仏EDF SMR等で伊企業と協力
08 Mar 2023
©Ansaldo Energia
フランス電力(EDF)とそのイタリア法人であるエジソン社、イタリアのアンサルド・エネルギア・グループ、およびその100%子会社のアンサルド・ヌクレアーレ社は3月6日、欧州で小型モジュール炉(SMR)等の原子炉開発や建設で協力する可能性を探るため、基本合意書(LOI)に調印した。
この合意は、脱原子力国であるイタリアで将来的に、エネルギー政策変更の可能性があることを見越したもので、同国での原子力発電所建設を念頭に置いている。アンサルド・ヌクレアーレ社がイタリアで主導する原子力発電部門の知見を活用し、EDFグループの新規原子力プロジェクトをともに推進。イタリアがクリーンエネルギーに移行する際、原子力発電が果たす役割についても4社は議論の口火を切る方針だ。
イタリアでは1973年の石油危機を契機に原子力発電開発が加速し、1963年以降4基の商業炉が稼働したものの、チョルノービリ原子力発電所事故の影響で1990年までにこれらはすべて閉鎖された。2008年に発足したS.ベルルスコーニ政権は原子力発電の再開を試みたが、福島第一原子力発電所事故が発生したため国民投票では9割以上が原子力発電所の建設に反対、新たな国家エネルギー戦略では原子力が排除された。しかし近年は、原子力発電所が国内に存在しないにも拘わらず、原子力コースを選択する学生数が徐々に増加している。
4社の協力に向けた今回の合意にともない、各社はそれぞれの技術力が生かされる協力方法を模索していく。アンサルド・エネルギア・グループが原子力を含むエネルギー分野で、関係機器の開発やサービスの提供に携わる一方、EDFは世界最大の原子力発電事業者として、新たな原子炉の開発プロジェクトも実施。これにはSMRの「NUWARD」が含まれており、アンサルド・ヌクレアーレ社とEDFは最近、同設計のエンジニアリング調査の実施契約を交わしている。また、出力120万kWの中型欧州加圧水型炉(EPR)や、通常の大型EPR(165万~175万kW)もこれに含まれている。
4社はまた、イタリア国内でエネルギーの供給保証と輸入に依存しない電力供給システムの必要性が高まっていることから、同国で新しい原子力発電所の建設可能性を評価していく。イタリアでは総発電量の4割を再生可能エネルギーで賄う一方、依然として6割を天然ガス等の化石燃料で発電している。今回の協力を通じて、再エネ設備を新しい原子力発電所で補い、電力供給システムの安定性や環境面の持続可能性を確保。欧州全体やイタリアが掲げる「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」という意欲的な地球温暖化防止目標の達成を目指す。
4社はともに、原子力が最良の低炭素電源の一つであり、設備容量あたりの設置面積も小さいと認識。さらに、SMRのような革新炉では、安全性が非常に高い上に必要とされる投資額が少ない。熱電併給も可能なことから、エネルギー供給上の様々な要求にも柔軟に対応できると考えている。
アンサルド・ヌクレアーレ社のR.カサーレCEOは、「今回の合意の正当性を当社は信じており、イタリアの産業界や研究機関とともに、欧州諸国の様々な原子力プロジェクトに積極的に参加する」とコメント。欧州の原子力発電に寄せられている新たな関心に対し、イタリアが提供できる高い付加価値を実証していくと表明した。
(参照資料:EDF、アンサルド・エネルギア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)