フィンランドのOL3 3月に営業運転へ
26 Dec 2022
オルキルオト3号機 ©TVO
フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月21日、試運転中に給水ポンプ内で機器の損傷が見つかったオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)について、「27日に試運転を再開して残り約10項目の試験を実施し、3月8日には営業運転を開始する」と発表した。
試運転期間中に同炉が発電する電力量は約13億kWhとなる見通しだが、これは、フィンランドにおける総電力需要の約15%に相当する。
同炉では試運転中の10月中旬に保守点検を実施した際、タービン系の給水ポンプ4台すべてで内部の羽根車に数センチ程度のクラックが認められた。TVOは羽根車の一つを分割して3つの研究所に送り、数学的モデリングや分析調査を行いながら試運転を再開する機会を探っていた。
現時点で根本的な原因は不明だが、TVOは包括的な調査の大部分を完了したと表明。クラックの発生理由として、「試運転の際に通常の使用範囲から外れた異常な条件下でポンプを使用したため、正常値より大きなひずみがかかった可能性が高い」と説明しており、羽根車の設計を変更した上でポンプを適切に操作することにより、同様の損傷を回避することができると述べた。
差し当たり、現行モデルの正常なスペア羽根車を取り付けたポンプ2台と、クラック入り羽根車のポンプ2台で暫定的に試運転を再開する方針で、クラック入りポンプのうち1台は予備用となる。給水ポンプはタービン系の内部に設置されることから、TVOは原子炉の安全性に大きな問題はないとしている。
TVOはまた、試運転再開の判断に先立ち、ポンプの複数の使用オプションについて事前に評価した。異なるモデリングを活用した上で、現行のスペア羽根車の使用が適切であるか、クラック入りポンプを修理した場合や同ポンプで運転継続した場合に発生する可能性のある事象、新しいスペア羽根車の設計と耐久性等を徹底的に調査。この作業には、同炉の機器サプライヤーやTVOの専門家に加えて、諸外国の科学コミュニティからも多くの専門家が参加している。
試運転再開後のスケジュールについて、TVOは11日間にわたり同炉の出力レベルを数段階に変化させるとしており、フル出力による試験を終えた後は発電を約4週間停止して給水ポンプを点検する。新たな設計で製造中の堅固な羽根車が2月末から3月初旬にサイトに到着予定であるため、TVOは営業運転開始前の約1か月間、ほぼフル出力で同炉を連続運転できるよう、既存の羽根車の点検と新たな羽根車に変更する期間を十分確保する方針である。
(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)