チェコ 60年超運転に向けテメリン発電所を改修
16 Feb 2023
テメリン原子力発電所 ©CEZ
チェコの国営電力(CEZ)は2月14日、テメリン原子力発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の60年超運転に対応するため、追加で36億コルナ(約218億円)を投じてバックフィット作業を継続すると発表した
同社は先月27日、チェコのもう一つの原子力発電所であるドコバニ発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)についても、2047年までの累計約60年間、安全・確実に運転継続できるよう、今年は機器の更新等で23億コルナ(約139億円)を投資すると表明。仏フラマトム社とは2月14日、同発電所に設置されているモジュール型デジタル方式の計装制御(I&C)系「Spinline」の性能確認装置について、改造・製造契約を交わしている。これら2つの原子力発電所は2021年に同国の総発電量の約37%を供給している。
CEZ社は、これら2つの発電所の運転サイクルを現在の約12か月から、最終的に18か月に延長することを目指しており、ドコバニ発電所については先月、4基すべてを当面は16か月にすると表明。テメリン発電所では、今後数年間の主要プロジェクトとして運転サイクルの延長を行うほか、I&C系の近代化作業を継続、発電機の取替え準備も進める方針である。
テメリン発電所でこのようなバックフィット作業にともなう投資案件は、今年は昨年より46件増の271件を予定。テメリン発電所の2基が運転を開始して以降、CEZ社が同発電所のこれまでの改修工事に投資した総額は280億コルナ(約1,697億円)以上にのぼっている。
テメリン1、2号機はそれぞれ、2002年6月と2003年4月に営業運転を開始。ドコバニ発電所では、5号機の建設に向けて2022年3月に入札が始まった一方、テメリン発電所では一時期進められていた増設計画が、財政難で2014年に頓挫した。CEZ社はそれ以降、テメリン発電所サイト内で南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとして、小型モジュール炉(SMR)の建設を計画している。
CEZ社のB.ズロネク原子力本部長は、「テメリンの2基を最良の状態で運転し続けたい」と表明。機器の近代化や効率性向上工事を継続する意思を強調した。運転サイクルの延長については、「世界中の大多数の原子力発電所が18か月というサイクルを取り入れているので、わが国でも複数の分析評価を実施した上で慎重に進めたい」と述べた。
同本部長によると、2号機では早ければ今年中にも運転サイクルを2か月間延長して14か月サイクルとする。これにより、原子炉の効率が増すだけでなく、燃料交換時に機器の冷却や開閉にともなう負荷が減少するとした。
テメリン発電所ではまた、2029年までの予定でI&C系の近代化を実施する。CEZ社は2号機が昨年定期検査に入った際、主要な作業をすでに開始しており、今年は長さ5kmの送電ケーブルや45kmの光通信ケーブルを新たに敷設する予定である。新しい発電機については入札の募集を計画しており、1号機については2028年に、2号機ではその2年後を目途に取替えを実施する考えだ。
(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)