ポーランド企業とWH社 AP1000建設の実施取り決めで合意
19 Dec 2022
枠組み合意文書に調印する両社の社長 ©Westinghouse Electric
ポーランドのPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は12月15日、最初の大型炉発電所の採用炉型であるウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」の建設について、細かな取り決め事項でWH社と合意したと発表した。
同国政府は先月、最初の3基、375万kW分の採用炉型としてAP1000を選定しており、今回の枠組み合意はその具体化の手続きとなる。建設プロジェクトの準備作業の概要を定めたもので、両社は今後のエンジニアリング・サービス契約締結に向けて、発電所のレイアウトなど初期段階の設計作業のほか、WH社が提供する許認可手続き関係の支援や建設サイトでのサービス業務、資機材等で合意。次の段階では詳細作業や商業契約に進む方針で、AP1000発電所の設計開始契約については、来年半ばにも別途結ぶとしている。
ポーランドの改訂版「原子力開発計画」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万kW~900万kW建設することになっている。ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は2021年12月、最初の原子力発電所の最も有望なサイトとして、バルト海に面した同国北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定。今年に入っては、政府の環境保全管理局に建設プロジェクトの環境影響声明書(EIS)を提出しており、現時点では2026年に初号機の建設工事を開始し、2033年に完成することを目指している。
AP1000は第3世代+(プラス)の設計として、欧州加圧水型炉(EPR)と同様に稼働実績があり、中国で2018年以降に世界初のAP1000が4基運転を開始したほか、今年になって新たに2基が着工した。米国でも2013年から2基が建設中であり、ウクライナでは合計9基のAP1000建設が決まっている。同設計の特長として、WH社は本格的な受動的安全炉であることや、モジュール方式で建設可能な点などを挙げている。
今回、WH社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長とPEJ社のT.ステピン社長が協力合意文書に調印。調印式には、ポーランドのA.モスクヴァ気候環境相と戦略的エネルギーインフラを担当するM.ベルゲル政府全権委員、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使などが同席した。
ポーランド政府のベルゲル委員は、「WH社の炉型を選定した際、M.モラビエツキ首相が記者会見で強調していたように、ポーランドが経済面でさらなる成長を遂げるには安価でクリーン、安定した電力供給が不可欠。その意味で原子力を選択したことは当然の結果」と指摘。原子力発電所によってポーランドはロシアなどからの化石燃料を必要としなくなり、国家のエネルギー供給保証を速やかに強化できると述べた。
米国のブレジンスキー大使は、「今回の枠組み合意により、ポーランドは信頼できるパートナーから安全で信頼性の高い原子力エネルギーを得るという目標の達成に向け大きく前進した」とコメント。両国間協力の主要な柱でもあるこの合意により、ポーランドはCO2の排出量を削減しながら、エネルギーの供給を一層確実にすることができると指摘した。
(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)