チェコ 石炭火力発電所サイトをSMRでリプレースへ
01 Mar 2023
SMR発電所の完成予想図 ©CEZ
国営のチェコ電力(CEZ社)は2月27日、国内で2基目と3基目の小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた予備的評価の結果、候補サイトとして北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と、北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定した。
同社は大型炉が稼働する国内2つの原子力発電所のうち、ドコバニ発電所の増設計画を進める一方、SMRの導入プログラムも進めている。これまでにSMRデベロッパーである米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ウェスチングハウス(WH)社、ホルテック・インターナショナル社とSMR関係の協力覚書を締結したほか、英国のロールス・ロイスSMR社やフランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とも同様の覚書を結び、建設の実行可能性等を調査中である。
チェコ初のSMRについては、CEZ社は2022年3月に既存のテメリン原子力発電所の敷地南西部を建設サイトとして選定。同発電所が立地する南ボヘミア州の州政府、および傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)とともに、SMR建設を加速する「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクトを始動させており、CEZ社のD.ベネシュCEOが非公式に「2032年の完成を目指す」と述べたことが伝えられている。
後続SMRの建設が検討されているジェトマロヴィツェとトゥシミツェは、ともにCEZ社の石炭火力発電所が立地しており、SMRでこれらをリプレースする計画である。同グループは「2030年代の事業ビジョン」の中で、2040年代以降に合計100万kW以上のSMR建設に向けた準備を進めるとしているが、2、3号機については早ければ2030年代後半に完成する可能性を指摘。SMRを通じて、無炭素なエネルギーを長期にわたり安定供給する方針である。
CEZ社のT.プレスカッチ再エネ担当理事は、SMRについて「大型炉の代用品という位置付けではなく、石炭等の大型火力発電所を代替する適切な電源として役割を担っている」と説明。SMRの建設プログラムでは、機器の製造やサプライチェーンに参加する機会や、関係地域にサービス・訓練センターを設置する可能性があるなど、チェコ経済の発展に向けた大きな機会になると述べた。
CEZ社は今後、これら2か所の候補サイトの最終決定に向けて、今秋までさらなる調査やモニタリングを継続する。このような活動も含め、許認可申請までに3~5年を要すると同社は説明している。
(参照資料:CEZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)