EU 11か国のエネ相 原子力分野の協力強化を再確認
02 Mar 2023
ストックホルムで開催されたEU会合 ©EU Council
欧州連合(EU)域内で原子力利用を推進する11か国のエネルギー相は2月28日、原子力協力を一層強化することを改めて確認。欧州原子力共同体(ユーラトム)条約の目標に沿って原子力研究を促進し、技術情報の普及に努めるべきだと訴えた。
この声明は、EU理事会の今期議長国を務めるスウェーデンが、27日と28日に首都ストックホルムで開催したエネルギーと輸送関係の閣僚および代表高官の非公式会合で取りまとめられた。共同議長はスウェーデンのE.ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業大臣と、A.カールソン住宅・インフラ大臣が務めており、声明に賛同した11か国はブルガリア、フランス、ハンガリー、フィンランド、オランダ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ルーマニア、スロベニア、クロアチアである。
欧州諸国が現在、未曽有のエネルギー供給危機に瀕していることから、会合では共通エネルギー市場の構築に向けた長期の見通しに焦点を当てる一方、次回以降の冬季を念頭にエネルギーの供給準備についても議論を実施。加盟国すべてがエネルギー危機を克服できるような将来のエネルギー政策や、域内で2030年までに温室効果ガスを1990年比55%削減するための政策パッケージ「Fit for 55」の実施準備についても意見を交わした。
仏エコロジー移行・地域結束省とエネルギー移行省の発表によると、原子力は欧州における地球温暖化の防止目標達成とベースロード用電力の確保、エネルギー供給保証のための重要電源の一つ。声明に合意した各国は、それぞれの原子力部門相互の協力を一層緊密化することにより、サプライチェーン全体の協力を最大限に拡大し、人材育成プログラムや産業プロジェクトを共同実施していく。革新的な原子力技術の開発や既存の原子力発電所の運転についても、新たな原子力プロジェクトの実施を後押しするとしている。このほか、安全分野における科学協力の強化や、国際的な良好事例の共有についても協議が行われた。
なお現地の報道によると、この会合に先立ち仏エネルギー移行省のA.パニエ=リュナシェ大臣が、「フランスが目指しているのは原子力利用促進同盟の樹立だ」と述べた模様。フランスは、欧州諸国が地球温暖化の防止目標を達成し、輸送用の水素を製造する上でも原子力が有効だと確信している一方、この問題についてEU域内では意見が分かれており、ストックホルムの会合ではドイツとスペインを筆頭にオーストリアとルクセンブルクが反対の立場を確認したと伝えている。
(参照資料:仏政府(フランス語)、欧州理事会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)