加アルバータ州 ARC社製SMRの建設に向け覚書締結
29 Mar 2023
協力合意したIACとARC社の幹部 ©ARC Clean Technology
カナダ中西部アルバータ州の外国投資誘致機関であるインベスト・アルバータ社(IAC)は3月23日、米ARCクリーン・テクノロジー社のカナダ法人(ARCカナダ社)と了解覚書を締結、同州内でARC社製の第4世代小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」の建設と商業化に向けて協力することになった。
「ARC-100」はナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉で、電気出力は10万kW。同炉の技術は、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所で30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」で確認済みのものである。
アルバータ州は天然資源豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスの資源に恵まれており、州内には重工業やエネルギー企業の本社が多数置かれている。今後はSMRが生み出す無炭素な電力や熱を活用して、水素製造や医療用放射性同位体の生産、オイルサンドからの燃料抽出、化学製品の製造、鉱山業、海水脱塩といった産業の脱炭素化を推進。低炭素社会への移行に際しても、エネルギー生産州としての立場を維持していく方針だ。
ARCカナダ社によると、「ARC-100」の小規模な設計や熱電併給可能という柔軟性、化石燃料に対するコスト面の競争力の高さは、同州にとって理想的な無炭素エネルギー源となる。そのためIACは、今回の覚書を通じて州内複数地点での「ARC-100」建設に向けた支援を行うとしており、間欠性のある再エネをSMRで補うことで同州の脱炭素化戦略を進める。一方のARCカナダ社は、IACによる支援の下で同州の関係者や産業界との連携を深め、複数の「ARC-100」の製造・建設と運転に不可欠のサプライチェーンを構築し、関連サービスを提供していく考えだ。
アルバータ州は2021年4月、カナダ国内のオンタリオ州とニューブランズウィック(NB)州およびサスカチュワン州の3州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた共同戦略計画を策定している。アルバータ州ではまた、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設を念頭に、IACが2022年8月に同社と覚書を締結。今年1月には、米X-エナジー社の小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の州内建設を通じて同州経済活性化の可能性を探るため、IACが同社のカナダ法人と了解覚書を締結している。
ARC社の社名は元々、アドバンスド・リアクター・コンセプツ社だったが、その後はARCニュークリア社、ARCクリーン・エナジー社と変更していき、現在はARCクリーン・テクノロジー社と呼称している。
ARC社は2018年7月、カナダ東部NB州の州営電力であるNBパワー社と協力合意しており、同社が州内で運転するポイントルプロー原子力発電所内で、2029年までに「ARC-100」を完成させる計画だ。これにともない、同社はNB州セントジョンに初のカナダ事務所を設置している。同州ではまた、北部ベルドゥーンの港湾管理局が2022年11月にARCカナダ社の提案を受け入れ、「ARC-100」の建設に向けて米国のプロジェクト開発企業と協力することになった。
(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)