フィンランドのフォータム社 スウェーデンでのSMR建設に向け地元企業と覚書
20 Dec 2022
©Fortum
フィンランド政府が株式の過半数を保有するエネルギー企業のフォータム社は12月15日、スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設機会を探るため、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社と了解覚書を締結したと発表した。
フォータム社は今年10月、フィンランドとスウェーデンの両国で、大型炉やSMRなど新たな原子力発電所の建設に向けた実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表。KNXT社との覚書はその一環であり、スウェーデンで商業面や技術面、社会面の新設要件を特定するFSの実施に協力して取り組んでいく。両社の発表によると、スウェーデン初のSMRを稼働させる時期については、現状では禁止されている新たなサイトでの原子炉建設や10基までに制限されている運転中原子炉の基数など、法制面や許認可関係の制限事項がどの程度撤廃されるかにかかっている。
地球温暖化への対応策として、フォータム社はクリーン電力への需要が今後数十年間で大幅に高まると予想。スウェーデン政府が掲げた温暖化防止目標を達成するには、CO2を排出しない電源の大規模な拡大が求められており、産業界からはSMRの持つ可能性に期待が高まっていると指摘している。
フォータム社は、SMRであれば産業界や各自治体に価格の安定した無炭素な電力や熱、水素を提供できると考えており、新たな原子力発電所を風力発電設備とともに建設していくことは、地球温暖化への対抗手段になると強調。同社とKNXT社の異なる能力を生かし、互いに補い合ってSMR建設を進めていきたいと述べた。
なお、フォータム社は今回の発表に先立つ今月8日、同FSにおける活動の一部として、フランス電力(EDF)と協力するための枠組み協定を締結した。EDFは2019年9月、原子力・代替エネルギー庁(CEA)などとの協力により、実証済みのPWR技術とモジュール方式を取り入れたSMR「NUWARD」(電気出力34万kW)を開発したと発表。仏フラマトム社らが開発した欧州加圧水型炉(EPR)の建設を欧州全土で進めつつ、NUWARDについても2030年から実証プラントの建設に取り掛かる計画である。フォータム社は先進的原子炉建設に関するEDFのこのようなアプローチも取り入れて、北欧で新たな原子力発電所の建設機会を探る方針である。
フォータム社はまた、このFSの一環で先月、ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン社と、SMRの建設に向けた協力の可能性を模索すると発表した。ヘレン社は同市内のプラントで熱や電力を生産・供給しており、無炭素な熱電併給が可能なSMRは注目に値すると述べている。
一方のKNXT社は今年3月、スウェーデンで複数のSMRを可能な限り迅速に建設するため、米国でSMRを開発中のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と了解覚書を締結している。KNXT社は、環境保全技術のスタートアップ企業であるシャーンフル・フューチャー(Kärnfull Future)社の100%子会社であり、KNXT社のC.ソーランダーCEOはフォータム社について、「稼働率の高いロビーサ原子力発電所を運転するなど、原子力関係の優れた知見を幅広く有している」と評価。同社との協力を通じて、安価でより良い総合的な解決策を顧客に提案できるとしている。
(参照資料:フォータム社、シャーフル・ネキスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)