカ島とビリトゥン島(バンカ・ビリトゥン州)の州政府と協議中。船体に溶融塩炉を組み込んだバージは設置点の浅瀬まで引き船で曳航され、そこで送電網に接続、主に近隣地域の電力需要を満たすことになる。インドネシアは同炉で多量の電力を発電し、信頼性の高い低炭素エネルギーへの移行を図る考えだ。
インドネシアでは電力需給のひっ迫等を理由に、1980年代に原子力発電の導入が検討されたが、建設予定地における火山の噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、100万kW級大型炉の導入計画はこれまで進展していない。一方、初期投資の小ささや電力網への影響軽減等の観点から、中小型炉への関心は維持されており、インドネシア原子力庁(BATAN)は2018年3月、大型炉導入の前段階として小型高温ガス炉(HTGR)を商業用に導入するため、熱出力1万kWの実証試験炉の詳細工学設計を開始している。
ThorCon社は世界第4位の人口を擁するインドネシアについて、電力需要が今後も大幅に増加すると予想。このため、低コストで出力調整可能な無炭素エネルギーが緊急に必要な東南アジアで、同社の技術を最初に実現する国としてインドネシアを選定した。電力需要の増加を満たす実用的な対策を東南アジアに提供し、世界的な温暖化問題の解決に貢献したいとしている。
ThorCon社の資料によると、同社は2018年にインドネシアのエネルギー省と覚書を交わし、出力50万kWの溶融塩炉の実証炉建設に関する実行可能性調査の実施で合意している。エネ省は2019年に国営電力会社とともにこの調査を完了し、実証炉の安全性と経済性および送電網への影響等を検証済みである。
同社はまた、今年2月にインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)と原子力分野の研究開発と技術革新、中でもモジュール式溶融塩炉の開発に関する協力で覚書を締結。7月には、将来の溶融塩炉建設に向けて両者が合意したことを明らかにしていた。
(参照資料:ビューロー・ベリタス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)