BWRX-300 カナダの事前審査の主要段階をクリア
17 Mar 2023
「BWRX-300」発電所の完成予想図 ©GEH
米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は3月15日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)で実施している「ベンダー設計審査(VDR)」で、主要部分である第1、第2段階が完了したと発表した。
CNSCは19の審査分野についてGEH社が提出した200以上の文書を審査した結果、「BWRX-300」には正式審査の際に根本的障害となるような課題は認められなかったと指摘。「GEH社はCSNCがカナダの原子力発電所に課している要件の意図を正しく理解している」と結論づけた。最終段階にあたる第3(フォローアップ)段階では、カナダの規制要件を厳格に順守できるよう、GEH社はCNSCが第2段階で指摘したいくつかの技術分野について詳細に検討を加え、建設に向けた設計準備で追加の策を講じるとともに、この策に対するCNSCの評価も得ていく考えだ。
VDRはベンダーの要請に基づき、CNSCが提供している任意の設計評価サービス。第1段階では主に、カナダの規制要件に対する適合性を評価する一方、第2段階では根本的な課題の有無について、正式な許認可プロセスの申請に先立ち審査する。当該設計や技術に致命的な欠陥があれば、それを早い段階で特定し解決につなげていくことになる。
これら2つの段階の審査を同時に進めることも可能で、CNSCは2019年12月にGEH社と交わした合意文書に基づき、2020年1月からこれらの審査を並行して開始。GEH社からは「BWRX-300」の概要のほか、制御システム等の設備、研究開発、設計プロセスなどに関する文書の受け取りを開始していた。
出力30万kWの次世代原子炉である「BWRX-300」は、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)型炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用。受動的安全系を採用しており、原子炉上部に設置した大容量冷却プールの水で、外部電源や人の介在なしに燃料を冷却することができる。
GEH社で先進的原子力技術を担当するS.セクストン上級副社長は、「当社の『BWRX-300』はVDRの主要2段階の審査を完了した最初のSMRになった」と指摘。「BWRX-300」の建設に向けた重要ステップとして、指摘された事項を同炉にフィードバックしていくと述べた。
「BWRX-300」の実際の建設に関しては、2021年12月にカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所内で建設するカナダ初のSMRとして「BWRX-300」を選定。2022年10月には「BWRX-300」の建設許可申請書をCNSCに提出しており、同サイトで取得済みの「サイト準備許可(LTPS)」に基づき、2028年第4四半期の完成を目指して準備作業を始めている。同社はまた、GEH社やSNC-ラバリン社などの関係企業3社と、今年1月に6年契約でチームを組む協力協定を締結している。
GEH社によると「BWRX-300」に対する関心は世界中で高まっており、カナダではこのほか、中西部サスカチュワン州のサスクパワー社が昨年6月、同州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして同炉の採用を決定した。米国ではテネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始している。北米以外では、エストニアのフェルミ・エネルギア社が先月、2030年代初頭の完成を目指して同国で建設する最初のSMRとして選定。ポーランドでも、大手化学素材メーカーのシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁で2033年以降に「BWRX-300」を建設する方針である。
(参照資料:CSNC、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)