GEH社 英国で「BWRX-300」の設計審査を申請
21 Dec 2022
BWRX-300の発電所完成予想図 ©GEH
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は12月20日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に申請書を提出したと発表した。
規制当局の実際の審査に先立ち、BEISは同審査を受ける能力が設計者に備わっているか確認するため、最大4か月をかけて初期スクリーニングを実施すると見られている。
GDAは英国内で初めて建設される原子炉設計の事前認証審査で、審査項目は土木建築から原子炉化学まで17の技術分野にわたる。安全性とセキュリティ面については原子力規制庁(ONR)が、環境影響面については環境庁(EA)が担当し、対象設計が英国の基準を満たしているか評価。最終承認までの所要期間は約5年で、これまでにフラマトム社製の「欧州加圧水型炉(EPR)」、ウェスチングハウス社製「AP1000」、日立GE社製の英国版「ABWR」、中国広核集団有限公司(CGN)を中心とする中国企業の英国版「華龍一号(HPR1000)」が承認を受けている。
BEISはまた、2021年5月にGDAの審査対象として、SMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。ONRとEAは今年3月にBEISから要請を受け、同設計のGDAを開始している。
英国では、2050年までに国内の発電システムから温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化することを目指しており、原子力発電についてはエネルギー供給保証の観点からも、この年までに2,400万kWを配備する目標が掲げられている。GEH社は、英国がこれらの目標を達成する上で「BWRX-300」は理想的な炉型だと明言。英国内で複数の「BWRX-300」を建設すれば、目標達成に向け大きく前進するとの認識から、同社はグローバルな環境事業を展開する米ジェイコブス社から許認可手続き関係の支援を受けながら、GDAの申請準備を進めてきた。
「BWRX-300」の建設に関しては、カナダと米国でも予備的設計審査が進展中で、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社(OPG)は今年10月末、同州南部のダーリントン原子力発電所で早ければ2028年にも同炉を完成させるため、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。同じくカナダのサスカチュワン州のサスクパワー社も今年6月、初号機建設にともなう規制面や建設・運転面のリスクを軽減するため、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとしてOPG社と同じ「BWRX-300」を選択している。
また、ポーランド最大の化学素材メーカー、シントス社の傘下企業と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社は、折半出資の合弁事業体「オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社」を通じて「BWRX-300」の建設に向けた活動を展開中。同社は今年7月、「BWRX-300」について、予備的な許認可手続きの一つである「包括的(評価)見解」の提示を同国の国家原子力機関(PAA)に申請している。
(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)